2011年1月19日水曜日

粉瘤三兄妹・・・

粉瘤と書いて「ふんりゅう」と読みアテローマとも言う。まあ外科や整形外科、皮膚科で診察する皮下腫瘤では最もありふれた病態であろう。何気なく粉瘤と書いて済ませるが、心得ある医師はこれを「表皮嚢胞」(or epidermal cyst)と記述する。こう書かなければいけない。少なくとも病理組織学的には「表皮嚢胞」が正しい病名である。 ・・・・・と最近まで思っていた。ところがどうやらこれはあやしい。粉瘤には少なくとも2種類(記載によっては3種類)があるようだ。そこで調べてみた。
  1. 表皮嚢胞  epidermal cyst
  2. 外毛根鞘嚢胞 trichilemmal cyst
  3. 脂腺嚢腫 steatocystoma
結論は出ない。皮膚科、形成外科、外科、整形外科等々なんだかよくわからない。この3種類をもって粉瘤とするとする記載は捜せば意外に多いのである。しかし小生は粉瘤に3. 脂腺嚢腫 steatocystomaを混ぜるのことには反対だ。なぜなら臨床像が余りに違いそうだ。(正直切除してこの病名を貰った記憶が小生にはないので、遭遇したことがないのかもしれないので強くは言えないが、まずもって大きさが違う。北大清水教授の「あたらしい皮膚科学」p367によると、せいぜい1~3mmの大きさであるといい、写真もいわゆる「粉瘤」とは異なる。 しかし2.外毛根鞘嚢胞 trichilemmal cystはこれはやっかいだ。実は相当多く遭遇している可能性があるのだ。これは頭皮下にできる粉瘤である。
















































これならおいらもよく見るというお医者さんは多いと思う。意外と膿(pus)が出なくて、きちんと取れたりしてうれしかったりする。これは病理学的には表皮嚢胞とよく似ているが、「ちと」違う。(すべての頭皮下腫瘤が病理に出されるわけではないからなあ・・・・
病理無しの症例もまた多いだろう)
これ外科的にはきちんと取れるのに英語ではトリキレンモーマという。(というようなつまらないことを大学院時代考えていたことを思い出した、失敬) このトリキレンマル シストというのは病理学教室では比較的ありふれた病態である。

切除後、暫定病名「epidermal cyst」と付けて病理に出して「trichilemmal cyst」と診断が帰ってきても全く恥じる必要はない。それはそれでよいのだ。ほとんど同じだし。

しかし頭皮に出来ているので外毛根鞘嚢胞かもしれないので「trichilemmal cyst」と付けて病理に出したとしよう。もしそれが正解だったら、病理の医者から尊敬されるかもしれない。

まあお好きにされよ・・・というような話だなぁ。

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