2012年3月27日火曜日

またまた頸部腫瘤:穿刺した小生は愚か者か?

左頸部に皮下軟部腫瘤を主訴とする78歳女性が外来へ。脂肪腫を疑われて紹介である。しかし紹介のエコーでは多房性に見える部分があり、脂肪よりは液性を考えたい所見である。何十年も前からあるのだというが、しかしこの3週間で急に大きくなってきた。若干の疼痛がある。場所的には肩峰の上部、外側後頸部である。鑑別疾患としては
  1. リンパ管嚢腫(リンパ管種)
  2. 側頚嚢胞
  3. 脂肪腫
  4. 頸部リンパ節腫脹
  5. 神経鞘腫
ということになるのだろうか? 頸部は手を出したくないのだが、せめて診断だけでもと穿刺してみた。20mlの黄色淡明液が採取され、腫瘤は消失した。診断としてはリンパ管種ということになろう。それも嚢胞性なのだろう。ご本人には「また脹れてくる可能性があります」と告げた。78歳だし、余程のことがないかぎり今後は小生が引き受けようと思う。再燃したらピシバニールを入れよう。それはそうと、刺した孔が塞がるか心配ではある。穿刺がきっかけで「こんこんとリンパ液が湧き出てくる」こともあるようで、いつまでも「じくじく」はいやだな。
手術切除をご本人ご家族がつよく望むなら、耳鼻科を紹介しようかと思う。その前にMRIで周囲とのつながりを再確認しておくことになる。脂肪腫もそうだが、深いところで筋肉内や様々な組織へ染み入っている(ことがある)のが、これらの腫瘍のいやな性格だ。その場合、余程の症状(例えば呼吸困難)が無い限り手術の適応はないだろう。
なおこれらの病態については、小児外科領域以外の医師には余り知られることのない興味深い歴史的事実があるのである(小生だけが知らなかったわけではないと思う)。ピシバニール療法のことであるが、
Key wordは
  1. 荻田修平
  2. 頚部嚢胞性疾患
  3. OK432
  4. カルロス基金
  5. 保険適応
である。いろいろgoogleで調べると面白い。治療については深瀬 滋医師によるホームページも参考になる。

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