2012年7月27日金曜日

聖火の最終ランナーはだれ?:バニスターは?

より速く より高く より遠く

オリンピックの聖火の最終ランナーが誰になるか、非常に興味がある。その開催国がどのようにオリンピックをあるいはスポーツを捉えているかが現れるからである。東京オリンピックの坂井さんは「広島への原子爆弾投下」という意味を持つ。坂井さんは広島出身であり誕生日がその日であるからである。アトランタではモハメド・アリであった。ヘルシンキではヌルミがつとめ、メルボルンではロン・クラーク、ソウルでは
孫基禎が参加している。

オリンピックの華はだれがなんと言おうと「陸上競技である」。「より速く より高く より遠く

イギリスはなんといっても陸上の国なのである。いや国であった。往時の一流選手を聖火で走らせたいではないか。

本当はロジャー・バニスターがつとめると良いのだろう。人類初のサブ4マイラーである。
ところがである、今朝彼が既に走っていることに気が付いたのだ。あらら。流石に83歳であり、最終は任せられないとの判断だろう。国内聖火リレーの一員で済ませちゃったらしい。惜しいな。本当に惜しい。


2010年7月28日水曜日
ロジャー・バニスター:サブ4マイラー&神経内科医



いやまて、まだまだいるぞ一流陸上選手。スティーブ・オベットとか
スティーブ・クラムとかセバスチャン・コーとか。コーとオベットは共に50代半ばでまだまだ走れると思う。セバスチャン・コーはロンドンオリンピックの組織委員長という大役を仰せつかっている。ということで、長年のライバル、スティーブ・オベットを最終ランナーとして走らせる可能性は高いと思うな。

伏兵はデイリー・トンプソン。10種競技の金メダリストである。日本では人気がないが、7種や10種競技はアスリートの総合能力チャンピオンとして(これは戦士としてのチャンピオンでもある)非常に評価が高いからである。

最終聖火ランナーのような象徴的な人選にはオリンピック組織委員長の発言力が大きいのではないか?
セバスチャン・コーが最終的に判断するのではないかな。
中距離選手
セバスチャン・コーが誰を選ぶか・・・そういう見方があってもいいだろう。

スティーブ・オベット  vs  デイリー・トンプソン


こんな予想も楽しい。

2012年7月26日木曜日

最近のVogelsteinのこと:Science誌の最新記事

Bert Vogelsteinは私が最も尊敬する癌の研究者である。その名前を初めて聞いたのは、おそらく諸兄と同様にp53の発癌関連遺伝子としての性格を明らかにした1980年代後半の論文だったと思う。Vogelsteinによって当時華々しく喧伝された多段階発癌コンセプトは今なお有効な作業仮説であるし、ここ20年彼が癌研究の王道の中心にいたことを否定できる研究者はおるまい。

とはいうもののそのVogelsteinが、ポストゲノム以来アカデミアの中心からやや離れたポジションを取っていると小生には感じられてならないのだ。ポストゲノムで癌研究といえば、まずもってdeep sequenceである。イギリスではサンガーを初めとするWellcomeTrust、アメリカではCancer Atlasが中心で大論文を出してくるのがここしばらくの趨勢である。昨日のnatureの大腸癌の論文でも中心はEric Lander等々である。このような大論文の中にVogelsteinの名前は見あたらない。同じ米国でもVogelsteinは孤高の路線を歩んでいるように見えるのだ。Vogelsteinによる研究論文は昔同様精力的にbig journalに掲載され続けているがVogelstein独自のグループのものが多く、米国内の共同big projectには彼の名前の併記がほとんど認められない。特にここ3〜4年そのような傾向が強くなったと小生には感じられる。

だいたいこのVogelsteinという人は学会になかなか出てこないことで有名であり講演旅行を嫌うことが古くから知られている。日本の学会で彼を特別招待者に呼ぼうとしてもなかなか来てくれないが、これは米国内でも同じようである。彼は朝から晩まで自分のラボにいて部下の実験データを追いかけることに生き甲斐を感じるタイプの研究者なのだという。
留学でいえば日本人がなかなかラボに参加できないことでも知られている。一説よると日本人は総じて英語ができないことが大きな理由のようである。ある次期以降、日本人留学生はほとんど留学していないはずである。

以上の理由から生身のVogelsteinに触れた人は余り多くないはずだ。

そのVogelsteinの最近の話題が最新号のサイエンスに載っている。なかなか面白いレポートである。このレポートは例の『p-mab、c-mabが効かなくなる前にその前兆が血液検査でわかる」というNatureの論文にあわせて書かれた報告である。これをScienceが載せるところが面白い。


Science 20 July 2012:
Vol. 337 no. 6092 pp. 282-28

Profile: Bert Vogelstein
Cancer Genetics With an Edge
Jocelyn Kaiser

  • Bert Vogelstein and Kenneth Kinzler, who co-direct a lab at the Johns Hopkins University medical campus, helped lay the foundation of cancer genetics by revealing how mutations in key genes lead to a tumor. Their work helped inspire others to use genetics to predict cancer risks and develop personalized cancer treatments. Yet today, Vogelstein often offers what he calls a "reality check" on such efforts. In the past few years, Vogelstein and Kinzler have shifted away from discovering new cancer genes to a less glamorous pursuit: using genetic tests to detect common tumors as early as possible, when they are easiest to cure. This is not mainstream work, they say. But it's a natural progression of earlier research, the two said in a recent interview. Their research was never driven by curiosity about biology, Vogelstein says, but by "an overwhelming desire to empty the cancer clinics across the street."

Vogelstein自身のここ数年の「独自路線」に関する見解や、Vogelsteinに対する他のビッグネームからの批判、逆にVogelsteinによるdeep sequenceの批判が載っており、小生が感じていた「ここ数年の西欧癌研究界の違和感」への解説がここには載っている。つかえが取れたような、便秘が解消したような思いがするのである。

いろいろな話題が載っているが一つだけメモしておくと、Vogelsteinの最近の興味は癌治療らしい。ここ2〜3年のメラノーマの治療に大いに影響を受けておられるらしい。このヒントは良く理解できる。ここ2〜3年のメラノーマの治療には驚くことが多いからなあ。

もうひとつ彼の興味は「癌の血液による早期診断」である。画像や臨床症状出現より余程早い時期に癌は流血中に現れる。これをいかに鋭敏に再現性良く、しかも間違いなく検出するか・・・・ここに
Vogelstein一流のテクノロジーが発揮されるようである。(知るヒトぞ知るではあるがVogelsteinはテクノロジーのヒトである。)

癌研究のビッグネームの中でもとりわけ目が離せないのがVogelsteinである。理由はいろいろあるが、最も大きなものは、かれの研究の立脚点があくまでも「臨床癌」であることである。基礎研究者による培養細胞癌によるスッキリとした研究も大事であることは理解できるが、それを臨床の多様性に満ちあふれた癌に敷衍することの困難さをVogelsteinはだれよりも実感していると思う。

Vogelsteinの眼差しは「臨床癌」に向けられている。今後の動向が誰よりも気になる由縁である。

2012年7月21日土曜日

Cellよおぬしはいったいどこへ行くんだい?
































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最新のCell誌の目次である。previewはいかにもCellらしいが、その下のarticleはいったいどうしたというのだろう?

Cellにはこれまでもこのような臨床指向(志向あるいは嗜好)の論文が載らないわけではなかったが、それでもトップ2報がいずれも臨床癌症例研究というのは珍しいのではないだろうか?上の論文はMIT-Harvard-MD Anderson連合軍のもので、下の論文はWashington大学からのものである。


純粋な基礎の研究者の嘆きが聞こえてきそうな話題だ。私たちのCellはどこに行こうとしているのか!・・・なんてね。

2012年7月19日木曜日

ヒト大腸がんの包括的分子特性:nature 19 July 2012

 クリックで大きくなります。

Nature 487, 330–337 (19 July 2012)

Comprehensive molecular characterization of human colon and rectal cancer

遺伝:ヒト大腸がんの包括的分子特性


Consortia

The Cancer Genome Atlas Network

Received
Accepted
Published online
  • To characterize somatic alterations in colorectal carcinoma, we conducted a genome-scale analysis of 276 samples, analysing exome sequence, DNA copy number, promoter methylation and messenger RNA and microRNA expression. A subset of these samples (97) underwent low-depth-of-coverage whole-genome sequencing. In total, 16% of colorectal carcinomas were found to be hypermutated: three-quarters of these had the expected high microsatellite instability, usually with hypermethylation and MLH1 silencing, and one-quarter had somatic mismatch-repair gene and polymerase ε (POLE) mutations. Excluding the hypermutated cancers, colon and rectum cancers were found to have considerably similar patterns of genomic alteration. Twenty-four genes were significantly mutated, and in addition to the expected APC, TP53, SMAD4, PIK3CA and KRAS mutations, we found frequent mutations in ARID1A, SOX9 and FAM123B. Recurrent copy-number alterations include potentially drug-targetable amplifications of ERBB2 and newly discovered amplification of IGF2. Recurrent chromosomal translocations include the fusion of NAV2 and WNT pathway member TCF7L1. Integrative analyses suggest new markers for aggressive colorectal carcinoma and an important role for MYC-directed transcriptional activation and repression.

  • 大腸がんにおける体細胞性変化の特徴を明らかにするために、我々は276検体についてゲノム規模の解析を行い、エキソームの塩基配列、DNAコピー数、プ ロモーターのメチル化、メッセンジャーRNAおよびマイクロRNAの発現を解析した。これらの検体の一部(97検体)にはカバー率の低い全ゲノム塩基配列 解読を行った。全体として、16%の大腸がんに高頻度の変異が見られた。これらの4分の3には、予想どおり高頻度のマイクロサテライト不安定性が見られ、 それには通常、過剰メチル化や MLH1 のサイレンシングが伴っており、残りの4分の1には、ミスマッチ修復遺伝子およびポリメラーゼε( POLE の体細胞変異が見られた。結腸および直腸のがんは、高頻度変異の見られるがんを除き、ゲノム変化のパターンにかなりの類似性があることがわかった。24個の遺伝子に有意な変異が見られ、予想された APC TP53 SMAD4 PIK3CA および KRAS の変異に加え、 ARID1A SOX9 および FAM123B に変異が頻発することがわかった。頻発するコピー数変化には薬剤標的にできる可能性がある ERBB2 の増幅や、新たに発見された IGF2 の増幅が含まれる。頻発する染色体転座には、 NAV2 とWNT経路に属する TCF7L1 の融合が含まれる。統合解析から、悪性度の高い大腸がんの新規マーカーと、 MYC が指示する転写の活性化や抑制の重要な役割が示唆される。

NEJMからimage: 網膜芽細胞腫の leukocoria


























久しぶりに NEJMのイメージから・・・・

Images in Clinical Medicine

Retinoblastoma

Tan Aik Kah, M.S. (Ophthal.), and Faridah Hanom Annuar, M.S.

N Engl J Med 2012; 367:258July 19, 2012

網膜芽細胞腫の leukocoria(白色瞳孔)である。

What conditions cause leukocoria? (米国小児眼科学会HPより)

Many conditions cause leukocoria including cataract, retinal detachment, retinopathy of prematurity, retinal malformation, intraocular infection endophthalmitis), retinal vascular abnormality, and intraocular tumor (retinoblastoma).


あるいは

CAUSES OF LEUKOCORIA

The common causes of leukocoria in children include

  • Retinoblastoma (47 percent of cases in one series)
  • Persistent fetal vasculature
  • Retinopathy of prematurity
  • Cataract
  • Coloboma (fissure or cleft) of choroid or optic disc
  • Uveitis
  • Toxocariasis
  • Coats disease
  • Vitreous hemorrhage
  • Retinal dysplasia

2012年7月16日月曜日

Avishai Cohen (アビシャイ・コーエン):Duendeとの出会い

昨日は久しぶりにタワーレコードに行ってみた。クラシックのコーナーを覗いてラヴェルの掘り出し物はないか捜したがなかった。クレンペラーの掘り出し物(と名打ったもの)はあったが、購入するほどではなかった。

しかし行ってみるだけのことはあった。実は凄い収穫があったのだ。

収穫というのは小生が店にいた時間に店内にかかっていたジャズが良かったの。しばらく聴いていて、これはこれはと思ったので、調べたらアビシャイ・コーエンという人の新譜であった。久しぶりの「良い出会い」であったので購入した。僕にとってはアビシャイ・コーエンのベースよりも相方のピアノに大いに惹かれたのだが、ベースも悪くない。





























こんな出会いはルイス・ヴァン・ダイク・トリオの「Ballads in Blue」に出会って以来であろう。7年ぶりだなこんな邂逅は。しばらくアビシャイ・コーエンにはまるかも。

2012年7月11日水曜日

松丸本舗で本を3冊買わされたの巻

松岡正剛の手がけた遊び(仕事)に若い頃から縁がある。学生の頃好きな本屋に立派な天井までの書棚があり、ここには朝日出版社の「エピステーメー」や「工作舎」の「遊」などがズラッと並んでいた。学部の友人達の本棚にも必ず何冊かは並んでいたよな「エピステーメー」。どれくらいわかっていたかは今となっては疑問であるが、おフランスの新進気鋭の思想や最先端の物理、最先端の分子生物学(当時の分子生物学は今と違って、めちゃくちゃとんがっていたから、充分哲学できていたのだ)をテーマに毎月のように面白い(面白そうな)本をだしていた。その「工作舎」を率いていたのが松岡正剛だった。僕自身は「エピステーメー」やその後のペヨトル工房の「夜想」「銀星倶楽部」「WAVE」(いずれも月刊誌か季刊誌)を好んでいたので「遊」というのはほとんど購入したことがない。ないが松岡正剛というヒトは気になるヒトだった。


2000年ころからネット上で松岡正剛の書評サイト「千夜千冊」が始まったが、2~3年経ちこのページに気が付いたことが、僕にとって第二の松岡正剛ブームであった。毎晩毎晩書評が掲載されたのだが、毎晩にしてその量が半端なものではない。多くの書評は小生には難解であったものの、中には琴線に触れるものがある。これが楽しみで時々思い出しては読んでいたし、実は今も続いているのでネットしている。最新の書評は1475回目であり「橋下大阪市長がナンボのものか知らないが、役人の刺青を得意満面で禁止した。」という文章で始まるなかなか刺激的な一文である。


さてこの「千夜千冊」で取り上げられた本が取りそろった夢のような本屋さんが東京駅のそばにあるのだ。2009(平成21年)10月に丸善丸の内本店に登場した松丸本舗という本屋さんのコーナーである。僕はこの10年くらい「読書会」のようなものに所属しているが、そこには現役の女子大生も参加している。都内の学校に通っているこの娘に松丸本舗のことを教えたら、喜んだこと喜んだこと。松丸本舗はこの手の読書子には好まれる話題である。


しばらく丸善には行っていないなあと思い、久しぶりに東京駅の丸善に先日行ってみた。松丸本舗は丸善の一コーナーというには巨大である。知っている本があちら、こちらにあるのだが、その周辺には、無数の未知の本が並んでいる。この配列が蠱惑的で、目移りさせることを目的として存在する本屋なのだとそのうちわかってくる。立ち読みが楽しい本屋である。あるいは衝撃的な、運命的な出会いがあるかもしれない・・・と思わせる仕組みだな。


30分くらいは良かったのだが、そのうち店員なのだろうか博物館でいうと学芸員みたいな女性が話しかけてくる。なかなか面白かったので、書棚を駆け巡りながら、いろんな本を教えて貰う。まあ松岡正剛と編集工学のことを熱く熱く語ってくれるのだが、だんだん面倒になってきたので、話題を変えたかったので、「これも何かの縁だから、ご推薦の本を言ってみませんか?何冊でも買いますよ」と言ってみた。


この遊びは面白かったよ。「最近何読んでます、一冊教えて」というので、丁度バックに入っていた「忘れられた日本人(宮本常一)」がきっかけにはよいだろうと出したら、あちらに行き、こちらに行き、結局3冊買わされましたな。折口信夫の「死者の書」と松岡正剛の「花鳥風月の科学 (中公文庫)」、それに何を血迷われたのでしょう「ポーの一族 I 萩尾望都」なるマンガである。少女マンガを小生に買わせるかしらんねー。「この3冊はお互いに無縁ではないですよ」と判じ物のようなことを言う。けったいな経験をしたなあ。


このうちの一冊が、結構凄かった。折口信夫の「死者の書」である。書名は知っていたが、これを読むのは初めてである。古代日本の霊性、黄泉の国の物語であるが、ふと思い出したのはジェームス・ティプイトリーJr.の短編SF「愛はさだめ、さだめは死」であった。この連想、今思うにそう的が外れていないと思う。


「学芸員殿」が気に入ったので、また本を仕入れに行こう。

2012年7月9日月曜日

一両はどれくらいの価値がある?

一両が今の価値でいくらくらいの価値があるか、時々考えてしまうことがある。かなり昔に「一両=7万円」と覚えたことがあるが、実際のところ、一両小判の金の重さを現在の金相場で換算する方法、賃金相場で換算する方法、米相場で換算する方法といろいろあり、かなりの幅がある。ネット情報によると2万円から20万円くらいの幅があるとのことだ。

実際に落語や時代劇に一両が出てくることがよくある。そんなとき「この一両にどれほどの価値があるのだろう」と思ってしまう訳だ。

人情落語の代表「文七元結」では呉服屋の売り掛けが50両、これは女郎屋に身を売ったお久の身代になるわけで、文七は主人の手前50両を盗まれたことで自殺を考える。主人公長兵衛は 50両なら来年の暮れまでに左官の仕事をまじめにやればなんとか返せる額だが、その倍100両ならもう無理だと判断するそんな金額なんだな。どうだろう? 10万円として、50両500万円ならなんとかなるが、その倍1000万円の返済に絶望的になるのは分かるような気がする。もっともこの落語「文七元結」では長兵衛は娘を女郎屋に預けて得たなけなしの金50両を、その帰り道見ず知らずの文七にいきなり呉れてやろうというのだから豪毅な落語である。

関西の落語算段の平兵衛では、不審死の隠蔽工作を頼むのに25両を用意する。明るみに出たら打ち首覚悟の算段であるから、余程のことが無ければ引き受けかねるところであるが、これを主人公平兵衛は25両で引き受ける。「文七元結」と同じ一両10万なら250万円であるがこれは安すぎるような気もするなあ。もっとも平兵衛は同じ死体で2度儲けるはめになるので500万円でこれならあり得るかもな。この落語は悪人が世にはばかる極めて不謹慎な落語だけど好きですな。

志ん生の名調子が結構な火焔太鼓では、思わず売れた古くて得体の知れぬ太鼓の値段が300両で、その金額に狂喜する古道具屋夫妻のやり取りが抱腹絶倒、この落語の真骨頂ということになる。お大名だから払ってくれたのだが、先ほどの換算でいくと太鼓ひとつで3000万円であるから、そりゃ有頂天になるというものだ。

こうやってみていくと、落語で「両」が登場する演目は極めて多いのだ。

江戸期のお相撲さん、十両というのは給金が一年で10両という身分のことで、先ほどの例で行くと100万円だ。これでは安すぎるかな。20万円で200万だから、これくらいかもしれぬ。

ここ一年くらい「落語」をよく拝聴する。
志ん生、志ん朝、圓生、桂文楽、小さん、米朝、立川談志、談笑、円楽といろいろ聴くが、ここで今時分の好みを書いておこうか・・・。自分の好みをさらけ出すのは恥をかくようなものだから、やめておこうかしらん、どうしよう。この世界「もの言えばくちびる寒し」でありいろいろ難しいことを言ってくるヒトが多いようだが、文句はいわないでくれ。

落語は本当に楽しい。面白い。今はいろいろ音源が町のCD屋にあるから、片っ端から聴けるのだ。図書館の音源だと「ただ」だよ。これを聴かずしてじいさん、ばあさんになるのはもったいない。そんな気が最近してなあ、熱く聴いているよ。
  1. まあ一番好きな落語家が 三遊亭圓生だといえば「まあそんなものかと」いうヒトも多かろう。「文七元結」「庖丁」なんていいよ、味があって。

  2. 志ん生」がよく分からない、というと「えー」と言われそうだが、これは彼の言葉がよく聞き取れないからなのであって、それほど深い意味は無い。小生には志ん生」を聴くことはTOEICのリスニングを受けるくらいの緊張感がともなうのでハッピーになれないだけ。火焔太鼓はまあ好きな演目だが、「替り目」や「大工調べ」だと余程神経を尖らせないと、細かなところがよく聞き取れないんだもの。

  3. 円楽が好きだというと、また「えー」と言われそうだが、これは彼の「目黒のさんま」をこよなく愛する小生としては外せないのである。秋に円楽の「目黒のさんま」を聴いてご覧なさい。もうさんまが食べたくて食べたくて仕方がなくなるから!

  4. 小さんはいいなあ。だいたい小さんや圓生や米朝や志ん朝だとリアルタイムにテレビやラジオで寄席の中継を聞いていたものだ、子供の頃。だから安心して聴ける。

  5. 立川談志は聴かないようにしている。落語を200演目くらい聴いたなと思える頃に聴き始めてみようと思っている。これはその弟子の談笑を思わず聴いてしまったからである。それがどうしたって? まあな、いろいろ感ずるところがあってだな、止めとこうと。

2012年7月7日土曜日

レバ刺しへの放射線殺菌とradioduransのこと

レバ刺しが禁止になって世間はかまびすしいが、小生の意見ではこんなことを国が規制することはないと思う。フグのキモが大分県内では堂々と食べられているように(もっとも免許調理師のいる食堂での話)、慣習に任せたらよいのである。大分県内ではフグ肝を食するのに全く抵抗がないことを考えれば、潜在的危険度ではやや劣るレバ刺しである。食べた本人の覚悟に任せたら良いと思う。(責任と書かないのがずるいって?  でも昨今の世間の厳しい論調に反して食べようというのだから、覚悟を持って食べてもらいたいし、何があっても文句は言わないのがスジであろう)。

小生がレバ刺しを最後に食べてからどれくらいになるであろうか? もう5年くらいは食べたことがないが、それまでは比較的良く食していた。敢えて食べにいきたいほどのものではないが、行きつけの店に時々置いてあったので、その時は美味しいと思い食べたものだ。置いてあったのが時々なのは、新鮮なレバーの仕入れ日が決まっていたからだという。それくらい、新鮮さには気を使う店だったからよかったのかもしれない。

さて、火をいれるか、放射線をあてるかという議論がある。放射線を当てるというのは、良いアイデアだと思う。味を損ねることなく、殺菌が可能で、しかも食べる人間には一切害がない。ただし、これを許すとしても、最低レバーの新鮮度には気を使ってほしい。以前と同じくらいの新鮮なレバーに放射線を当てたら良い。生菌が死ぬ、すなわち殺菌レベルでやってもらえらばよろしい。

ただ、ちょっと古いものはいけない。毒素性の食中毒というのがある。ベロ毒素を初めとして、「菌は死んでも毒を残す」可能性は大いにあるので、放射線による滅菌済みだからよろしいというわけにはいかぬ。ここがルーズにならないなら放射線による滅菌は大いに推奨されると思う。


さて、ここまでが枕である。

本題は世の中には放射線でなかなか死なない細菌がいるというお話である。これは今から50年以上さかのぼる。缶詰の殺菌にアメリカでは放射線を使っているが、これで滅菌したにも関わらずガスが発生して爆発した製品があったことがきっかけだ。

これをかつては「Micrococcus radiodurans 」と言っていた。最後のradioduransというのは放射線抵抗性という意味である。10Gyの放射線でヒトを、60Gyの放射線で大腸菌を殺すことができるが、radioduransは5,000Gyを浴びても死滅せず、15,000Gyでも37%は生き残るというのだからすごいでしょ。

この細菌を知ったのは丁度1993年頃、癌化の新しい機序として修復遺伝子が登場したころである。ボストンのダナ・ファーバーにKolodnerという大家がいたが、この人たちが次々と修復遺伝子(repair gene)を見つけていった。その中にはヒト発癌と関連するMSH2,MLH1,PMS2などがある。Kolodnerらはもともと原核生物や酵母が主戦場であったが、癌抑制遺伝子ハンティングの真っ最中にヒト癌研究に乗り出してきたわけである。

さて同じ頃、強烈な放射線を浴びて遺伝子DNAがバラバラになっても瞬く間に元のゲノムを再構成する細菌が「南極」で発見されたということが話題になった。論文を読んだが、30分くらいでゲノムが再構成されていく写真が載っていた。全く驚いたと同時に、この細菌には通常の生物の何倍もの何コピーもの修復システムがあるということが説明されていた訳だ。

この細菌がMicrococcus radioduransその後名前が変わりDeinococcus radioduransとして知られるようになったというわけだ。缶詰の細菌も同じものであった。

話はまだまだ続き、この細菌に「通常の生物の何倍もの何コピーもの修復システム」を進化上もたらしたのは放射線被爆を想定したわけではなく、極端な乾燥に耐えるためであったということが最近の雑誌に地味に掲載されている。

5,000Gyを浴びても死滅せず、15,000Gyでも37%は生き残る生物がいるのである。自然は驚異の宝庫ですな。



以上radioduransの話は特殊な話。レバ刺しに放射線は悪い話ではないと再度述べておきましょう。


2012年7月6日金曜日

内田 樹:いつの間にか39冊も読んでいた

内田 樹の本をいつの間にか39冊も買って読んでいる。最初に買ったのは「映画の構造分析」か「寝ながら学べる構造主義」か「おじさん的思考」なのですな。内田せんせのことを知ったのは、せいぜいこの6〜7年のことですから、毎年6冊ほどせっせと貢いでいることになる。いい加減に飽きるだろと思いつつ、つい読んでしまう。なんなんだろうね。


購入本の一覧である↓









































2012年7月4日水曜日

算数と数学の解答です。

解答をよこせという依頼があり、掲載する。

(4)連続3数はいくつか思いつく。

(33=3 x 11, 34=2 x17, 35=5 x 7) あるいは(93=31 x 3, 94=47 x 2, 95=19 x 5) あるいは( 141=47 x 3, , 142=71 x 2, 143=13 x 11)などなどいくらでもありそうだ(これ以上を確かめたわけはないが)。解答は存在するというもので、一例は(33, 34, 35)である。


(5)連続4数では・・・・・・


















存在しないというのが解答である。解答の要旨は以下だ。
  1. 連続4数の中には二個の偶数があり、その差は2である。(偶、奇、偶、奇)あるいは(奇、偶、奇、偶)で連続だから。
  2. 4個の約数があるということは、その数が2つの素数の積であることを意味する。(前問題からも明白だ)
  3. 先の2連続偶数では因数が素数でなければならないので因数の一つは2である。(偶数の素数は2のみ)
  4. もう一方の素数は二連続していないとこまる(共通因数2との積の差が2であるから)
  5. ところが2以外の素数は奇数であるから二連続数はありえない

2012年7月2日月曜日

去年10例目のモンドール婦人が再来へ

去年10例目のモンドール婦人が本日、再来へやってきた。本日の用件は胃カメラをしてくれとのことでモンドールとは全く異なる事由であった。

「ところで、お乳はどうなりましたか?」
「もう言われた通りで、一月もしないうちにすっかり良くなりました。」
「痛みのあった例のスジも、いまでは全く触れなくなりました」とのことであった。

良性で基本的に自然に治癒する病気の半年一年後の経過というのは、実はなかなかフォローできない。
理由は二つあって

(1)良くなったから病院に行く必要がない。わざわざ治ったと報告に行くまでもないし。
(2)良くならないので、別の病院に行って、そこで違う病名であることがわかり治療される。そうすると当院には現れない。

診察した医者も気になるものの、そのうち忘れてしまう。

だからモンドールなんて、予後を追いかけるのがなかなか大変な病気なのだ。


この3〜4年で10例見たモンドールのうち3例が一年後に外来を再来しているが、3週間から4週間であれほど気になった「しこり」「スジの突っ張り」「痛み」は自然に軽快している。やはり教科書通りの病気なのだ、モンドール病。

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2011年9月16日金曜日
10例目のモンドール病がやってきた。

今年はモンドールが少ないなあと思っていたら、昨日今年の2例目、通算10例目のモンドールがやってきた。

こ の人は典型的な迷いヒトである。胸が痛いからと大きな総合病院で、まず外科、整形外科、循環器内科を受診され、原因がはっきりせず、痛みが取れないので次 いで別の病院である我が外来を訪れてきている。顔が鬱気分の顔である。こんな患者は先入観を持たれてしまうのだ、外来医に。心気症的な扱いを受けるのだ な。
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