2013年7月29日月曜日

壊疽性(気腫性)胆嚢炎の特徴的なCT像

最近とんでもない「壊疽性(気腫性)胆嚢炎」に出くわした。緊急手術で胆嚢摘出を行ったが、翌日敗血症ショックを合併した。幸い回復し退院したから事なきをえたが実際は大変だった。

この患者初診来院時は割と症状が軽かったのだ。確かに胆石と胆嚢炎を示唆してはいたが、理学的にはそれほどの所見ではなかった。 ただCTは異様だった。これはなんなんだ、という所見であった。次の写真はネットで探し出した「壊疽性(気腫性)胆嚢炎」のCT像である。

その次に引用したのはAJRの総説である。結論に書いてあるとおり、胆嚢壁や内腔のガス像が一番特徴的なCT所見なのだ壁のガス像は極めて特徴的で、一度見たら忘れられない所見ではある。




 

 

 

 

 

 

 

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American Journal of Roentgenology  (AJR)

February 2002, Volume 178, Number 2

Featured Articles

CT Findings in Acute Gangrenous Cholecystitis

Genevieve L. Bennett1, Henry Rusinek, Virna Lisi, Gary M. Israel, Glenn A. Krinsky, Chrystia M. Slywotzky and Alec Megibow

Affiliation: 1 All authors: Department of Abdominal Radiology, New York University Medical Center, Tisch Hospital, Rm. HW202, 560 First Ave., New York, NY 10016.
Citation: American Journal of Roentgenology. 2002;178:275-281
ABSTRACT :

OBJECTIVE. The purpose of this study was to determine the CT findings in acute gangrenous cholecystitis.

MATERIALS AND METHODS. Four observers retrospectively reviewed CT scans in 75 patients (23 with acute gangrenous cholecystitis, 25 with acute nongangrenous cholecystitis, and 27 without cholecystitis). The following findings were evaluated: distention, mural thickening, wall enhancement, irregular wall, wall striation, intraluminal membranes, pericholecystic inflammation, gallstones, pericholecystic fluid, enhancement of liver parenchyma, pericholecystic abscess, and gas in the wall or lumen. Sensitivity and specificity of CT for gangrenous cholecystitis and for each finding were calculated. Two reviewers in consensus measured gallbladder dimension and wall thickness. Logistic regression models were used to predict gangrenous versus nongangrenous cholecystitis.

RESULTS. Sensitivity, specificity, and accuracy of CT for acute cholecystitis were 91.7%, 99.1%, and 94.3%, respectively, and for acute gangrenous cholecystitis were 29.3%, 96.0%, and 64.1%, respectively. Findings with the highest specificity for gangrenous cholecystitis were gas in the wall or lumen (100%), intraluminal membranes (99.5%), irregular or absent wall (97.6%), and abscess (96.6%). The difference between the mean gallbladder wall thickness and the short-axis dimension for the two groups with cholecystitis was statistically significant. In three patients with gangrenous cholecystitis, no mural enhancement was seen. Pericholecystic fluid also achieved statistical significance for the diagnosis of gangrene. Multivariate logistic regression analysis showed that the overall accuracy of CT for gangrenous cholecystitis was 86.7%.

CONCLUSION. CT findings most specific for acute gangrenous cholecystitis are gas in the wall or lumen, intraluminal membranes, irregular wall, and pericholecystic abscess. Gangrenous cholecystitis is associated with a lack of mural enhancement, pericholecystic fluid, and a greater degree of gallbladder distention and wall thickening.


2013年7月28日日曜日

がんゲノム研究から学んだこと(5):Cell 誌 Eric Landerの総説

「がんゲノム研究から学んだこと」も5回目となる。ここで「Connecting the dots」が登場する。スティーブ・ジョブスがランダーに影響を与えたのか。

さて今回大事なのは、メラノーマのTERTプロモーター突然変異であろう。70%変異があるというのだ。

暗黒物質の検索も始まったばかりである。これからこの暗黒大陸を探索するリビングストンのような気持ちで報告を待ちたい。



点と点をつなぐこと:癌遺伝子から癌化にいたるまで

ハナハンとワインバーグはこれまで「癌を特徴づけるプロセス」なるものを提唱してきたが、このプロセスとは癌化と転移の過程で必ず異常をきたすものである。ゲノムの安定性、制限のない細胞分裂、増殖シグナルの維持、成長が抑制されることから回避すること、細胞のエネルギー問題、そしてアポトーシスに抵抗することがこのプロセスには含まれる。

古典的な癌関連遺伝子の多くはそのような過程のいずれかに関与するが、たとえばチロシンキナーゼ受容体や細胞分裂サイクル抑制蛋白はそれぞれアクセルを踏み続けること、あるいはブレーキが壊れることといった比喩でその機能が直ちに理解できるのである。 一方新しく見つかった遺伝子の多くはより広いプロセスに影響をあたえているようであるが、癌との関係の詳細はいまだ不明である。これらの腫瘍関連遺伝子は遺伝子発現の変化(クロマチン構造やメチレーションの変化による)、RNAスプライス、蛋白合成と分解あるいは細胞内代謝の変化によって働き始める。このより大きなプロセスの変化は癌化に関連するいくつかの特異的なターゲットに影響を与えることで癌化を促進する。遺伝子を活性化したり抑制したり、mRNAのアイソフォームを変えたり。蛋白の発現レベルを増減させたりして、癌化を促進する。

中核となるターゲットは細胞によって異なるであろうが、これは癌腫それぞれに特徴的なドライバー遺伝子グループによって説明される。 多くの場合我々は真のターゲットについて全く何も知らない。あるいは一つのターゲットを探し求めているのか、複数のターゲットを求めているのかすら、わかっていない。大きなプロセスを変化させる突然変異は相互に依存するターゲットがまとめて影響をうけるという意味で、ひとつの有効な癌化機構となりうる。この事象は染色体が長腕・短腕レベルで増減するイベントによく似ている。染色体の変化も大きなプロセス変化を効率よく引き起こす。ターゲットを完全に調べ尽くすにはDNARNAそして蛋白のバイアスのかからないゲノム研究が求められるところである。もちろん実験系の研究も同時並行で必要だ。 

新しく見つかった遺伝子群をよく知られた(中にはよくわかっていないものもあるが)癌化プロセスと関連づけることが、癌を理解し治療するために必要である。もちろん治療法の発展にそれらすべての理解が必要だとはいわない。たとえば、IDH1/2酵素に対する新しい抑制剤を開拓するのに、2HGあるいはSF3B1に影響を受ける酵素群を全て理解している必要などない ある腫瘍で変異している癌関連遺伝子のリストは強力な分類ツールとなる。更に臨床上ある種のサブタイプに特有の攻撃ポイントを見つけたり、予後予測に役立つ形質を見つけたりするのに役に立つであろう。

さて、概説を締めくくろう:ロングテイルに暗黒物質. 多様性と遺伝性.

これまでのゲノム研究が明らかにしたことの一つは、我々がこれまでに得た癌遺伝子の一覧表が完璧にはほど遠いものであるということである。今問われるべきは「それでは、われわれは最終的に完璧に近いカタログを持つことが可能であろうか?」ということであるが、その答えは正直なところ「わからない」というものだ。 


ロングテイル 

多くの癌腫で数十の癌遺伝子が高頻度に変異しているが、それに加えて変異頻度の低い数多くの遺伝子群が存在する。最近の乳癌のゲノム研究では高率に変異する40カ所が報告され、そのうち53%のドライバー変異とコピー数変異は以下の6遺伝子に集中しており(TP53, PIK3CA, ERBB2, FGFR1/ZNF703, GATA3)、残りは34遺伝子に分散していた。10%以上変異する遺伝子は8個である。多くの癌腫では変異を示す遺伝子は「ロングテイル」分布を示していた。ある癌腫で低頻度変異をしめす遺伝子が別の癌腫で頻度高い変異率を示すこともある。先の乳癌のロングテイル中に存在する遺伝子の例ではSWI/SNF,ARID1A, ARID1B, MLL2, MLL3, KRASがそのような遺伝子である。

以上のような観察から新規ドライバー遺伝子の発見がプラトーに近づいていると考える研究者もいる。逆の意見もあり、ドライバー遺伝子でありながらこれほどの低頻度でしか見つからないのなら、まだまだ未発見のドライバー遺伝子が数多くあるはずだというものである。さらにがんの中にはドライバー遺伝子変異を一つも呈さない例(前立腺癌の例が報告)があることも付け加えておこう。 

この問題の根底には研究精度の未熟さがあるのである。これまでの研究が低頻度の変異を見つける為に必要なサンプルサイズでなかったこと、間質混入によるノイズを除くために必要なだけのシークエンス深度がなされていなかったことが原因である。どんな癌であっても少なくとも2%の症例で変異があるような遺伝子ならば、必要ながんー正常DNAペアさえあればあらゆるがん遺伝子変異を見いだすことは可能である。がんの突然変異が1Mb1個のレベルであれば950個のがんー正常DNAペアが必要となるし、10Mb1個のレベルであれば2500個ペアが必要となる。いずれにしてもここ数年の間に多くの癌腫で充分な精度をもったシークエンス研究は充分可能となろう。 

暗黒物質 

コード領域の突然変異とは対照的に、他のタイプのドライバー変異を発見し理解する我々の能力は極めて限られている。現状我々には解釈のできない領域に多くの重要なドライバー変異が潜んでいそうである。それはコピー数変異であり、染色体変異であり、さらにはノンコード領域のことである。既に述べたように、染色体全長にわたるゲノム増減は多くの癌腫で認められるが、染色体上のどの遺伝子が癌化に関連するのか絞り込んでいくのは極めて困難である。コピー変化が極めて局所的な狭い範囲での増減であったとしても、目的遺伝子を絞り込むのは至難である。様々な癌腫でコピー数変化を調べた研究によると、明らかなるがん遺伝子では半分の例で局所的なコピー数増加が知られている。局所的なコピー欠失はそんなに多く認められるものではない。臨床データがきちんとしたサンプルを用いた研究をもちいれば機能的な変化をももたらす変化を知る助けとなる。たとえば7番染色体を多く持つグリオブラストーマはHGF-MET遺伝子系列の異常と強く関連していることが知られている。薬理学的実験によると7番染色体を多く持ちHGF-MET遺伝子発現の強い培養細胞はより選択的にMETシグナルに依存していることが知られているのだ。

 染色体変化は多くの癌腫で認められるが、その意義を理解することは極めて難しい。突然変異を知るレベルのシークエンス研究では、対象症例から短い配列をシークエンスし、コントロール(参照配列)と比較すれば結果がわかるのだが、染色体あるいはゲノムの組換え等のより複雑な事象を知ろうと思うと、より大きな基礎情報が必要となる。予想も出来ないようなゲノムの再構成をもっと多くデータ化する必要があるし、また融合遺伝子を知るためには、トランスクリプトーム解析も並行して行わなければならない。最近のコンピューター技術の進歩や参照配列を必ずしも必要としない解析ソフトウェアの開発のおかげで、この領域の進歩は著しい。

わかったこと:ほとんどのゲノム改変はパッセンジャー変異であること。しかし中には、活性を持った融合蛋白を介して、あるいは遺伝子に新たな制御機能を持たせることで積極的に癌化に関わるものもある。ゲノム研究が明らかにした融合遺伝子には前立腺癌を初めとするいくつかの癌腫で知られる、RAS、RAF、ERG、PTEN遺伝子を含んだ遺伝子融合である。乳癌ではNOTCH遺伝子融合が報告された。新規遺伝子の発見を示唆するようなゲノム改変イベントは比較的報告が少ないが、発見されたものを見ると、確かに新しい生物学的プロセスの存在を示唆するものがある。乳癌におけるMASTキナーゼであり大腸癌(〜10%)におけるR-spondinファミリーの変異である。 

さてゲノム上で地図の全くない最前線といえば98%をしめる非蛋白コード領域である。 二つの原因で研究がすすまない。これまでの癌研究が(主にコストの問題で)蛋白コード領域に焦点が絞られていたことがその一つである。二つめの理由は遺伝子がない領域における変異を見出す分析手段がなかったことである。 

この領域では癌と関連する変異であるかどうか、ある領域の変異率を詳細に実測し、これがバックグラウンドの変異率よりも高いかどうかを見ていかなければいかない。この手法は蛋白翻訳領域での検討ではよりわかりやすい。というのも非同義性の突然変異を見出していけばよいから。でもそれ以外の領域では、これが難しい。ある程度の範囲でバックグラウンドよりも変異率が高いかどうかを丹念に、しかもバイアスのかからない検索で明らかにしていかなければいけない、そして結果をつなげてゲノムレベルに組み上げる。検討範囲(ウインドウ幅)が小さいと、変異の検出率は下がるので、より多くのサンプル数が必要となる。一方、検討範囲を大きくすると周辺のランダムな変異に影響を受けて検出精度が下がるのである。 

現在のところ最もよいアプローチは生物学的機能がある程度わかっている領域に検索を絞ることであろう。プロモーター部位や進化的に保存されている領域あるいはエピゲノム変異を受けやすい場所が対象となる。 メラノーマの制御部位解析では最近非コード領域での重要な変異を見出されている。TERT遺伝子のプロモーター領域に二カ所の高頻度突然変異部位があるというものだ。TERTはテロメラーゼ構成蛋白のひとつ逆転写酵素をコードすることで知られている。さてこの二つの突然変異ではシチジンからチミジンへの変異が誘導されるが、このためETS転写因子の新しい結合部位がTERTのプロモーターに生じることになるのだ。この変異はメラノーマの70%に、その他の癌腫(膀胱癌や肝臓癌)では16%に認められると報告された。 


あと3ページで終了である。頑張ろう。

音楽評論とは?音大卒でラフマニノフの2番を知らない!?!

音楽を評論することの意義とはなんであろうか?

まずもって、自分の感動を他者に伝えたいことであろうか。そのためには、聴いた音楽を言語化しなくてはいけない。これが難しい。普通はできない。二口三口で言葉がつきてしまう。情けないことに「凄い!」「感動した」「しびれた!」

さて言語化だが、どのような方法があるのだろうか?
  1. 読書感想文のように、訥々と自分の感想を述べる。作品・作曲家の歴史背景も知らない。専門的な音楽用語も、洗練された言葉も持たない。それでも感動が伝わるような文章はあるのだろうと思う。しかし、表現力に限界があるので、多くの多様な音楽それぞれを、ひとつひとつ評論することは相当困難であろう。
  2. 詩に託す。思いを詩の言葉で表現する。 短歌や俳句では短すぎて困難だろうが、詩で表現された音楽が共感されたとき、この共感は素晴らしいものになる可能性がある。 ただ、現代人は詩になじみがない。詩が当たり前の時代がかつてはあったのだが(多くのヒトが字が読めない時代。もっと言えば、書き言葉がなかった時代)、現代は書き言葉にあふれている。書き言葉が言霊を失いつつある。なじみのない詩が読まれる可能性は低い。
  3. 音楽用語を使い、専門的に解説する。好きなことばではないがアナリーゼを行うわけだ。「インテンポでアゴーギクはあくまで控えめだが、ディナーミクがしっかりしている。」とか「136小節のCをC♭に弾き間違っているが、これが思わぬ効果を生んでいる」。あるいはギリシャ古典の世界を想像しながら「このディオニソス的な通奏低音にアフロディーテ的な右手の美しさと言ったら」(なんのこっちゃら!)
音楽雑誌など最近は読んだことがないし、音楽会にも行かない(クラッシックには行かない。それ以外はよく行くなあ、最近) ので昔の「大木正興」さんや「吉田秀和」さん風の評論をかすかに思い出すだけだが、最近の音楽評論はどんな雰囲気なのだろうか?

新書版の「CD100枚」とか「反クラッシック」とかを読む限りでは、昔と余変わっていないようだが、最近読んだある本に面白いことが書いてあった。

最近の音大の学生は他人の演奏を聴かない、知らないらしい・・・という話だ。それどころか、あるいは私たち一般のクラッシック愛好家なら知らないものなどないような有名曲でも知らないらしい。もちろん、これをもって一般論化するつもりはないが、さもありなんである。その本にはこう書いてある。

最近は音大を卒業しても音楽家になれるわけではないので、音楽産業に就職するものもいる。ある大学のピアノ科を卒業したA君はソニーのクラッシク事業部へ配属されたが、そこでは次の録音予定のある協奏曲が流れていた。それを聴いたA君が「へ〜良い曲ですね。誰のなんという曲ですか?」と質問して、その場の全員を絶句させたという。ラフマニノフの2番だった。ピアノが専門の音大卒でラフマニノフの2番を知らないなんてあり得るのか?

「音楽が好きで好きでたまらないから音楽家になる」わけではないようだ。そうかもしれない。小さい頃からレッスンにつぐレッスンで、言われるとおりにピアノ、ヴァイオリンを猛練習しなければ、音楽大学には入れない(のだろう)。猛勉強につぐ猛勉強をしなければ、「一流大学」に入れないのと同じである。

猛レッスンを続けていく過程で、ホロビッツやグールドやアルヘリッチや内田光子やルイ・サダに溺れる時間はないのだろうか?

またこんな事も書いてあった。


コンサートに同伴するのに一番つまらない方々は、演奏家の皆様だという。あんまり「感動」してくれないらしい。醒めているのだそうだ。演奏が終わると出る言葉は「解釈がどうもね〜〜」とか「技術がイマイチだったね」とか「なにかとnegative points」を捜してしまうらしい。もっと素直に喜んで欲しいのに。共に「感動」を語り合いたかったのに。

「音楽が好きで好きでたまらないなら、もう音楽家になどならないほうが良い」のかもしれない。

でも本当は 

「他人の音楽演奏が好きで好きでたまらない音楽家になってほしい」というのが本音です。


修行中に毎晩のようにコンサートに行くような切磋琢磨が望ましいなあ。他人には甘く、自分には極限まで厳しい音楽家が良いな。

職業音楽家でも、他人の音楽について暖かく語れる人間性は必要だと思う。甘いのだろうか、ワシ。

今年一番インパクトのあった論文:「他人の便を移植する」

今年上半期で最も印象に残った研究論文は難治性の偽膜性腸炎に対する「健康な他人の便を注入する」治療法だ。
NEJMの1月の論文であったが、印象度は大きかったが、なぜかブログにnoteするのを忘れていた。

自分が受けるとしたら「勘弁してくれ」というような治療であるが、難治性の偽膜性腸炎を実際担当すると「藁にもすがりたくなる」ものである。効くのだったら、なんでもありだ。

N Engl J Med 
2013; 368:407-415
January 31, 2013

Original Article 

Duodenal Infusion of Donor Feces for Recurrent Clostridium difficile 

Els van Nood, M.D., Anne Vrieze, M.D., Max Nieuwdorp, M.D., Ph.D., Susana Fuentes, Ph.D., Erwin G. Zoetendal, Ph.D., Willem M. de Vos, Ph.D., Caroline E. Visser, M.D., Ph.D., Ed J. Kuijper, M.D., Ph.D., Joep F.W.M. Bartelsman, M.D., Jan G.P. Tijssen, Ph.D., Peter Speelman, M.D., Ph.D., Marcel G.W. Dijkgraaf, Ph.D., and Josbert J. Keller, M.D., Ph.D.


[患者と方法]

バンコマイシンによる除菌を行なうも再発したCD陽性偽膜性腸炎の患者43名3つの治療群に類別し経過をみたものだ。


  1. 第1群:バンコマイシン治療後に腸洗浄を行ない、ついで健常者の便を流入(経鼻チューブを介して実際には十二指腸へ送り込む)
  2. 第2群はバンコマイシンの治療のみ
  3. 第3群はバンコマイシンの使用後に腸洗浄のみを行った
endpointは治療後10週間経過の段階で再発がなければ治癒判断する。

[結果]

  1. バンコマイシン単独かそれに腸洗浄のみの群:、患者の7~8割は、10週間以内に再び腸炎を再発
  2. 便注入群: 初回注入で16名中13名が治癒し(81%)、再発した残りの3名のうち、2名は再度別人の便を注入して治癒
他人の便を「移植」することで、何が変わるのか?

大腸細菌フローラの「多様性」を評価する指標にSimpson Indexというものがある。この「便移植」前後でのフローラの変化をみたのが次の図である。CD陽性の腸管内は細菌叢がやせ細っていて、多様性に乏しいが、「便移植」により、再度多様性に富むフローラが戻ってくることがわかる。
 



こんな「野蛮な治療」最初に考えたのはいつ頃の誰だろうか?多くの皆様が想像するとおり、起源は随分古い。
こんな論文が1958年にはあるようだ。

Eiseman B, Silen W, Bascom GS, Kauvar AJ. Fecal enema as an adjunct in the treatment of pseudomembranous enterocolitis.  Surgery 1958;44:854-859


今年の論文の特徴は前向きの割り付け試験だったということだ。
16例とはいえ94%の改善率である。実臨床に導入しない手はない。

2013年7月20日土曜日

帯状疱疹後神経痛の治療指針

反省をこめて・・・
最近なるほどと思っていること。
  1. リドカインパッチが劇的に効く患者が確かにいるということ
  2. リリカもガバペンも効かない人には効かないということ
  3. 組み合わせが大事だと言うこと

とにかく早期に痛みを取らないといけない。脳が痛みを覚えてしまうと大変なことになるらしい。

PHNの病因は「高次脳障害」のようなものだということ。

[American Academy of Neurology(AAN) 帯状疱疹後神経痛の治療指針]

 Neurology(2004; 63: 959-965)/ 関連 =1960-2003年1月のMedlineのデータベースからランク付けした。
 ---EBMに基づく医療

Group 1
---中〜高等度の有効性、副作用が少ない
エビデンスが少ないながら,副作用がより少ないという理由からアミトリプチリンよりもノルトリプチリンを推奨

Group
 --- group 1より有効性が低い


Group 3
---プラセボと比べて有効なエビデンスがない

Group 4
---充分なエビデンスがない