2016年12月29日木曜日

NEJMのイメージから・・・お腹のMRI

フランスからMRIイメージである。このMRIイメージからこの女性のお腹になにが起こっているかを診断してもらいたい。やはり矢印に挟まれた構造物であろうが、よくみると背後にミラーイメージのようにもうひとつの構造物がある。

・・・温泉に入った大門未知子のようなイメージ・・というとわかりやすいか?




Images in Clinical Medicine






















A 33-year-old asymptomatic woman (gravida 6, para 5) presented at 22 weeks of gestation with a large herniation of the amniotic sac through the left uterine wall that was detected by routine ultrasonography. She had had five previous cesarean sections through a transverse incision of the lower uterine segment and no previous vaginal deliveries. Magnetic resonance imaging revealed a 2.5-cm rupture of the left uterine wall (arrows) and a large amniocele that measured 19 cm by12 cm by 9 cm and contained fetal legs. The patient and her partner were informed of the potential risks of these findings, including complete uterine rupture, placenta accreta, hysterectomy, and preterm birth. They opted to proceed with the pregnancy with close monitoring. Repeat ultrasonography at 30 weeks of gestation revealed that the uterine dehiscence had extended 5 cm and the herniated sac had grown and included the fetal abdomen and legs. At 30 weeks of gestation, a healthy male newborn weighing 1385 g was delivered by cesarean section. After the delivery, the left posterior uterine rupture and large amniocele were identified and repaired. The patient had an uncomplicated postoperative course and was discharged from the hospital 5 days later. At 6 months of age, the baby was alive and well.

診断を受けたのが22週、カイザーが30週であるからこの8週間(二ヶ月)妊婦とその夫ははどんな思いで過ごしたのだろう?? 子宮壁はすでに裂けているのである。

無事出産し6ヶ月検診では元気なのだろう。

Uterine Rupture with Protruded Legs in a Large Amniocele

Pierre-Emmanuel Bouet, M.D., and Charlyne Herondelle, M.D.
N Engl J Med 2016; 375:e51December 22, 2016

Pierre-Emmanuel Bouet, M.D.
Charlyne Herondelle, M.D.
Centre Hospitalier Universitaire d’Angers, Angers, France

2016年12月16日金曜日

ここ最近の本:「野生の思考」と「君の名は。」

本屋さんで本を買うことは以前同様多い。アマゾンのサービスが便利だから以前よりも購入冊数が、あるいは多いかもしれない今日このごろである。でもなあ・・・小説が読めなくなった。SFなんてもう久しく読んでいない。ミステリーを最後に読んだのはいつのことだろう?

新書本を読んでは虚しくなる毎日だ。

最近おもしろい本になかなか出会わない。・・・と書くようになってから数年たって気がついたこと。あるいは愕然としたこと。感性がにぶっている!おそらくそうなんだけど、これは如何ともしがたいなあ。どうすればよいのだろう?

古典かなあ・・・と思い始めていた。例えば最近はドストエフスキーの翻訳が一新されて評判である。随分読みやすくなっているという。「罪と罰」くらい読んでみたいではないか。・・・しかしなかなか手が伸びない。あるいは 源氏物語である。大塚ひかりのちくまからでている最新訳(?)がぶっとんでいると評判である。

毎日忙しくないわけではない。現在の病院にやってきて8年になるが、立場も随分変わってきた。だんだん身動きが取れない立場に追い込まれそうだ。これで給料が上がらなければ「罰ゲーム」そのものである。

だからこそ、頭の中は別の世界を維持したい。健全な精神を維持できるかどうか?

今年の後半久しぶりに面白い経験をした。きっかけは「君の名は。」である。 この映画を9月ころ見た。どうして見に行く気になったかよくわからないが、きっと呼ばれたんだろう。感激した。とても面白かった。アニメもなかなかやるなあと思った。新海監督の本をかなり読んだ(立ち読みだけど、ユリイカとか)。

年末にはいろんな場所でこの映画のことで盛り上がり、比較的若い友達といい時間を過ごせた。

そんな中もう一度お呼ばれしてしまったのだった。11月の後半だったが、帰宅途中に職場の近くの本屋を散策していたところ普段は見ることないNHKの通信講座の棚に視線が引き寄せられたわけだ。ボクは知らなかったけど最近NHKの E−テレでは月曜日の夜に「100分で名著」というコーナーがあり、12月はレヴィ=ストロースの「野生の思考」をやるらしい。そのテキストに目が吸い寄せられたというわけだ。

 レヴィ=ストロースは何冊か所有しているし、この先生の「構造主義」という言葉にはなかなかついていけないが、ただ「神話」「親族」の構造についての言説には昔から非常に引き寄せられており、2年に一回位は思い出してはいろいろ読んでいた。今回引き寄せられたのはおそらく「君の名は。」を見て以来、神話のことをずっと考え続けていたからだろうと思う。その レヴィ=ストロース先生の「野生の思考」を毎回25分 x4回やるというのだから、これは楽しみだ。早速テキストを買い、所有する「野生の思考」を再読している。



読書仲間に宣伝案内を打ったところ、3〜4人はテキストを買ってこの番組を見ているらしい。とても嬉しいことだ。

更に話は波及する。レヴィ=ストロースは2009年に亡くなったが、晩年日本にも何回も訪れ、いろんな地方の神話や文化を集め論考を残しているが(彼は日本が好きなようだ。)そのような本の一冊に「月の裏側」(日本文化への視角)という本がある。川田順造によって2014年翻訳されている。随分な題名だとは思うが、これはすごい本である。我々にとって月の裏側に住んでいるフランス人が我々日本をどう見ているのかが透けて見えるが、それはそれとして、一生懸命日本を知るために彼は「古事記」「日本書紀」に始まり(記紀を読むことは神話学・人類学者としては当然であろう)「大鏡」「太平記」その他日本人のほとんどが読むこともなく一生を終えるであろう古典作品を随分読みこなし論考を加えていることにボクは感激した。特に「源氏物語」を彼がとう読んだか。

その前に レヴィ=ストロースの「親族の構造」について少し振り返ると、彼は1930年代の南米ブラジル奥地の未開人部族と生活し「悲しき熱帯」という本を書いたが、部族の親族関係に着目し特に婚姻について厳密なルールがあることに気がつく。「交叉イトコ婚」というルールである。「交叉イトコ婚」と近親相姦禁止ルール(インセスト・タブー)の2つは世界の殆どの「未開部族」に受け継がれており、これが部族安寧・平和共存のための基本構造だというのだ。近親相姦禁止ルールは今の私たち(特に医師・分子遺伝学者)には「遺伝病」の予防と安易に受け取られるが違うのである。これは「贈与」されるものに「価値を与えるための」大切なタブーだとする。いや違うなあ。なんと表現していいんだろう?

基本的に「贈与」というのが人類社会の基本であること。人間はヒトにものをあげたい存在であるということ。ヒトからものをもらったら、お返しをしなくては我慢できない存在であること。よその部族にものをあげたい、お返しが返ってくることで「悪いやつらではない」「ちゃんとやっていけそうだ」と安心する・・・そんな贈与を部族内で限定してしまわないための一つの、しかし極めて重要な仕組み。よそと上手くやること。これにどれほど人類は苦労し工夫してきたかということかもしれない。さてさて・・・

さてレヴィ=ストロースはなんと「源氏物語」の中に日本における「交叉イトコ婚」の実例をいくつも見出すのである。1000年前に「交叉イトコ婚」行っていた人たちの心理のやり取りが詳細に記述されている物語に感激している。「源氏物語」をこんな読み方で読んだヒトがいることに感激する。

で最近ボクは源氏物語を読んでいるのだ。本は買わない。青空文庫の与謝野晶子の翻案で読んでいる。まだ箒木くらいまでしか読んでいないが、半年もあれば読めそうな気がする。なかなかおもしろいではないか。


というわけで古典に目覚め始めている小生である。

P.S. ところで「君の名は。」という題名をみると小生は「藤岡弘、」という芸名を連想してしまう。この「。」に込められた意味は如何?

P.S.2 NHKともあろう組織がレヴィ=ストロースの表記を間違えているというか慣例に従っていない。レヴィ・ストロースではなくレヴィ=ストロースというのが慣例である。クロード・レヴィ=ストロースなら正しい慣例である。悔改めよ!
















2016年12月7日水曜日

膵癌を10mm以下で見つけるための工夫

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エコー
半坐位
ミルクティーを飲んでウインドウにする。