2011年6月3日金曜日

肺腺癌と分子標的:crizotinib vs AF802、CH5424802

ALK融合遺伝子については続々と分子標的薬剤の開発/報告が続く今日このごろである。そろそろアメリカではASCO(米国癌治療学会)なる学会が始まるがどんな評価となるのやら。

小生はASCOや乳癌のSt.Gallen(サンクト・ガレン)が余り好きではない。何が気に入らないかといって、ここで標準治療とやらが決まっていくのがいやなのだ。日本にも一億2千万からの人間がいるのだから、日本オリジナルの抗がん剤標準治療ができるともっといいはずなのにといつも思う。
まあないものねだりかな。好きではないけど、この世界で仕事をする限りは無視できないのがこの学会である。ああいやだ、いやだ。もっといやなのは、この学会のこの国における速報体制である。特派員みたいな輩が、一分一秒でも速くネット上で報告を書くことがここ数年の流行りである。それを待っている一般大衆医師もだらしがない。いつの間にかよその国の標準が我が国の標準に成り下がっているのが、ここ10年の我が国の臨床腫瘍学である。情けない。情けない。ほくそ笑んでいるのが誰か、全く見えなくなってしまっている。

最近の抗がん剤・分子標的薬剤は諸外国企業(米国・ヨーロッパ)で開発されて、国民皆保険の国である日本で大量に使われ儲けさせてもらうという構造になっているような気がしてならない。そういう意味でも下記の中外製薬は健闘しているように見える。別に中外に恩義はないが、国産だからという理由だけなのだが、頑張れよといいたいのだ。

ところでこれらの薬、ASCOではどういう評価だろう?


最近のALKあるいはALK融合遺伝子に対する薬剤
  1. ファイザーのcrizotinib
  2. 中外のAF802
  3. そしてごく最近Cancer Cellに出た同じく中外のCH5424802
CH5424802, a Selective ALK Inhibitor Capable of Blocking the Resistant Gatekeeper Mutant

Cancer Cell, Volume 19, Issue 5, 679-690, 17 May 2011

Hiroshi Sakamoto, Toshiyuki Tsukaguchi, Sayuri Hiroshima, Tatsushi Kodama, Takamitsu Kobayashi, Takaaki A. Fukami, Nobuhiro Oikawa, Takuo Tsukuda, Nobuya Ishii, Yuko Aok

この論文は面白い。著者が日本の中外の研究者ばかりなのである。神奈川の鎌倉研究所というところから、Cancer Cellに載せている。製薬会社からこんな論文が出るのは、これまで余り見たことがない。AF802との違いが今ひとつわからないが、AF802は昨年からすでに先行して臨床試験が始まっているので、このCH5424802とはものが違うだろうとは思うが、調べても情報が出ていないのでよく差異がわからないのが残念だ。


さてファイザーのcrizotinibであるが、こちらも話題となっている。

  • 米国Pfizer社は5月17日、anaplastic lymphoma kinase(ALK)阻害剤であるcrizotinibについて、ALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺癌(NSCLC)を対象に米国と日本で承認申請を行ったと発表した。米国では優先審査の対象に指定されており、段階的申請が行われていた。ALK融合遺伝子陽性患者は、NSCLC患者の3%から5%を占めていると考えられている。crizotinibのALK融合遺伝子を有するNSCLC患者82人(平均年齢51歳)を対象とした拡大試験の結果が、昨年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO)で発表されている。その結果、客観的奏効率は57%、8週時の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)と安定(SD)を合わせた病勢制御率 (DCR)は87%となった。
とのことである。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201010/517156.html

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