2015年8月22日土曜日

世界陸上2015:男子マラソンの予想

マラソンが好きだったから世界陸上は興味がないわけではないが、昔ほど思い入れがないだけに、実は本朝あるなんて知らなかった。日本時間であと一時間後にスタートである。8月のこの暑さの中を、公害で強烈なスモッグの毒のような環境の中を走るアスリートはご苦労である。最近の世界陸上やオリンピックは半分が耐久レースであるから、マラソンも面白くない。さらにマラソンがそれも男子マラソンが長い大会の初日の最初の種目だというのだからマラソンもなめられたものだ。

選手のコンディションを考えると、このような世界大会は秋にやるべきだ。テレビ視聴率の良いサッカーや(アメリカの)バスケット、アメフトと堂々ぶつかってもいい。秋に正しくやるべきである。こんな体たらくになったのは、遠く米国ロサンゼルスオリンピックからなのだ。高速道路の上を走らせたり、シャワーの下を走らせたりといろいろあったが、過酷すぎて当時の実力者たちは実力を出せなくて敗退した。熱中症の映像で有名になったアンデルセン選手の大会である。マラソン後進国であるアメリカに(特にアメリカのマスコミに)遠慮なんかせずにやれ、やるべきだ。

それとマラソンが全ての競技の王様として別格だった時代を思い出したいものだ。マラソンのゴールが長い陸上大会の閉会式のクライマックスに設定されていた、あの優雅で誇らしい時代を取り戻そう。開会式には聖火ランナーが華を添える。閉会式はマラソンのゴールが有終の美を飾るあの時代だ。

久しぶりにIAAFのホームページを覗いてみたらマラソンのプレビューが載っている。このマラソンの予想記事を日本の大新聞に期待するのはもう無理である。翻ってIAAFやRunner's Worldなどのメディアは変わらず報道内容が従来と変わらない。日本の情報でかつては詳しいホームページがいくつもあったものだが、いまはどうなのだろう。「寺田式陸上競技WEB」なんかは2001年以来5000万ビューの来客を集めているが、数分前、久しぶりに覗いてみたが、今回はあまり熱心ではないようだ。

というわけで IAAFの予想記事を掲載してみる。日本の選手にも言及しているのがうれしい。今井雅人が髄膜炎で出場できなくなったのは残念であるが、藤原や前田には入賞してほしい。

忙しい方々に要約。注目国はケニヤとエチオピアに加えウガンダ(!)が有力あると書いてある。その次に出てくるのが我らが日本である


Preview: men’s marathon – IAAF World Championships, Beijing 2015


Marathons have always been notoriously difficult to predict. Adding to the complexity is that championship marathons are almost invariably run as races in unfavourable conditions while most of the assessable form comes from performances in cooler conditions and often with the substantial assistance of organised pace-making.

One thing that can be said is that the men’s marathon field in Beijing has a hard act to follow. The men’s marathon at the 2008 Olympics was a classic, won by Kenya’s late Sammy Wanjiru in Olympic record time in defiance of both his competitors and the warm conditions.

The men’s marathon will be the first gold medal decided in Beijing, with the race starting at 7:30am on 22 August, the first day of competition. The point-to-point course starts from Yongdingmen Gate and passes such landmarks as The Temple of Heaven and Tian’anmen Square on its way to the finish inside the Bird’s Nest.
Kenya will again have a strong hand to play in another Beijing championship marathon. Dennis Kimetto holds the world record, his 2:02:57 mark set in Berlin last year. Yet he holds little advantage over team-mate Wilson Kipsang.
Kipsang is the previous holder of the world record, the Olympic bronze medallist, and he beat Kimetto in finishing second to Eliud Kipchoge at this year’s London Marathon.
The third member of the Kenyan team is Mark Korir, the winner of this year’s Paris marathon.
So that’s the world record-holder, the immediate past world record-holder and winner of a major big-city race making up Kenya’s three.

Lelisa Desisa looks the strongest of the Ethiopian team. The 2013 world silver medallist, second in Dubai and winner at Boston already this year, he will no doubt be motivated to go one better and break an Ethiopian men’s global marathon drought which goes back to Gezahegne Abera’s consecutive Olympic and World Championships triumphs in 2000 and 2001.
Ethiopia has named four marathoners and has yet to decide its final three. The other possible team members are Yemane Tsegaye, second to Desisa in Boston, Berhanu Lemi, the winner in Dubai at the start of the year, and Endeshaw Negesse, winner of this year’s Tokyo Marathon.
Stephen Kiprotich has proven himself to be a formidable championship racer with marathon victories at the London 2012 Olympics (ahead of 2011 and 2013 world champion Abel Kirui and Kipsang) and the 2013 World Championships (defeating Desisa).
The Ugandan athlete ran a personal best in finishing second in Tokyo this year and has proven he can handle heat and championship racing. If he wins in Beijing it would be three consecutive global championship marathons, an unprecedented feat.
Japan is normally prominent in World Championship marathon running, but has lost the fastest of its selected trio, 2:07:39 man Masato Imai, through illness. With no reserve named, that leaves experienced pair Masakazu Fujiwara and Kazuhiro Maeda as the two Japanese representatives.
Others who could feature include Bahrain’s Shumi Dechasa, European champion Daniele Meucci of Italy and Poland’s Henryk Szost

2015年8月17日月曜日

スクリャービン前奏曲集op11をYuja Wangで・・・


スクリャービンを聴く機会がなかなかない方に聴いていただきたい。

小生の若い頃スクリャービンというと『法悦の詩』という交響曲がかなり有名であり、というか、これが唯一レコード屋さんにあったスクリャービンだったような気がするのだ。法悦の詩というとまだまともだが、元の英語訳はエクスタシーなので随分物議を醸した交響曲だったのだ。

そんなイメージをお持ちのまま年を重ねられたクラシックファンもまた多かろうと思うのだが、実は小生スクリャービンはピアノ曲がすごくすごくよろしいのだということに最近気がついたのだ。

ここ数年小生のお気に入りのピアニスト「ユジャ・ワン」のおかげである。ピアノ曲を知らずにスクリャービンのことを敬遠されるのはもったいないと思う。少なくともショパンが好きな方なら、 スクリャービンのピアノ曲は無視できないと思う。何しろ小生の評価ではショパンを超えている。ショパンに似ているが、ショパンの亜流では決してない「20世紀のもうひとつのショパン」を是非聴いてほしいと思います。

ユジャ・ワンの最初の曲は前奏曲集の作品11のさらに11番であるが、これが気に入ったら前奏曲集全曲揃えてもいいと思う。24曲全てが良い。こんな作曲家がいたのだ。私は幸せな気分です。

2015年8月16日日曜日

お盆の診療は「楽」・・・ではなかった

今年はお盆に働くとことにした。この7日間は休みなしである。さすがに外来は患者さんが少ない。しかし、しかし少ない割には大物がくること、くること。

  1. 28歳女子で右下腹部痛。典型的な虫垂炎の経過であり、また臨床像なのだけど、ダマされてはいけない。卵巣嚢腫の捻転であった。CTでみると10cmの嚢腫の中に歯と思しき石灰像が見える。奇形腫なんだろう。すぐに婦人科へ。


  2. 巨大な腹壁瘢痕ヘルニア(33年前の胆石術創)。あまりに大きすぎてイレウス症状はすぐに収まったけど、そうそう嵌頓など起こしそうにない。今回は手術なしでお引取り頂いた。


  3. 「胆石発作」だとわめきながらやってきた中年女子。早速お腹を診察すると左側腹部に10cmの緊満した皮下腫瘤がある。圧痛はかなりのものだ。左である。??皮膚をよく見るとわずかに傷のあとが。「これどうしたの?」「小学生の時、入院して切ってもらった」「怪我なの?」「いや、腹膜炎だった」・・CTを撮るとこれも立派な腹壁瘢痕ヘルニアであるが、ヘルニア門は小さく、とても用手還納は無理であった。嵌頓であり緊急手術となった。中年女子の名誉のために言えば、確かに胆石の立派なものもございました。



  4.  小生にとって帯状疱疹は極めて日常的な病気の一つである。常時入院治療中の方がいるといってもいいくらいだ。今週入院してきたAさんも上肢の疱疹で典型的な症状なのだが、実は臨床経過が悩ましい。小生にとって初めての経験だ。最近は「帯状疱疹予防ワクチン」というのがある。先月のはじめにNHKの「ためしてがってん」で紹介されてから、当院の周りでも流行しているらしい。ちなみに小生はこれまで投与治療経験はないのである。さてテレビを診てワクチンを打たれた方のなかにAさんはいたのだ。つまりAさんは「帯状疱疹予防ワクチン」接種後の帯状疱疹発症ということになる。ワクチンの添付文書によると副反応としてなんと記述はあるのだ。接種後帯状疱疹の頻度は自然発症と頻度は変わらないとある。しかしねえ、実際にこの方を治療している小生としては、なんとも心境は複雑である。結構症状は重いのだ。絶対にPHNを起こしてはならない。細心の注意で先手先手の治療をするつもりである。


  5. お盆のシーズンには急性胃腸炎が多い。たいていは帰省客である。それもかなりひどい症状でやってくる。連休前まで連日極限まで仕事をして消耗しており、お盆でしかも故郷であるから羽目を外すからなのだろう、若いくせにメロメロである。



  6. Bさんは下肢閉塞性動脈硬化症でながくお付き合いのある方である。左下肢の切断術後の方でもある。右脳梗塞で左不全麻痺もある。そのBさんが「なんだか今朝からろれつが回らなくて」といいながらやってきた。Bさん呂律が回らないといいながら、長くお付き合いのある小生にもその変化がよくわからない。普通と変わらずちゃんとしゃべっている・・・ようなんだが。神経学的検査も一応やった。脳血管イベント後の方であるからなかなか難しいのだが。そこでMRIを撮ると立派な右の新鮮な小脳梗塞である。これには驚いた。むしろこの程度の症状ですんでいることに驚いた。QQ車で地域で一番の脳血管センターに行っていただいた。



  7. そんなこんなで連日入院があり外来があったのだ。結局昨日までの4日間で10人も入院させる羽目となる。全員小生が一人主治医であるから、なかなか消耗する。日曜の今日も今から病棟へ行くが、きっと昨晩の救急で一人二人は入院していることだろう。ちと憂鬱。

  8. おかげで(100%とはいわないが)お盆連休のくせに当院の病床稼働率は95%を割らない。3日前は99%であった。ボーナス特別表彰モノの活躍だと思わないか?


2015年8月15日土曜日

桜島の異変:8月15日の有村坑道伸縮計の変化について

桜島が急激な山体変化を示している。8月15日朝からの変化である。報道ではなかなかつかめない変化を気象庁の資料から探ってみた。

桜島にはその地下に様々な観測坑道が掘られているが、その一つが有村坑道である。この坑道には「伸縮計」が設置されており、桜島山体がきしむと、その変化が観測されるようになっている。下図はその変化が15日の朝9時過ぎから急激に認められることを示している。


























素人にもわかる変化である。遠くない将来にかなりの爆発が起こるのであろうが、住民・近隣諸侯はなるだけ早期の避難が必要と考えたほうが良い。


2015年8月13日木曜日

NEJM image:13歳女子の腹部腫瘤

13歳女子の肥満・腹部膨満である。


Images in Clinical Medicine

Constipation Associated with a Lipoma

C. Lamar Hardy, D.O., and Gilbert Goliath, M.D. N Engl J Med 2015; 373:656August 13, 2015








原発は腸間膜の脂肪腫であり、最終診断はシークエンスによるというのが現代風である。普通これだけ巨大だと「脂肪肉腫」であることが多いのだが、術後はuneventfullであると記述がある。でも心配だな・・・・・。


C. Lamar Hardy, D.O.
Naval Medical Center Portsmouth, Portsmouth, VA

Gilbert Goliath, M.D.
Thomas Memorial Hospital, Charleston, WV









2015年8月2日日曜日

大腿骨骨折を予防するにはプラリア?

大腿骨頚部骨折を毎年何人診ているのだろう?小生が診る病気の中では最も多い病気の一つである。

「病気か?それは」と言われる貴方は認識が低い。これは立派な病気である。骨粗鬆症という病気の最終段階の病態の一つだからだ。この病気の予防をすること、進行を抑えること、骨折に至らせないこと、最悪「First frarture is your last fracture (あるいは

Make Your First Break Your Last

)」 に留めることが肝要だと思うのだ。

骨粗鬆症には通常症状がない。最初の骨折が最初の症状である人は多いこの最初の骨折を「貴方の生涯の最初で最後の骨折にする」ことが現実的には最大の目標となる患者さんは多いということだ。

骨粗鬆症でのKey phraseとして最近の勉強会で教えてもらって気になることば。
  1. 椎体骨折は大腿骨近位部骨折の前兆である
  2. 大腿骨近位部骨折を起こす患者の多くが一年以内に対側骨折を起こす
  3. 母から娘への負の連鎖を断ち切る
これは予防へのキーワード なのだ。1は意味がある。特に無症候性圧迫骨折を腹部単純Xpで認めた場合は、多少厄介でも骨密度を測定して、骨粗鬆症の治療に入ろう。2は意味がありそうであるが、実際には予防薬介入が間に合うかどうかは疑問だ。3は大いに意味がある。遺伝的素因がどれくらいあるかわからないが、予防しなくてはいけない人々の選分にはなる。さらに「骨折母の介護で腰や足を痛める娘」は切実な問題だし。


さて骨粗鬆症の学会が活発である。ガイドラインを頻回に出している。2012年に出したかとおもいきや2015年版も最近出た。御同慶の至りである。

今回のトピックはお薬のことであろう。年々歳々「骨粗鬆症」に有効なお薬は増えていく。専門家でない小生は何を使ったら良いのか本当のところは悩ましいのである。個人的な事情で「プラリア」とは相性が良いので小生の患者さんには「プラリア」が使われることが最近は多い。

「プラリア」使用は気を使う。注射薬だし、高いし、低カルシウム予防のデノタス・チュラブルというほぼ「専用薬」を飲ませなくてはいけないし。しかし小生には相性が良いのである。患者さんに感謝された経験は重いのでこの薬は気に入っている。

だから客観的なこの評価が知りたかった。もちろん「第一三共」の資料は読んでいるが、販売元だから3割増しくらいで間引かないと・・・。

さて 「骨粗鬆症」の薬効には4つのエンドポイントを設けているのが学会である。
  1. 骨密度
  2. 椎体骨折
  3. 非椎体骨折
  4. 大腿骨近位部骨折 
以上を改善できるかあるいは予防できるかというのが指標である。小生に言わせればやはり4が重要である。あ〜だこ〜だ言われても4のリスクを軽減できない薬なら意味がない。それくらい大腿骨折は重い。人生の後半をすっかり変えてしまう。だから4が全てである。そんな見方をしたくなる。最初の骨折を「貴方の生涯の最初で最後の骨折にする」ことが現実的には最大の目標となる患者さんは多いということなんだけど、その際予防薬として4に効果が無い薬はいかがなものかという話である。

自分の母親にどの薬がふさわしいか皆さんならどう考えますかね。

そんななか2015年改定版の評価表である。



























「大腿骨近位部骨折」に対する評価が得られている薬は3種類しかない。
  1. 「プレマリン」 (女性ホルモン)
  2. 「ボナロン」「フォサマック」「ベネット」「アクトネル」(ビスフォスフォネート)
  3. 「プラリア」(抗RANKL抗体)

使いにくい薬なら医師が積極的に使いやすいように誘導することが肝要。プラリアはなんといっても半年に一回打てば良いので楽ではあるが、逆に患者さんを外来に引き止めておくための何らかの理由がない場合(高血圧や糖尿病など)、治療が中断する可能性がある。プラリアは半年に一回打てば良いので楽であるが、デノタス・チュラブルを毎日飲ませなくてはいけないなら、結局同じであろうという意見もあるだろう。

じゃ、何を基準に選ぶの?

そのためのガイドラインということである。私は使いたいと思う薬なら多少厄介でも使う。

Make Your First Break Your Last

 

 

閑話休題 

 


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