2011年2月26日土曜日

ラヴェル歌曲全集

























ラヴェル歌曲全集

RAVEL:MELODIES


とても欲しいのだけど、現在極めて入手困難だという。


ディスク:1
1. シェエラザード 試聴する
2. ハバネラ形式のヴォカリーズ 試聴する
3. スペインの歌 試聴する
4. 草の上 試聴する
5. 博物誌 試聴する
6. フランスの歌 試聴する
ディスク:2
1. 5つのギリシャ民謡 試聴する
2. トリパトス 試聴する
3. 恋に死んだ女王のためのバラード 試聴する
4. 花のマント 試聴する
5. 夢 試聴する
6. 2つのヘブライの歌 試聴する
7. マイエルケ-ヘブライの歌 試聴する
8. ドゥルシネア姫に思いを寄せるドン・キホーテ 試聴する
9. ロンサール己が魂に 試聴する
10. 聖女 試聴する
11. 激しい風が海のかなたから 試聴する
12. 大きな黒い眠りは 試聴する
13. イタリアの歌 試聴する
ディスク:3
1. ステファーヌ・マラルメの3つの詩 試聴する
2. おもちゃのクリスマス 試聴する
3. クレマン=マロの2つの風刺詩 試聴する
4. スコットランドの歌 試聴する
5. マダガスカル島民の歌 試聴する
6. 紡ぎ車の歌 試聴する
7. こんなにもうち沈んで! 試聴する

2011年2月25日金曜日

転移性乳癌とエリブリン

エリブリン

・・・・・転移性乳がんに対する大規模臨床試験で、全生存期間の延長が示されたのは、10年以上前のタキソテール(一般名ドセタキセル)以来のこと。一般には緩和療法への移行が勧められる多剤併用治療歴のある患者に限れば、単剤による全生存期間延長が得られたのは初めてである。
・・・・・

というのがこの海綿から抽出された新規抗がん剤の「売り」のようである


2010. 11. 16
エーザイの新規抗癌剤が転移性乳癌の適応で米国で承認 

  • HALAVENの承認は、グローバル第III相試験であるEMBRACE試験の結果に基づくもの。同試験では、HALAVEN投与群が、主要評価項目である全生存期間中央値を、治験医師選択療法施行群との比較で、統計学的有意差をもって2.5カ月延長した(全生存期間:13.12カ月 対 10.65カ月、p=0.041)。


2010. 12. 15
エリブリンのフェーズ3長期観察結果でも対照に比べてOSを有意に延長【SABCS2010】

  • 試験の結果、OS中央値はエリブリン群(508人)が13.2カ月、治験医師選択療法群が10.5カ月と、エリブリン群で2.7カ月の延長が確認された。ハザード比は0.805(95%信頼区間:0.677-0.958)、p=0.014で有意だった。1年生存率はエリブリン群が54.5%、治験医師選択療法群が42.8%、2年生存率はエリブリン群が21.9%、治験医師選択療法群が19.2%と見積もられた。

2011. 1. 25
進行性・転移性乳癌への単剤療法でエリブリンが欧州で承認勧告

  • エリブリンについては、日本でも、1月20日に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が承認を了承している。適応は手術不能または再発乳癌。

30 November 2010 | Nature 468, 608-609 (2010)
Complex synthesis yields breast-cancer therapy

この薬剤のことは今月号のNature Digest(日本語版)で知った。乳癌の学会など行くことがないので、知りませんでしたな。この日本語版『カイメン由来の乳がん治療薬が承認へ』というのだが、なかなか面白い記事であった。エーザイよく頑張っているな。

2011年2月23日水曜日

直腸脱の治療:日本とアメリカ


直腸脱の治療:日本とアメリカ

直腸脱とは文字通り直腸粘膜と筋層が肛門外に脱出してくる病態でご老体に多い。痔核が大きく陥噸様に突出する脱肛とは全くことなる病態である。後者が緊張と緊満で切羽詰まった病態を呈するのに対し、前者は弛緩と脱力でいわば「だらしない」病態であり切迫感はおよそない。粘膜の色が違うよな。前者は通常きれいなピンク色である。

治療法であるが日本では長い間、初期治療としては「三輪—Gant法」が用いられてきた。全身麻酔がいらず、お腹を開けずにーすなわち侵襲度が低いことが、ご老体への負担を考えるとバランス良いと考えられるからである。小生など外来で遭遇するたびに、いっそこのまま看護師相手に無麻酔で縫縮してしまおうかと思うくらいだ。この辺りは無痛領域だし縫っても痛くないはずなんだがなあ・・。

Thierschという大げさな名前のついたバンド縫縮術を追加することもある。

これでだめならお腹を開けて直腸をたぐり人工布を巻いて仙骨と固定する方法があるが、当然全身麻酔で侵襲も高い(腹腔鏡でもだ)。

この他にデロルメ法アルトマイヤー法というのがある。

ところで治療法が多岐にわたるというのは決してほめられたことではなく、決定的な方法が無いと言うことの裏返しである。そこで米国の推奨治療がどうなっているか眺めてみた。

まず米国はメイヨークリニック

http://www.mayoclinic.org/rectal-prolapse/treatment.html?mc_id=comlinkpilot&placement=bottom
  • Perineal proctectomy (Altemeier or modified Delorme procedure). The surgeon removes the prolapsed rectum via an incision in the protruding rectum. Perineal proctectomy can be performed using regional anesthetic, which reduces the risk of complications and speeds your recovery.
  • Sigmoid resection and rectopexy. The surgeon makes an incision in the abdomen and removes the sigmoid colon, the part of the large intestine closest to the rectum and anus. The rectopexy procedure anchors the rectum to the sacrum (a bony structure attached to the lower spine and pelvis). In most cases it is possible to perform this operation using minimally invasive surgery, which results in smaller incisions and a shorter hospital stay than conventional surgery.
  • 非開腹法として局所麻酔下でのデロルメかアルトマイヤー法、開腹法としてS状結腸切除と直腸固定術がお薦めの方法である。後者では大部分の患者で腹腔鏡を使うと・・・

テキサスのベイラー大学ではどうだろう?

http://www.debakeydepartmentofsurgery.org/home/content.cfm?proc_name=rectal+prolapse+repair&content_id=274

  • ここではまずThiersch法が勧められる。しかしこのThierschでは約半数の患者で人工物が拒絶され結局取り除かれると書いてあるな。ついでデロルメ法が推奨される。90%の患者はこれで上手くいくとのこと。これで再発する場合は最後に腹腔鏡による直腸固定術が推奨される

日本とアメリカでは随分趣が異なる。

  1. 三輪—Gant法,
  2. Thiersch法
  3. Delorme法
  4. Altemeier法
  5. 直腸固定術

    この5つが取り得る手段なのだろう。

ところで日本でDelorme法Altemeier法を積極的に行っている施設もあるようだ。

2011年2月20日日曜日

この10年間のシークエンス技術の進化:nature総説

A decade's perspective on DNA sequencing technology

Elaine R. Mardis

Nature

Volume:470,
Pages:198–203
Date published: (10 February 2011)
Published online 09 February 2011

いろいろ書いてあるが下のグラフが最も訴える力が強い。一回シークエンサーを回すことで得られるシークエンス塩基数を表す。
左の目盛りは片対数であること(さらに単位はkbp: 1000塩基)に注意。
  1. 2001年ヒトゲノムの概要報告:このグラフによると2001年のシークエンス能力は今の一兆分の1しかなかったということになる
  2. 2004〜6年に激変している。特にイルミナ・ソレクサが出て一挙に10万塩基から1000兆塩基になっている (この塩基数にはちと疑問がある。一台のシークエンサーの能力にしては数字が大きすぎるかな・・とも思う。一歩下がって相対的な比較は正しいとする。そうするとこの間の2年で100億倍にシークエンス能力は向上していることになる。)
  3. 2007年に1000ゲノムプロジェクトがスタート
  4. メタゲノム研究も一挙に加速されていく
  5. 2008年にワトソンのゲノム報告(特定の個人のフルシークエンス初の報告)
  6. 2008年にある特定の個人の癌のゲノムシークエンスをその人の健常組織シークエンスと比較した初の報告
  7. 2010年に1000人ゲノムプロジェクトのパイロット報告
  8. 2010年HapMap3の報告(HapMapは2002年に開始)






















いつものようにダブルクリックで大きく読みやすくなる。

2011年2月16日水曜日

「たずが回ると死ぬ」という格言

「たずが回ると死ぬ」という格言をご存知であろうか
これは日本のとある地方での有名な言い伝えであり、今でもそのことを恐れているヒトが多いのだそうだ。

これは「たず」ばあさんがやってくると、村の人々がつぎつぎと死んでいくという話ではない。「たず」というのは帯状疱疹のことなのだ。

この地方の医者から聞いたことがあるのだが、「ばあさん、こりゃあ、たずだわ」と伝えると「ひえぇー、回っとらせんかいのぉ」と答えるそうである。たずが回るというのは帯状疱疹が一周してしまうことを指す。そんなのが伝説になるのだろうか?


小生これまで帯状疱疹は極めてコンスタントに外来・入院治療してきたが、一つの単神経領域以外に症状が出た方を診たことがない。つまり「たずが回ると死ぬ」などというのはあり得ないと信じていた。都市伝説(田舎伝説か・・・)だと思っていた。

ところが先週入院してきた帯状疱疹は変わっていた。初診では右のS1領域のみに限局した帯状疱疹であり、それなりに疱疹がひどく痛みも強いので入院点滴治療を開始したのだが、翌日から疱疹が背部・胸部と広がってくる。ついには後頚部にも現れるのだ。もともと悪性リンパ腫の既往がある方であるが、寛解しており随分治療は受けていない。それでも免疫不全はあるのかもしれない。

最終的には皮膚科に診てもらい「汎発性帯状疱疹」という診断で、治療については血液内科専門家に電話で相談し、点滴量を通常の2倍量にして対処したところ速やかに疱疹の広がりは収まった。今後は悪性腫瘍等々調べなくてはいけない。

ところで「汎発性帯状疱疹」である。全く認識していない病態だった。皮膚科の教科書(北大清水教授)にはちゃんと書いてあるのだね。「今日の治療指針」には・・・皮疹の汎発化・・・とさりげなく触れてあるが、項立てはない。そこで周りに訊いてみたが、皆さんもあまり経験がないという。

余り経験がないということは、診たことがないということだ。(一回診たら覚えているはずだ)

で文献を調べてみた。帯状疱疹は極めて多い疾患のわりには「汎発性帯状疱疹」が出てくる文献は少ないようだ。

一般型でない特殊型の帯状疱疹として有名なのは
  1. ラムゼー・ハント症候群であろう。耳周りがやられ、顔面神経・内耳神経麻痺がくるやつ
  2. 角膜炎や結膜炎は気を付けなければいけない(Hutchinsonサイン:鼻背部の疱疹には気を付けなさい!そのうち目がやられる)
  3. さらにこのヘルペスウイルス感染の一方の典型例は「水痘」初感染ということになる。しかしなにせ子供のうちにほとんど感染してしまうので、大人の水痘はあまりないのだ。


この他に免疫不全状態でくると言われるのが「汎発性帯状疱疹」や「多発性帯状疱疹」と解説される。いずれも頻度は低い。
「多発性帯状疱疹」は2本以上の神経がやられるものとして文献にはでてくる。医学のあゆみに「多発性帯状疱疹」の総説があるのだが、年間500例以上の帯状疱疹を扱う東海大学皮膚科でも「多発性帯状疱疹」はこれまで一例しか記録がないそうである。東海大学皮膚科が文献を調べたところ過去20年間で「多発性帯状疱疹」は27例の報告が有るそうである。これを分類している。片側に2カ所(神経で2系統)以上、両側で対称的、非対称的等である。このうち両側例が計4例ある。そして両側対称例が2例であった。いかにも少ない。本当に希だ。

  • 多発性帯状疱疹
    小澤明
    東海大学医学部皮膚科学教室

    医学のあゆみ, 157(2) : 140, 1991
    .

そう、これらが「たずが回った」の正体のようである。文献的には極めて少ないのである。20年間に2例とか4例とかである。年間500例の大学でも過去に一例しかないというのである。やはり一般には「たずは回らない」が正解なのではないだろうか?

しかし一方で小生は言い伝えとか伝承とかいうものにこだわる性格なのである。わざわざ伝えられる(現代にまでである)ことには、すべからく意味が有ると思うのだ。であるから「たずが回ると死ぬ」には言い伝えられるだけの重み・頻度があったと思いたい。昔は「たず」が猛威をふるった時代が「この地方」にはあったということなのかね。

追記:
臨床皮膚科 63巻9号(2009.08)P.682-684


     症例報告
     多発性帯状疱疹の1例

     石川 博康 ※1 本間 りこ ※2 大本 英次郎 ※2
     ※1 山形県立中央病院皮膚科  ※2 山形県立中央病院血液内科


要約 55歳,男性.多発性骨髄腫で血液内科に入院加療中のところ,3か所の異なる神経節支配領域に帯状疱疹の発症をみた.アシクロビルの倍量投与と免疫グロブリン製剤の併用で上皮化をみたが,遅発性に神経痛が発症した.帯状疱疹はありふれた皮膚疾患であるが,多発性帯状疱疹は稀有であり,本例が国内報告第5例目である


2009年の報告(先の総説から約20年)で5例目とある。報告数の正確さはさておき「多発性」は稀であることは間違いない。


2011年2月13日日曜日

エリック・ランダーの最新総説:Initial impact of the sequencing of the human genome

2001年2月15日、二つの大きな論文がnatureとscience誌上に発表された。ヒトゲノムプロジェクト研究の最初の概要報告である。ホワイトハウスではクリントン大統領による華々しいセレモニーが繰り広げられた。あれから10年経つ。経ったんだなあ。

Science誌にはセレーラのベンター論文が掲載された。一方Nature誌には62頁の大論文が掲載された(なおゲノムプロジェクト関連論文だけで30報近くが一挙にこの週のnatureには掲載された。通常の2倍の分厚さだった)

このnature論文の筆頭著者がエリック・ランダーである。

ランダーは今週号のnatureで過去10年を振り返った総説を書いている。これを読んで、小生は感激してしまった。

ランダーが天才的に優れた数学者であり、神経科学者であり、遅れて遺伝学に迷い込み、ヒトゲノムプロジェクトの中心人物になっていった過程はこれまでなんども報じられているし、実際論文が出てくるたびに「またランダーか」と思っていたこともあったが、この総説を読んでなんとまあ幅の広いパースペクティブを持った研究者なのだと驚き感動してしまった。

なんといってもキーポイントは「わかりやすい」論文だということだ。

知らないことを一杯教えてくれる、極めて効率の良い総説である。バランスが良い。ゲノムに関すること、この10年のことはすべて盛り込まれているのではないか?

昨晩寝る前に何気なく読み始めたら、あまりに面白くて気が付いたら2時半であった。


3つの問い

  1. 過去10年何を我々は学んだか?
  2. ヒトシークエンス研究は生物学、医学、進化、ヒトの歴史の理解を押し進めたと言えるか?
  3. 今後これから見えてくるものとは?

これを核に論は進められていく。

知らないことが山のようにあるのだということを知らされた。自分のためにも、ぜひ梗概を作りたい。今後教科書はどうなるのであろうかねえ。古い知識体系しかもたないヒトは今後学生を教えることができなくなるな。

Initial impact of the sequencing of the human genome


Eric S. Lander

Journal name:Nature
Volume:470,
Pages:187–197
Date published: (10 February 2011)
Published online: 09 February 2011



The sequence of the human genome has dramatically accelerated biomedical research. Here I explore its impact, in the decade since its publication, on our understanding of the biological functions encoded in the genome, on the biological basis of inherited diseases and cancer, and on the evolution and history of the human species. I also discuss the road ahead in fulfilling the promise of genomics for medicine

2011年2月11日金曜日

体内のpHを直接2D表示する技術:最新のPNAS

PNASという雑誌は小生が最も愛する雑誌の一つである。 米国の学士院が理系学問の進歩を横断的に平等に評価できる雑誌媒体を持つと言うこと、およびその発表レベルが並々ならぬ事はうらやましいと思うのだ。natureやscienceに落ちるといきなりNASに出すという研究者は今でも多いのではないだろうか?(減ってきているのだろうか。最近は??)

翻って我が国の学士院紀要はあれは一体なんなのだろう?どれだけのヒトがあの雑誌媒体をみているのだろう?少なくとも生物系では皆無に等しいのではないか? 

学士院紀要から引用
  • Proceedings of the Japan Academy, Ser. B, Physical and Biological Sciencesは化学、物理学、宇宙・地球科学、生物学、工学、農学、医学、薬学など、数学を除く自然科学全分野(Ser.Aで出版する数学を除く)を 対象とする英文学術誌です。本誌は、1912年に創刊された“Proceedings of the Imperial Academy”を前身としており、発刊以来、日本の研究成果を世界に発信しています。

    本誌は、日本学士院会員や日本学士院賞受賞者などの日本を代表する研究成果を報告する総説論文(Review)と、最新 の研究成果を速報する原著論文(Original Article〔Short Communicationsを含む〕)を掲載し、年10回刊行しています。

さて、最新のNASをみていたら面白い報告に気が付いた。












(図をダブルクリックすると読みやすくなります)




この写真が全てなのだが、これは体表にできた創の治癒過程を表す。左から一日目、6日目、14日目
そして慢性炎症であるが、下のサーモグラムのようなイメージがこのびらん様の病変部位の phを表すのだ。大事なことはこれが、「生体」であり固定も何もないということである。特殊な試薬に蛍光ラベルしているようだ。

これは面白いなあ。がんの中心部のpHとか、低酸素状態とpHを同時に測定することできっと治療のヒントが浮かぶ様な気がする。

あるいは食道癌術後の食道ー胃吻合部のpHモニターリングをsPo2モニターと同時に行う・・・・・・。縫合不全の予知に使えないだろうか?


今の小生には「治りの悪い褥瘡」のモニタリングというのが一番現実的課題かもしれんな・・・


このような研究は想像力をかき立てるだけに面白い。

PNAS February 8, 2011 vol. 108 no. 6 2432-2437

2D luminescence imaging of pH in vivo

Stephan Schremla,1,2, Robert J. Meierb,1, Otto S. Wolfbeisb, Michael Landthalera, Rolf-Markus Szeimiesa, and Philipp Babilasa,2

1.Department of Dermatology, University Hospital Regensburg, 93042 Regensburg, Germany; and
2.Institute of Analytical Chemistry, Chemo- and Biosensors, University of Regensburg, 93040 Regensburg, Germany

Edited by Elaine Fuchs, The Rockefeller University, New York, NY, and approved December 27, 2010 (received for review May 18, 2010)

Abstract
  • Luminescence imaging of biological parameters is an emerging field in biomedical sciences. Tools to study 2D pH distribution are needed to gain new insights into complex disease processes, such as wound healing and tumor metabolism. In recent years, luminescence-based methods for pH measurement have been developed. However, for in vivo applications, especially for studies on humans, biocompatibility and reliability under varying conditions have to be ensured. Here, we present a referenced luminescent sensor for 2D high-resolution imaging of pH in vivo. The ratiometric sensing scheme is based on time-domain luminescence imaging of FITC and ruthenium(II)tris-(4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline). To create a biocompatible 2D sensor, these dyes were bound to or incorporated into microparticles (aminocellulose and polyacrylonitrile), and particles were immobilized in polyurethane hydrogel on transparent foils. We show sensor precision and validity by conducting in vitro and in vivo experiments, and we show the versatility in imaging pH during physiological and chronic cutaneous wound healing in humans. Implementation of this technique may open vistas in wound healing, tumor biology, and other biomedical fields.

2011年2月8日火曜日

胆嚢ポリープの手術適応としてのサイズ

昔から胆嚢ポリープの手術適応としてサイズが強調され、10mmというのがその基準だったが今ではどうだろう?

「癌治療学会」の「がん診療ガイドライン」の「胆道がんの質疑応答」なんていうのがやはり一番たよりになるのだろうね。


胆嚢ポリープに対する胆嚢摘出術は必要か?

胆嚢ポリープが10 mm以上で,かつ画像上増大傾向を認める場合,または大きさに係わらず広基性の場合,胆嚢癌の頻度が高く,胆嚢摘出術が推奨される。(推奨度 B)

 胆嚢癌の発生母地病変として腺腫もしくは異型上皮が重視され,さらに腸上皮化生の関与が報告されている。

特に形状が広基性,径が10 mm以上,増大傾向を認める場合には癌の可能性が高いとの報告が多く,

胆嚢ポリープは10 mm以上で,かつ画像上増大傾向を認める場合,

または大きさに係わらず広基性病変では胆嚢癌の頻度が高く切除の適応と考えられる2)(レベル V)。

胆嚢ポリープの自然経過

古い文献だが(性状を問わず)胆嚢ポリープの自然経過を追った報告である。

三原らは腹部超音波で胆嚢ポリープの最大径の変化を経過観察し(n=267)

  1. 不変90%,
  2. 増大3%,
  3. 消失 5%,
  4. 胆石へ変化2%と報告している.
白崎らもまた 腹部超音波で胆嚢ポリープを経過観察し(n=183)
  1. 不 変72%,
  2. 増大16%,
  3. 消失5%,
  4. 縮小7%と報告してい る.
文献:
三原修一,黒田圭一郎,吉岡律子,ほか.胆嚢ポリープの自然経過.消化器内視鏡 1997:9:729-734
白崎敬二,渋谷明隆國分茂博,ほか.超音波による胆嚢ポリープの自然経過の検討.胆道 1991;6: 54-60

2011年2月6日日曜日

「Aes」縁の無いはずの論文に引き寄せられる・・・嗚呼

私が最も苦手とする系統の論文がシグナルを遮断するとどうなるか?という研究である。正直理解が追いつかない。難しくてなかなかついて行けない。だからこの系統の論文はほとんど読んだことがない。京都大大学院医学研究科の武藤誠教授の下の論文もニュースになって話題になったことも知っていたが読んでいない。

ところが先週のことなのだが、外来化学療法を受けておられる患者さんから新聞の切り抜きを渡された。「こんな研究は私には応用可能ですか?」「いつ頃になったら、治療は可能でしょうか?」と言われたその記事がこの「Aes」の記事(日本経済新聞)であった。

この患者さんは大腸癌の術後再発・肺転移ですでに2年経つのである。FORFIRI、オキザリプラチンはすでに済ませ、アバスチンも継続中であるが、これもだんだん効かなくなりつつある。あとはアービタックスかなと現在古い病理標本を取り寄せてEGFRの染色とK-ras変異を発注したところである。現役で働いているので、希望はあくまで外来化学療法である。週2回はゴルフのコースに出ている。体力・気力みずみずしいのだが、だんだん打つ手がなくなってきている。

そこに突然の切り抜きである。返事に困ってしまった。もちろんこの論文のことは知っていた。しかし読んでも解らないだろうから、読んでいなかった(無料で公開されていたのでPDFはダウンロードして持っていたけどね。この手の無料は期間限定であることが多いから)。素直に「よく知らないので、この次までに調べておきますね」と言ってしまった。


で宿題なのである。この論文。嗚呼どうしよう。

Cancer Cell,
Volume 19, Issue 1, 125-137, 18 January 2011

Featured Article
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Suppression of Colon Cancer Metastasis by Aes through Inhibition of Notch Signaling

Masahiro Sonoshita, Masahiro Aoki, Haruhiko Fuwa, Koji Aoki, Hisahiro Hosogi, Yoshiharu Sakai, Hiroki Hashida, Arimichi Takabayashi, Makoto Sasaki, Sylvie Robine, Kazuyuki Itoh, Kiyoko Yoshioka, Fumihiko Kakizaki, Takanori Kitamura, Masanobu Oshima, Makoto Mark Taketo




Metastasis is responsible for most cancer deaths. Here, we show that Aes (or Grg5) gene functions as an endogenous metastasis suppressor. Expression of Aes was decreased in liver metastases compared with primary colon tumors in both mice and humans. Aes inhibited Notch signaling by converting active Rbpj transcription complexes into repression complexes on insoluble nuclear matrix. In tumor cells, Notch signaling was triggered by ligands on adjoining blood vessels, and stimulated transendothelial migration. Genetic depletion of Aes in ApcΔ716 intestinal polyposis mice caused marked tumor invasion and intravasation that were suppressed by Notch signaling inhibition. These results suggest that inhibition of Notch signaling can be a promising strategy for prevention and treatment of colon cancer metastasis.

Preview by Christofori.

2011年2月4日金曜日

1000 Genomes Projectによる報告その(2)

昨秋(10月28日)1000 Genomes Projectによるその最初(?)の報告があったが、今回CNVに焦点を絞った報告がnatureに出た。ホットスポットが51カ所あるのだそうだ。ゲノム屋としては、ゲノム構造変化がおこる機序ごとに整理してあるのが興味深い。
  1. NAHR :nonallelic homologous recombination,
  2. NHR
  3. MEIs, mobile element insertions that is, Alu (~300 bp) and L1 (~6 kb) insertions
  4. HR: 相同組換え(homologous recombination: HR)
欠失、増幅、転座、逆位がどの機序で起こるのかといった具合である。個人的にはこの部分がとても面白かった。

さて、論文のおおざっぱな概要は以下である。


  • 1000 Genomes Consortium ゲノム構造変化のカタログ化。
  • 200 人分の解析で遺伝子やエクソンの影響を与えるおよそ2000の変化を含む数万個の構造変化を見出した。

  • 「ゲノム構造変化も正確なシークエンスがわかるとこれまで説明できなかった病気の遺伝的要因発見の手がかりとなります」とEMBLのゲノム研究者Jan Korbelは言う。
  • 「老齢になってもピンピンしている人もいれば、若くして病気になるヒトもいますがこの研究はこの違いを理解するのに役立つはずです」
  • 今回の報告では185人のゲノムにおける構造変化、特に欠失を調べた。すなわち169名の個人ゲノムと6人の親子(母父子2組)
  • 28,025構造変化: 22,025個の欠失と6,000個の挿入・縦列増幅が見いだされた
  • ゲノム中には構造変化が起こりやすい51カ所のホットスポットがあること(この中には先天性の脳発達異常に関連することが既に知られている変化が含まれていた)


Mapping copy number variation by population-scale genome sequencing

Harnessing information from whole genome sequencing in 185 individuals, this study generates a high-resolution map of copy number variants. Nucleotide resolution of the map facilitates analysis of structural variant distribution and identification of the mechanisms of their origin. The study provides a resource for sequence-based association studies.

Tobias Rausch, Aylwyn Scally, Xinghua Shi, Michael P. Stromberg, Adrian M. Stütz, Alexander Eckehart Urban, Jerilyn A. Walker, Jiantao Wu, Yujun Zhang, Zhengdong D. Zhang, Mark A. Batzer, Li Ding, Gabor T. Marth, Gil McVean, Jonathan Sebat, Michael Snyder, Jun Wang, Kenny Ye, Evan E. Eichler, Mark B. Gerstein, Matthew E. Hurles, Charles Lee, Steven A. McCarroll, Jan O. Korbel & 1000 Genomes Project

Nature 470, 59–65 (02 February 2011) | doi:10.1038/nature09708