2011年10月31日月曜日

2011年フランクフルトマラソンは大阪マラソンより凄かった

昨日は大阪マラソンというのがあっていたようだが低調だったみたいだ。日本では報道もされなかったようだがフランクフルトマラソンは凄かったようだ。
  1. キプサングは惜しくも世界新記録(世界最高)を4秒で逃す。
  2. 2時間6分台の好記録でも6位
  3. 8分台の記録でも10位
  4. サブテン記録を出しても14位
ベルリンもすごいがフランクフルト・マラソンもいつの間にか大変貌を遂げている。例年この時期はニューヨークと福岡を残すだけの空白期間だったのだが、面白い大会が一つ増えたものだ。

1 Kipsang, Wilson (KEN)      02:03:42
2 Matebo, Levy (KEN)        02:05:16

3 Matebor, Albert (KEN)       02:05:25
4 Sanga, Philip (KEN)      02:06:07
5 Cheruiyot, Robert Kiprono (KEN)   02:06:29
6 Kirui, Peter (KEN)        02:06:31
7 Kiptolo, Chumba Dickson (KEN)   02:07:23

8 Gena, Siraj (ETH)         02:08:31
9 Koech, Duncan (KEN)       02:08:38

10 Sugut, Henry (KEN)        02:08:56

11 Kandie, Raymond (KEN)      02:09:30

12 Szost, Henryk (POL)         02:09:39
13 Abdellatif, Meftah (FRA)       02:09:46

14 Reunkov, Aleksey (RUS)       02:09:54

15 Maiyo, Johnstone (KEN)       02:10:02



2011年10月29日土曜日

両下肢の左右対称性浮腫

両下肢の左右対称性浮腫について

あまりにありふれている病態ではあるが、一応鑑別するとしてある参考ページによると・・・・

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☆☆外来患者では心不全>甲状腺機能低下症>アムロジピン服用>長時間歩行>原因不明>クッシング症候群の頻度


☆☆肝・腎・心・内分泌・CCB(カルシウム拮抗剤)・リンパ管・骨盤腫瘍・廃用性・など以外によく(または時に)出会う両下肢の左右対称性浮腫の患者背景は;

  1)脊椎管狭窄症
  2)ロキソニン
  3)糖尿病性末梢神経障害
  4)インクレチン薬(Januvia)(+ACE-I)
  5)インスリン浮腫
  6)アクトス

とのことである(ロキソニンは確かに要注意であろう

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あと全く知らない病態であったのでメモだけしておこう。

☆☆RS3PE (Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema)は、おそらく自己免疫性の機序を持つ関節炎疾患:
  1. 両側性で対称性の関節炎
  2. 圧痕性浮腫を伴う手背の腫脹
  3. リウマチ因子および抗核抗体陰性 (現在では感度特異度から関節リウマチとの鑑別には抗CCP抗体を測定すべきと考えられる)[2]
  4. 悪性腫瘍では、前立腺癌胃癌大腸癌の合併が比較的多い。

2011年10月26日水曜日

iPadのアプリ駆け足評価中(4):iPad本について

iPad書籍について

今日まで3冊読んでみた。評価としては☆☆☆が初心者の小生にはピッタリで役にたつ本だった。☆☆☆☆はそれ以上に面白い。☆☆は読んでみても良い・・・くらい。
  1. iPad2 ハイパーナビゲーター(秋葉 けんた、いとう あき、井上 真花、 佐藤 新一:¥ 1,554)
    ☆☆☆

    iPad導入時にはこの手のアプリ実装紹介モデル本が必須だと思ったので買ったが、小生にはピッタリであった。これ以上に良い本もあるのだろうが、本屋さんでの立ち読みではこれ以上手が回らない。写真も解説もちょうど良い。導入時にはお薦めである。

  2. iPad仕事活用術!(山崎 潤一郎:¥ 1,050 )
    ☆☆☆

    iPadで何ができるのか漠然とでも知りたいでしょう。自分の想像している(狭い)世界の他にどんな世界があるのか知りたくて読んだが、まあこんなものかと。やはり
    iPadは購入して初めて良さがわかるIT機器なのだろう。この手の解説本はどうしてもサラリーマン相手となるのか、現実的すぎるのが寂しいが、それでも最初は一冊くらいこのような本を読むのだろうな、誰でも。

  3. iPadバカ タブレットにとり憑かれた男の究極の活用術(美崎 栄一郎:¥ 1,365)
    ☆☆☆☆

    iPadで何ができるのか、この本はとても面白い。著者は研究者のようである。800くらいのアプリを実際試した実践者だから、説得力がある。最低この人が使ったことのある環境を次の一週間でそろえてみようと思った。(昨日買って読んだ本である)

2011年10月25日火曜日

iPadのアプリ駆け足評価中(3)

毎日進化する駆け足評価である。本日見つけたのは「AppBank」

iPhoneアプリ / iPadアプリをおすすめするAppBank

今のところベストサイトかもしれない。そこで気になる情報が・・・・

reader&viewerであるべきiPadではあるが、やはりオフィス書類を読む機会は多いのだ。そんなとき良く勧められているのがDocuments To Go® PremiumやOffice² HDというソフトである。この2〜3日に色々なサイトを渉猟して非常に良く推薦されるソフトなんですな。

ところがそれら標準品よりも
 Quickoffice  というソフトの方が優れているという気になる記事が、さてさて。

[iPad] Quickoffice® Pro HD

Documents To Go® PremiumOffice² HDなど、iPadでMSオフィスのファイル(パワポ、エクセル、ワード)を編集するアプリは幾つかありますが、現段階ではQuickoffice® Pro HDがベストだと思います!・・・・とのことだ。

2011年10月24日月曜日

iPadのアプリ駆け足評価中(2)

iPadを購入して気がついたことがいろいろある。大きく分けて2種類だ。

(I) いろんなソフトウェアがあるのだなあ・・・最近は

  1. 一つには小生がいかにソフトウェアの新しい潮流から遅れを取っていたかがよくわかったということ。マックでもWinでもスマートフォンでもいいのだが、この数年の新しい潮流にほとんど気がつかずいていないことに驚いた。

  2. papersもそのひとつ。文献といえばEndNoteというのが定番であり、小生のなかには、論文執筆時の参考文献作成支援ソフトとしてのEndNoteへの思いはつきないわけだが、そういった方面とは別物の文献整理ソフトというのがあることに気がついて新鮮な気分でいっぱいである。

  3. おととい気がついたソフトがevernoteである。小生にはどこがいいのかさっぱり実感できないソフトであるが、とりあえず文献、 HP、写真、なんでも放り込めるので瞬く間に中身がふくれかえっている。皆さんから賞賛されているソフトのようであり、次第に分かってくるであろうと思い、今後使い込んでみようと思う。なにかがきっと実感される日がくるのであろう。

  4. ワコムのタブレットのような手文字入力がiPadでは可能なことは新鮮だ。アナログでもデジタルでも保存可能であり、しかも利用可能であるというのが良い。
(II) iPadの思想性について

  1. iPadを使い始めてしばらくして気がつくことであるが、基本的にiPadでは持ち主がテキストを入力することは望まれていないようだ。ReaderでありViewerとして使ってほしいのだろうと思う。iPod やiPhoneやコンピューターであるMacintoshにはないものを作りたかったから出来たものがiPadなのだと、この3日でとてもとても強く意識されたよ。IT機器を購入して、そんなことを考えさせられたことなんてここしばらくない。とにかく長い文章を書くために使ってほしくないのだろう。大きなスプレッドシートの上で計算なんかしてほしくないんだと思う。iPad上で動くオフィス(ワード、エクセル)やファイルメーカーなんてきっと邪道なのだ。

  2. ReaderでありViewerとしてなにが望まれるか? 不思議とiPadは食卓の上にあるのが似合う。料理のレシピ集なんてぴったりではないか。あるいはルーブルの全作品なんてどうだろう? それとやはり書籍であろう。ジョブズの伝記は今日発売であるが、これが電子書籍で手に入るのなら記念の第一冊めとして購入してもいいなと思う。医療で言えば、自分が参考にする薬品集、処方集、診断の手引き等々。あるいは患者に見せるものとして手術の説明、病気の説明等々。

  3. もうひとつしばらくして気がつくことが、iPad は基本single taskなのだということ。これは素晴らしい退却である。今時のコンピューターでmulti taskが可能な画面の大きさとCPUスペックを持ちながら、あえてsingle taskにしているのが面白い。Mac SEの時代みたいでいいな。single taskの意味がわからない方がいるかもしれないので説明すると、同時に二つのソフトを立ち上げることができないということである。二つ目のソフトを立ち上げたいなら、一個目はquit。この退却路線が小生には極めて革新的に思える。

  4. この器械にはかなり強い思想性が込められていると思うのだ。この思想性に気がつかず、iPadが不便だと思うのは不幸だ。この不便性、制約性を我慢しながら遊んでみることで、なにかが見えてくるような気がするのだがどうだろう?

  5. 購入してよかったと今のところ思うのはそんなところ。これが一年続いたら随分おもしろいと思うな。

2011年10月22日土曜日

iPadのアプリ駆け足評価中(1)

  1. 人気ランキング医療:「添​付​文​書​ ​P​r​o​ ​-​ ​Q​L​i​f​e」​はここからダウンロードした。

    膨大な薬剤情報だけど作りがシンプルで気に入った。iPadの大きさにちょうど良いアプリ。無料。


  2. iMedical Appshttp://www.imedicalapps.com/2010/03/top-ipad-medical-apps-clinicians/http://www.imedicalapps.com/platform-os/ipad/

  3. iMods#モバイルな林檎:iPhone + iPad + MacBook Air + α の情報サイト
    医学生・看護学生・筋肉マニア必見!筋肉を3Dで見ることができるアプリMuscle System Pro Ⅱ (動画あり)画面はそそるが、4600円の価値があるかどうかとまどう。

  4. 25 iPad Apps Revolutionizing Healthcare:すべて英語である。オーソドックスなソフトが多そうだ。iPadをうたっているが、画像はすべてiPhoneのようで少し疑問あり。

  5. MedTech News: Papers は、PubMed などの論文をPDFファイルで整理

    10/22(土)  ダウンロード(
    1200円もしたよ)して確認したが、これは良いソフトだと直感する。いままで論文はEndNoteとリンクしていたが、この方法を本日から止めようと思う。この一年ダウンロードしたpdf論文をすべて ''Papres' に入れてみたが、これはいい!

  6. iPad 医学アプリ: NEJM (New England Journal of Medicine)がiPhoneとiPadでチェックできるようになりましたとのこと.もちろんフリーとのこと.

    10/23(日) ダウンロードして確認したが、確かに最新号をブラウジングできる。但しiPadの上でもiPhone画面であるから小さすぎてやや残念。実はNEJMをフリーで読む方法は(非合法ではなく)ちゃんと別にあるので、小生にはiPadでことさら読む必要はないのだが。



  7. 今にも落ちて来そうな空の下で:この小エッセイは約一年前iPadが日本で初めて販売されてころの感想であるが、なかなか良いご意見である。

  8. iPadアプリに東京女子医大の医師20人が制作協力したスライド一挙500点登場~全国の医療現場のインフォームドコンセント支援~:役に立ってくれるとありがたいがどうだろう?

  9. Smart Coverとのコーディネートが可能なiPad用スタイラスペンがワコムから:手書き入力用のペン、いずれいるのなら早めに手に入れよう。
    http://www.ipadnews.jp/news_sHETi9yPL.html?right

    http://www.ipadnews.jp/news_sQa3EqghE.html?recommend

  10. Skyscape:アメリカの医学ソフト取り扱いHP 。この二日間駆け足で見たサイトでは最もそそられるサイトである。ソフト一本50$〜100$するのが本物っぽいが、高ければ良いというものでもないし・・・。登録すれば14日間お試しで試用が可能である↓↓


2011年10月20日木曜日

iPadを購入したよ

昨日は休日でありApple storeに出向いてiPad(¥52,800)を購入した。我が家はTime CapusuleによるWiFi環境なので、とりあえずWiFiモデル(32GB)を購入した。ついでに購入したのは
  1. Adapter:これは授業でprojecterにつなぐためのもの(Apple VGAアダプタ:¥2,980)

  2. SD USBカード接続用のconnecter(Apple iPad Camera Connection Kit:¥2,980)

  3. カバー(¥6,980):赤い革製のもの ・・・・・・・・・しめて65,740
先日の日曜日にapple storeに出向いたときは丁度iPhone 4Sの発売と重なっていたため、ごった返しており従業員が相手をしてくれなかった。Apple storeの店員には20年前から冷たくされるのには慣れているので、ここは一旦退却。このところApple製品はApple storeから購入するようにしているので、暇な水曜日を待ったのだ。昨日はさすがにすいていたので応対も丁寧。店に入って30分もかからずすべてが終了した。

そば屋の注文風に言えば「iPadひとつ。WiFi 3Gなし。32GB、黒枠ね。それとミラーリングが可能なプロジェクタ接続用のコネクターと赤いカバーくださいな」これだけである。そしたらおねえちゃんが「お客様、デジカメのSDカードを直接させるコネクターも重宝しますが、いかがですか?」というので「御意」といい追加した。

その場でストアのMac bookにつないでactivateという儀式を行い、
Mac bookを外す。次にMac App Storeにつなぎ、所有しているApple IDとパスワードを入力。これで「アプリ」と呼ばれるソフトウエアがダウンロードできるようになったので、早速googleやいくつかのアプリを入れた。

はたと気がついたのは起動とシャットダウンの方法である。急いで教えてもらう。あと画面の簡単な操作法を教えてもらう。直感的とはいえ、昔よりもややこしいのが、新しいアプリが増えたときの画面の整理の仕方。フォルダーを作ったり、入れ替えたりしているあいだ、あらゆるアプリアイコンがぷるぷる震えているのだが、この震えをとる方法がなかなかわからない。

あとメールソフトで既存のメールアドレスを入れ込むのに混乱する。マックでいうシステム環境設定のなかの「ネットワーク」という概念がないようだ。いきなり「Mail」に入力するが、入力内容がやや中途半端である。

今晩からはアプリを試すことにする。これには考えがあって、アプリ用の費用を2万円くらい見込んでいる。一週間でアプリを20個以上試してみるつもりだ。短期間で大量に評価して、選び抜いて自分用のiPadにはやく作り替えたい。

2011年10月15日土曜日

1000人ゲノムプロジェクトの現状:2011年10月

1000人ゲノムプロジェクトの現状についてnote

なかなか全貌をつかむのは難しい(データが膨大)プロジェクトであるが、ちゃくちゃくと進捗しているようである。
論文としては昨年10月のnature以降のものは気がついていない。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
2010年10月28日木曜日

Nature:1000ゲノムプロジェクトの最初のデータ公表


2008年2月23日土曜日

1000人ゲノムプロジェクト(1)


2008年2月24日日曜日
1000人ゲノムプロジェクト(2)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

今現在のプロジェクトのリソースを知る案内板のようなポスターがあるのでnoteする。

http://www.1000genomes.org/announcements/ichg2011-1000-genomes-project-resources-poster-2011-10-12

下のようなイメージである。いろんなところがclickableで、リソースに飛べる。

2011年10月14日金曜日

腸管幹細胞にはLgr5より上位細胞が存在するかもしれない:nature

なにやら穏やかでない論文がnatureに登場した。腸管幹細胞にはLgr5より上位細胞が存在するかもしれないというものだ。

A reserve stem cell population in small intestine renders Lgr5-positive cells dispensable

小腸には予備の幹細胞集団が存在するためLgr5陽性細胞は必ずしも必要ではない

Hua Tian, Brian Biehs, Søren Warming, Kevin G. Leong, Linda Rangell, Ophir D. Klein & Frederic J. de Sauvage

Nature | Letter

Nature 478, 255–259 (13 October 2011)

Received 19 April 2011
Accepted 01 August 2011
Published online 18 September 2011

2日から5日で再生する小腸上皮は、最も再生力のある組織の1つである。遺伝子誘導による細胞運命マッピング研究によって、この組織では2つの主要な上皮幹細胞プールが同定されている。1つのプールはLgr5発現円柱細胞からなり、急速に細胞周期が進行し、主に陰窩底部に存在する。もう一方のプールは Bmi1発現細胞からなり、主に陰窩底部の上に存在する。しかし、これら2つの幹細胞プールの相対的な機能やその相互関係は解明されていない。

本論文ではマウスで、 Lgr5遺伝子座にノックインしたヒトのジフテリア毒素受容体( DTR )遺伝子を用いて、 Lgr5発現細胞を特異的に除去した。 Lgr5発現細胞を完全に欠損しても、上皮の恒常性は障害されないことがわかり、他の細胞種がこの細胞集団の除去を補償できることが示された。Lgr5発現細胞の除去後、Bmi1発現細胞による子孫細胞産生が増加したことから、Bmi1 を発現する幹細胞がLgr5発現細胞の欠損を補償すると考えられる。

実際、細胞系譜追跡実験によって、Bmi1発現細胞からLgr5発現細胞が生じることが明らかになり、小腸上皮における幹細胞の階層構造が示唆された。我々の結果は、Lgr5 発現細胞は正常な腸の恒常性に必ずしも必要ではないこと、また、Lgr5発現細胞が存在しないと、Bmi1 発現細胞が代わりの幹細胞プールとして機能できることを証明している。これらのデータは、この2つの幹細胞集団間の相互関係を示す初めての実験的な証拠である。 Bmi1 発現幹細胞は、小腸上皮が損傷を受けた場合の予備の幹細胞プールであるとともに、病的状態ではない場合の Lgr5 発現細胞の補給源となっている可能性がある。


Affiliations

Department of Molecular Biology, Genentech Inc., 1 DNA Way, South San Francisco, California 94080, USA
Departments of Orofacial Sciences and Pediatrics, Institute for Human Genetics and Program in Craniofacial and Mesenchymal Biology, UCSF, 513 Parnassus Avenue, San Francisco, California 94143-0442, USA
Department of Research Oncology, Genentech Inc., 1 DNA Way, South San Francisco, California 94080, USA
Department of Pathology, Genentech Inc., 1 DNA Way, South San Francisco, California 94080, USA
Linda Rangell


なにしろ当ブログは2007年11月にLgr 5の登場とともにスタートしているのである。それ以来4年が経過し、Hans Cleversの報告は逐一追いかけてきたのだが、今回のこの報告は穏やかではない。続報を待とう。にわかに群雲が湧いてきた感じがする。

2011年10月13日木曜日

最新の哺乳類の類縁関係:natureより

29種類の真獣類とヒトゲノムを比較し、その類縁関係を探る報告がでた。




























犬と猫、イルカと牛、ゾウとたぬき、君たち仲が良すぎるんじゃないか?

Nature


A high-resolution map of human evolutionary constraint using 29 mammals

Kerstin Lindblad-Toh, Manuel Garber, Or Zuk, Michael F. Lin, Brian J. Parker, Stefan Washietl, Pouya Kheradpour, Jason Ernst, Gregory Jordan, Evan Mauceli, Lucas D. Ward, Craig B. Lowe, Alisha K. Holloway, Michele Clamp, Sante Gnerre, Jessica Alföldi, Kathryn Beal, Jean Chang, Hiram Clawson, James Cuff, Federica Di Palma, Stephen Fitzgerald, Paul Flicek, Mitchell Guttman, Melissa J. Hubisz



Received 25 January 2011
Accepted 05 September 2011
Published online 12 October 2011

The comparison of related genomes has emerged as a powerful lens for genome interpretation. Here we report the sequencing and comparative analysis of 29 eutherian(真獣類) genomes. We confirm that at least 5.5% of the human genome has undergone purifying selection, and locate constrained elements covering ~4.2% of the genome. We use evolutionary signatures and comparisons with experimental data sets to suggest candidate functions for ~60% of constrained bases. These elements reveal a small number of new coding exons, candidate stop codon readthrough events and over 10,000 regions of overlapping synonymous constraint within protein-coding exons. We find 220 candidate RNA structural families, and nearly a million elements overlapping potential promoter, enhancer and insulator regions. We report specific amino acid residues that have undergone positive selection, 280,000 non-coding elements exapted from mobile elements and more than 1,000 primate- and human-accelerated elements. Overlap with disease-associated variants indicates that our findings will be relevant for studies of human biology, health and disease.

マイコプラズマにマクロライドの理由

マイコプラズマにセファム系、ペニシリン系の抗生物質が効かない理由を覚えておこう。

マイコプラズマには細胞壁が無いから・・・・というもの。忘れてましたね、こんなこと。というかセファム系、ペニシリン系の作用機序も忘れてました。Wikiによるとマクロライドは細菌細胞の中に入り込み、リボゾームを阻害するとのこと。ヒトのリボゾームは阻害されない選択性があるのね。

一方セファム系、ペニシリン系はというと・・・・・・・

  1. 真正細菌の細胞壁の主要成分であるペプチドグリカンを合成する酵素(ペプチドグリカン合成酵素、ペニシリン結合タンパク、PBP)と結合し、その活性を阻害する。この結果ペニシリンが作用した細菌はペプチドグリカンが作れなくなり、その分裂に伴って細胞壁は薄くなり、増殖が抑制される(静菌作用)。

  2. また細菌は細胞質の浸透圧が動物の体液よりも一般に高いため、ペニシリンの作用によって細胞壁が薄くなり損なわれた細菌細胞では外液との浸透圧の差から細胞内に外液が流入し、最終的には溶菌を起こして死滅する(殺菌作用)。
ということだ。たまには温故知新もいいだろう。

2011年10月12日水曜日

マクロライド少量長期投与

マクロライド少量長期投与

最近呼吸器科紹介患者にクラリスロマイシンを長期に処方されていることが多くなってきた。このマクロライド処方では抗菌効果は期待していないと知って少し驚いている。抗菌作用の無いマクロライドの開発すらもくろまれているそうだ。

  1. 抗菌作用は不要
  2. 投与量はいずれの疾患でも通常量の1/2~1/3で、エリスロマイシン10~20mg/kg/日か、クラリスロマイシン5mg/kg/日を処方
  3. 3ヶ月服用で効果が出てくる
  4. マクロライドの中でも14員環構造をもつ薬剤には共通して気道の過剰分泌抑制、好中球性炎症の抑制、リンパ球への作用が明らかになっており、マクロライドはこれらの多くの作用点を持ち、全体として気道の炎症病態を抑制する
  5. 消化管運動を亢進作用もある。モチリン受容体に作用。この場合も、抗菌作用が期待できない少量投与で効果を発現

工藤翔二(元日本医大呼吸器教授):この先生がびまん性汎細気管支炎(Diffuse PanBronchitis: DPB) の4人にエリスロマイシンを長期投与治療した症例報告(1984年)からこの治療法は始まり、認知され、世界に広がったと本日知った。ご本人が書かれた小論があるのでnoteしておこう。

マクロライド少量長期投与治療法の意義

感染症 結核学術部会 工藤翔二

 
 マクロライドの抗菌活性以外の作用(新作用novel action)については、すでに大村 智博士(北里研究所)らの研究によって、エリスロマイシンに消化管蠕動ホルモンであるモチリンに類似した作用のあることが知られていた。引き続く、マクロライド新作用に関する研究の展開は、びまん性汎細気管支炎(diffuse pan-bronchiolitis、DPB)に対するエリスロマイシン少量長期療法(EM療法)に始まる。
  DPBは日本をはじめアジア地域に集積する難治性の慢性気道感染症であり、かつてその予後は著しく劣悪なものであった。EM療法は、たまたま我々が遭遇した1症例を端緒とするEM療法の発見(1984年)と、その後の二重盲検比較試験(道州省研究班)等の検証を経て確立した。現在DPBの予後は5年生存率90%以上へと著しく改善している。DPBに対するEM療法は米国内科専門医更新試験(2000年)に出題されるなど、今日では世界的にも認められている。そして対象疾患はDPBから慢性気管支炎、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎、滲出性中耳炎などの上下気道の慢性疾患へ、薬剤はEMからCAM、RXM、AZMへと14、15員環を包括したマクロライド療法へと拡大し、欧米ではDPBと同様の難治性気道疾患である嚢胞性線維症cystic fibrosisへの臨床応用が多数報告されている。・・・・・・

文献

1)工藤翔二、萩原弘一ほか:びまん性汎細気管支炎にたいするエリスロマイシン小量長期投与の臨床効果一4年聞の治療成績、日胸疾会誌、25:632-42,1987

2) Kudoh S,Azuma A, et al:Improvement of survival inpatients with diffuse panbronchiolitis, Am J Respir Critic Care Med, 157:1829-32,1998

 
例によってクリックで大きくなります。

肺子宮内膜症:月経随伴性気胸

小生は婦人科ではない。しかしながら外科の外来をやっていると結果的に婦人科疾患である患者が少なからずやってくる。卵巣癌は年2例はくるだろうし、癌でなくても嚢胞性卵巣疾患は比較的多い。子宮筋腫で婦人科に紹介する患者も多い。自分でも縁があるなあと思う疾患は、何回かノートした子宮内膜症である。直腸やS状結腸でもみるが、臍まわりの腹壁や、帝王切開後の術創でも診たのでノートした。

最近子宮筋腫におけるMED遺伝子の突然変異の話題をノートしたが、その際「良性平滑筋腫の肺転移」について書いた。本当に子宮は変わった臓器であることよ。子宮内膜症の中には肺病変もあり、それは月経と共に喀血したり気胸をおこしたりするのだそうだ。まあこの病態のことは昔ノートしたので知ってはいたが、もちろん一度もこんな患者に遭遇したことはないし、一生みることも無いだろう・・・・と思っていた。

ところで先週のNHKのドクターGは最終診断がクラミジア腹膜炎→肝周囲炎(Fitz-Hugh Curtis syndrome)だったが、このクラミジア腹膜炎(Fitz-Hugh Curtis syndrome)というのもそう希ではなく、消化器外科外来にも時に現れる。番組の患者は右肩周囲の激痛というのが主症状だったのだが、その際の鑑別診断に「月経随伴性気胸」が出てきたのに驚いた。テレビに出てくる研修医は良く勉強しているものだね。というか、Fitz-Hugh Curtisや月経随伴性気胸というのは国家試験的には常識なのかもしれないな、ひょっとすると。詳細はボクには不明だが。いずれにせよ、月経随伴性気胸なんて症例報告的に少ないはずだ。はずだと思っていた。

ところが先日ある報告を読んで、ちと驚いたのだ。月経随伴性気胸を150例診たドクターがいるのだね、この国には。面白いよ。なにがって?

  1. 月経随伴性気胸は右肺にしか起こらない。150例全例右側であり、左を診たことがない。
のだそうだ。

    肺子宮内膜症   栗原正利
    呼吸 28 (10) p999-1003, 2009 より引用。

報告者は東京の日産財団法人日産厚生会 玉川病院 気胸研究センターの栗原正利医師。1986年の開設から2001年までの間に5400例の気胸を治療しているという。気胸のhigh volume centerなのだ。気胸は男女比が7:1らしい。だからこの5400例のうち女性患者は約700例である。右にしか起こらない理由はいまだ不明のようだが、これ面白いなあ。小生が遭遇するモンドール病は左がほとんどなんだけど。これらの左右偏倚は不思議だが、きっと理由があるはずだ。まあ、これは置いといてだな・・・

さて、先ほど150例が月経随伴性気胸と栗原正利医師は報告している。簡単な計算によると女性の気胸の5分の1が月経随伴性ー肺内子宮内膜症ーによるものだということになりはせぬか?これは驚きである。月経随伴性ー肺内子宮内膜症は比較的ありふれた病態ということになるではないか。

女性を診たら妊娠と思えというのは医療者としては全く正しい心構えであるが、今後は女性を診るときもう一つ「病態に子宮内膜症が潜んでいないか」疑うようにしよう。そうしよう。

2011年10月6日木曜日

マッキントッシュと私:人生はかないなあ

マッキントッシュにわくわくさせられた理由を考えてみた。当然初めの頃(90年代)のほうがインパクトは大きい。

  1. タブの存在:それまでNECのコンピュータで仕事をしてきた小生にとって、字間をあけることはすなわちスペースを挿入することだったわけだが、初めてマックで学会ポスターを作ったとき、タブという概念があることを教えてもらい、モニターどうりにプリントされたポスターの文頭がそろうことの美しさを見て感動した。本当に感動したのだ。これがWYSIWYG(ウィジウィグ)であった。WYSIWYGとはコンピュータのユーザインタフェースに関する用語で、ディスプレイに現れるものと処理内容(特に印刷結果)が一致するように表現する技のことであった。当時マックのみ可能であった。What You See Is What You Get(見たままが得られる)。90年代のマックの売り言葉のなかでも一番有名なのがWYSIWYGだった。

  2. レーザーライターの存在:1990年にドイツ・ハンブルグであった学会にポスターを持っていった小生であるが、ミルキーウェイというマックショップを学会2週間前に知り、毎日通ってポスターを作った。もう毎日が楽しくて楽しくて仕事が終わるのが待ち通しかった。小生に教えてくれたのはマックの達人というべききれいなおねえさんだったが、こまったのはこのお店、将来のお客である小生に使用料をとるわけだ。マックを一時間使うと200円くらい取られた。またレーザーライターで印刷するとA4一枚150円くらいだった。当時の正式のアップルストアはこのような上から目線の商売をしていたのだ。しかし一回レーザープリンターで印刷されたポスターを経験すると、もう元には(ドットマトリックスプリンターのことだよ!)戻れない。知的奴隷のようなものだね。

  3. ページレイアウトソフトの存在:きれいなおねえさんが小生に「ポスターを作るのならこのソフトね」と教えてくれたのがクオーク・エクスプレス(QuarkXPress 2.0J (1989))というソフト。マックを触ったことも無い小生が最初に使ったソフトがクオークなのである。今思えば笑止ものであるな。こんな高級なソフトで教える方も教える方だよな。でも感動しましたよ、このソフト。行間が変えられる。フォントサイズも0.01ポイントで変えられる。なにより驚いたのは字間を変えられるのだ。少ないながらポストスクリプトフォントも入っている。モリサワのフォントが入っているのだ。写植屋さんで作ってもらうよりもきれいな印刷物が手に入った。この頃(1990年代)のPSプリンターの印字の方が今のレーザープリンターの印字よリもきれいではなかったかと密かに思っているのだが、これは小生の勘違いであろうか?

  4. 値段のバカ高さこれらの機器のとりこになった小生としては、早速マックを手に入れたくなったわけだが、問題は値段であった。店頭にあった機器はMac IIci + 純正レーザーライターであったが、120万円+90万円くらいで合わせると200万円を超える。高値の華であった。職場のボスに訴えること約半年、漸く購入に成功した。Mac SE30と沖電気のPSプリンターであった。合わせて140万円である。ここでは沖電気のプリンターがみそである。純正のアップルレーザープリンター以外でポストスクリプトが出来るのはこの沖のプリンターだけだったのである。(モチロン商業用にはライノタイプのタイプセッターと呼ばれる器械はあったが、一般人には無関係のしろもの) この組み合わせは当時最強であった。値段は値段としてどうしても手に入れたくなる。

  5. ハイパーカードが無料で添付されていたこと:ハイパーカードはソフトウェアである。MS-DOSやMacOSではない。マックユーザーならだれでも使えるソフトウェアであった。気の利いた小学生でも使えるが、一方、頭の硬い大人にはとりつくしまのない、何をしたらいいのか全く意味不明のソフトであった。ただ出来上がったソフトー例えば英単語テストーとか、電話番号データーベースとかはー素人が作ったとは思えないくらい気が利いたインターフェースであり、実用的には申し分のないものであった。こんなソフトを無料でつけてくるアップルという会社に小生はいたく感激したものだ。

  6. エバンジェリストという言葉が世に出回っていたこと:布教者、伝道者という意味であろうか。もともとは宗教用語であるエバンジェリストということばはマッキントッシュとともに日本でも一世を風靡した。日本で一番有名なエバンジェリストは大谷和利さんであり、「マック教」ともいうべき活動をされた。当時どんな組織にもマックのエバンジェリストはいたのではないかと思う。高い器械だったことから、なかなか購入は難しかったが、小生などは組織の番頭さんになっており、また組織のエバンジェリストだったので、視界に入るパソコンからNECを駆逐し、すべてマックに置き換えたものだ。市場に出てくるあらゆるマックをいろんな形で手に入れた。面白かった。

  7. ソフトとハードが一体化していたこと: 一般人にはマック改造の余地がなかった。インテル系のコンピュータがプログラム可能だったのに対し(小生でも初めはBASICを覚え、後にはPASCALで当直夜勤表作成プログラムを書いたこともある)マックでは基本的にはそれを許さないシステム構成だった。ソフトウェアが優れていたため、それで十分だったこともある。

  8. 素晴らしいソフトウエアがそろっていたこと:古い順から好きなソフトを挙げると、ワープロでは「マックライト」英文ワープロでは「Write Now」である。今でもこの2つのワープロが好きだ。本当に使い勝手がよかった。Write NowはEndNote(文献作成ソフト)と早くから連動していたし。ドロー系では「マックドロー」これで十分だった。学会/論文にこれ以上は要らなかった当時は。ペイント系ソフトは余り必要を感じなかった。写真では「Degital Dark Room」であろう。グラフ作成ソフトではデルタグラフが良かったり悪かったり。これはバージョンアップをする度に出来・不出来の差が著しかった。(後のHP作成ソフトであるDream Weaverや写真アルバム作成ソフトであるも出来不出来が目立ったソフトである)デルタグラフより優れていたのは、KaleidaGraphかもしれないが、これも初期バージョンが美しかった。統計ソフトではStatViewが初期から良かった。私はこのVer 1.0を持っていたが、厚てのボール紙を折っただけの簡素なパッケージ(その中にフロッピーと英語の解説書が挟まっている)と値段のバカ高さが印象的。パッケージは例えて言えば、藁でくるんだ納豆のイメージである。値段は8万円だった。91〜2年のころはこんなソフトは売れないのだ。街中のアップルショップに一年くらいずーっと売れずに置かれているのを知っていた小生、店員と交渉したところ、なんと一万円で売るという。急いで買って帰りました。つい最近までバージョンアップを続けていたが、あの有名なStatViewだがver1.0から使っているユーザーはそうはいないと思う。プレゼン用のソフトはAldus Persuasionが人気だった。とはいえ、まだプレゼン用プロジェクターは一般には手に入らなかったから、これはスライド作成用であった。Persuasionで作ったプレゼンファイルを最後に専用のカメラ付き機械を使い、35mmカラーフィルムに焼き付けるわけだ。そして現像してもらう。マック登場以前、スライドを作るのに幾らかかったか覚えているだろうか? 青バック白活字のスライドを10枚作るのに確か5万円以上かかったはずだ。これは写植スライド原稿を活字で作ってもらうところから依託しての話。元原稿は手書きである。いずれにしても学会の一週間前にはほとんどできあがっておかないと予行演習もできない。ふところは大いに寂しくなる。そんな時代から、カラースライドが思いのままに数百円でできる時代になったわけだ。しかも予行演習はPersuasionファイルをパソコンモニターで流して済ませてしまえる。ミスや校閲はその場で修正し、学会直前に現像すれば無駄なお金がいらなくなる。皆さんのけぞって喜んだものだ。

  9. マックの月刊雑誌は魅力的であったMacLifeはいまの月刊女性雑誌と同じくらいファッショナブルな雑誌だった。MacJapanは中身が濃かった。Mac + Cyberという月刊誌はぶっ飛んでいた。前衛雑誌のような雰囲気の超オタクな雑誌。

  10. そんなこんなでアップルに夢中だった:だからつぶれてほしくなかった。小生がのめり込んだ頃から、漢字Talkが進化したり、カラー化が進んだり、マルティタスクが実現したり、true typeが登場したり、CDが読めるようになったり、あるいはインターネットが始まったりわくわくどきどきの時代だったが、しかしジョブズはいなかった、不在だったのだ。だからいつもアップルは存亡の危機にあったのだ。つぶれないように、それでだけを祈って、番頭さんはマックを買いまくった、買わせまくった。関係したマックは20台以上あるのだ。1企業を応援する為に、買いまくったわけであるが正直馬鹿である。stay foolishを実践したのだ。
           これからマックはどうなるのかな。

スティーブ・ジョブズ死去

スティーブ・ジョブズ死去

この日がくることは数年前から予想されていたとはいえ、ショックだ。初めてマックに触った日のことが鮮やかに思い出される。1990年の7月だったと思う。たった21年だったんだな。どう考えてもジョブズなしのマックはあり得ない。ジョブズなしのiPhoneはあり得ない。ジョブズなしのiPadはあり得ない。これで一応マックは終わったのだ。これからは新しいアップルのコンピュータの横で古いマックと古いOSを大事に大事に使っていこう。

合掌なんかしないぞ。勝手にくたばりやがって、このやろう。ジョブズの死で未来のことが全く考えられなくなる。夢が終わったな、今日。嗚呼。

2011年10月5日水曜日

樹状細胞がノーベル賞:微笑ましい

個人的には樹状細胞には縁がある。
  1. 自分ではやったことがないが、若い頃周りの先輩・同僚・後輩にS100蛋白を染めていたヒトが多かった。これはランゲルハンス細胞(樹状細胞)を染め分ける染色ということで、特に癌組織での免疫反応を見るのになかなか良い指標とされていたものだ。最初の頃は50ccのファルコンチューブに入った抗血清を後生大事に冷蔵庫に入れていたなあ、皆さん。アザイドを入れ忘れて、腐らせると上司からこっぴどく怒られていた。この抗血清は染まり具合がとてもよく、どんなホルマリン切片でも、かなり切れ味鋭く明瞭に樹状細胞を染め出していた。概略、この細胞が多く認められる癌患者の予後は比較的良いというものである。この研究の土台には、癌間質のリンパ反応というものがあるのだ。病理学教室でたくさん胃癌標本をお持ちのところで確かめると良いが、癌組織の周辺にリンパ球が浸潤している癌患者というのが必ずある一定の数ある。同程度の病期であってもリンパ球浸潤の多い癌患者は、予後がよろしいことは昭和の30年〜40年ころから知られていた。これが何を意味するのか? 癌免疫のmajor playerを知るのに、当時はまだCD抗原が無かったのである。但しS100蛋白は知られていたのだ。昭和50年台であろうか。そんなこんなで、全国的にS100蛋白を染めることが流行った時代があったのだな。今ではCD抗原があるので、樹状細胞はそちらで染めるようだ。今S100蛋白といえば、メラノーマやある種の腫瘍を染めるときに使われるようだ。

  2. 1990年初頭にベルギーのブーンというひとがMAGEという抗原型を見出し、これ以来癌・精巣抗原としてペプチドワクチン治療が始まった。サイエンスに載った彼らの論文はそれまで免疫治療が非科学的とののしられていた状態を打ち破るものとして喝采をあびたのだ。非特異的免疫治療がようやく「分子」を相手に免疫治療を行える時代に生まれ変わった先駆けだったわけだ。治療として合成ペプチドを作って処理させる相手が患者「樹状細胞」なのである。その後MAGE 以外にもいくつもの癌・精巣抗原が見出されている。ペプチドワクチンにおける日本の貢献は実は大きく、初期段階では弘前大学の伊東教授(後の久留米大学)やNIHの河上先生(後の慶応大学)が先陣を切っていた。その後は例えば長崎大学の玖珠先生(後の三重大学)、九大生医研、東大医科研の中村先生などが活躍されたが、でもなんといっても樹状細胞そのものの本質的研究を行っていたのは京都大学の稲葉カヨ先生であろう。

  3. 今回のスタインマン教授の樹状細胞によるノーベル賞について、いろんな方がいろんなコメントを寄せられると思うが、小生は稲葉カヨ先生のコメントをお聞きしたい。なんといってもスタインマン教授のお弟子さんということだし。

  4. 膵癌で4年も治療されていたスタインマン教授であるが、その最後に受けていた治療が実はご自分の開発されたペプチドワクチンー樹状細胞治療だったようだ。それが小生にはうれしい。大変な療養生活だったと思われるが、膵癌で4年は長い。ご自分がその分野を作った樹状細胞で自分の最後の治療をされ、残念ながら亡くなったとはいうものの、でもノーベル賞が授与された(受賞に間に合えばよかったのだろうがね)。こんな素晴らしい話が他にあるだろうか。

2011年10月2日日曜日

疾患ガイドライン批判

他科疾患のスタンダード診断・標準治療方針を知るというのは、実はそう易しい話ではない。たとえば糖尿病。新しい薬があとから、あとから出てきているのがここ10年。現役最前線の先生にして、新しい薬の臨床感覚(使える薬なのか?副作用は製薬会社の言う通りか?)をつかむのに数年はかかるはずで、そう言う意味では非専門医が標準治療をコンテンポラリーに知るのはなかなか大変である。

関節リウマチも診断基準から最新治療方針まで、がらりと変化したことに気が付いていない他科診療者はまだまだ多いと思う。

昨日書いたB型肝炎の治療法の進展についても同様だ。私の意識の中では肝炎では(1)インターフェロン→PEGインターフェロンと進んでいること、(2)患者の遺伝子多型によりあるいは肝炎ウイルスサブタイプにより効果のほどが異なることが知識の最前線であった実は一昨日紹介転院してきたB型肝炎・肝硬変・肝癌の患者さんの持参薬を大幅に整理縮小しようとして「核酸アナログ製剤」にぶち当たったというのが小生にとってのバラクルードへの意識の芽生えであった。

【ホームページと疾患ガイドラインのこと】

このような日進月歩の変化のなかで、実は頼りにすべき情報はあまり多くないのである。ネット情報は玉石混交である。嘘だとは言わないが、実は古い情報が多すぎるのである。他科疾患に関してはこれが困る。

熱意を持ってHPを充実させた時期というのが各医療機関にはある。病院管理者がようやくネットの価値に気が付き中間管理職に魅力的なHPを作るように命じた時期。国や役所が積極的に指導した時期。病院機能評価がますます盛んになってきた時期いろいろあるが、多くは今から5年前くらいのHP(ホームページ)が出来がよい。実に立派な美しい熱のこもったページが多いのであるが、しかしながら作成以来更新されていないHPが実に多いのである。HPが作成時から変わらないのでは困るのである。2011年の現在、一昔前の情報をそれらしく掲載されても困るのである。ためしにリウマチ、白血病、肝炎でネット検索をやってみると良いが、各疾患の2011年における概説を知るのに頼りになるページを捜すのはなかなか困難である。

古い情報は積極的に消してしまうシステム・ルールを早急に作らないとだめだな。外部介入は最後の手段だ。だからもちろん各医療機関が自主的に行うべきで、これ早めに内部から改革しないと、そのうち医療事件の原因になることすら予感されるので喫緊の課題だ。


次にガイドラインである。これは多くは厚労省関連研究班か各種学会がサポートしている。これも玉石混交である。全てに目を通しているわけではないし、そんな立場でもないが、10近くに目を通した段階でこれは良くできていると思うガイドラインとこれはひどいと判断せざるを得ないガイドラインがあるので敢えて紹介したい。

ガイドラインとして極めて良質の出来だと思われるのは「抗 HIV 治療ガイドライン」である。

非専門家が読んでもわかる。論理的である。なによりガイドラインでありながら、生き生きと血が通っており熱意を感じる。最初に小生が読んだのは2009年版だったが、毎年最新版がでているのが素晴らしい。


一方これはいかがなものかと思われるのが、日本肝臓学会の編纂による「慢性肝炎の治療ガイド 2008」である。

非専門家にとってわかりにい。構成が非論理的である。熱意を感じない。1200円という価格で文光堂から発行されているにも関わらず、誤字もあれば校閲も行われていない。(p14表4の説明文、p45文頭の突然の文体変化等々)とにかく読みにくい。これではガイドラインにならないというのが、文責者の岡上武先生や林紀夫先生にはおわかりにならないのか?こんなものに文責者として名前を出されて恥ずかしくないのだろうか?肝臓学会の先生方は、早急に改訂版を用意されたほうが良いと思う。


ガイドラインというのはやっつけ仕事で出して欲しくない。病院機能評価とかいろいろな事情で全国的にガイドラインが必要になるご時世ではあるが、本質的には患者のため、それと実は非専門医のためにもガイドラインは必須なのである。非専門医の元に現れた患者殿を専門医に紹介しなくてはいけないからね、私らは。そんな非専門医にわかるガイドラインであって欲しい。これは実は極めて高いハードルなのである。非専門医といっても、他科の専門医であり、目は肥えている。論理が通らないものは許さない。

ガイドラインの指標には「抗 HIV 治療ガイドライン」を参考にしたら良い。HIVの患者には一回しか接したことのない外科の小生が、その患者をどうしたらよいかわからず参考にしたのがこのガイドラインである。それでも大変わかりやすかった。助かった。

(1)専門病院・センターのホームページを常に新しいものにリフレッシュすること及び、(2)疾患ガイドラインを責任もって最高のものにすること。この二つを全国の関係者に強くお願いしたい。

NHKのドクターGで感心したこと

ドクターGというテレビ番組がある。時々観るが余り感心しないことが多い。あまりにマニアックな病態が多いからである。二〜三週間前の最終診断は「腹直筋鞘血腫」。こんな病気は知らなかった。聞いたことも診たこともない。病態としてあり得ることは了解できるが、なかなかそんな病名は思いつかない。だけど解剖学的(つまり触診で)にあるいは超音波で直ぐに病気の存在はあたりががつきそうだとはおもうぞ。この番組できるだけ病歴だけで診断にという趣旨であるから、なんだか実地臨床とはかけ離れているなあと思っていた。

そんな中先週の腰椎骨髄炎と感染性心内膜炎には感心した。この症例は極めて教育的だったと思う。鈴木富雄さん(名古屋大学医学部附属病院総合診療科)は上手だなあ。

どこかで見たことのある先生だと思ったら、ケアネットDVDの

  1. Dr.鈴木の眼底検査完全マスター ケアネットDVD
  2. 亀井道場スーパーライブ 臨床呼吸器ブラッシュアップ
  3. Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線
に登場していた。小生は3年ほど前にこの3本(正確に言えば上下あるから5〜6本)愛聴していた。ケアネットDVDの初期の作品は高いお金を出しても聴いておくべきものがあり、総合診療の鈴木富雄さん、呼吸器の伊賀 幹二さん、整形外科の仲田 和正さん、岸本 暢将さんの「作品」は繰り返し拝聴した。中高年医師が改めて他科疾患の現状をおさらいするのにケアネットDVDを初めとするAV環境が整っているのは極めてありがたい。

で他科疾患への知識ブラッシュアップをどうするかということについて考えてみた・・・以下次号。

2011年10月1日土曜日

バラクルードで知っておくこと

HBV陽性で35歳以上のひとに考慮すべきこと

http://bms.m3.com/ck9a5a49c4a5b00ac73c5a38d96344b38c742/contents/prominent/05/index.html?cid=20110911VJ