2016年12月29日木曜日

NEJMのイメージから・・・お腹のMRI

フランスからMRIイメージである。このMRIイメージからこの女性のお腹になにが起こっているかを診断してもらいたい。やはり矢印に挟まれた構造物であろうが、よくみると背後にミラーイメージのようにもうひとつの構造物がある。

・・・温泉に入った大門未知子のようなイメージ・・というとわかりやすいか?




Images in Clinical Medicine






















A 33-year-old asymptomatic woman (gravida 6, para 5) presented at 22 weeks of gestation with a large herniation of the amniotic sac through the left uterine wall that was detected by routine ultrasonography. She had had five previous cesarean sections through a transverse incision of the lower uterine segment and no previous vaginal deliveries. Magnetic resonance imaging revealed a 2.5-cm rupture of the left uterine wall (arrows) and a large amniocele that measured 19 cm by12 cm by 9 cm and contained fetal legs. The patient and her partner were informed of the potential risks of these findings, including complete uterine rupture, placenta accreta, hysterectomy, and preterm birth. They opted to proceed with the pregnancy with close monitoring. Repeat ultrasonography at 30 weeks of gestation revealed that the uterine dehiscence had extended 5 cm and the herniated sac had grown and included the fetal abdomen and legs. At 30 weeks of gestation, a healthy male newborn weighing 1385 g was delivered by cesarean section. After the delivery, the left posterior uterine rupture and large amniocele were identified and repaired. The patient had an uncomplicated postoperative course and was discharged from the hospital 5 days later. At 6 months of age, the baby was alive and well.

診断を受けたのが22週、カイザーが30週であるからこの8週間(二ヶ月)妊婦とその夫ははどんな思いで過ごしたのだろう?? 子宮壁はすでに裂けているのである。

無事出産し6ヶ月検診では元気なのだろう。

Uterine Rupture with Protruded Legs in a Large Amniocele

Pierre-Emmanuel Bouet, M.D., and Charlyne Herondelle, M.D.
N Engl J Med 2016; 375:e51December 22, 2016

Pierre-Emmanuel Bouet, M.D.
Charlyne Herondelle, M.D.
Centre Hospitalier Universitaire d’Angers, Angers, France

2016年12月16日金曜日

ここ最近の本:「野生の思考」と「君の名は。」

本屋さんで本を買うことは以前同様多い。アマゾンのサービスが便利だから以前よりも購入冊数が、あるいは多いかもしれない今日このごろである。でもなあ・・・小説が読めなくなった。SFなんてもう久しく読んでいない。ミステリーを最後に読んだのはいつのことだろう?

新書本を読んでは虚しくなる毎日だ。

最近おもしろい本になかなか出会わない。・・・と書くようになってから数年たって気がついたこと。あるいは愕然としたこと。感性がにぶっている!おそらくそうなんだけど、これは如何ともしがたいなあ。どうすればよいのだろう?

古典かなあ・・・と思い始めていた。例えば最近はドストエフスキーの翻訳が一新されて評判である。随分読みやすくなっているという。「罪と罰」くらい読んでみたいではないか。・・・しかしなかなか手が伸びない。あるいは 源氏物語である。大塚ひかりのちくまからでている最新訳(?)がぶっとんでいると評判である。

毎日忙しくないわけではない。現在の病院にやってきて8年になるが、立場も随分変わってきた。だんだん身動きが取れない立場に追い込まれそうだ。これで給料が上がらなければ「罰ゲーム」そのものである。

だからこそ、頭の中は別の世界を維持したい。健全な精神を維持できるかどうか?

今年の後半久しぶりに面白い経験をした。きっかけは「君の名は。」である。 この映画を9月ころ見た。どうして見に行く気になったかよくわからないが、きっと呼ばれたんだろう。感激した。とても面白かった。アニメもなかなかやるなあと思った。新海監督の本をかなり読んだ(立ち読みだけど、ユリイカとか)。

年末にはいろんな場所でこの映画のことで盛り上がり、比較的若い友達といい時間を過ごせた。

そんな中もう一度お呼ばれしてしまったのだった。11月の後半だったが、帰宅途中に職場の近くの本屋を散策していたところ普段は見ることないNHKの通信講座の棚に視線が引き寄せられたわけだ。ボクは知らなかったけど最近NHKの E−テレでは月曜日の夜に「100分で名著」というコーナーがあり、12月はレヴィ=ストロースの「野生の思考」をやるらしい。そのテキストに目が吸い寄せられたというわけだ。

 レヴィ=ストロースは何冊か所有しているし、この先生の「構造主義」という言葉にはなかなかついていけないが、ただ「神話」「親族」の構造についての言説には昔から非常に引き寄せられており、2年に一回位は思い出してはいろいろ読んでいた。今回引き寄せられたのはおそらく「君の名は。」を見て以来、神話のことをずっと考え続けていたからだろうと思う。その レヴィ=ストロース先生の「野生の思考」を毎回25分 x4回やるというのだから、これは楽しみだ。早速テキストを買い、所有する「野生の思考」を再読している。



読書仲間に宣伝案内を打ったところ、3〜4人はテキストを買ってこの番組を見ているらしい。とても嬉しいことだ。

更に話は波及する。レヴィ=ストロースは2009年に亡くなったが、晩年日本にも何回も訪れ、いろんな地方の神話や文化を集め論考を残しているが(彼は日本が好きなようだ。)そのような本の一冊に「月の裏側」(日本文化への視角)という本がある。川田順造によって2014年翻訳されている。随分な題名だとは思うが、これはすごい本である。我々にとって月の裏側に住んでいるフランス人が我々日本をどう見ているのかが透けて見えるが、それはそれとして、一生懸命日本を知るために彼は「古事記」「日本書紀」に始まり(記紀を読むことは神話学・人類学者としては当然であろう)「大鏡」「太平記」その他日本人のほとんどが読むこともなく一生を終えるであろう古典作品を随分読みこなし論考を加えていることにボクは感激した。特に「源氏物語」を彼がとう読んだか。

その前に レヴィ=ストロースの「親族の構造」について少し振り返ると、彼は1930年代の南米ブラジル奥地の未開人部族と生活し「悲しき熱帯」という本を書いたが、部族の親族関係に着目し特に婚姻について厳密なルールがあることに気がつく。「交叉イトコ婚」というルールである。「交叉イトコ婚」と近親相姦禁止ルール(インセスト・タブー)の2つは世界の殆どの「未開部族」に受け継がれており、これが部族安寧・平和共存のための基本構造だというのだ。近親相姦禁止ルールは今の私たち(特に医師・分子遺伝学者)には「遺伝病」の予防と安易に受け取られるが違うのである。これは「贈与」されるものに「価値を与えるための」大切なタブーだとする。いや違うなあ。なんと表現していいんだろう?

基本的に「贈与」というのが人類社会の基本であること。人間はヒトにものをあげたい存在であるということ。ヒトからものをもらったら、お返しをしなくては我慢できない存在であること。よその部族にものをあげたい、お返しが返ってくることで「悪いやつらではない」「ちゃんとやっていけそうだ」と安心する・・・そんな贈与を部族内で限定してしまわないための一つの、しかし極めて重要な仕組み。よそと上手くやること。これにどれほど人類は苦労し工夫してきたかということかもしれない。さてさて・・・

さてレヴィ=ストロースはなんと「源氏物語」の中に日本における「交叉イトコ婚」の実例をいくつも見出すのである。1000年前に「交叉イトコ婚」行っていた人たちの心理のやり取りが詳細に記述されている物語に感激している。「源氏物語」をこんな読み方で読んだヒトがいることに感激する。

で最近ボクは源氏物語を読んでいるのだ。本は買わない。青空文庫の与謝野晶子の翻案で読んでいる。まだ箒木くらいまでしか読んでいないが、半年もあれば読めそうな気がする。なかなかおもしろいではないか。


というわけで古典に目覚め始めている小生である。

P.S. ところで「君の名は。」という題名をみると小生は「藤岡弘、」という芸名を連想してしまう。この「。」に込められた意味は如何?

P.S.2 NHKともあろう組織がレヴィ=ストロースの表記を間違えているというか慣例に従っていない。レヴィ・ストロースではなくレヴィ=ストロースというのが慣例である。クロード・レヴィ=ストロースなら正しい慣例である。悔改めよ!
















2016年12月7日水曜日

膵癌を10mm以下で見つけるための工夫

膵癌を10mm以下で見つけるための工夫

エコー
半坐位
ミルクティーを飲んでウインドウにする。



2016年10月9日日曜日

2016シカゴマラソンで深津(旭化成)は7位

2016シカゴマラソンで深津(旭化成)は7位でゴール。非公式記録は2時間13分53秒。

このレースなんかおかしい。トップの5kmが16分7秒で始まっている。エリートマラソンとは思えない。

優勝のキルイが2時間11分23秒(非公式)。

Splits

Split Time Of Day Time Diff min/mile miles/h
05K 07:46:10AM 00:16:07 16:07 05:11 11.58
10K 08:02:07AM 00:32:04 15:58 05:09 11.69
15K 08:17:46AM 00:47:43 15:39 05:02 11.92
20K 08:33:11AM 01:03:08 15:25 04:58 12.10
HALF 08:36:54AM 01:06:51 03:44 05:28 11.00
25K 08:48:47AM 01:18:44 11:54 04:54 12.25
30K 09:05:00AM 01:34:57 16:14 05:14 11.49
35K 09:20:14AM 01:50:11 15:14 04:54 12.25
40K 09:34:59AM 02:04:56 14:46 04:45 12.64
Finish 09:41:26AM 02:11:23 06:28 04:44 12.69

全く理解不能の奇妙なペースである。不思議。


女子はキプラガトが2時間21分32秒(非公式)と好記録で優勝している。ライブ画像を見る限り気候は良さそうであり、男子の記録はまったく不可解だ。

Splits

Split Time Of Day Time Diff min/mile miles/h
05K 07:46:59AM 00:16:56 16:56 05:27 11.02
10K 08:03:32AM 00:33:29 16:34 05:20 11.26
15K 08:20:13AM 00:50:10 16:41 05:22 11.19
20K 08:36:50AM 01:06:47 16:38 05:22 11.21
HALF 08:40:32AM 01:10:29 03:43 05:26 11.05
25K 08:53:54AM 01:23:51 13:22 05:31 10.89
30K 09:10:33AM 01:40:30 16:40 05:22 11.20
35K 09:26:50AM 01:56:47 16:18 05:15 11.45
40K 09:43:59AM 02:13:56 17:09 05:32 10.88
Finish 09:51:35AM 02:21:32 07:37 05:35 10.76

2016年10月2日日曜日

明日はノーベル生理学・医学賞

気がついたら明日はノーベル生理学・医学賞の発表である。「ノーベル賞を誰が取るだろうか」の床屋談義であるがネットが広がると同時に一旦すごい勢いで広がった時期があるが、ここ3年くらいは一時の多様性は失われて定型的な話題を提供する一部のサイトのみが勢いがあるようだ。

すごい勢いで広がった時期というのはちょうど2ちゃんねるが勢いを出してきたころである。結構まともな人達が話題を提供していたので、とても面白かった。小生など全く知らない領域の大御所の話など拝聴できて楽しかった。

今では残念ながらあまりおもしろい話題がない。

あまり名前の知られていない研究者の研究を世界に広げるサイト・話題提供者としては、結局ノーベル財団がもっとも一番インパクトのあるということになる。権威を維持するには予想不可能性というのがある程度は必要だ。

後出しジャンケンなら誰でも勝つ。後医は前医に勝る(業界以外の方に説明すると、患者をあとから診た医者のほうが、先に診た医者よりたいていの場合正確に診断する・・・という意味です)。

さてここ数年でいえば大村 智氏屠 呦呦氏のことを予想していたヒトがどれだけいるだろうか?(屠 呦呦といえば彼女の名前を表す漢字すら最近まで存在しなかった、少なくとも日本のネットの上では・・・)

「海馬における場所細胞を発見し、それらがシータ位相歳差の形成という形で時間符号化を行なっていることを発見した」というジョン・オキーフ、マイブリット及びエドバルド・モーセル夫妻のことをどれだけのヒトが知っていただろうか?

だから今年も意外な成果に心を揺るがすことになるかもしれない。

一方でそろそろ「ゲノム・プロジェクト」にあげなさいよと言いたい。関係者が死んじゃうよ。もう15年以上経つのだし、その後の医学生物学への貢献は誰もが認める研究でしょう。

小生に言わせればオプジーボよりはウイルス肝炎に対する経口治療薬の開発のほうがよほどインパクトがある(治癒に至る患者数の絶対的な差である。 オプジーボでは結局治らないがソバルディやレベトールでは多くが救われそうである)PD-1そのものは素晴らしい発見であり本庶先生にはぜひ受賞していただきたいが、オプジーボが存在するがゆえにノーベル財団は受賞を手控えるとみるのが冷静な見方だと思うのだ。治験以降承認以降の大規模治療ではまだまだ5年生存率すら出ていないこの季節にノーベル賞を出せるわけがないではないか?



2016年8月13日土曜日

オリンピック女子10000m驚くべき世界新記録に感動

エチオピアの24才アルマツ・アヤナがオリンピック10000mで29分17秒45という驚異的な記録を出して優勝した。ボクはこのレースをテレビで見ていたが途中から全く目が離せなくなった。すべてが尋常ではなかった。5000mまでのタイムも良かったが残り4800で飛び出したアヤナの走りは強烈の一言であった。駆け引きなどなく終始トップスピードで駆け抜けていく。カモシカのように長い手足で風を切る走りであり、ストライドも長ければピッチも速い速い速い!!!。 

2位以下の選手が全くついていけないレースなので通常このような破壊的レースではトップが最後はメロメロになるか、あるいは2位以下が牽制しあい結局レースとしては平凡なものになりがちであるが、昨日のレースは違った。アヤナは生涯で二度目の10000mのレースを最後までトップスピードで駆け抜け世界新記録を23年ぶりに塗り替えたのだ。 

後半5000mのスピードを振り返ろう。 

アヤナは14:30.64で走ったが、このタイムはなんと女子5000mオリンピック記録(OR)よりも速いのである。このオリンピック記録はルーマニアのサボーが2000年9月25日にシドニーオリンピックで出した14分40秒79である。「ガブリエラ・サボー」といえばあの時代の長距離女子のレジェンドだったことを思い出す陸上ファンは多いことだろう。 

14:30.64とはどんなタイムなのか?現時点で5000m世界歴代35番目の記録である。これを前半14:46.81で走ったのちに出すのであるアヤナ選手は。ついでだからウンチクをもう一つ。先に述べたサボーの5000m生涯ベスト記録は14:31.48(Berlin 01.09.1998)であるが、今回アヤナの後半の記録はこれよりも速いのである。もう申し上げる言葉も無い。 

 さて彼女の最後の400mのラップタイムは68秒、最後の100mが17秒であった。(このあたりは小生テレビの画面の時計で計測したので多少の誤差はお許し下さい)

なおこのレースは10000mの歴代20傑に新たに7名が名乗りをあげるという素晴らしい試合だった。アヤナに引っ張られた結果であろう。鈴木亜由子は千載一遇のこのレースを経験すべきだったと残念でならない。欠場は返す返すも残念だ。 

さて世上喧しいのはドーピング問題だ。ボクはアヤナがドーピングに染まっているとは思わないが、当然時節柄検査はしっかりクリアして欲しい。 このレースが歴史的であるのはあの馬軍団の王軍霞が1993年に出した29分31秒78が23年ぶりに破られたレースであるからだ。王軍霞の記録は永遠に破られない不滅の記録と考えられていたし長距離でのドーピング疑惑でずいぶん有名になった。このエチオピアの24歳もドーピング検査をクリアしなくてはならないが、早速報道陣による辛辣な取材が続いているらしい。 

彼女の返答はこれだ。I’m crystal clear.” 

ちなみにアヤナの5000mのベストは今年二月に出した14:12.59であり(世界第二位の記録:ちなみに5000mの世界最高記録は今回10000m銅メダルのディババが持つ14:11.15)、アヤナはこのオリンピックでは5000mにもエントリーしているが16日の決勝が楽しみである。またこのレースには我が鈴木亜由子さんも出場するという。頑張って欲しい。

2016年7月11日月曜日

NEJMのイメージ:日本からDubin–Johnson症候群

Images in Clinical Medicine

Dubin–Johnson Syndrome

Kazuhiko Morii, M.D., Ph.D., and Takeharu Yamamoto, M.D.
N Engl J Med 2016; 375:e1July 7, 2016

久しぶりに投稿してみたい。

胆石術前に気が付かれたDubin–Johnson症候群の一例である。

ラパロ術中の肝の色調がリアルである。

姫路赤十字病院内科の山本岳玄さんらによる投稿である。










Kazuhiko Morii, M.D., Ph.D.
Takeharu Yamamoto, M.D.
Japanese Red Cross Society Himeji Hospital, Himeji, Japan

2016年3月12日土曜日

Lee Sedol とアルファ碁の対局:本日土曜日の第三選で雌雄が決する

小生がここ数日気もそぞろで落ち着かないのはLee Sedol とアルファ碁の対局が報道されているからだ。「アルファ碁」というのはDeep Mindの人工知能でありGoogleの作った囲碁のソフトウェアである。Lee Sedolは韓国人であり、現在の世界囲碁チャンピオンである。小生はほとんど碁を打ったことがないに等しい。大学生の頃数年親しんだくらいの経験で言わせてもらえば・・・

このボードゲームをやると「大局観」とか「木を見て森を見ず」などという言葉が実にリアルな実感を持つことがわかる。自分が勝っているのか、負けているのかわからない。桶狭間ではどうも分が悪いから、しばらく川中島で戦ってみるか・・・という局面の選択展開が可能な面白さがある。

小生はパーソナルコンピュータの発達とともに生きてきたから、この究極のゲーム「囲碁」が「こんなに早く」人間の知能を打ち破る時代がくることが感慨深い。まあ信じられない。

最初はオセロだった。1980年代のパソコン雑誌ではオセロソフトの開発でコンテストがしょっちゅう開かれていた。じきにオセロソフトは完成した。

次はチェスだった。忘れもしない1997年のフィラデルフィア。当時世界チャンピオンだったカスパロスがIBMの「Deep Blue」 に敗れた「事件」である。

当時はそこで終わりだろうと思われていた。将棋やましてや碁は複雑すぎてコンピューターでは無理だろうと思われていたのである。

それでも将棋のソフトは地道に進化していった。今では将棋ソフトは将棋のプロと対等かそれ以上のレベルに到達している。しかし5年前でも、それでも「碁」は無理だろうと皆は思っていた。しかし人工知能は着実に進歩していたのだ。

今回の進化は2012年ころに「我々一般人」には意識されるようになった。小生にはアメリカのクイズゲームでワトソン君が全米チャンピオンを破ったことが大きなイベントだった。

小生が驚いたのはワトソンの「知識の量」ではない。リアルに人間の声(アナウンサーの問題文)をコンピューターが理解し、論理的に解釈し、正しい答えをスタンドアロンのコンピュータが見つけ出し(ワトソンはネットに繋がっていない) 、そして「人間の声で」解答を読み上げるというシステムである。これを全米チャンピオンよりも速くやってのけるのである。これはすごい。

そして2016年の今、コンピュータは囲碁チャンピオンと戦っている。5戦行われるその予定は以下の通り。


  • Wednesday, March 9: First game
  • Thursday, March 10: Second game
  • Saturday, March 12: Third game
  • Sunday, March 13: Fourth game
  • Tuesday, March 15: Fifth game
すでに人間は2敗している。本日土曜日の第三選で雌雄が決まる。

このチャンピオンの戦い終えた感想をリアルに追っていくのは我々の大事な儀式と思うが如何?


ここに色々な方々の感想が載っている。


全5戦のうち一勝くらいはして欲しいが・・・ でもきっと完敗するような気がする。

人類の一員として、見て見ぬふりをするわけにはいかない。

しかと腰を据えて見届けようではないか!皆の衆。

今回の戦いは確実に「Before and After」というククリになる。 

なにが言いたいか? つまりこうである。人間がコンピュータより優れていた時代をリアルに実感できない子どもたちが今後は確実に登場するということである。

生まれた時から人間はNo.2にすぎないというリアリティである。悲しいことである。しかしこれが現実である。

2016年3月3日木曜日

(private memo)エクアとあと一剤何を使うか?

ビグアナイドを選んでいる小生である。

























2016年2月26日金曜日

東大の2016年入試生物にHans Cleversが登場

国語の問題に内田樹が登場したとnoteしたが、同じ2016年の生物にHans Cleversの Lgr5の最初の論文とほぼ同じ内容の出題がなされた。現代の大学入試の内容が極めてアップデートであることには驚くしかない(まあ発表から9年たってはいるが)。

小生がこの東大の問題が感慨深いのは当ブログの初回投稿内容が当時発表されたばかりのLgr5論文そのものだったからである。
 
Identification of stem cells in small intestine and colon by marker gene Lgr5
Nature 449, 1003-1007 (25 October 2007)


東大の入試問題では題材はLgr5と書いてある。実験対象はマウスの小腸である。さすがにCre-Loxという名前は出てこない(酵素Cに領域Lだってさ!)。オリジナルではタモキシフェン誘導で遺伝子改変が行われるが、さすがに入試では化合物Tと表現されている。

大仕掛のコケオドシ的大舞台が設営されているが、問題そのものはあまり豊かなものとは言えない。当然とはいえ入試ではLgr5の生物学的面白さは捨象されているわけだし、そうなると単なる分子生物学実験の基礎がわかっていますか?という問題になってしまう。小生としてはあまり愉快ではない。

とはいえLgr5である。出題者は小生と同様の思い入れがあるのだろうと思います。化合物Tねえ。タモキシフェン濃度に私たちは随分こだわったよ、あの頃。

さて受験生は、高校生はこのような問題を楽々と解くのであろうか?そうだとすればすごいね。



























一番上がオリジナルの論文 下3枚の図表が今年の問題の一部である。







2016年2月25日木曜日

東大の2016年入試国語に内田樹が登場



小生がとても好きな物書き(作家でもない、エッセイストでもない。哲学者?思想家? いずれでもあるような気はするが、取り敢えずここでは物書きと言っておく)内田樹氏のことは何度も何度もこのブログで取り上げた。

 ここ一~二年、大手マスコミがこの方の無視を決め込んでいることが、どうにも小生には歯がゆくてならない。マスコミは例の国会前の防衛法案反対ストあたりから自己規制を始めている。


内田さんの本を小生おそらく30 以上読んだが実は最近の新しい書物群(いまでも精力的に出版しているのは知っている)には縁がなかった。

でもネット上にあるいろんなエッセイ(彼のブログ など)は気がつく限り読んでいる。頑張って欲しいと思うし、それ以上に世間が再度内田樹に注目することを期待し念じていた。

 

んな私に驚くべきことが起きた。本日の東京大学の国語の問題文に内田樹の文章が取り上げられたのだ。

東京大学の世間に対する強烈なメッセージと私は受け取った。内田樹を取り上げることが現況下どのような意味があるのか東京大学が意識しないわけがない。一旦取り上げたらどのような捉え方をされるのか大いな る覚悟を持っての出題なのだ。痛快だ。

 

その文章の最後を飾る段落を引用しよう。この反知性人が誰を暗喩しているかここでは問わない。一人かもしれない。複数かもしれない。潜在的受験生である高校生たちにしっかりとこのメッセージ性を受け取ってもらいたいと思うのは小生だけではなかろう。


2016年2月17日水曜日

Flip Signに対するメモ












一方でこんな報告も・・・



2016年2月7日日曜日

ギランバレーを早期に見つけるこつ



  1. 比較的最近(1日から3-4週間以内)始まった脱力。
  2. 脱力は片側よりも両側性であることが多く、左右対称。
  3. 典型なケースでは、脱力は上行性に進行し、「アヒル歩行(鶏歩)」、「階段をのぼれない」、「ベッドや椅子、床などから起き上がるのが困難」などの症状を呈する。
  4. 大腿や腰に生じる痛みなどの疼痛は、GBSの早期徴候で、初発症状となり得る。
  5. 知覚麻痺、刺痛、蟻走感などの知覚異常が早期に起こる。手足や四肢遠位に起こることが多いが、顔や歯肉にも起こることもある。
  6. 深部腱反射の消失または低下は、GBSの顕著な特徴。
  7. 脳脊髄液のタンパク細胞乖離もGBSに特徴的。
  8. ウイルス性またはその他の感染症(上気道炎、のどの痛み、下痢など)の最近の既往は、GBS患者の3分の2に認められる。

知っておくべきギランバレーの8兆候【米国救急医学会】

What Emergency Physicians Should Know About Guillain-Barré Syndrome

早期診断にむけてACEPが紹介
2016年2月4日 (木)  (m3の臨床ニュースより

2016年1月21日木曜日

憩室炎の再発予防のためのヒント

米国消化器学会(AGA)のよる憩室炎の再発防止を目的とした患者向けガイド
【憩室炎の再発予防のためのヒント】
  1. 高繊維食品を摂取する
    研究では、十分な食物繊維を摂取することで、憩室炎の再発を防ぐことができ、将来的の手術を減らすことができると示唆されている。食物繊維の摂取目安は25 g/1日が推奨される。


    Berries. Throw some blueberries or raspberries into a smoothie or stir them into a bowl of yogurt. One cup of berries will add 4 to 8 grams of fiber to your meal.  ブルーベリー1カップで4g~8g

    Beans. Beans and lentils are packed with fiber: each ½-cup serving contains 5 to 8 grams. Take your taco up a notch by adding some black beans to the mix, or try an online recipe for homemade hummus and dip with carrots and celery for some crunchy, satisfying finger food.  豆2分の1カップで5g~8g

    Nuts and popcorn. Contrary to what you may have heard, these foods are fine to eat after you recover. Looking for a way to conquer a sweet-and-salty craving between meals? Pair a handful of nuts or a few cups of air-popped popcorn with a piece of fresh fruit. Three cups of popcorn and a pear, for instance, pack more than 8 grams of fiber together. ナッツあるいはポップコーン:両手分のナッツとポップコーン3カップ分(これに梨一個)で8g

    Green veggies. When eating salad, choose spinach or kale over regular lettuce. Oven-roast asparagus or Brussels sprouts in balsamic vinegar for a delicious addition to dinner. One cup of these veggies contains 4 grams of fiber. 緑色野菜のサラダ:レタスはやめてほうれん草やケールにしよう。1カップ分で4g


     
     
     
     
     
     
     
     
     
  1. 週に90分以上の運動をする
    健康な成人であれば、毎週最低90分の激しい運動、例えばジョギングや水泳、エアロビクスなどを実践する。複数の研究で運動による再発予防効果が確認されている。
  2. 軽症の痛みにはアセトアミノフェンを服用する
    複数の研究により、市販の鎮痛剤(NSAIDs)の中には、再発リスクを上昇させると示唆されている。軽症の痛みにはアセトアミノフェンの使用が推奨される。用法用量を守り、痛みが1週間以上続くようであれば受診すること。
  3. 回復後の大腸内視鏡検査について医師と相談する
    まれに憩室炎が大腸癌の兆候となることがある。癌の可能性を除外するため、内視鏡検査を受けていない場合は、炎症から回復後数カ月以内に医師と相談すること。


【憩室炎患者が医師に尋ねるべき4つの質問】
  1. 「食物繊維が十分摂れているかどうかは、どうしたら分かりますか」
  2. 「炎症が治ったら、激しい運動を始めることができるくらい健康になりますか」
  3. 「アスピリンやその他の鎮痛剤を使ってはいけない理由はありますか」
  4. 「大腸癌ではないことを確かめるため、大腸内視鏡検査を受けるべきですか」

ワーファリン服用者の呼吸苦

ワーファリン服用者の呼吸苦にはこんなケースもあるのだというカナダはトロントからの報告。

N Engl J Med 2016; 374 January 21, 2016

Spontaneous Retropharyngeal Hematoma

Noah Ditkofsky, M.D., and Tarek Hanna, M.D.








INRが11以上である。INRの値というのは高値だからどうだ・・という話でもないようだが、非循環医としてはやはり「ビビる」のが正しい反応だろう。小生の外来でもワーファリンを投与されている患者殿は山のようにいるが、INRチェックが疎かになっている患者殿がいないかどうか気をつけよう。

どうやら挿管はせずに済んだようだ。ICUに4日。急いで凍結血漿を投与している(なんせ
INRが11以上で出血である)。気道であるが気管支鏡所見として「patent airway」と記述されている。この右の写真はかなり危なくみえるが、いい度胸だと思うな。

  • A 56-year-old man presented to the emergency department with a 5-hour history of throat swelling and pain and difficulty breathing that was exacerbated by supine positioning; he had not had any obvious antecedent trauma. His medical history included prostate cancer, hypertension, hyperlipidemia, deep-vein thrombosis, and stroke. Medications included warfarin (presumably for deep-vein thrombosis), antihypertensive agents, and a statin. He was afebrile, and the physical examination was notable for minor swelling of the posterior oropharynx. Laboratory studies revealed a normal white-cell count, an international normalized ratio of more than 11, a prothrombin time of more than 120 seconds, and an activated partial-thromboplastin time of 127 seconds. Radiography of the neck revealed marked soft-tissue swelling that was causing mass effect on the airway (Panel A); the findings on a subsequent computed tomographic scan of the neck were consistent with a retropharyngeal hematoma, which was probably caused by supratherapeutic anticoagulation (Panel B shows the sagittal view, and Panel C the axial view; the arrow in each panel indicates the hematoma). Transnasal laryngoscopy revealed a bulging posterior pharynx but a patent airway. The patient was administered 6 units of fresh-frozen plasma and was admitted to the intensive care unit for observation. His coagulopathy resolved, as did his symptoms, and he was discharged 4 days after admission.