2011年10月12日水曜日

マクロライド少量長期投与

マクロライド少量長期投与

最近呼吸器科紹介患者にクラリスロマイシンを長期に処方されていることが多くなってきた。このマクロライド処方では抗菌効果は期待していないと知って少し驚いている。抗菌作用の無いマクロライドの開発すらもくろまれているそうだ。

  1. 抗菌作用は不要
  2. 投与量はいずれの疾患でも通常量の1/2~1/3で、エリスロマイシン10~20mg/kg/日か、クラリスロマイシン5mg/kg/日を処方
  3. 3ヶ月服用で効果が出てくる
  4. マクロライドの中でも14員環構造をもつ薬剤には共通して気道の過剰分泌抑制、好中球性炎症の抑制、リンパ球への作用が明らかになっており、マクロライドはこれらの多くの作用点を持ち、全体として気道の炎症病態を抑制する
  5. 消化管運動を亢進作用もある。モチリン受容体に作用。この場合も、抗菌作用が期待できない少量投与で効果を発現

工藤翔二(元日本医大呼吸器教授):この先生がびまん性汎細気管支炎(Diffuse PanBronchitis: DPB) の4人にエリスロマイシンを長期投与治療した症例報告(1984年)からこの治療法は始まり、認知され、世界に広がったと本日知った。ご本人が書かれた小論があるのでnoteしておこう。

マクロライド少量長期投与治療法の意義

感染症 結核学術部会 工藤翔二

 
 マクロライドの抗菌活性以外の作用(新作用novel action)については、すでに大村 智博士(北里研究所)らの研究によって、エリスロマイシンに消化管蠕動ホルモンであるモチリンに類似した作用のあることが知られていた。引き続く、マクロライド新作用に関する研究の展開は、びまん性汎細気管支炎(diffuse pan-bronchiolitis、DPB)に対するエリスロマイシン少量長期療法(EM療法)に始まる。
  DPBは日本をはじめアジア地域に集積する難治性の慢性気道感染症であり、かつてその予後は著しく劣悪なものであった。EM療法は、たまたま我々が遭遇した1症例を端緒とするEM療法の発見(1984年)と、その後の二重盲検比較試験(道州省研究班)等の検証を経て確立した。現在DPBの予後は5年生存率90%以上へと著しく改善している。DPBに対するEM療法は米国内科専門医更新試験(2000年)に出題されるなど、今日では世界的にも認められている。そして対象疾患はDPBから慢性気管支炎、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎、滲出性中耳炎などの上下気道の慢性疾患へ、薬剤はEMからCAM、RXM、AZMへと14、15員環を包括したマクロライド療法へと拡大し、欧米ではDPBと同様の難治性気道疾患である嚢胞性線維症cystic fibrosisへの臨床応用が多数報告されている。・・・・・・

文献

1)工藤翔二、萩原弘一ほか:びまん性汎細気管支炎にたいするエリスロマイシン小量長期投与の臨床効果一4年聞の治療成績、日胸疾会誌、25:632-42,1987

2) Kudoh S,Azuma A, et al:Improvement of survival inpatients with diffuse panbronchiolitis, Am J Respir Critic Care Med, 157:1829-32,1998

 
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