2014年12月31日水曜日

気になる女声ボーカル

Alexis Cole
Angela Galuppo
Barbra Lica
Diana Krall
Diana Panton
Dinah Shore
Eliane Elias
Francesca Tando…
Halie Loren
Hilary Kole
Jane Monheit
Karen Souza
Karrin Allyson
Laura Fygi
Maci Miller
Malene Mortense…
Nicki Parrott
Sacha
Sally Night
Sarah Lenka
Simone (Jazz)
Simone Kopmajer
Stacey Kent
Yvonne Walter

すべてを聴いたことがあるわけではない。類縁検索したものである。小生は女声ボーカル(ヴォーカルね、本当は)が好きである。ヒトの好みは本当に様々であり、自分と全面的に同じ好みを持ったヒトなど、あたりまえだがやはりいない。
好きな女声ヴォーカリストをふるそうな順に数人書いてみる。


ジョニ・ミッチェル :

最初に「青春の光と影」を聴いたのが中学生くらいであり、その後「ミンガス」「Wild Things Run Fast」が大学生か医者になりたて、2000年を超えてからも「Shine」を買ったなあ・・・映画「いちご白書」の「サークルゲーム」を作ったヒト(唱ったのはバフィー・セントメリー:Galileo Galileiではないよ)ですと紹介すると、あれかと思い出される方もいるだろう。でもジョニ・ミッチェルはその後がずっと凄い。ジャコ・パストリアスとのコラボなどとても良いです。10枚以上持っている。

バルバラ:

唯一好きなシャンソン歌手。この方の唄はとても好きだ。

ナデージュ:

おそらく知っているヒトはほとんどいないだろう。これまで知っているヒトを1人として知らない。でも10枚近く(ほとんど全てのアルバム)を持っている。全く話題にならないヒト。ネット情報もほとんど無い。だから歌っているのが誰なのか、どんな顔をしているのか、今もって小生全く知らない。だいたいフランス人であるかどうかも疑われているらしい。でも、とても好きだ。

クレモンティーヌ:

ここに挙げるのが恥ずかしいくらいの歌手に成り下がってしまったが、初期数枚(1980年台最後くらいか・・?)のフレンチ・ジャズはとても好きで今でも良く聴きます。21世紀になってからは全く買わなくなってしまった。

小生恥ずかしながらSarah Vaughan、Ella Fitzgerald 、Billie Holidayなどは重くて聴かないの。

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私の場合 「これいいよ、と教えてもらって良かった確率は高々二割といったところであろう。だからこそ、同好の志にお誘いしてみたい。今回のリストは比較的新しい人ばかりである。 ほとんど2010年以降のヒトである。20人くらいいるけど、この中に好きな名前が1人2人あれば、ひょっとすると拾いものが紛れ込んでいるかもしれませんよ。

現代はYoutubeの時代であるから、直ぐに確かめに行ける。これはありがたいシステムです。

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年末からお気に入りの曲は「This Happy Madness」という曲である。もともとはボサノバ・ナンバーであるが、それほどメジャーな曲ではないので、多くのシンガーのオムニバス・アルバムには入っていないことが多い。

この曲をクリスマスのころ、上のリストにもあるDiana Pantonの2012年のアルバムで聴いていたら再発見してしまったというわけだ。それ以来Stacey Kentのバージョン、Karrin Allysonのバージョンとお気に入りがどんどん増えて行く。フランク・シナトラがカルロス・ジョビンとコラボしている バージョンも気に入っている。

聴いてみてください。とくにKarrin AllysonのバージョンのYoutubeのCGグラフィックが気に入っている。この曲、英語の歌詞だと恋に舞い上がっている私・・・がその詩情であるが(これはこれで良い歌詞だ)、もともとのポルトガル語の原題は「Estrada Branca」 (白い路)という。その詩情はポルトガル語故に小生には不明であるが、このCGグラフィックが表徴する世界がそれであるなら、これはこれで素敵だと思う。出てくるボールがいとおしい。













緊急時の気道確保について:何歳になってもできるようにね

気管切開についてまとめてみた。小生が気管切開をすることなどめったにないが、でも年に1〜2回くらいは頼まれる。この頼まれるような状況は、待機的であるから、きちんとやりさえすれば問題は無いし、第一患者さんは靜かである。

問題は緊急時なのだ。緊急の気切を最後にやったのはいつだろう?3年くらい前になるだろうか?緊急気切を日常におこなうような医師はそうたくさんはいないと思う。そんな環境にはいない平凡な温和な医療環境にいる今の私のような医師でも、ある日突然そんな状況に遭遇するからこまるのである。医師というのはいきなり修羅場に遭遇し、その修羅場を乗り越え患者さんの命を救わなければいけないこともあるので、そのためにある程度の収入を保障されている部分があると小生など考えている。

気切というのは現状どうとらえられているのだろうか?ネットでみると気が滅入ってくる。最近の話題は緊急時は気切はダメで輪状甲状靱帯穿刺もしくは輪状甲状靱帯切開にせよということみたいである。訴訟や裁判の世界でいろいろかまびすしいようだ。なおここでは気管切開と輪状甲状靱帯切開を区別している。輪状甲状靱帯は通常気管切開する高さより上方にある。ある年齢より上の医師には馴染みがない場所であるが、小生は日常的に患者の頚部を触診することがある場合はその人の輪状甲状靱帯の位置を確認する癖を付けている。ヒトによって雰囲気が違うしね。

気管切開は緊急で死が差し迫っている状態すなわちCICV(can’t intubate, can’t ventilate)には適応にならないとされる。CICVの時には輪状甲状靱帯穿刺もしくは輪状甲状靱帯切開を行うべきとされる。すなわち輪状甲状靱帯切開を行い気管チューブまたは気管切開用のカニューレを入れるのがベストチョイスのようだ。

ミニトラック、トラヘルパーという小道具もある。








上のミニトラックというのは、時々使うことがあったが、緊急時には下のトラヘルパーのほうが良いことになっている(換気量が違う)。こんな小道具も使えるようになっておいた方がよいが・・・・・・・

でも小生など緊急時であれば輪状甲状靱帯切開をいきなり行い、メスで靱帯に切り込み、ついでペアンを突っ込み横・縦・横に広げカニューレをつっこんだ方が、個人的には「楽」だと思う。メスとペアンとカニューレがあればできるので。

気管切開用のカニューレ(細いヤツ)が病院のどこにあるのか、緊急トレイに確実に積んであることをいつも確認しておこう。

経験者が多く語るように、こんな緊急時には消毒も、止血も、麻酔も、清潔さも不要である。一秒でも早く酸素を脳に届けることだけ考えておけば良い。


誰かが書いているが

「できなくてもやらねばならぬ時もあります。あとは腹をくくって、覚悟を決めるだけです。がんばってください。」

まさにその通りである。 

医師の中には「カッターナイフとペアンはポケットに常備している」と述べている方がいる。そんな環境で医業を続けられていることに敬服するとともに今の自分には無理だと思う。

しかしそんな小生であるが何歳になっても、必要とあれば遅れることなく緊急気道確保だけは一発でできるようにしておきたいと思いまとめてみた次第である。






https://www.youtube.com/watch?v=chBsYiza1ik


https://www.youtube.com/watch?v=_HAPbahHUAA
メスとペアン、気管チューブ。JATECで習う方法と同じ。





2014年12月30日火曜日

年末の書棚整理の合併症

年末の書棚整理をこのところやっている。家人からは「捨てろ、捨てろ」の猛チャージを毎年受けつつ生き残ってきた本たちであるので、なんとも愛着が残る本が多い(そうでない本のほうが圧倒的に多いのも事実である。いつか読むだろうと置いてある本)。書棚整理はなかなか進まないものである。あれもこれも読み直しちゃったりするからである。今回はまったのは高田正純さんの二冊の本である。一冊が25年、もう一冊が30年前に出版された本である。面白いのだ。すっごーく面白かった、今よんでも。
 

「ラップトップかかえて世界一周」というのは旅行記です。そしてルポルタージュなのだ。1990年というネット旧約聖書の時代にラップトップで情報を集めながら世界一周をしたのは世界で高田さんが初めてであろう。御本人がそう書いているので間違いない(?)。まずWWWがないから、現在のネットの概念がない。光ファイバー網はない。でもメールとデータベースアクセスは可能である。これを電話回線で行う。音響カプラを持って世界一周なのだ。一分間のアクセスが数百円の時代である。転送速度が遅いので、画面に文字が送り込まれていくのが目で追える時代だったよな、当時は。世界一周の飛行機周遊券だけを買い、あとは出たとこ勝負でホテルの予約から様々な案件をパソコンでやりながらの旅である。当時の最新鋭の技術が「どうだ!」と記述されているが、今読むと実に「レトロ」だったり、そこまで遅かったっけと思ったり、そんなことも出来なかったんだ!、と思いながら、でも高田さん凄いよ、当時のアレでソレだもの。ネット旧約聖書の列王紀といったところである。




一方同じ著者の「データベースを使いこなす」は今を去ること30年前のパソコン体験なのである。30年前のパソコンといえば、マッキントッシュが出たばかり、NECなら8001あるいは8801くらいであろうか。この時代にパソコンでアメリカのデータベースにアクセスしていた、メールチャットを楽しんでいた高田さんのお話である。正直「ラップトップ・・・」ほどの面白さはない。でも当時のチャットと今のLINEのグループはほとんど同じだし、あるいは小生はやらないけどTwitterやFacebookの原型・・・はしっかりそこにあるのだ。高田さんは誇らしげに「ニューヨークのMikeとチャットをやっているところにハンブルグのScwartzが割り込んできた・・・」なんて書いている。「見たことも逢ったったこともない連中だけど気心は知れている」というようなことも。買い直して読むほど面白い本ではないが、NECの9801はまだ出ていないころ、MS-DOSの時代であり、ネット旧約聖書の創世記に近い時代であり「考古学的」に読み直してしまった。

2014年12月29日月曜日

ゲノムシークエンスのギャップを埋めていく努力:nature

今年は私の興味に引っかかってくる論文がとても少なくて残念な年であった。(「おめーが段々ずれてきているだけだよ・・・」といわれるそこの貴方、あなたが全く正しいかもしれない今日この頃である)

 そんな中ヒトゲノムマップに残されたギャップを潰す試みをまとめた論文が最近natureに出た。

Nature (2014)

Received 03 July 2014 
Accepted 30 September 2014 
Published online 10 November 2014

Resolving the complexity of the human genome using single-molecule sequencing 

 Mark J. P. Chaisson, John Huddleston, Megan Y. Dennis,Peter H. Sudmant,Maika Malig, Fereydoun Hormozdiari, Francesca Antonacci, Urvashi Surti, Richard Sandstrom,Matthew Boitano,Jane M. Landolin,John A. Stamatoyannopoulos, Michael W. Hunkapiller, Jonas Korlach & Evan E. Eichle

The human genome is arguably the most complete mammalian reference assembly, yet more than 160 euchromatic gaps remain, and aspects of its structural variation remain poorly understood ten years after its completion. To identify missing sequence and genetic variation, here we sequence and analyse a haploid human genome (CHM1) using single-molecule, real-time DNA sequencing. We close or extend 55% of the remaining interstitial gaps in the human GRCh37 reference genome—78% of which carried long runs of degenerate short tandem repeats, often several kilobases in length, embedded within (G+C)-rich genomic regions. We resolve the complete sequence of 26,079 euchromatic structural variants at the base-pair level, including inversions, complex insertions and long tracts of tandem repeats. Most have not been previously reported, with the greatest increases in sensitivity occurring for events less than 5 kilobases in size. Compared to the human reference, we find a significant insertional bias (3:1) in regions corresponding to complex insertions and long short tandem repeats. Our results suggest a greater complexity of the human genome in the form of variation of longer and more complex repetitive DNA that can now be largely resolved with the application of this longer-read sequencing technology.


 ゲノムプロジェクトが終了して(公的にクリントンが終了)10年が経つが、いまだ正確には人1人の完璧なゲノムシークエンス情報は知られていないのが現実だ。いまだに染色体は1本に繋がっていない。当たり前じゃないか、テロメアやセントロメアの反復配列につきあっているヒマはないんだ、意味ないし、といわれるそこの貴方。貴方はよほどひねているか、あるいはロマンが足りない。 

一番染色体を想像してみてほしい。一番染色体は端から端まで二本鎖DNAが延々と伸びている構造をしている(はずだ)。短腕のテロメアの端から反復配列が延々と続き、やがて最初の遺伝子構造が現れる。しばらく無意味な配列が続き次いで二番目の伝子構造が現れる。そのうち再び反復配列の森林に入り込むがこれがセントロメア配列である。どれくらいの長さ続くのか判然としないが動原体がくっつく部分を越えて長腕側に移りしばらくセントロメア配列が続いたのちに長腕最初の遺伝子が始まり延々と遺伝子が続き長腕最後の遺伝子が現れた後にテロメア反復が続いて一番染色体は終わる。 

この一連の配列にはいまだに配列構造が判明していない欠落部分がいくつも存在するのである。ここがなかなか埋められないのはシークエンスが難しいからだとされる。ゲノム全体ではユークロマチン領域に限定しても160カ所の欠落部分が存在するとされる。(ヘテロクロマチンの欠落は言わずもがなである)

 ゲノムシークエンスが技術的に困難な理由はいくつか知られているが、(1)サブクローンが取れないこと(2)反復配列の存在、は広く知られている。サブクローンとは数百キロbpのヒトゲノムDNAフラグメントが入ったクローニングベクターのことである。サンガーシークエンス(あるいはBAC、 PAC contigでゲノムを橋渡ししながら繋いでいく)するためにはこれを大腸菌で増やさなくてはいけないのだが、大腸菌に害毒を及ぼすシークエスというものがあるらしく、そういった遺伝子を含むクローンは増殖できないのだと説明されている ( toxic cloneの存在)。一方(2)反復配列は数百bp~数キロbpの単位で反復するが、これがシークエンスの端にあるとシークエンスやPCRが不可能となる。特異的にシークエンス開始点を決められない。ヒト染色体は2本あるが、反復配列のタンデムコピー数が違ったりすると全くシークエンスができない。かりにシークエンスできてもアラインメントが取れない。

今回の報告ではそのディプロイド性からくる複雑性を回避するためにハプロイドゲノムでしかも増幅可能なヒト絨毛性腫瘍細胞株(hydatidiform mole:胞状奇胎)をターゲットに選んでいる。 胞状奇胎とは脱核(あるいは核の不活化)した卵子に精子入り込み疑似受精が始まりハプロイドで細胞増殖が進みおおきくなる婦人科腫瘍である。(ブラックジャックのピノコは胞状奇胎由来だったはずだ。) この腫瘍から取られた細胞株があり、これは当然ハプロイド(精子由来)だからテンプレートとしてシークエンスがやりやすいのだ。 ターゲットはユークロマチンであるが、これで160カ所のうち60カ所以上が今回解決した。それでもあと100カ所以上のギャップがあるのだという。 

このような地道な努力には頭を下げたい。埋まってしまえばたわいもない構造・・・も多いのだが、いまだ未知のジャングルが残っているというのは、ロマンではあるが、掻靴掻痒でもある。早く決めてしまってください。

シークエンスレベルで最初の染色体構造が完成する日が訪れることを祈りたい。

追記:

最終著者の講演動画です。Evan Eichler, PhD / Howard Hughes Medical Institute, University of Washington

http://aa314.gondor.co/webinar/resolving-complexity-of-the-human-genome/

2014年12月28日日曜日

心筋梗塞はこわい、大動脈瘤もこわいぞ〜。

年末が近づいている。ますます外来が混んでくる。昨日の外来もお腹が痛い、頭を打った、切った、血が出た・・・と多くの患者さんがやってきた。

そんな患者さんたちの中にAさんが紛れ込んでいた。Aさんは当院は初診で問診票には「のむと胸が苦しい」と書いてある。56歳でバスの運転手。

「昨晩は久しぶりに娘夫婦と飲みまして、ビールを10缶くらいとブランデーを5杯くらい・・・」「眠っていたら夜中の1時頃から吐きたいような、吐けないような・・上腹部が痛くて、水を飲むときつい」とのこと。理学的には季肋部に圧痛がある。過去歴に胃潰瘍があるとのこと。高血圧・糖尿病などはない。常用薬はない。

いつもなら直ぐに内視鏡に案内するところだけど、なんか気になって心電図を撮ってみたところST上昇が僅かにあり、技師が「これcoronary Qではありませんか?」といやなことを言う。直ぐに緊急採血をしたところトロポニンが陽性である。小生たまたま反応を見ていたが4分で強陽性のバンド。

患者はといえば外来の椅子の上で文庫本を読んでいる。こちらの脇の下を冷たい汗が・・・。急いで救急室に運び、簡単に説明した後、酸素を始め、ルートを取ったころ残りの採血が出てくるがAST/ALTが3桁、 CPKは4桁であった。

PCIができる最寄りの病院に救急車で急いで搬送してもらった。長距離バスの運転手さんだというこの患者殿、これを機会に運転止めることを強くお薦めする。今回1人助けた(助かったと思う)が、後日30人のお客の生命が危険に晒されることにでもなれば浮かばれない。

今月は冷えることが多い。

月初めには44歳の腹部大動脈瘤の切迫破裂がやってきた。血管外科に送ったところその日のうちに手術をしてもらったが、開腹時には後腹膜にはかなりの血腫ができていたという。開腹の上グラフト置換であったが、幸い腎下部であり一週間後には退院して、再度当院に現れた。わたしゃ、幽霊をみたような気がしたが、とりあえず一安心である。血管外科には多謝。多謝である。ちなみにこの患者の主訴は「嘔気・嘔吐」であった。CT撮ってよかったという一例であった。臨床はスリリングである。

外来があと二日あるが、つつがなく大晦日を迎えられますように・・・アーメン!

2014年12月27日土曜日

難しく見えるけど好きな数学の問題

  1. 無限の格子上(その座標が整数である点のことです)に、5つの点があります。これらの格子点の中から適当な2個を選ぶと、その2点の中点もまた格子点であることを証明しなさい( 79年京大文系1番)。
     
  2. 『平面上の6つの定点のうち任意の3点が作る三角形の重心と残りの3点が作る三角形の重心を通る直線は、3点の選び方にかかわらず一定の点を通ることを示せ』
     
  3. 自然数5個からなる集合がある。この中から3個取りだし、その和が3の倍数にすることができることを証明せよ。』
この3つの問題の中で一番と3番は親戚のような問題である。3番は誰がみても予想できるように、結果を導くのに特別の知識が必要な問題ではない。それでも予見無く3番を解くのはかなり困難である・・・かもしれない。

この問題自力で解けたら、かなり自信がつくのではないかと思う。 数学の幅が随分広がると思われる。そういう意味では良問である。

姪や甥が今年は大学受験であるが、なかなかこんな問題解いてみろよ、とはいえない。解けるようになって欲しいがね。

2014年12月23日火曜日

史上もっとも引用された論文トップ100:nature

少し前にnatureが史上もっとも引用された論文トップ100なる特集を組んだ。トムソンに依頼して調べた引用データである。これについては、nature digestが日本語の要約を最近掲載したので興味のある方は参照されたい。このリストのトップ100に入るには一万2119回も引用されなくてはいけない。ブログ主なりにいくつか引用してみたい。

Rank: 1 Citations: 305,148
Protein measurement with the folin phenol reagent.
Lowry, O. H., Rosebrough, N. J., Farr, A. L. & Randall, R. J.
J. Biol. Chem. 193, 265–275 (1951).

Rank: 2 Citations: 213,005
Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4.
Laemmli, U. K.
Nature 227, 680–685 (1970).

Rank: 4 Citations: 65,335
DNA sequencing with chain-terminating inhibitors.
Sanger, F., Nicklen, S. & Couslon, A. R.
Proc. Natl Acad. Sci. USA 74, 5463–5467 (1977).

Rank: 5 Citations: 60,397
Single-step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction.
Chomczynski, P. & Sacchi, N.
Anal. Biochem. 162, 156–159 (1987).

Rank: 6 Citations: 53,349
Electrophoretic transfer of proteins from polyacrylamide gels to nitrocellulose sheets: procedure and some applications.
Towbin, H., Staehelin, T. & Gordon, J.
Proc. Natl Acad. Sci. USA 76, 4350–4354 (1979).

以上はほぼ生化学・分子生物学の技術に関する論文である。上から Lowry法、Laemmli法、Sangerシークエンス法、超遠心から我々を解放してくれたRNA分離法、最後はウエスタン法である。

Rank: 10 Citations: 40,289
Clustal W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice.
Thompson, J. D., Higgins, D. G. & Gibson, T. J
Nucleic Acids Res. 22, 4673–4680 (1994).

ランク 10はいわゆる「ホモロジー検索」であり、見つけたDNA配列やアミノ酸配列の系統的意味づけのためのソフトウェアである。Doolittle教授がv-sisとPDGFのホモロジーを初めて発見した技術の現代進化バージョン

Rank: 11 Citations: 38,600
Nonparametric estimation from incomplete observations.
Kaplan, E. L. & Meier, P.
J. Am. Stat. Assoc. 53, 457–481 (1958).

われわれ臨床研究をやっている人間には欠かせないカプラン・マイヤーである。11位とは大したものであるが、最近は引用なんてするのかしら・・・ 
 

ちなみにCoxのregressionも24位で登場する

Rank: 24 Citations: 28,439
Regression models and life-tables.
Cox, D. R.
J. R. Stat. Soc., B 34, 187–220 (1972).

Rank: 12 Citations: 38,380
Basic local alignment search tool.
Altschul, S. F., Gish, W., Miller, W., Myers, E. W. & Lipman, D. J.
J. Mol. Biol. 215, 403–410 (1990).

Rank: 14 Citations: 36,410
Gapped BLAST and PSI-BLAST: A new generation of protein database search programs.
Altschul, S. F. et al.
Nucleic Acids Res. 25, 3389–3402 (1997).

 BLASTはこのあたり・・・

Rank: 19 Citations: 31,904
Detection of specific sequences among DNA fragments separated by gel-electrophoresis.
Southern, E. M.
J. Mol. Biol. 98, 503 (1975).

サザーン・ブロット

Rank: 20 Citations: 30,176
The neighbor-joining method: A new method for reconstructing phylogenetic trees.
Saitou, N. & Nei, M.
Mol. Biol. Evol. 4, 406–425 (1987).

生物種間の進化的距離を示す何らかの尺度(遺伝的多様性など)に従って多くの生物種の進化的関係を表現する「系統樹」を高速かつ効率よく作成できる「近隣結合法」という方法を提案した論文:斉藤成也:(テキサス大学ヒューストン校(現国立遺伝研)根井正利:(現ペンシルベニア州立大学教授)

Rank: 32 Citations: 23,421
The attractions of proteins for small molecules and ions.
Scatchard, G.
Ann. New York Acad. Sci. 51, 660–672 (1949).
 Scatchard法って懐かしくないですか・・?

Rank: 35 Citations: 23,011
Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival — application to proliferation and cyto-toxicity assays.
Mosmann, T.
J. Immunol. Methods 65, 55–63 (1983).

抗ガン剤のテストでこれやっている研究者は多かった・・・

Rank: 36 Citations: 22,899
Helical microtubules of graphitic carbon.
Iijima, S.
Nature 354, 56–58 (1991).

飯島博士の論文はここにきます。発見報告としてはかなり上位に位置します。

Rank: 40 Citations: 21,446
A technique for radiolabeling DNA restriction endonuclease fragments to high specific activity.
Feinberg, A. P. & Vogelstein, B.
Anal. Biochem. 132, 6–13 (1983).

Vogelsteinのおびただしい論文のなかでこの技術報告がトップにくることに驚かれる研究者は多いと思うが、彼がこの論文とシリカで核酸を共沈させる方法論(オリジナル版「エタ沈メイト」である)の報告論文を誇りに思っている旨のエッセイをその昔読んだことがある。技術屋としてのVogelsteinの面目躍如である。

Rank: 44 Citations: 18,489
High-resolution 2-dimensional electrophoresis of proteins.
O’Farrell, P. H.
J. Biol. Chem. 250, 4007–4021 (1975).

 O’Farrellの二次元電気泳動である。

Rank: 48 Citations: 17,220
Clinical diagnosis of Alzheimer’s disease: Report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer’s Disease.
McKhann, G. et al.
Neurology 34, 939–944 (1984).

ヒトの病気に関する論文ではトップに位置する。

Rank: 52 Citations: 17,025
Improved patch-clamp techniques for high-resolution current recording from cells and cell-free membrane patches.
Hamill, O. P., Marty, A., Neher, E., Sakmann, B. & Sigworth, F. J.
Pflug. Arch. Eur. J. Physiol. 391, 85–100 (1981).

 Neher, E., Sakmannによるパッチクランプ法である。電気生理学でノーベル賞。

Rank: 63 Citations: 15,160
Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermostable DNA polymerase.
Saiki, R. K. et al.
Science 239, 487–491 (1988).

SaikiによるPCR法の論文である。この論文でマリスは最後から二番目の著者。サーマル・サイクラーはまだない。どうやってPCRをやっていたと思います・・・皆の衆?

Rank: 67 Citations: 14,934
Isolation of mononuclear cells and granulocytes from human blood.
Böyum, A.
Scand. J. Clin. Lab. Invest. 21, S77–S89 (1968).

リンパ球を分離するのにお世話になった方は多数いることであろう。(今引用するヒトはほとんどいない)

Rank: 78 Citations: 13,881
Use of avidin-biotin-peroxidase complex (ABC) in immunoperoxidase techniques: a comparison between ABC and unlabeled antibody (PAP) procedures.
Hsu, S.-M., Raine, L. & Fanger, H.
J. Histochem. Cytochem. 29, 577–580 (1981).

免疫染色華やかりしころ、このHsuの論文は大流行した。

Rank: 97 Citations: 12,391
Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.
Köhler, G. & Milstein, C.
Nature 256, 495–497 (1975).

ケラーとミルシュテインの論文である。小生若い頃これとHsuには大変世話になった。

以上である。DNAのダブル・ヘリックスの論文などは高尚すぎるのか登場しないのである。
 
 
 

2014年12月14日日曜日

小豆島からNEJM:夕餉のあとの動悸

NEJMのimageには世界各地から症例報告が集まる。「出会い」と「志の高さ」が全てであり、医師としての自分がどこに所属するかは関係ないが、その医師に「志し」が無ければ縁はない。

小生日本からの症例報告には必ず反応するように心がけている(つもり)。今回の症例報告は小豆島・内海病院からである。内海と書いて「うちどみ」とよむ。この内海病院の黒河内和貴医師(現:島根大学医学部総合医療学講座 大田総合医育成センター教授と香川大学医学部内分泌代謝・血液・内科・免疫・呼吸器内科 助教の今滝修医師の報告だ。

NEJMのイメージでは何回か登場する「横隔膜ヘルニア」であるが、心嚢気腫症や腎の内ヘルニアとともに記憶のどこかに止めておこう。

それにしても演目がしゃれている。

Palpitations after Dinner

病歴は一ヶ月だよ。動悸は時には昼飯や朝ご飯のあとにあってもおかしくないだろうに・・・・。あっぱれです。あなた方の勝ちです。(追記:dinnerは必ずしも晩御飯ではないんですね。晩御飯ならsupperか・・・。失礼しました)


それにしてもさすがはNEJMである。数日で23000人からの閲覧を集めて堂々の第二位である


Images in Clinical Medicine

Palpitations after Dinner

Kazutaka Kurokohchi, M.D., Ph.D., and Osamu Imataki, M.D.
N Engl J Med 2014; 371:2320 December 11, 2014



A 76-year-old woman with rheumatoid arthritis, diabetes mellitus, and hypertension presented with a 1-month history of palpitations that occurred only after she had eaten dinner. The sensation was felt at the center of the chest and lasted for 10 to 15 minutes after the meal. An electrocardiogram was unremarkable. A chest radiograph (Panel A) showed a mediastinal shadow (white arrowheads) lateral to the left heart border (black arrowheads). Computed tomography of the chest revealed a left diaphragmatic hernia (Panel B), with the stomach positioned in the thorax (Panel C, coronal view), abutting the left ventricle (Panel D, axial view, arrowheads). The stomach was visibly twisted, a finding consistent with a gastric volvulus. Gastric endoscopy revealed a volvulus, with twisting of the mucosa. After surgical repair of the hernia and volvulus, the palpitations resolved, and at follow-up more than 1 year after surgery, the patient remained free of symptoms. 

Kazutaka Kurokohchi, M.D., Ph.D. Uchinomi Hospital, Shodoshima, Japan 
Osamu Imataki, M.D. Kagawa University, Kita, Japan oima@med.kagawa-u.ac.jp

2014年12月12日金曜日

両側のモンドール病:11例目

2年ぶりにMondor病の患者さんがやってきた。問診票には右乳腺が10日前から痛み、スジが張っているとある。あれ「右」ですか。当院外来でみるMondorは不思議なことに全員左なのだが、この方は右腋窩から乳頭に向かって全長8.5cmの血栓性静脈炎で疼痛と圧痛がある。36歳で当然「乳癌を心配して引きつって」やってきたのだが、「まったく問題ないです。3週間くらいで痛みが取れます」と案内しておいて、念のためエコーを行った。

「この病気うちの病院では10人が10人とも左にできるので、あなたは珍しいですよ」というと「実は右ほどではないけど、左にもあるんです」という。触診で確かに左にも静脈炎がある。ただし右ほど痛まない。両側性である。小生は初めて同時性の両側性Mondor病を診ました。

通算11例目のMondor病であった。

と、ここまでで報告終わるはずであったが、「あのせんせ、こんなスジは他の場所にもできますか?」と最後の最後で問われてなんだか雲行きが・・・・

右の手掌の手関節に近いところ、それと右大腿外側にもあるんだとか・・・

全身性の血栓性静脈炎となるとちと困るが、おそらくそんな大それた病態ではないだろう。元気そうで熱もなさそう。再来してもらうことにした。

NEJM image:食道

サウジアラビアとエジプトからのイメージであるが、内視鏡あるいは切除標本写真が欲しかったと小生は思いますな。










N Engl J Med 2014; 371 December 11, 2014

Images in Clinical Medicine

Esophageal Duplication Cyst

Ahmed Abu-Zaid, M.B., B.S., and Ayman Azzam, M.D., Ph.D.


An otherwise healthy 23-year-old man presented with a 3-week history of difficulty swallowing solid food and associated vomiting. He reported no history of respiratory symptoms or weight loss. A barium-swallow examination showed substantial luminal narrowing of the distal esophagus (Panel A, arrows), and a focal mass effect could be seen anteriorly on a second projection (Panel B, arrows). Computed tomography (CT) of the chest performed after the administration of contrast material showed a well-defined, bilobed, cystic mediastinal mass measuring 7.3 cm by 3.2 cm by 7.0 cm. The mass was contiguous with the distal esophagus (Panel C, white arrows), which was immediately posterior to the mass and was compressed by it (Panel C, with the red arrow pointing to the expected location of the esophagus). Neither internal enhancement nor invasion of surrounding structures was seen on CT. The findings were most consistent with an esophageal duplication cyst. The patient underwent surgical resection of the cyst, and there were no indications of recurrence on a CT image obtained at a 2-month follow-up visit. Esophageal duplication cysts are uncommon, benign mediastinal masses. Most cases are diagnosed in infancy or childhood and involve the distal third of the esophagus. Complete surgical excision is typically curative, since recurrence is rare.

Ahmed Abu-Zaid, M.B., B.S.
Alfaisal University College of Medicine, Riyadh, Saudi Arabia


Ayman Azzam, M.D., Ph.D.
Alexandria University Faculty of Medicine, Alexandria, Egypt

2014年12月10日水曜日

骨粗鬆薬プラリアとの劇的な出会い

この一年骨粗鬆症患者殿へDenosumab(日本名でプラリア)を投与することが多くなった。これはいわゆる分子標的薬の一つであり破骨細胞の形成、作用に不可欠なサイトカインであるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)に作用し、骨吸収を抑制し骨密度を増加する完全ヒトモノクローナル抗体である。

小生、実は当初プラリアの処方には懐疑的であった 。プラリアはモノクローナル抗体であり、ヒトにとってはある種の異種蛋白である。がん治療にモノクローナル抗体を用いることにはある種の妥当性があると考えるが、基本的に良性疾患であり、予防薬(骨折の予防)にすぎない抗骨粗鬆薬に異種蛋白(autoではないという意味である。alloでもいやだという意味)を投与するなどもっての他だと考えていたわけだ。

製薬会社からいくら薦められても「絶対に使わないぞ!」とかたくなに拒絶していた。

転機は今年の初めの腰椎圧迫骨折の Aさんである。骨折を繰り返し疼痛がひどく、リハビリも進まず、本人も鬱気分であるが、対応する小生もうつになりそうであった。正直、朝の訪問がうっとうしくてならなかった。NSAIDsにリリカにノルスパンテープに抗うつ剤を加えても余り効果が無い。整形のドクターに助けを求めても、お手上げであった。

なにか今までにないドラスティックなことをやらなければと思い、ようやく「プラリア」のことを思い出した。痛みにも効くと説明を受けたからだ。

歯科的なことや血液Ca濃度やその他のチェックを済ませて、初めて投与したのが今年の3月の上旬であった。正直怖かった。抗癌剤投与くらいなら全く鼻歌交じりだが、慣れない薬剤を最初に投与するというのは、とても恐ろしい。こわくてこわくてしょうが無い。

驚いたことに一日目、3日目に血清Ca濃度が下がっていく。もちろん経口カルシウム製剤である「デノタス・チュラブル」の投与は併せて行っていたのだ。 Ca濃度が下がっていくということは、粗鬆骨にカルシウムが吸収されていくことを意味している。なにか患者殿の体内でとんでもないことが起こっているような気がしたものだ。

実はその驚きはたいしたことではなかったのだ。最大のおどろきは患者が「痛みが消えた」と告げたことであった。あれだけ憂鬱な表情であった患者が投与3日目を境に、その後9ヶ月目の一昨日の外来まで全く痛みを訴えなくなったのだ。劇的であった。ノルスパンテープを止め、リリカを止め、抗うつ薬を止め、なんとロキソニンまでも止めるのに半月もかからなかったのだ。

そんな症例ばかりではないことも充分承知しているが、でもこの薬存外悪くない。第一半年に一回打てば良いというのが良い。確かに 「デノタス・チュラブル」経口摂取はうっとうしいが、でも患者はカルシウムは喜んで飲んでくれます。

いまではすっかり気に入っているのである。今日は「顎骨壊死」について調べてみた。これ最大の副作用なのだけど、実際どれくらいの頻度なのだろう。オリジナルの論文にあたってみた。2009年の有名な「FREEDOM試験」である。
驚いたことに、この論文では発生件数”0”なのである。 一番下の表であるが、コントロールもDenosumab投与群も(それぞれ3600例〜)一件の発生がないのである。若干安心した次第である。

追記:日本国内第Ⅲ相臨床試験において、歯科・口腔外科領域の医学専門家による中央判定で顎骨壊死と判定された事象が0.1%(1/881例)に認めらた。

さて本論。

N Engl J Med 2009; 361:756-765 August 20, 2009


Original Article

Denosumab for Prevention of Fractures in Postmenopausal Women with Osteoporosis

Steven R. Cummings, M.D., Javier San Martin, M.D., Michael R. McClung, M.D., Ethel S. Siris, M.D., Richard Eastell, M.D., Ian R. Reid, M.D., Pierre Delmas, M.D., Ph.D., Holly B. Zoog, Ph.D., Matt Austin, M.S., Andrea Wang, M.A., Stepan Kutilek, M.D., Silvano Adami, M.D., Ph.D., Jose Zanchetta, M.D., Cesar Libanati, M.D., Suresh Siddhanti, Ph.D., and Claus Christiansen, M.D. for the FREEDOM Trial


FREEDOM試験(Fracture Reduction Evaluation of Denosumab in Osteoporosis Every 6 Months)は、60~90歳の女性で腰椎または股関節の骨密度Tスコアが、-2.5未満(-4.0まで)の7,868例が参加し行われた。

被験者は無作為に、denosumab 60mg群とプラセボ群に割り付けられ、皮下投与が6ヵ月毎に36ヵ月間行われた。

主要エンドポイントは、X線上の新規の椎体骨折。副次エンドポイントは、非椎体および股関節の骨折とされた。

プラセボ群と比べてdenosumab群は、新規の椎体骨折リスク発生が相対的に68%低かった。累積発生率は、プラセボ群7.2%に対しdenosumab群2.3%で、リスク比は0.32(95%信頼区間:0.26~0.41、P<0.001)。

股関節骨折もdenosumab群のほうが、相対的に40%低かった。累積発生率は、プラセボ群1.2%に対しdenosumab群0.7%で、ハザード比は0.60(同:0.37~0.97、P=0.04)。

非椎体骨折もdenosumab群のほうが、相対的に20%低かった。累積発生率は、プラセボ群8.0%に対しdenosumab群6.5%で、ハザード比は0.80(同:0.67~0.95、P=0.01)。

がん、感染症、心血管疾患、治癒の遅れ、低カルシウム血症のリスク増加は認められず、顎骨壊死例やdenosumabの投与有害反応はなかった。




抗癌剤一覧

抗癌剤名

ホルモン

2014年12月7日日曜日

nivolumab:ホジキン病への抗PD-1抗体治療:信じがたい効果-NEJM

抗PD-1抗体の治療効果については多くの報告があるが、今回ホジキン病の報告が出た。普通であれば治療不成功としてBSCに回るような患者さん達にここまでの効能(完全寛解をこの段階から得るのである)が出るとすれば素晴らしい。にわかには信じがたいが、でも本当なのだろう。

3レジメ以上の治療(多くはbrentuximab vedotinもだめだった)に失敗し、自家造血幹細胞移植も失敗したホジキン病患者23名に抗PD-1抗体 [ nivolumab ](ブリストル・マイヤーのOpdivo)を投与したところ87%(20名)に治療効果を認め、17%(4名)にCR(complete response)、70%(16名)にPR(partial response)を認めたというものである。フォローアップは40週。

なおPD-1のオリジナリティーは京都大学 本庶先生の教室から1992年に石田さんが発表された下記論文に由来する。












  • Abstract The classical type of programmed cell death is characterized by its dependence on de novo RNA and protein synthesis and morphological features of apoptosis. We confirmed that stimulated 2B4.11 (a murine T-cell hybridoma) and interleukin-3 (IL-3)-deprived LyD9 (a murine haematopoietic progenitor cell line) died by the classical type of programmed cell death. Assuming that common biochemical pathways might be involved in the deaths of 2B4.11 and LyD9, we isolated the PD-1 gene, a novel member of the immunoglobulin gene superfamily, by using subtractive hybridization technique. The predicted PD-1 protein has a variant form of the consensus sequence found in cytoplasmic tails of signal transducing polypeptides associated with immune recognition receptors. The PD-1 gene was activated in both stimulated 2B4.11 and IL-3-deprived LyD9 cells, but not in other death-induced cell lines that did not show the characteristic features of the classical programmed cell death. Expression of the PD-1 mRNA in mouse was restricted to the thymus and increased when thymocyte death was augmented by in vivo injection of anti-CD3 antibody. These results suggest that activation of the PD-1 gene may be involved in the classical type of programmed cell death. 



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Nivolumab (anti-PD-1; BMS-936558; ONO-4538) 

  • 小野薬品の説明によると・・ニボルマブは、2005年5月に、当社と米国メダレックス社が締結した共同研究契約に基づき創製された完全ヒト型抗PD-1抗体です。その後、メダレックス社が2009年にブリストル・マイヤーズスクイブ(以下、BMY社)に買収された際に、この抗PD-1抗体の北米における開発・商業化権はBMY社に継承されました。そして、2011年9月に当社とBMY社が締結した戦略的なライセンス契約において、当社はニボルマブについて北米以外の地域のうち、当社が開発・商業化の権利を留保する日本・韓国・台湾を除く全世界において独占的に開発・商業化する権利をBMY社に供与しました。


ホジキンに関してはこの治療薬が抗免疫フェースでの効果以外の機構がありそうでもあるが、いずれにせよ素晴らしい。

2014年は免疫治療の年であった。


December 6, 2014

PD-1 Blockade with Nivolumab in Relapsed or Refractory Hodgkin's Lymphoma

Stephen M. Ansell, M.D., Ph.D., Alexander M. Lesokhin, M.D., Ivan Borrello, M.D., Ahmad Halwani, M.D., Emma C. Scott, M.D., Martin Gutierrez, M.D., Stephen J. Schuster, M.D., Michael M. Millenson, M.D., Deepika Cattry, M.S., Gordon J. Freeman, Ph.D., Scott J. Rodig, M.D., Ph.D., Bjoern Chapuy, M.D., Ph.D., Azra H. Ligon, Ph.D., Lili Zhu, M.S., Joseph F. Grosso, Ph.D., Su Young Kim, M.D., Ph.D., John M. Timmerman, M.D., Margaret A. Shipp, M.D., and Philippe Armand, M.D., Ph.D.




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ASCT:autologous stem-cell transplantation

ブレンツキシマブ ベドチン(brentuximab vedotin)は抗CD30モノクローナル抗体に微小管阻害薬のモノメチルアウリスタチンEが結合した分子標的治療薬であり、アドセトリスAdcetris)として武田薬品から販売



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2014年12月5日金曜日

1千億フレーム/秒のシングルショット超高速圧縮写真撮影法:nature 最新号

医学生物学情報を補完するためにnatureを読んでいるが、時にとんでもなくスリリングな情報に出会うことがある。

今回のこの「1千億フレーム/秒のシングルショット超高速圧縮写真撮影法 」ってなんか凄くない?

10 11 フレーム/秒というが光の速度は3 x 10 11 mm /秒なのでワンショットで3 mm進む光が捉えられることになる(はずだ)(というようなことは瞬時に計算できる)これって凄くない?

でももっと凄いのは下の三番目の光より速い非情報伝搬(すなわち光の速度よりも速く見えるが情報を伝達できない運動)
を可覗化するという記述である。SF的で今話題の映画Interstellarのようで愉しくない?


この図解が「光より早い移動」と「情報が伝達できない」状況を示しているらしい。この単純な実験系と説明についてお分かりの方がおられたら説明してください。私にはなんのことやら・・・・

 



















Nature 516, 74–77 (04 December 2014) 

Received 23 June 2014
Accepted 17 October 2014
Published online 03 December 2014

Single-shot compressed ultrafast photography at one hundred billion frames per second 

 Liang Gao, Jinyang Liang, Chiye Li  & Lihong V. Wang

以下日本語要約である。

速い撮像速度で過渡的なシーンを捉えることは、写真家の念願であった。初期の例として、1878年の走る馬の有名な記録や、1887年の超音速の弾丸の写真がある。しかし、飛躍的進歩の実現には、20世紀後半になって10 5 フレーム/秒を超える超高速撮像が実証されるまで待たなければならなかった。特に、電荷結合素子(CCD)や相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術を利用した電子撮像センサーの導入が高速写真撮影に大変革を起こし、最高で10 7 フレーム/秒の取得速度の実現が可能になった。これらのセンサーが広範な影響を及ぼしたにもかかわらず、CCDやCMOS技術を用いたフレームレートのさらなる増加は、オンチップ記憶速度や電子的読み出し速度によって根本的に制限されている。今回我々は、最高10 11 フレーム/秒で非反復的時間発展事象を捉えることができる圧縮超高速写真撮影法(CUP)という二次元動的撮像法を実証している。既存の超高速撮像法と比較すると、CUPには、単一カメラスナップショットで x y t x y は空間座標、 t は時間)シーンを測定することにより、数十ピコ秒の時間分解能で過渡事象の観察が可能になるという顕著な利点がある。さらに、従来の写真撮影法と同様に、 CUPは受光専用なので、他の超高速シングルショット撮像装置に必要な特殊な能動照明は不要である。従って、CUPは、蛍光体や生物発光体などのさまざま な発光体を撮像することができる。

我々はCUPを用いて、単一レーザーショットのみで、
  1. レーザーパルスの反射と屈折、
  2. 2つの媒質における光子の競争、
  3. 光より速い非情報伝搬(すなわち光の速度よりも速く見えるが情報を伝達できない運動)
という4つの基礎物理現象を可視化している。CUPの能力を考えると、生 物医学研究など、基礎科学と応用科学の両方で広範な応用が見いだされると我々は予想している。 





2014年11月29日土曜日

Snap diagnosisが可能かもしれない腹単:NEJMのimage

この写真であるが当ブログでは何回か登場する腹単パターンである。
スナップ診断が可能であろうか?  


















































Images in Clinical Medicine 

N Engl J Med 2014; 371:e34November 27, 2014

Emphysematous Pyelonephritis

Chih-Yen Chen, M.D.
Taipei Medical University, New Taipei City, Taiwan

Chi-Jen Chen, M.D.
Shuang Ho Hospital, New Taipei City, Taiwan



  • A 67-year-old woman with diabetes and poor glycemic control who had recently been treated for pyelonephritis presented to the emergency department in septic shock. She had a 2-day history of fever, flank pain, lethargy, and confusion. Blood tests showed leukocytosis and hyperglycemia. Urinary microscopy revealed pyuria. A scout image was obtained with the use of unenhanced computed tomography. The image revealed extensive gas collection in the parenchyma and perinephric space of the left kidney (arrows) and the left renal vein, with corresponding hydronephrosis and hydroureter. These findings and her symptoms suggested emphysematous pyelonephritis. Immediate radical nephrectomy was performed. Escherichia coli was found on blood cultures, and a course of piperacillin–tazobactam was administered. Despite intraoperative perforation of the bladder, which required surgical repair, the patient had a good postoperative recovery and remained well after the completion of antibiotic treatment, with good glycemic control. Elevated tissue levels of glucose in patients with diabetes may create a more favorable environment for gas-forming bacteria.

最初に当ブログに登場したのはもっと派手な症例である。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーワードは重症糖尿病である。

2009年7月25日土曜日

尿路系の気腫??



さらには種々の臓器の危ない気腫として集めた・・・

2014年1月11日土曜日

気腫のコレクションにはこんなのもあります。




2014年11月27日木曜日

すごい!natureに免疫治療論文が5報:PD-L1関連の臨床免疫

今週号のnatureはPD-1、PD-L1で百花繚乱である。natureに免疫治療論文が5報も連続で載るなんて空前絶後であろう。
臨床免疫だからすごいのである。これまで地道に免疫やってきた研究者からすれば感無量である。



Volume 515 Number 7528  27 November 2014


まずエディターによるサマリー

Cancer: Antitumour immunity gets a boost


  1. MPDL3280A (anti-PD-L1) treatment leads to clinical activity in metastatic bladder cancer がん:MPDL3280A(抗PD-L1抗体)治療は転移性膀胱がんに対する臨床活性につながる) 

    The results of a clinical phase I study in metastatic urothelial bladder cancer treated with the MPDL3280A antibody show that expression of PD-L1 on tumour-infiltrating immune cells is relevant for the therapeutic response.Thomas Powles, Joseph Paul Eder, Gregg D. Fine et al.

    過去30年間、転移性尿路上皮膀胱がん(UBC)の治療には大きな進歩がなかった。今もなお、化学療法が標準的な治療である。患者の転帰は、特に化学療法 が有効でない、あるいは忍容性が低い場合に不良である。UBCの特徴の1つに体細胞変異率が高いことがある。こうした変化により、抗原の数が増加するた め、腫瘍細胞を異物と認識する宿主免疫系の能力が高まる可能性がある。しかし、これらのがんは、腫瘍微小環境にPD-L1(programmed death-ligand 1;別名CD274またはB7-H1)を発現させることで、免疫系による監視や根絶を回避する可能性もある。従って我々は、全身性のがん免疫療法薬である 抗PD-L1抗体MPDL3280Aの転移性UBCに対する治療効果を検討した。MPDL3280Aは、高親和性改変ヒト抗PD-L1モノクローナル免疫 グロブリンG1抗体であり、PD-L1と、PD-1(PDCD1)およびB7.1(CD80)との相互作用を阻害する。PD-L1は活性化T細胞に発現し ているため、MPDL3280AにはFcドメインを修飾する改変を加えて、臨床的意義のある投与量での抗体依存性細胞傷害を除去し、PD-L1を発現する T細胞の枯渇を防止している。本論文では、MPDL3280Aの転移性UBCに対する注目すべき効果を示す。反応は迅速に現れる場合が多く、その多くが最 初の反応評価時点(6週間)で見られ、ほぼ全ての症例でデータカットオフ日まで継続した。この第1相拡張臨床試験は、バイオマーカー陽性の被験者を多く含 むコホートを許容する適応的デザインになっており、PD-L1陽性の腫瘍浸潤免疫細胞が見られる腫瘍が、特に高い反応率を示すことを実証した。さらに、 MPDL3280Aは腎毒性がないなど毒性プロファイルが良好であるため、高齢で腎障害が見られることの多いUBC患者では、化学療法よりも MPDL3280Aに対する忍容性が高いと考えられる。これらの結果は、MPDL3280AがUBC治療に重要な役割を果たす可能性があることを示唆して いる。MPDL3280A は、2014年6月に米国食品医薬品局(FDA)から画期的治療薬の指定を受けている。
     
  2. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patientsがん:抗PD-L1抗体MPDL3280Aに対するがん患者の反応の予測相関) 

    Clinical and correlative biomarker results from a phase 1 clinical trial in patients with different solid tumours are presented; the findings indicate that PD-L1 expression on tumour-infiltrating immune cells is associated with clinical response to MPDL3280A (anti-PD-L1).
    Roy S. Herbst, Jean-Charles Soria, Marcin Kowanetz et al.

    ヒトのがんの発生は、遺伝的およびエピジェネティックな変化の蓄積を特徴とする多段階の過程であり、こうした変化は腫瘍のプログレッションを駆動してい て、また反映もしている。このような変化によってがん細胞とそれに対応する正常な細胞が区別され、免疫系は腫瘍を異物と認識できるようになる。しかし、腫 瘍が自然に拒絶されることはまれで、それは免疫抑制性の微小環境を維持する能力を持っているからである。多くのがんや免疫細胞で発現しているPD- L1(programmed death-ligand 1;別名B7-H1またはCD274)は、Tリンパ球活性化の負の調節因子であるPD-1(programmed death-1)やB7.1(CD80)に結合することで、「がん免疫サイクル」の阻害に重要な役割を担っている。PD-L1が受容体に結合すると、T細 胞の移動や増殖、細胞毒性因子の分泌が抑制され、腫瘍細胞の殺傷が制限される。PD-L1–PD-1経路は、がんだけでなく、微生物感染においても、エ フェクターT細胞の過剰活性から宿主を保護している。従って、PD-L1の阻害は抗がん免疫を増強すると思われるが、効果の予測因子についてはあまり分 かっていない。本研究では、ヒト化改変抗体MPDL3280Aを使ったPD-L1阻害の安全性、活性、バイオマーカーの評価を設計した。我々は、複数種の がんにおいて、反応(固形がんの治療効果判定のためのガイドライン、バージョン1.1によって評価)が、PD-L1を高レベルで発現する腫瘍を持つ患者 で、特にPD-L1が腫瘍浸潤性免疫細胞で発現しているときに観察されることを示す。さらに、反応はベースライン時の腫瘍検体での1型ヘルパーT細胞(T H 1)の遺伝子発現、CTLA4の発現、フラクタルカイン(CX3CL1)の欠如と関連があった。以上の結果を合わせるとMPDL3280Aは、既存の免疫がPD-L1で抑制されていて、抗体治療によって再活性化された患者で最も効果的であることが示唆された。 
  3. PD-1 blockade induces responses by inhibiting adaptive immune resistanceがん:PD-1の阻害は適応免疫耐性の抑制によって治療反応を誘導する

    The dynamics of T-cell responses are investigated in tumour tissue from patients with advanced melanoma who were treated with a PD-1-blocking monoclonal antibody, revealing that clinical efficacy of the treatment correlates with increased frequencies of pre-existing CD8+ T cells and PD-1 and PD-L1 expression.
    Paul C. Tumeh, Christina L. Harview, Jennifer H. Yearley et al.

     PD-1(programmed death-1)受容体を標的とする治療では、多様ながんの患者で前例を見ないほどの持続的反応率が臨床で見られている。がん組織が宿主の免疫応答を制限する機序の1つは、PD-1リガンド(PD-L1)の発現増加と、抗原特異的CD8 + T細胞上のPD-1へのその結合を介するもので、これは適応免疫耐性(adaptive immune resistance)と呼ばれている。今回我々は、浸潤性腫瘍の辺縁部に局在していることが際立つ既存のCD8 + T細胞が、PD-1/PD-L1免疫抑制経路の発現と関連していること、これによって治療反応性が予測できる可能性があることを示す。我々は、抗PD-1療法(ペンブロリズマブによる)の施行前および施行中の転移性黒色腫患者46人から得た試料について、定量的な免疫組織化学的方法、定量的マルチプレックス免疫蛍光法によって解析を行い、また次世代塩基配列解読法によりT細胞抗原受容体(TCR)を調べた。連続的に試料採取を行った腫瘍では、治療に反応する患者で腫瘍内CD8 + T細胞の増殖が見られ、これはX線撮像による腫瘍サイズの縮小と直接相関していた。治療反応性の患者から治療前に採取した試料では、浸潤腫瘍辺縁部および腫瘍内部にCD8発現細胞、PD-1発現細胞とPD-L1発現細胞が多数見られ、PD-1発現細胞とPD-L1発現細胞が近接していて、よりクローン性の高いTCRレパートリーが見られた。さらに多変量解析により、浸潤辺縁部でのCD8発現に基づいた予測モデルを構築し、15人の患者からなる独立のコホートでこのモデルの正当性を実証した。我々の知見は、PD-1阻害治療後の腫瘍退縮には、PD-1/PD-L1を介する適応免疫耐性によって負に調節された既存のCD8 + T細胞が必要であることを示している。

  4. Predicting immunogenic tumour mutations by combining mass spectrometry and exome sequencing がん:質量分析とエキソーム塩基配列解読の併用による腫瘍免疫原性変異の予測) 

    A combination of genome-wide exome and transcriptome analysis, mass spectrometry and computational structural modelling are used here to identify immunogenic neo-antigens in two mouse tumour cancer cell lines; mice vaccinated with predicted immunogenic peptides yielded therapeutically useful cytotoxic T-lymphocyte responses.
    Mahesh Yadav, Suchit Jhunjhunwala, Qui T. Phung et al.


    ヒトの腫瘍では通常、非常に多数の体細胞変異が見られる。そのような変異を含むペプチドは、主要組織適合複合体クラスI分子(MHCI)上に提示されると、適応免疫系により「非自己」新抗原と認識されると考えられ、免疫原性を持つと予想される。最近の研究では、変異体ペプチドがT細胞エピトープとして機能し得ることが確認されている。しかし、変異エピトープはほとんど報告されていない。それは、変異エピトープの発見には、腫瘍のエキソーム塩基配列解読を行って構築された抗原ライブラリーを患者の腫瘍浸潤リンパ球が認識できるかどうかのスクリーニングを行わなくてはならず非常な労力が必要となるからである。我々は、免疫原性を持つ変異ペプチドの一般的な特徴付けを行うことで、このようなペプチドの発見をより簡単にする方法を探索し、全エキソームと全トランスクリプトームの塩基配列解読解析と質量分析法を併用する手法を開発し、2つの広く使用されているマウス腫瘍モデルで新エピトープを探索した。1300を超えるアミノ酸変化が見つかり、そのうちの約13%がMHCIに結合すると予測され、さらにその一部について質量分析によりMHCIとの結合が確認された。次いで、このようなペプチドとMHCIとの結合を構造的にモデル化した。溶媒に曝露されていて、そのためにT細胞抗原受容体に接近可能である変異が免疫原性を持つと予測された。免疫原性を持つと予測されたこのようなペプチドを個々にマウスに接種すると、治療効果のあるT細胞応答が生じたことから、この手法の妥当性が確認された。この予測から、ペプチドとMHCIデキストラマーの作製も可能になり、これはワクチン接種の前後での抗腫瘍T細胞応答の反応速度論的性質や分布を追跡するのに使用できると考えられる。これらの知見は、適切な予測アルゴリズムは、T細胞応答の薬力学的監視の手法となるだけでなく、がん患者の個別化ワクチン開発にも使える可能性を示している。
     
  5. Checkpoint blockade cancer immunotherapy targets tumour-specific mutant antigens  (がん:がんのチェックポイント阻害免疫療法は腫瘍特異的な変異抗原を標的にする) 

    A carcinogen-induced mouse tumour model is used here to show that mutant tumour-specific antigens are targets for CD8+ T-cell responses, mediating tumour regression after checkpoint blockade immunotherapy, and that these antigens can be used effectively in therapeutic vaccines; this advance potentially opens the door to personalized cancer vaccines.
    Matthew M. Gubin, Xiuli Zhang, Heiko Schuster et al.

    免疫系は発生中のがんの運命に影響を与えるが、それは、細胞を形質転換しやすくさせ、腫瘍の成長を促し、腫瘍細胞の免疫原性を変化させる発がんプロモーターとして機能するからだけでなく、発生中の腫瘍を破壊したり、その拡大を抑制したりする外因性の腫瘍抑制因子としても機能するからである。しかし、免疫能がある人でも臨床的に明らかながんが発生するのは、がんが免疫抑制を誘発することが一因である。多くの人では、T細胞上に発現しているCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte associated antigen-4)とPD-1(programmed death-1)という2種類の免疫調節受容体が、免疫抑制を仲介している。CTLA-4および/あるいはPD-1を標的とするモノクローナル抗体ベースの治療法(チェックポイント阻害療法)は、さまざまな悪性腫瘍の患者に対する持続的反応をはじめ、著しい臨床効果を挙げている。しかし、チェックポイント阻害免疫療法によって活性化されるT細胞の標的として働く腫瘍抗原の正体についてはほとんど解明されておらず、それが、腫瘍特異性の高いワクチンの作製に利用できるかどうかもほとんど分かっていない。今回我々は、ゲノミクスとバイオインフォマティクスの手法を用いて、進行性に増殖する肉腫を持つマウスに抗PD-1療法および/あるいは抗CTLA-4療法を施した後、主要なT細胞拒絶抗原となる腫瘍特異的変異タンパク質を同定し、これらの変異エピトープを組み込んだ治療用の合成長鎖ペプチドワクチンが、チェックポイント阻害免疫療法に匹敵する腫瘍拒絶を引き起こすことを明らかにする。進行性に増殖する腫瘍には変異腫瘍抗原特異的T細胞が存在するが、抗PD-1療法および/あるいは抗CTLA-4療法後に再活性化され、一部は重複するものの大部分は療法特異的な転写プロフィールを示し、腫瘍拒絶を仲介できるようになる。これらの結果から明らかなように、腫瘍特異的な変異抗原はチェックポイント阻害療法の重要な標的となるだけでなく、個別のがんに特異的なワクチンの開発や、異なったチェックポイント阻害療法の作用機序の解明に利用できるだろう。



2014年11月21日金曜日

ゲノムプロジェクトは終わっていない

ヒトゲノムの「シークエンス・ギャップ」を埋める 論文がnatureに登場した。個人的には2014年のトップ3の論文である。

Nature
 /nature13907

Resolving the complexity of the human genome using single-molecule sequencing

  • Received
  • Accepted
  • Published online
  • Department of Genome Sciences, University of Washington School of Medicine, Seattle, Washington 98195, USAMark J. P. Chaisson,・・・John A. Stamatoyannopoulos & Evan E. Eichler 

    • The human genome is arguably the most complete mammalian reference assembly1, 2, 3, yet more than 160 euchromatic gaps remain4, 5, 6 and aspects of its structural variation remain poorly understood ten years after its completion7, 8, 9. To identify missing sequence and genetic variation, here we sequence and analyse a haploid human genome (CHM1) using single-molecule, real-time DNA sequencing10. We close or extend 55% of the remaining interstitial gaps in the human GRCh37 reference genome—78% of which carried long runs of degenerate short tandem repeats, often several kilobases in length, embedded within (G+C)-rich genomic regions. We resolve the complete sequence of 26,079 euchromatic structural variants at the base-pair level, including inversions, complex insertions and long tracts of tandem repeats. Most have not been previously reported, with the greatest increases in sensitivity occurring for events less than 5 kilobases in size. Compared to the human reference, we find a significant insertional bias (3:1) in regions corresponding to complex insertions and long short tandem repeats. Our results suggest a greater complexity of the human genome in the form of variation of longer and more complex repetitive DNA that can now be largely resolved with the application of this longer-read sequencing technology.


    2003年ゲノムプロジェクトが一応の宣言をしたころ、まだ読みきれていない「シークエンス・ギャップ」について世間の関心は希薄だった。小生は研究会や学会に出かけては「隙間をどう埋めるか」質問したものだったが、学会のお偉方の関心は薄かった。染色体は中心と端に極めて冗長な反復配列の塊を抱えている(らしい)ということは数十年前から予想されており、教科書にも載っていた。いろんな色素で染色体を染めると端っこと中央の染色パターンが違う。GCコンテントがリッチである。いろんな呼ばれ方をしていた。アルフォイドとかヘテロクロマチンとか・・・この領域はシークエンスが極めて困難であった。

    1995年頃ベンターがインフルエンザ桿菌のショットガン・シークエンスに成功したころ、小生はこの方法に魅せられてヒトの三番染色体のある領域のシークエンスに取りかかったが、この方法が有効だと思えたのは、ほとんど同時期にBACというクローニング方法が開発・商品化されてきたことによる。先行世代はYACに夢中になっていた。Yeast Artificial Chromosomeである。酵母を使うので研究室の「香り」が奇妙に甘くなる。YACは長いDNAを断片化できるので皆が夢中になったのだが、培養増殖すると組換えを起こすことがしられ始めていて皆が困っていた。勝手にヒトの染色体構造が変化してはこまるわけだ。そこにBACが登場したのである。大腸菌が増やしてくれる。組換えは起こさない。実験室には目的のBACを捜すための96穴プレート数十枚セットが宝物のように配備された。 そのころ創刊されたばかりのHuman Molecular Geneticsの裏表紙にはBAC販売会社(名前を失念した)の広告が毎号のように載っていた。

    この技術を開発したのはShizuya Hiroaki先生であり、小生は下↓のPNAS論文を大事に大事に思って引用していたものだ。Shizuya先生はのちにあのEric Landerのヒトゲノム完成nature論文にも名前が登場するけど、日本ではほとんどしられていないようである。とても残念であり、慶応大学はもっと喧伝してもよいとおもわれるが如何。