2014年1月29日水曜日

低pH刺激だけでiPS様の幹細胞を作成;理研神戸

pH5.7の酸性溶液に25分つけるだけで多能性幹細胞を得る方法が開発された。

神戸理研小保方 晴子さん(Vacantiの名前もあるものの)から画期的発表である。(今気が付いたが、小保方博士'nature'に同時に二報採用されているのでした。)



「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得 (STAP) 幹細胞」 

独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター センター長
戦略プログラム 細胞リプログラミング研究ユニット 研究ユニットリーダー
小保方 晴子 (おぼかた はるこ)


http://www.asahi.com/articles/ASG1Y41F4G1YPLBJ004.html


Nature 505, 641–647 (30 January 2014) 

Received 10 March 2013
Accepted 20 December 2013
Published online 29 January 2014

Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency 
 Nature 505, 641–647 (30 January 2014)

Haruko Obokata, Teruhiko Wakayama, Yoshiki Sasai, Koji Kojima, Martin P. Vacanti, Hitoshi Niwa, Masayuki Yamato and Charles A. Vacanti

Abstract

Here we report a unique cellular reprogramming phenomenon, called stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP), which requires neither nuclear transfer nor the introduction of transcription factors. In STAP, strong external stimuli such as a transient low-pH stressor reprogrammed mammalian somatic cells, resulting in the generation of pluripotent cells. Through real-time imaging of STAP cells derived from purified lymphocytes, as well as gene rearrangement analysis, we found that committed somatic cells give rise to STAP cells by reprogramming rather than selection. STAP cells showed a substantial decrease in DNA methylation in the regulatory regions of pluripotency marker genes. Blastocyst injection showed that STAP cells efficiently contribute to chimaeric embryos and to offspring via germline transmission. We also demonstrate the derivation of robustly expandable pluripotent cell lines from STAP cells. Thus, our findings indicate that epigenetic fate determination of mammalian cells can be markedly converted in a context-dependent manner by strong environmental cues.









刺激として低pHだけなのかというと発展データにこう↓(溶連菌毒素)ある。これからなんだかすごいことになりそうだな。面白い。

A remaining question is whether cellular reprogramming is initiated specifically by the low-pH treatment or also by some other types of sublethal stress such as physical damage, plasma membrane perforation, osmotic pressure shock, growth-factor deprivation, heat shock or high Ca2+ exposure. At least some of these stressors, particularly physical damage by rigorous trituration and membrane perforation by streptolysin O, induced the generation of Oct4-GFP+ cells from CD45+ cells (Extended Data Fig. 9a; see Methods).


次にもう一報

Nature 505, 676–680 (30 January 2014) 

Received 10 March 2013 Accepted 20 December 2013 Published online 29 January 2014

Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency 

 Haruko Obokata, Yoshiki Sasai, Hitoshi Niwa, Mitsutaka Kadota, Munazah Andrabi, Nozomu Takata, Mikiko Tokoro, Yukari Terashita, Shigenobu Yonemura, Charles A. Vacanti and Teruhiko Wakayama

We recently discovered an unexpected phenomenon of somatic cell reprogramming into pluripotent cells by exposure to sublethal stimuli, which we call stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP)1. This reprogramming does not require nuclear transfer2, 3 or genetic manipulation4. Here we report that reprogrammed STAP cells, unlike embryonic stem (ES) cells, can contribute to both embryonic and placental tissues, as seen in a blastocyst injection assay. Mouse STAP cells lose the ability to contribute to the placenta as well as trophoblast marker expression on converting into ES-like stem cells by treatment with adrenocorticotropic hormone (ACTH) and leukaemia inhibitory factor (LIF). In contrast, when cultured with Fgf4, STAP cells give rise to proliferative stem cells with enhanced trophoblastic characteristics. Notably, unlike conventional trophoblast stem cells, the Fgf4-induced stem cells from STAP cells contribute to both embryonic and placental tissues in vivo and transform into ES-like cells when cultured with LIF-containing medium. Taken together, the developmental potential of STAP cells, shown by chimaera formation and in vitro cell conversion, indicates that they represent a unique state of pluripotency.

 以下「理研」のホームページより転載。

図表が豊富なオリジナルHPを読んで欲しいが、たまらず転載してみました。(ご寛恕を)
  • 研究手法と成果

  • 小保方研究ユニットリーダーは、まずマウスのリンパ球を用いて、細胞外環境を変えることによる細胞の初期化への影響を解析しました。リンパ球にさまざまな化学物質の刺激や物理的な刺激を加えて、多能性細胞に特異的な遺伝子であるOct4[9]の発現が誘導されるかを詳細に検討しました。なお、解析の効率を上げるため、Oct4遺伝子の発現がオンになると緑色蛍光タンパク質「GFP」が発現して蛍光を発するように遺伝子操作したマウス(Oct4::GFPマウス)のリンパ球を使用しました。
  • こうした検討過程で、小保方研究ユニットリーダーは酸性の溶液で細胞を刺激することが有効なことを発見しました。リンパ球を30分間ほど酸性 (pH5.7)の溶液に入れて培養してから、多能性細胞の維持・増殖に必要な増殖因子であるLIFを含む培養液で培養したところ、7日目に多数のOct4陽性の細胞が出現しました(図3)。酸性溶液処理[10]で多くの細胞が死滅し、7日目に生き残っていた細胞は当初の約5分の1に減りましたが、生存細胞のうち、3分の1から2分の1がOct4陽性でした。ES細胞(胚性幹細胞)[11]やiPS細胞などはサイズの小さい細胞ですが、酸性溶液処理により生み出されたOct4陽性細胞はこれらの細胞よりさらに小さく、数十個が集合して凝集塊を作る性質を持っていました。次にOct4陽性細胞が、分化したリンパ球が初期化されたことで生じたのか、それともサンプルに含まれていた極めて未分化な細胞が酸処理によって選択されたのかについて、詳細な検討を行いました。まず、Oct4陽性細胞の形成過程をライブイメージング法[12]で解析したところ、酸性溶液処理を受けたリンパ球は2日後からOct4を発現し始め(図3)、反対に当初発現していたリンパ球の分化マーカー(CD45)が発現しなくなりました。また、このときリンパ球は縮んで、直径5ミクロン前後の特徴的な小型の細胞に変化しました。(YouTube:リンパ球初期化3日以内
  • 次に、リンパ球の特性を生かして、遺伝子解析によりOct4陽性細胞を生み出した「元の細胞」を検証しました。リンパ球のうちT細胞は、いったん分化するとT細胞受容体遺伝子に特徴的な組み替えが起こります。これを検出することで、細胞がT細胞に分化したことがあるかどうかが分かります。この解析から、Oct4陽性細胞は、分化したT細胞から酸性溶液処理により生み出されたことが判明しました。
  • これらのことから、酸性溶液処理により出現したOct4陽性細胞は、一度T細胞に分化した細胞が「初期化」された結果生じたものであることが分かりました。これらのOct4陽性細胞は、Oct4以外にも多能性細胞に特有の多くの遺伝子マーカー(Sox2SSEA1Nanogなど)を発現していました(図3)。また、DNAのメチル化状態もリンパ球型ではなく多能性細胞に特有の型に変化していることが確認されました。
  • 産生されたOct4陽性細胞は、多様な体細胞へ分化する能力も持っていました。分化培養やマウス生体への皮下移植により、外胚葉(神経細胞など)、中胚葉(筋肉細胞など)、内胚葉(腸管上皮など)の組織に分化することを確認しました(図4)。さらに、マウス胚盤胞(着床前胚)に注入してマウスの仮親の子宮に戻すと、全身に注入細胞が寄与したキメラマウス[13](YouTube:100%キメラマウス_STAP細胞)を作成でき、そのマウスからはOct4陽性細胞由来の遺伝子を持つ次世代の子どもが生まれました(図5)。これらの結果は、酸性溶液処理によってリンパ球から産生されたOct4陽 性細胞が、生殖細胞を含む体のすべての細胞に分化する能力を持っていることを明確に示しています。小保方研究ユニットリーダーは、このような細胞外刺激に よる体細胞からの多能性細胞への初期化現象を刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency; STAPと略する)、生じた多能性細胞をSTAP細胞と名付けました。
  • 続いて、この現象がリンパ球という特別な細胞だけで起きるのか、あるいは幅広い種類の細胞でも起きるのかについて検討しました。脳、皮膚、骨格筋、脂肪組 織、骨髄、肺、肝臓、心筋などの組織の細胞をリンパ球と同様に酸性溶液で処理したところ、程度の差はあれ、いずれの組織の細胞からもOct4陽性のSTAP細胞が産生されることが分かりました。
  • また、酸性溶液処理以外の強い刺激でもSTAPによる初期化が起こるかについても検討しました。その結果、細胞に強いせん断力を加える物理的な刺激 (細いガラス管の中に細胞を多数回通すなど)や細胞膜に穴をあけるストレプトリシンOという細胞毒素で処理する化学的な刺激など、強くしすぎると細胞を死 滅させてしまうような刺激を少しだけ弱めて細胞に加えることで、STAPによる初期化を引き起こすことができることが分かりました。
  •  STAP細胞は胚盤胞に注入することで効率よくキメラマウスの体細胞へと分化します。この研究の過程で、STAP細胞はマウスの胎児の組織になるだけではなく、その胎児を保護し栄養を供給する胎盤や卵黄膜などの胚外組織にも分化していることを発見しました(図6)。STAP細胞をFGF4という増殖因子を加えて数日間培養することで、胎盤への分化能がさらに強くなることも発見しました。一方、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞[14]は、 胚盤胞に注入してもキメラマウスの組織には分化しても、胎盤などの胚外組織にはほとんど分化しないことが知られています。このことは、STAP細胞が体細 胞から初期化される際に、単にES細胞のような多能性細胞(胎児組織の形成能だけを有する)に脱分化するだけではなく、胎盤も形成できるさらに未分化な細 胞になったことを示唆します。
  • STAP細胞はこのように細胞外からの刺激だけで初期化された未分化細胞で、幅広い細胞への分化能を有しています。一方で、ES細胞やiPS細胞などの多 能性幹細胞とは異なり、試験管の中では、細胞分裂をして増殖することがほとんど起きない細胞で、大量に調製することが難しい面があります。小保方研究ユ ニットリーダーらは、理研が開発した副腎皮質刺激ホルモンを含む多能性細胞用の特殊な培養液[15]を用いることでSTAP細胞の増殖を促し、STAP細胞からES細胞と同様の高い増殖性(自己複製能[16])を有する細胞株を得る方法も確立しました(図7)。この細胞株は、増殖能以外の点でもES細胞に近い性質を有しており、キメラマウスの形成能などの多能性を示す一方、胎盤組織への分化能は失っていることが分かりました。
  • 今後の期待

  • 今回の研究で、細胞外からの刺激だけで体細胞を未分化な細胞へと初期化させるSTAPを発見しました(図8)。 これは、これまでの細胞分化や動物発生に関する常識を覆すものです。STAP現象の発見は、細胞の分化制御に関する全く新しい原理の存在を明らかにするも のであり、幅広い生物学・医学において、細胞分化の概念を大きく変革させることが考えられます。分化した体細胞は、これまで、運命付けされた分化状態が固 定され、初期化することは自然には起き得ないと考えられてきました。しかし、STAPの発見は、体細胞の中に「分化した動物の体細胞にも、運命付けされた 分化状態の記憶を消去して多能性や胎盤形成能を有する未分化状態に回帰させるメカニズムが存在すること」、また「外部刺激による強い細胞ストレス下でその スイッチが入ること」を明らかにし、細胞の初期化に関する新しい概念を生み出しました。
  • また、今回の研究成果は、多様な幹細胞技術の開発に繋がることが期待されます。それは単に遺伝子導入なしに多能性幹細胞が作成できるということに留まりま せん。STAPは全く新しい原理に基づくものであり、例えば、iPS細胞の樹立とは違い、STAPによる初期化は非常に迅速に起こります。iPS細胞では 多能性細胞のコロニーの形成に2~3週間を要しますが、STAPの場合、2日以内にOct4が発現し、3日目には複数の多能性マーカーが発現していることが確認されています。また、効率も非常に高く、生存細胞の3分の1~2分の1程度がSTAP細胞に変化しています。
  • 一方で、こうした効率の高さは、STAP細胞技術の一面を表しているにすぎません。共同研究グループは、STAPという新原理のさらなる解明を通し て、これまでに存在しなかった画期的な細胞の操作技術の開発を目指します。それは、「細胞の分化状態の記憶を自在に消去したり、書き換えたりする」ことを 可能にする次世代の細胞操作技術であり、再生医学以外にも老化やがん、免疫などの幅広い研究に画期的な方法論を提供します(図8)。 さらに、今回の発見で明らかになった体細胞自身の持つ内在的な初期化メカニズムの存在は、試験管内のみならず、生体内でも細胞の若返りや分化の初期化など の転換ができる可能性をも示唆します。理研の研究グループでは、STAP細胞技術のヒト細胞への適用を検討するとともに、STAPによる初期化メカニズム の原理解明を目指し、強力に研究を推進していきます。

http://www.ipscell.com/tag/charles-vacanti/





Paul Knoepflerによるコメントはこちら





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