2013年6月29日土曜日

とき偶に・・・伊東静雄

とき偶に・・・というのは「ときたまに」でありときどき、たまたまである。好きな詩人である伊東静雄に「晴れた日に」という一節があり、この「とき偶に」という始まりがとても好きだ。今朝はふと思い出したので書いてみたが、どんな詩だっただろう?

 いかにも、背伸び盛りの高校生(当時の小生)が好む風情だが、実は年齢を重ねても(今の小生)それなりに味わいは衰えないのだ。

この詩にこんな↓解説をした方がいる。書き抜いてみよう。


・・・・上の詩「ある晴れた日に」には、いくつのも”思いの断片”が一見バラバラに散りばめられています。読んでいる途中は、書き手(詩人)が何を言いたいのかハッキリしません。

しかし、「読後」に、”思いの断片と断片が読み手の心の中で結びついてある種のイメージ(全体像)”を醸し出し、異様な感動を覚えます。
 
人生とは、こういうものだ........ という象徴的な詩です。

昔、遭遇した事柄や誰かの言った言葉が、わけもなく忘れがたく心に残っていたが、後になってその意味(理由)が分かった、という体験は誰でもお持ちでしょう。分かった、いうのは点と点、思いの断片と断片が心の中で統合されて像をなした、といえます。  英語では時に「connecting the dots」と表現されます。・・・・・
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ここで話はいきなりスティーブ・ジョブズのあの有名なスタンフォード卒業式祝辞に飛ぶのである。このような「自由飛翔」が好きだ。で、小生はなにがいいたいのか。

Steven Jobs 

「connecting the dots」である。この連語の背景が知りたかった。これだけ引用すれば、この言葉のイメージが充分つかめる。

今日本語版をせっせと上梓しているエリック・ランダーの総説にでてくるんだこの 「connecting the dots」が。小見出しとして。ランダーどんなつもりで書いたんだろうと思っていたのです。それがこんな話に収斂していくのです。

おそまつ。
 

とき偶に早起きをすると・・・Vivaイタリア

とき偶に早く目が覚めて、今日など朝5時半からパソコンの前で一仕事した。コーヒーを飲みながら新聞を読んでいると「銀の街から」が載っている。「銀の街から」は月に一回程度掲載される沢木耕太郎の映画紹介記事である。いつ載るか分からないところが良い。不意打ちのように掲載される(ようだ)。ボクはこれが読みたくて朝日新聞を購読しているところが確かにあるぞ。今日の映画は「もうひとつの世界」というイタリア映画である。

今年はよく映画を見るが、ほとんどが外れなのである。良い映画だと思った最近のが「最強のふたり」であるが、これはもう去年であった(記憶がはっきりしない)。

たまには良い映画が見たいものだ。この映画は良さそうである。15年も前の映画であるが、奇跡的に地方にもやってきそうである。夏休みが楽しみだ。

2013年6月24日月曜日

ここで問題です。Eric Landerの総説;中間点で振り返る。

4回ほどEric Landerの総説を紹介してみた。

まだ半分程度しか終わっていないが、ではここで以下の要約を読んで頂こう。
なんとまあスラスラ読めるのではないだろうか?もうすっかりおなじみの遺伝子名がずらずらと登場だ。

Abstract

Genetic changes underlying clear cell renal cell carcinoma (ccRCC) include alterations in genes controlling cellular oxygen sensing (for example, VHL) and the maintenance of chromatin states (for example, PBRM1). We surveyed more than 400 tumours using different genomic platforms and identified 19 significantly mutated genes. The PI(3)K/AKT pathway was recurrently mutated, suggesting this pathway as a potential therapeutic target. Widespread DNA hypomethylation was associated with mutation of the H3K36 methyltransferase SETD2, and integrative analysis suggested that mutations involving the SWI/SNF chromatin remodelling complex (PBRM1, ARID1A, SMARCA4) could have far-reaching effects on other pathways. Aggressive cancers demonstrated evidence of a metabolic shift, involving downregulation of genes involved in the TCA cycle, decreased AMPK and PTEN protein levels, upregulation of the pentose phosphate pathway and the glutamine transporter genes, increased acetyl-CoA carboxylase protein, and altered promoter methylation of miR-21 (also known as MIR21) and GRB10. Remodelling cellular metabolism thus constitutes a recurrent pattern in ccRCC that correlates with tumour stage and severity and offers new views on the opportunities for disease treatment.


このアブストラクトはいったいどの論文からとられたものなのだろうか? 先のEric Landerの総説に挙げてある参考文献の一つなのだろうか?

答えは「否」

これはEric Landerの総説から3ヶ月後、昨日(2013/6/23)natureにonline発表されたばかりの最新の腎癌(clear cell carcinoma)のdeep sequencing研究(400症例以上の解析!)のアブストラクトなのである。

どうだろう、いつか見た遺伝子名ばかりではなかろうか? 既視感あふれる、デジャブの塊ではないかい?

この最新の論文に現れる遺伝子名に違和感がないとすれば、癌の遺伝子に関する研究は、少なくともその登場遺伝子については完成の域にに近づいたと考えても良いのではないだろうか?

主役はすでにそろったということなのだろう。あとに続く論文にもこれらの遺伝子が主役として活躍するのだろう。


Nature (2013) 
Received 25 October 2012 
Accepted 24 April 2013 
Published online23 June 2013 

Comprehensive molecular characterization of clear cell renal cell carcinoma 

The Cancer Genome Atlas Research Network

clinically malignant GIST症例の術後フォローアップについて

先日吐下血で緊急入院した方は、出血性胃腫瘍ということで(Biopsyは過形成ポリープだということであったが)胃切除をしたが、結局巨大GIST(15cmくらいはある)であった。大きくて核分裂像も結構認めるのでハイリスクである。切除断端を含め肉眼的にはabsolute curativeであるが、問題は術後のフォローアップである。

癌治療学会のガイドライン

  1. 高リスク,中間リスクまたはclinically malignant GIST症例では(アルゴリズム2.外科治療c),適切なフォローアップCTは,最初3年は4~6ヵ月に1回,5年までは6ヵ月に1回,その後10年までは年に1回程度とする。低リスク或いは超低リスクのGIST症例では,術後5年間は6~12ヵ月毎の,以後年1回程度の腹部CTによるフォローが勧められる。
  2. 術後補助療法に関しては、プラセボ対照第三相無作為二重盲検臨床試験が報告され9)、イマチニブ400mg/日の安全性と忍容性は確認され、無再発生存期間(Recurrence Free Survival: RFS)はイマチニブ投与群が非投与群より良好である(内科治療参照)。但し、全生存期間の改善の有無は未確認であり、術後補助療法の対象となるGIST,術後補助療法の期間に関してコンセンサスは無い。これ等の事項に関しては、現在進行中の幾つかの臨床試験の結果を待たねばならない。

  3. カプセル剤100mg 1錠 2,749.00円  一日約一万円ということになる。

  4. KIT陰性GISTの診断にc-kit遺伝子変異の検索は有効か。KIT陰性GISTの診断にc-kit遺伝子変異の検索が有用なことがある。

    KIT陰性GISTには,免疫染色の問題でKITの陽性像が得られなかったGISTやPDGFRA遺伝子変異を持つGISTなどが含まれる。また,免疫 染色でKIT陰性と判断された場合でもc-kit遺伝子に変異が検出されるものがあり,KIT陰性の消化管間葉系腫瘍にc-kit遺伝子やPDGFRA遺 伝子の突然変異が検出されれば基本的にGISTと診断してよい(GIST,マスト細胞性腫瘍,精上皮腫以外でc-kit遺伝子の変異が検出されることはな いと考えても差し支えない)12)


  5. イマチニブ治療効果予測にc-kit遺伝子変異の検索は有効か。 c-kit遺伝子変異部位とイマチニブの効果には関連があることが報告されている。

    例えばc-kit遺伝子のexon 11の変異は一般にイマチニブの効果が高いが,c-kit遺伝子のexon 9の変異はイマチニブの効果がやや悪い。c-kit遺伝子検索をすることで,ある程度のイマチニブの効果は予測可能と考えられる13)14)


  6. イマチニブ治療効果予測にPDGFRA遺伝子変異の検索は有効か。 PDGFRA遺伝子変異部位とイマチニブの効果には関連があることが報告されている。

    例えばin vitroではPDGFRA遺伝子のexon 12の変異は一般にイマチニブの効果が高いが,PDGFRA遺伝子のexon 18の変異の多くはイマチニブ抵抗性である。in vivoでの十分なデータには乏しいが,PDGFRA遺伝子検索をすることで,ある程度のイマチニブの効果は予測可能と考えられる10)14)


2013年6月23日日曜日

がんゲノム研究から学んだこと(4):Cell 誌 Eric Landerの総説

第四弾である。このあたりの話は比較的地味であるが、この数年急速に明らかにされてきた領域である。クロマチン研究家、ヒストン研究家、スプライソーム研究家が地道に研究してきた領域に、いきなり「がんゲノム屋」が乗り込んできた様相である。ひさしを貸して母屋を乗っ取られかねない勢いである。

がん研究の地平線が一気に広がっているのがわかる。これからのがんの専門家が知っておかなければならないことが、いかに広い領域に及んでいるか、このレビューを眺めてあらためて感じられないだろうか?

もし同感されないとすれば、それは哀しすぎる。いまからでも遅くないので、しっかり現状にキャッチアップしておかないといけません。



クロマチン:ヌクレオソーム再構成

クロマチン生物学に影響を及ぼすもう一つの変異ターゲットはといえばSWI/SNF複合体である。SWI/SNFATP依存性のヌクレオソーム再構成を通してクロマチン構造を制御する。

腫瘍生物学におけるSWI/SNFの重要性が最初に示唆されたのが悪性ラブドイド腫瘍(小児の悪性腫瘍である)におけるSNF5の関与であった。ラブドイド腫瘍ではSNF5が両アリル欠失する。

その後の癌の大規模シークエンス研究によってSWI/SNF複合体遺伝子は最も頻度高く変異を起こす遺伝子グループであることが判明したのだ。腎癌では41%の症例でPBRM1(この遺伝子はヒストンアセチル化のリーダーであり”BAF”SWI/SNF複合体の主要構成要素であるBAF180をコードする)が変異していることがわかった。なお腎癌でこれ以上の変異頻度を示す遺伝子はVHLくらいしか報告されていない。

同様に卵巣癌では50%以上の症例でARID1Aが変異をおこしている。ARIDA1は別のBAF蛋白をコードしていることが知られている。ARID1Aについてはその後様々な癌腫で高頻度に変異を起こすことが報告され、肝癌では30%、膀胱癌では34%、子宮類内膜上皮癌では21%である。そのホモログ遺伝子であるARID1Bあるいは ARID2 (”PBAF”SWI/SNF複合体の主要構成要素)は悪性黒色腫、肝癌、膵癌で変異を認めるとの報告がある。なお他のヒストン修飾酵素と同様にSWI/SNF複合体遺伝子変異も典型的な機能失活型の変異を示す。すなわち両アリル欠失か蛋白発現消失であり、腫瘍抑制遺伝子と同様の機構により機能を失うのである

クロマチン:コンパクション

予想外の発見をもうひとつ紹介する。それはクロモドメイン・ヘリカーゼ・DNA結合遺伝子ファミリー(CHD: Chromodomain-helicase-DNA-binding)である。CHD蛋白は幹細胞が分化するときDNA凝縮を制御しゲノム安定性を確保する。

CHD1の変異は前立腺癌のETS陰性型(ETS遺伝子の転座を認めないサブタイプ)の発症に根本的な役割を示すようだ。ホモログであるCHD4は子宮内膜癌でよく欠失する。ヒストンH3.3自身も小児の悪性腫瘍であるアストロサイトーマや髄芽腫では高頻度に変異する。

総括してみよう。なんらバイアスのかからない癌ゲノムシークエンス法をもってして、初めてこのようなクロマチンやエピゲノムの変異が見つかったのであり、これが新しい基礎や臨床の発見につながったということである。

DNAメチレーション

DNAのメチレーションもまた癌のゲノム構造に重要な役割をはたしていることはいうまでもない。特にCIMPと呼ばれるCpGアイランドがメチル化を受けやすい一群がいくつもの腫瘍で知られるようになった。大腸癌ではDNAが過度にメチル化を受ける一群が生物学的に重要なグループを構成することが報告された。これに反論する報告もまた存在する。当時の系統的研究でメチル化マーカーを使った研究では大腸癌にはCIMPとよんでいいグループがあるという明白な証拠は示されていた。大腸癌のCIMP腫瘍ではたいがい高いマイクロサテライト不安定性を示していた。原因はMLH遺伝子が高度にメチル化されているからであり、そのためマイクロサテライト不安定性となるとされた。

しかし大腸癌におけるCIMPの成因はいまだ謎に満ちているのである。というのはこれらの腫瘍ではDNAメチル化機構に関与する遺伝子群に変異が認められないからである。グリオブラストーマやAMLの一部はCIMP様の変化を示す。これらの腫瘍ではこの現象の一部はIDH1/2蛋白の変異とその結果生じた2HGによるところが大きいものと考えられる。

DNA低メチル化もまたある種の腫瘍では重要である。AML25%程度にDNMT3A遺伝子変異が知られている。この遺伝子蛋白はCpG塩基対にメチル基を付加する酵素である。したがってこの遺伝子変異をもつAMLでは癌化にかかわる多くの遺伝子プロモーター部位の低メチル化を示す。この変異を持つ腫瘍は予後が悪い。その後DNMT3A遺伝子変異はMDSにも認められることが示された。MDSは次第にAMLへ移行することが知られている。

 DNAメチレーションの重要性が認識されたことで5-アザシチジンやデシタビンといった抑制剤への興味に火がついた。おそらくはこれら薬剤はDNMT3Aや他のDNAメチレーションに関係する遺伝子に変異を持つ腫瘍に根治的効果が期待出来る。5-アザシチジンは特に興味深い薬剤であり、MDSに効果があることがわかった最初の薬剤であり、AMLにも効果がありそうである。白血病のなかでもDNMT3Aや他の遺伝子変異を持つタイプはこれらの薬剤に効果がある可能性があるのである。クロマチン変異と同様に、DNAメチレーションによって変化を受ける遺伝子の中で癌化に核心的な遺伝子はいまだによくわかっていない。

DNAハイドロキシル・メチレーション

ゲノム研究はエピゲノム修飾と癌化の間の新しい関係を明らかにしてきた。2009年には生化学研究による新しいDNA修飾が見出された。CpGアイランドの5-メチルシトシン(5mC)5-ハイドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換する修飾でありDNA水酸化酵素であるTET(ten-eleven-translocation)酵素に介在される。ほどなくしてゲノム解析によりTET2AMLMDSを初めとする骨髄増殖性疾患で機能喪失性の突然変異を示すことが明らかにされた。

すでに記したようにTET酵素はα—ketoglutarateを必要とし、一方変異IDH1/2によって作られる2HGによって抑制される。TET2IDH1/2の変異は少なくとも部分的には共通経路で作用すると推察される。それから予想されるようにAMLにおいてはこの二つの変異が共に見られる症例は希有である。しかしながら興味深いことにTET2DNMT3A遺伝子変異はMDSではしばしば共に観察される。白血病発病において5mC5hmCは制御異常となるがこの二つの間にはいまだ説明のつかない協調性機構の存在が伺えるのである。

RNAスプライシング

RNAの転写に影響を与えるターゲットにはまだ残された分野があり、RNAスプライシングが重要であることが判明した。癌では通常とは異なったスプライス・パターンが見られることは随分前から指摘されていたが、これが癌化の原因となるのか、あるいは癌化の結果によるものなのかは例によって判定が困難であった。解答はCLLMDSのエキソーム・シークエンス研究によって明らかにされた。CLLではスプライソーム遺伝子であるSF3B110-15%変異していることが明らかにされた。なお他のスプライソーム遺伝子(SFRS1, SFRS7, U2AF2)も変異するが頻度は低い。一方MDSでは概観はより明瞭でありスプライソーム遺伝子変異が45-85%に認められる。SF3B1U2AF1が最も頻度が高い。他の遺伝子(SF3A1,ZRSR2, SRSF2, U2AF2)は頻度が低い。スプライソーム遺伝子変異は固形癌でもある程度の変異を示すが最も顕著なのは肺腺癌でU2AF1, SF3B1, U2AF2PRPF40Bで変異を認める。SF3B1はまた乳癌や膵癌で変異を認めた。

スプライソーム遺伝子変異のパターンからはその機能への重要なかぎが示される。第一に遺伝子変異は相互排除的に認められることであり、癌化におけるスプライソーム遺伝子群の働きはお互いに良く似ており、畳重なシステムであるということ。第二に遺伝子の中にはヘテロな変異を示すものがありこれらは蛋白の重要なドメインに変化をきたす。おそらく機能活生性の変化をもたらすのであろう。SF3B1HEATドメインに影響を与える。U2AF1は保存性の高いzinc-fingerドメインに影響を与える。SRSF2は明らかなコドン局所化能を持つ(意味が不明です、ここの部分)。ZRSR2遺伝子はORF のいずれにも変異が起こるし、しばしばその変異はナンセンスである。これは機能喪失性の変異である。癌化に伴うスプライス異常はこれらの遺伝子変異に伴って起こっていたのである。

MDSでは環状鉄芽球性貧血を伴うサブタイプにSF3B1変異は認められるが、これは赤血球への成熟を不能にする。この観察からSF3B1が環状鉄芽球から成熟赤血球への変換をスプライスによって起こしている(成熟に重要な遺伝子のスプライス・パターンを変えることによって)可能性が示唆されるのである。

スプライソーム遺伝子変異は予後予測因子でもあり治療へ影響を与える。例えばU2AF1変異はMDSからAMLへの進行に関連するし、SRSF2変異はMDSのサブタイプCMML(chronic myelomonocytic leukemia)と関係している。CLLではSF3B1変異を持つと病気は急速に進行するし予後不良である。U2AF1変異は肺腺癌の予後不良因子でもある。スプライス因子群は以前は抗癌剤の対象にはなっていなかったが、いまや評価は変わった。スプライス因子に対する小分子や自然薬剤が報告されている。スプライシオスタチンA(SSA)はシュードモナス由来の代謝産物であるが、SF3B複合体を阻害しスプライシングを抑制する。プラディエノイドはストレプトミセス合成産物であるがSF3B1を直接阻害する。プラディエノイドの変異体であるE7107は第一相臨床試験が行われており甲状腺癌にある程度の効果を示すことがわかった。



以上で9ページの途中である。本文だけで15ページのレビューであるから、あと6ページである。まだまだ面白い内容が後半も待ち受けているのである。訳であるがすでに原稿用紙で40枚くらいになっている。長大であるが頑張ろう。

ウナギで黄疸を診断するの巻(Cell):ウナGというのだ。

土用ウナギの季節が近づいた。去年あたりからウナギは高騰を続けている。とても面白い研究がウナギからでた。ウナGというのだ。

理研の研究者、熊谷 安希子 (くまがい あきこ)さんはビリルビンと混ぜると直ちに蛍光発色する発色物質をニホンウナギから単離し、これをUnaGと名付け最新号セル誌に発表した。これがセルに相応しい論文である理由を推測するに

  1. 複雑で煩雑なビリルビン定量法を一新しそうだということ。特異性が極めて高く、反応は一瞬だという。混ぜるだけなのだそうだ。UnaGは大腸菌で人工合成するが、出来たUnaG(HoloUnaGという)は乾燥物でも極めて安定であり、筆者らいわく、アフリカ奥地で新生児黄疸の診断に役に立つという。これはいい。大学研修医のころ血ガスや一般採血は結果が直ぐ出るので自分で器械を操作していたが、ビリルビン緊急測定は時間がかかるのでいやだった。今の職場でもビリルビンだけは時間がかかる。

  2. もともとウナギの筋肉が蛍光発色することは2009年に鹿児島大学の林征一教授が見出していたとのことだ。熊谷さんらはこれに注目し、この物資をニホンウナギ5匹から単離した。クローニングした遺伝子を大腸菌にいれても発色しないがほ乳類細胞に入れると発色する。ほ乳離特異的なリガンドがあるはずだと。それがビリルビンだった。

  3.  ビリルビン特異性が極めて高く、血漿中のアルブミン濃度に影響を受けないとのこと。これはいい。

     
  4. この物質UnaGと名付けられた。理研のホームページはユナGと発音記号が載ってるが、国内ではウナGでしょうな、これはいいね、このネーミング。
Cell, Volume 153, Issue 7, 1602-1611, 13 June 2013

A Bilirubin-Inducible Fluorescent Protein from Eel Muscle 

Akiko Kumagai, Ryoko Ando, Hideyuki Miyatake, Peter Greimel, Toshihide Kobayashi, Yoshio Hirabayashi, Tomomi Shimogori, Atsushi Miyawaki

Cell Function Dynamics, Brain Science Institute, RIKEN, 2-1 Hirosawa, Wako-city, Saitama 351-0198, Japan


2013年6月21日金曜日

がんゲノム研究から学んだこと(3):Cell 誌 Eric Landerの総説


第3回目である。前半のIDH1・IDH2変異はもっと知られても良い変異遺伝子である。後半では小生の苦手なエピゲノムが総説される。

代謝関連遺伝子の発癌要因


ゲノムシークエンスによる研究からは驚くに値する研究など出てこないと疑っている方がいるなら、ちょっと待て! 

2008年のボーゲルシュタインの研究に目を留めてほしい。MPSの手法がまだまだ未熟だったころで、彼らは強引に力づくで20661個の遺伝子175471個のエクソンをPCRで増やしシークエンスしたのだ。彼らはIDH1遺伝子変異が高頻度に起こることを見つけたのであるが、この発見は本当に賞賛されるにふさわしい



IDH1はイソクエン酸脱水素酵素であり、細胞内代謝を司る酵素遺伝子であり、普通に考えればこれががん関連遺伝子であるとはとても思えないが、活性中心のアミノ酸が変異することで確かに癌化に関わるのである。続く研究によれば70%以上のグリオブラストーマ、オリゴオリゴデンドログリオーマ、髙悪性度アストロサイトーマ更には1530%の急性骨髄性白血病ではIDH1とそのミトコンドリア・パートナーであるIDH2に変異が認められることがわかった。イソクエン酸脱水素酵素はイソクエン酸をTCAサイクル中でアルファ・ケトグルタル酸AKG)に変換することは知られていたが、以上の研究で代謝が癌化と密に関連していることが示唆されたのである。更に突然変異は活性機能強化に繋がることがまもなく明らかとなった。突然変異を受けたイソクエン酸脱水素酵素はイソクエン酸を全く別の代謝物に変換する。すなわち2ヒドロキグルタル酸の鏡像異性体(R-enantiomer)である。



これらがどのように癌化を促すのか謎がしばらく続いたが、答えは全く意外な分野から現れた。ゲノムのメチル化研究からである。最近のメチル化研究によるとグリオブラストーマのあるタイプ(proneural subtaype) のメチル化パターンは大腸癌のメチレータータイプ(CIMP)とそのパターンが酷似していることがわかったのだ。CIMPIDH1遺伝子変異と強く関連していることはよく知られている。その後の研究でIDH1遺伝子変異を導入するとCIMPフェノタイプが生ずることが示された。これらのお話しには想定外がもう一つあり、これには急性骨髄性白血病(AML)が登場する。IDH1IDH2変異が相互排他的にTET2変異の不活化に関与するという事実である。IDH1IDH2変異はどちらも同様の効果をもたらすらしい。また変異は片方一つで充分なのであろう。TET2蛋白はアルファ・ケトグルタル酸依存性に5-メチルシトシンの水酸化を触媒しTET2欠落はCIMPフェノタイプをもたらすことになる。ヒドロキグルタル酸はいくつかのアルファ・ケトグルタル酸依存性酵素活性を阻害することが明らかになったがこれらには遺伝子発現に関与するjumonjiヒストン脱メチル化酵素やHIFhypoxia induced factor)を制御するEGLN1/2/3蛋白(癌化との関連も報告されている)が含まれる。IDH1IDH2変異が代謝を通して多くの発癌に関わっていることは驚きの発見である。ゲノムシークエンス以前は、全く知られることのなかったこの領域に、あらたな創薬ターゲットが次々に芽生えている。



細胞系統特異的転写因子



もうひとつ重要な発見は「マスター転写因子」である。そのような転写因子は典型的には細胞の最終分化段階を決めるので、もし過剰発現すると細胞の成熟化を促進するし細胞周期を止めることで癌化を抑制するであろうというのが大方の仮説であった。



ところが、ところがなんということでしょう。メラノサイトの分化因子でありその分化を決めるMITF転写因子は転移性のメラノーマでコピー数が増加していることがわかった。MITFのこの性格は全くこれまでの範疇には収まりがたく、これを細胞系統生存腫瘍遺伝子とでも名付けてみたい。



細胞系統生存腫瘍遺伝子にはこの他に肺癌におけるNKX2.1、食道癌におけるSOX2、大腸癌におけるCDX2が見つかっている。全くの後知恵であるが、これらの転写因子はアンドロゲンレセプターに酷似していると思われる。去睾術を行っても治療d抵抗性の前立腺癌を全ゲノムシークエンスした報告が最近出たが、アンドロゲンレセプターとその共役転写因子の突然変異が共に認められるのだそうだ。

後生的変化

もっとも広範囲に影響が及ぶ遺伝学発見の一つが発癌におけるエピゲノム変化の重要性であった。その後の仮説検証型の研究を促進することになり、関連薬剤の発見を促した。一般にDNAメチレーションやクロマチン構造の変化はがんに共通してみられる特徴だ。しかしこれらの変化が癌化の直接原因となるのか、あるいは癌化に伴う単なる関連事象なのかはいまだにはっきりしていない。この問題の解決に近づく成果がいくつか出ており、エピゲノム状態を制御する40個近くの遺伝子が多くの癌腫で高頻度に変異を来すことが知られてきた。エピゲノム制御遺伝子の変異は多くの下流遺伝子の状態を一挙に変化させることができるため癌化プロセスには効率の良い機構である。DNAメチレーションやクロマチン変化に関連するエピゲノムについて次の章では論じよう。


クロマチン:ヒストン修飾


クロマチン修飾の仕組みが壊れることで癌が発症することが知られてきた。ヒストンH3に修飾を加えたり、はずしたり、あるいは発現後修飾を加えたりする酵素遺伝子が癌ではしばしば突然変異を受けている。それらの酵素を列挙すると、ヒストン(リシン)メチル化酵素(KMTsという)やヒストン(リシン)脱メチル化酵素(KDMsという)は、ある特定のリシン残基への修飾を加速したり、あるいは抑制する。ヒストンアセチル化酵素(HATs)はヒストンH3テイルにアセチル基を付加し、ヒストン・リーダーは様々なヒストン修飾因子と結合し更に付加的な蛋白複合体を形成する。

ヒストン(リシン)メチル化酵素(KMTs)の中ではMLLサブファミリーと呼ばれる酵素群の変異はH3リシン4(これをH3K4と呼ぶ)に影響を与える。NSDサブファミリーはH3K36に、EZH2酵素はH3K27をメチル化するがこれらの変異も報告されている。

ヒストン(リシン)脱メチル化酵素(KDMs)の中ではH3K4を脱メチル化するJARID1A変異やH3K27を脱メチル化するUTX変異が知られる。

ヒストンアセチル化酵素(HATs)の中ではCREBP変異やEP300変異が知られている。

ヒストン修飾酵素遺伝子は細胞系列特異的な変異パターンをとることが知られている。例えばKMTs であるNSD1 NSD3遺伝子はこれまでのところAMLでのみ変異が知られている。またKDMsであるKDM5AAMLのみで、KDM5Cは腎細胞癌でのみ変異するとされる。もっとも、パターンが緩い例もあるのだ。MLLという遺伝子はその名前の由縁がmixed lineage leukemiaという白血病のあるタイプからきていることで知られているが、MLL遺伝子変異は広く白血病と固形癌(肺小細胞癌、肺扁平上皮癌、胃癌、頭頸部癌、前立腺癌)で認められることが知られている。KMTの一つであるDOR1L遺伝子はH3K79をメチル化するが、この遺伝子は変異こそ認めないが、ある種の白血病で転座を示すことが知られている。

ヒストンアセチル化酵素(HATs)変異はB細胞リンパ腫、肺小細胞癌、髄芽腫で報告されている。

以上のような細胞系列特異的パターンが認められるということは、特定の細胞系列が発癌するには、その細胞系列に重要な遺伝子群にまとめて影響を与えるある標的遺伝子発現パターンをまとめて消すことが重要であることを示唆する。

しかしその重要な標的遺伝子が何かはいまだに知られていないし、系統的にターゲットを浮かび上がらせる実験的手段も知られていない。

このパターンで発癌する腫瘍ではクロマチン修飾酵素機能喪失アリルは片側喪失が多い。このことはこのクロマチン修飾酵素群による発癌がhaploinsufficientであることを示唆しているし、両アリルともに機能喪失すると細胞致死となるのであろう。(haploinsufficientあるいはhaploinsufficiencyには「ハプロ不全」という訳語があるが、これは意味不明でしょう。日本語化するのは難儀であるので、このまま使用します)(細胞系列特異的とはいうものの、一つだけ例外がありそれはEZH2遺伝子である。濾胞性リンパ腫では機能獲得性変異を示し、骨髄性白血病では機能喪失性の変異となる)

以上の事実はクロマチン修飾酵素群が格好の分子標的になることを示唆する。片側変異は抑制薬剤に感受性が高いことが知られるからである。精力的に薬剤探索が進められているが、現在のところ臨床応用されているのはHDAC(ヒストン脱アセチル化薬)だけである。この薬剤の使用が認可されているのは骨髄異型性症候群と皮膚T細胞リンパ腫だけなのだが、このいずれもがHDAC遺伝子の変異を認めないのは皮肉なことである。


以上で7ページ終了したが、まだ半分である。折り返しはもうすぐだ。

2013年6月4日火曜日

なんの因果か腸管条虫症の治療を・・・・

条虫症を治療してほしいと連絡があり、患者殿が来週入院してくる。
寄生虫に興味を寄せたりするとこのような依頼が舞い込む。
治療はよいけど、出てくるものを見たいとはとても思わない。
いやだけどしょうがないなあ・・・・ 


No.51
寄生虫疾患-腸管条虫症を中心に-
厚生労働省 関西空港検疫所
検疫医官  石田 高明 

はじめに
 最近のわが国における寄生虫疾患は、 海外渡航者の激増により海外 (特に熱帯地域、 発展途上国) で感染する日本人の増加、 輸入食品 (生鮮魚介類、 肉類、 有機野菜等) の激増による国内で感染するケースの増加、 また外国人就労者の増加や輸入動物 (ペット) の増加による寄生虫の持ち込みの可能性が示唆される。 故に以上のような輸入寄生虫症が今後益々考慮すべき疾患になるものと思われる。
 今回、 寄生虫疾患の中で一般臨床において比較的経験することが多い、 俗称 「サナダムシ」 といわれる腸管条虫症について述べる。
  
腸管条虫性疾患 (intestinal tapeworm diseases)
 わが国で見られる腸管条虫症としては広節裂頭条虫症 (Dipyllobothriasis latum;日本海裂頭条虫症を含む)、 無鉤条虫症 (Taeniarhynchus saginatus infection)、 有鉤条虫症 (Taeniasis solium) がよく知られており、 また大複殖門条虫症 (Diplogono-poriasis grandis)、 小形条虫症 (Hymenolepiasis- nana)、 瓜実条虫症 (Dipylidiasis caninum) なども知られている。 

 (A) 無鉤条虫症 Taeniarhynchus saginatus infection
 無鉤条虫 (最近学名は Taeniarhynchus saginatus と改名されている (1)) は世界中に分布するが、 この疾患は、 海外渡航者などにもよくみられる疾患であり、 海外渡航者病の一つとも考えられている。 特にイスラム圏、 エチオピア等が有名で、 しかも発展途上国に限らず、 日本やヨーロッパ等の先進国での感染もある。 牛肉の生食 (ステーキのレア、 たたき等) または加熱不十分な摂取で感染する (beef tapewormといわれる)。 虫体は雌雄同体 (条虫は雌雄同体である) で、 成虫虫体は 3~10m で、 片節数は 1000 以上を数える。 症状は比較的軽く、 腹部膨満感、 食欲低下または亢進、 下痢・便秘の繰り返し、 不眠、 全身倦怠感などである。 無鉤条虫症の診断のきっかけとなるのは、 患者自身が虫体片節の自然排出があり、 肛門周囲で動き回り、 または排便後便塊の上を動いているのに気づき、 外来受診することである。 広節裂頭条虫症の場合と異なり、 虫体片節が肛門より垂れ下がるということはほとんど無い (2)。 また、 虫体片節の墨汁染色を行い、 筋肉の発達、 子宮側枝の数で有鉤条虫と鑑別する。 虫卵は鑑別困難である。 治療は praziquantel (商品名 ビルトリシド) 10~50mg/kg を 1 回、 下剤とともに投与する (2) (3)。 

 (B) 有鉤条虫症 Taeniasis solium および 有鉤嚢虫症 Cysticercosis cellulosae
 ブタ肉をよく食するインドに多く、 また一部イスラム圏を含むスラブ諸国、 中南米、 東南アジア、 南アフリカ、 韓国、 中国等に分布している。 十分加熱されていないブタ肉を摂取することによって感染する。 成虫虫体は 2~3m で、 片節数は 800 以上を数える。 重要なのは受胎片節より遊離した虫卵が腸管内で孵化し、 幼虫 (六鉤幼虫) が腸管を貫通して血行性に全身に散布され嚢尾虫を形成する有鉤嚢虫症 (自家感染) である。 また、 虫卵の付着した生野菜の経口摂取によっても有鉤嚢虫症となりうる。 有鉤嚢虫症は全身の多発性または単発性腫瘤で、 ときに筋肉内に石灰化した虫体を X 線写真で認められることがあり、 特に問題となるのは脳有鉤嚢虫症で致命的になることがある。 頭痛、 痙攣を主訴とし、 頭蓋内に嚢腫形成、 石灰化像を認める。 治療は、 虫体破壊により、 腸管内に散布された虫卵による自家感染を誘発するため、 腸管内に成虫を認める場合、 経口駆虫薬は禁忌であり、 虫体の破壊を伴わないガストログラフィンを用いて駆虫するのがよい (4)。 この時術者は感染に注意する。 嚢虫症に対しては、 praziquantel や albendazole (日本での経験は少ない) が用いられている。 駆虫時、 虫体崩壊による嚢胞液漏出でアナフィラキシーを起こす可能性があるので、 ステロイド剤の併用が必要である。 なお成人の場合、 有鉤嚢虫は赤痢アメーバ、 ランブル鞭毛虫などと同様に oral-anal sexual contact による感染もある (5)。 

 (C) 広節裂頭条虫症 Dipyllobothriasis latum
 主として北欧、 ロシア北西部に分布し、 スズキやカワマスが感染源である。 (わが国で従来、 広節裂頭条虫とされていた条虫は、 日本海沿岸のサクラマス、 カラフトマス、 ベニマス、 サケ等を感染源とするもので、 別種の日本海裂頭条虫 (Dipyllobothrium. nihonkaiense) とされている)(6)。 わが国ではコールドチェーン (低温輸送システム) の発達に伴い、 安価に新鮮な感染源が大都会の一般市民に手軽に食されるようになったために、 増加傾向にある疾患である。 成虫虫体は 5~10m で、 片節数は 3000 以上を数える。 症状は比較的軽く、 腹部膨満感、 下痢、 便秘の繰り返しなどであるが、 時に心窩部痛、 下腹部痛、 悪心などを認めることがある。 また貧血、 殊に VB12 欠乏性貧血 (裂頭条虫性貧血) を認めることもある。 しかし日本海裂頭条虫症ではそれは認められていない (7)。 この疾患の発見の端緒となる症状は、 排便時肛門より虫体片節が垂れ下がり、 自然排泄したという患者の訴えによる。 診断は患者が持参した虫体、 糞便中の虫卵の同定による。 治療は無鉤条虫症に準ずる。

予 防
 一般的には十分に衛生状態に注意しなければならない。
 個人予防:牛肉、 ブタ肉やサケ、 マス類の生食 (刺身、 たたき、 レアステーキなど加熱が不十分なもの) または不完全調理での摂取を慎むべきである。 十分な加熱調理をすることが重要である。 (無鉤嚢虫は 60℃以上に加熱または、 -10℃で 10 日以上冷凍、 有鉤嚢虫は 65℃以上または-20℃で 12 時間以上、 広節裂頭条虫幼虫 (プレロセルコイド) は-18℃で 48 時間以上の冷凍で死滅するといわれている(8)。) また、 生野菜はていねいによく洗う必要がある。
 集団予防:ウシ、 ブタの飼育地で人糞を肥料などに用い、 散乱させないこと。 食肉およびその加工食品の監視体制の強化、 環境衛生対策、 衛生知識の普及、 患者の集団駆虫などが重要である。

おわりに
 最近の生鮮魚類の輸送技術の進歩やグルメブーム、 自然食志向、 海外渡航者数の激増、 輸入食用動物や輸入生鮮食品の増加等により、 また消化管内視鏡検査の進歩・普及等により、 今後、 寄生虫疾患は一般臨床の場でも遭遇する可能性は増えていくと考えられ、 注意が必要である。

文 献
(1) 吉田幸雄:無鉤条虫、 図説人体寄生虫学 第 6 版 南山堂 p192-193, 2002 
(2) 西山利正、 石田高明:最近海外渡航者や外国人就労者にみられた経口感染性蠕虫性疾患, medicina. 医学書院 Vol.35, No.1, p145-151, 1998
(3) 石田高明、 荒木恒治、 西山利正他:当院における条虫症症例の検討-特に治療に関する知見-、 Clinical Parasitology ,Vol.12, No.1, p48-53 . 2001
(4) Nakabayashi T. et al. :A new therapy for Taenia saginata and Dipyllobothrium latum infections by duodenal administration of gastro-grafin. Jpn. J. Parasitol, 33, p215-220. 1984
(5) 荒木恒治:条虫症、 寄生虫病学第 2 版 医学要点双書 金芳堂 p135-153, 1994
(6) 熱帯病治療薬の開発研究班編:輸入寄生虫病薬物治療の手引き-1995-改訂第 4 版、 厚生科学研究費補助金オーファンドラッグ開発研究事業. P48-50, 1995

2013年6月3日月曜日

CrizotinibはALK-Positive肺癌に効くのか?:NEJM

CrizotinibはALK-Positive肺癌に効くのか?   

対象症例はペメトレキセド(pemetrexed:アリムタ)かdocetaxel投与群である。  
PFSは伸ばすが(3ヶ月→7.7ヶ月)OSは変わらないというのが結果だ。

June 1, 2013
NELM

Original Article

Crizotinib versus Chemotherapy in Advanced ALK-Positive Lung CancerAlice 

T. Shaw, M.D., Ph.D., Dong-Wan Kim, M.D., Ph.D., Kazuhiko Nakagawa, M.D., Ph.D., Takashi Seto, M.D., Lucio Crinó, M.D., Myung-Ju Ahn, M.D., Tommaso De Pas, M.D., Benjamin Besse, M.D., Ph.D., Benjamin J. Solomon, M.B., B.S., Ph.D., Fiona Blackhall, M.D., Ph.D., Yi-Long Wu, M.D., Michael Thomas, M.D., Kenneth J. O'Byrne, M.D., Denis Moro-Sibilot, M.D., D. Ross Camidge, M.D., Ph.D., Tony Mok, M.D., Vera Hirsh, M.D., Gregory J. Riely, M.D., Ph.D., Shrividya Iyer, Ph.D., Vanessa Tassell, B.S., Anna Polli, B.S., Keith D. Wilner, Ph.D., and Pasi A. Jänne, M.D., Ph.D.(近畿大学と九州がんセンターの先生が参加しているのが素晴らしい

Background

In single-group studies, chromosomal rearrangements of the anaplastic lymphoma kinase gene (ALK) have been associated with marked clinical responses to crizotinib, an oral tyrosine kinase inhibitor targeting ALK. Whether crizotinib is superior to standard chemotherapy with respect to efficacy is unknown.

Methods

We conducted a phase 3, open-label trial comparing crizotinib with chemotherapy in 347 patients with locally advanced or metastatic ALK-positive lung cancer who had received one prior platinum-based regimen. Patients were randomly assigned to receive oral treatment with crizotinib (250 mg) twice daily or intravenous chemotherapy with either pemetrexed (500 mg per square meter of body-surface area) or docetaxel (75 mg per square meter) every 3 weeks. Patients in the chemotherapy group who had disease progression were permitted to cross over to crizotinib as part of a separate study. The primary end point was progression-free survival.

Background

In single-group studies, chromosomal rearrangements of the anaplastic lymphoma kinase gene (ALK) have been associated with marked clinical responses to crizotinib, an oral tyrosine kinase inhibitor targeting ALK. Whether crizotinib is superior to standard chemotherapy with respect to efficacy is unknown.

Methods

We conducted a phase 3, open-label trial comparing crizotinib with chemotherapy in 347 patients with locally advanced or metastatic ALK-positive lung cancer who had received one prior platinum-based regimen. Patients were randomly assigned to receive oral treatment with crizotinib (250 mg) twice daily or intravenous chemotherapy with either pemetrexed (500 mg per square meter of body-surface area) or docetaxel (75 mg per square meter) every 3 weeks. Patients in the chemotherapy group who had disease progression were permitted to cross over to crizotinib as part of a separate study. The primary end point was progression-free survival.

Results

The median progression-free survival was 7.7 months in the crizotinib group and 3.0 months in the chemotherapy group (hazard ratio for progression or death with crizotinib, 0.49 ; 95% confidence interval [CI], 0.37 to 0.64; P< 0.001 )
The response rates were 65% (95% CI, 58 to 72) with crizotinib, as compared with 20% (95% CI, 14 to 26) with chemotherapy (P < 0.001 )

An interim analysis of overall survival showed no significant improvement with crizotinib as compared with chemotherapy (hazard ratio for death in the crizotinib group, 1.02; 95% CI, 0.68 to 1.54; P=0.54).  


Common adverse events associated with crizotinib were visual disorder, gastrointestinal side effects, and elevated liver aminotransferase levels, whereas common adverse events with chemotherapy were fatigue, alopecia, and dyspnea. Patients reported greater reductions in symptoms of lung cancer and greater improvement in global quality of life with crizotinib than with chemotherapy.

Conclusions

Crizotinib is superior to standard chemotherapy in patients with previously treated, advanced non–small-cell lung cancer with ALK rearrangement. (Funded by Pfizer; ClinicalTrials.gov number,