2010年6月25日金曜日

偽遺伝子が発現するシステムによるゲノムのコントロール

ある遺伝子の機能を拮抗する、発現レベルで抑えてしまうためには、アンチセンスRNA が有効である。
     ーーー  これには外来性の合成RNA(あるいはDNA)が必要であるが効率が悪い。

そのうちRNA interference RNAiという現象が知られるようになった。これは例の21塩基抑制の走りである。これも外因性アンチセンスRNA。

    ーーー ここまでは外因性であり、これをin vivoで使いこなすのは至難の技であった。せいぜいが培養生物学での話で終わる。治療は現実的でない。

そして最近では内因性のmicro RNAが見つかり、人でも1000個を超える数見つかっている。なかなか捜すのが大変である。
     ーーーーーゲノムの全てから相補的(RNAだからゆるいが)な候補を捜すわけだ。

しかしながら冷静に考えると有力な候補は存在していたわけだ。偽遺伝子のことである。発現しないことになっているため、これまでだれも見向きもしなかったがね。もともと同じ遺伝子から分かれてできたので、くずれてはいるけどかなりの相補性が見出される。あとは反対鎖が発現するかどうかである。これに目をつけたのが2年前の報告であり、今回の報告なのだ。KRASやPTENだったのは耳目を引くため・・・といってもいいだろう。偽遺伝子がcounterpartとして存在する遺伝子すべてにこのバイオロジーは成立する可能性がある。miRNA や発現偽遺伝子はヒト発現遺伝子コントロールの絶妙なる装置だという可能性がでてきたということだ。

なぜにヒトゲノムは広大な砂漠を引きずってきたのか?多くのくずれた偽遺伝子が化石のように眠っているのは無駄なことのように思えるし不経済である。(無駄であるのなら欠失させてしまえば楽なのに!)。広大な砂漠に潜む今は顕在化されていないバイオロジーをひとつ、またひとつ明らかにしていくことがポストゲノム研究の面白さである。多くの若者がこの面白さに目覚めて欲しいものだ。

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