2010年5月31日月曜日

13q12,3q26 ,9p21:鼻咽頭癌の多型

Letter

Nature Genetics 
Published online: 30 May 2010 | doi:10.1038/ng.601

A genome-wide association study of nasopharyngeal carcinoma identifies three new susceptibility loci


Jin-Xin Bei1,2,9, Yi Li3,9, Wei-Hua Jia1,2, Bing-Jian Feng1,2,4, Gangqiao Zhou5, Li-Zhen Chen1,2, Qi-Sheng Feng1,2, Hui-Qi Low3, Hongxing Zhang5, Fuchu He5, E Shyong Tai6,7, Tiebang Kang1,2, Edison T Liu8, Jianjun Liu1,3,10 & Yi-Xin Zeng1,2,10

Abstract

To identify genetic susceptibility loci for nasopharyngeal carcinoma (NPC), a genome-wide association study was performed using 464,328 autosomal SNPs in 1,583 NPC affected individuals (cases) and 1,894 controls of southern Chinese descent. The top 49 SNPs from the genome-wide association study were genotyped in 3,507 cases and 3,063 controls of southern Chinese descent from Guangdong and Guangxi. The seven supportive SNPs were further confirmed by transmission disequilibrium test analysis in 279 trios from Guangdong. We identified three new susceptibility loci, TNFRSF19 on 13q12 (rs9510787, Pcombined = 1.53 × 10−9, odds ratio (OR) = 1.20), MDS1-EVI1 on 3q26 (rs6774494, Pcombined = 1.34 × 10−8, OR = 0.84) and the CDKN2A-CDKN2B gene cluster on 9p21 (rs1412829, Pcombined = 4.84 × 10−7, OR = 0.78). Furthermore, we confirmed the role of HLA by revealing independent associations at rs2860580 (Pcombined = 4.88 × 10−67, OR = 0.58), rs2894207 (Pcombined = 3.42 × 10−33, OR = 0.61) and rs28421666 (Pcombined = 2.49 × 10−18, OR = 0.67). Our findings provide new insights into the pathogenesis of NPC by highlighting the involvement of pathways related to TNFRSF19 and MDS1-EVI1 in addition to HLA molecules.

2010年5月30日日曜日

ヒトの遺伝子数は19042個:コリンズは勇気を出した・・?

ヒトの遺伝子数は19042個なのか?  米(rice)の半分しか遺伝子がないのは面白いな。米が米であるためにはヒトの二倍の遺伝子がいるのだね。面白いね。

マウスは20120個と書いてあるな. チンパンジーは19000個? ヒトより42個少ないぞ!


先のフランシス・コリンズの論考の中の表1にヒトの遺伝子数を19042個と明記してあった。さりげないが、これは確信犯。これまでここまで数を明らかにした報告を知らない。この論文がゲノムプロジェクトのリーダーであったフランシス・コリンズの論文であることの意味は大きい。もちろん「数え方には色々あるし、なかなか蛋白コードを予想するのは難しいし、・・・」と言い訳は書いてあるが、敢えて数を明記したくれたことの意義は大きい。さすがに10年経ってヒト遺伝子の総数も出せないようじゃまずいでしょうな。



さてこれまでヒトの遺伝子総数は20000個前後というのが通説であった。ゲノムプロジェクトが完了して10年になろうとするのに、未だ総数が画定しない、確定したという報告がなかった。これはなぜだろう?皆さん不思議に思わなかったかな? 理由を以下に述べてみよう。

  1. 「遺伝子」とはなにかという定義が揺れ動いたこの10年であったこと。 

  2.  microRNAなどが見出され、修飾核酸(これも発現している)の扱いが判然としない。

  3. ゲノム上に蛋白をコードできるある一定の長さをもった配列が見出されることは多い。多くは未知の蛋白である。ゲノムのシークエンスを闇雲に積み重ねていったのがゲノムプロジェクトであるが、遺伝子があるかどうかは多くはコンピューターに判定させていたのが現状である。アルゴリズムに従ってある要件を満たすと「蛋白発現可能遺伝子」と判定される。発現遺伝子であるかどうかはEST libraryを見れば良いが、蛋白として発現しているかどうかは、直ちにはわからない。このような仮想遺伝子は山のようにあった。これをひとつひとつつぶしていくのには結構な労力が必要である。すべてが片づいたかどうか、小生は知らない。

  4. これは一番大きいのだが、ヒトの遺伝子数が他の生物よりも少ないことが「確定」してしまうことへの怖れ。プライドが許さない。
  5. よくいわれるスプライシングバリアントは話が別。スプライシングバリアントは一つの遺伝子から何本も違った蛋白ができるが、これはヒト以外でも当てはまる。

NEJM最新号より引用している。

Genomic Medicine — An Updated Primer

W. Gregory Feero, M.D., Ph.D., Alan E. Guttmacher, M.D., and Francis S. Collins, M.D., Ph.D

May 27, 2010
Number 21
Volume 362:2001-2011

http://content.nejm.org/cgi/content/full/362/21/2001


2010年5月29日土曜日

ゲノムプロジェクト:最初の10年を振り返って・・・

フランシス・コリンズやハロルド・バーマスが最初の10年を振り返って論説をNEJMに寄せている。

バーマスは正直であり、この10年の成果はほとんど臨床に寄与するところ無かったと述べている。臨床に還元できる成果が出るのには数十年かかるだろうとの感想である。
コリンズの論考は1人の乳癌患者を仮想するところから始まりなかなか苦労しているが、どうだろう? それはそれとして、面白い10年だったと小生は思う。現に2010年も興味深いレポートは数多く出ている。小生の概観は「癌化に関連する遺伝子は予想されていた以上に多く、また臓器や個人に応じてその組み合わせは多彩である。それゆえ一つ一つの寄与率はそれほど高くない」というものである。

後半の寄与率が高くないというのは私の予想である。これから実証されていくべきことであろう。小生の予想が正しくなく、「やはりp53やrasのようにmajor playerがいるのだ。」ということが再度確認されればそれはそれでいいのだが、どうだろう最近どうも疑わしくてならん。

いずれにしてもこれからですよ・・・なのだろうが、ゲノムの実相は当初予想していたよりもはるかに複雑だというのが実感である。


Review  Articles
Genomic Medicine: Genomic Medicine — An Updated Primer
W. G. Feero, A. E. Guttmacher, and F. S. Collins


Editorial
Ten Years On — The Human Genome and Medicine

H. Varmus

ヒトのミクロビオーム:サイエンス5月28日号より

Research Articles

A Catalog of Reference Genomes from the Human Microbiome
The Human Microbiome Jumpstart Reference Strains Consortium*,{dagger}

The human microbiome refers to the community of microorganisms, including prokaryotes, viruses, and microbial eukaryotes, that populate the human body. The National Institutes of Health launched an initiative that focuses on describing the diversity of microbial species that are associated with health and disease. The first phase of this initiative includes the sequencing of hundreds of microbial reference genomes, coupled to metagenomic sequencing from multiple body sites. Here we present results from an initial reference genome sequencing of 178 microbial genomes. From 547,968 predicted polypeptides that correspond to the gene complement of these strains, previously unidentified ("novel") polypeptides that had both unmasked sequence length greater than 100 amino acids and no BLASTP match to any nonreference entry in the nonredundant subset were defined. This analysis resulted in a set of 30,867 polypeptides, of which 29,987 (~97%) were unique. In addition, this set of microbial genomes allows for ~40% of random sequences from the microbiome of the gastrointestinal tract to be associated with organisms based on the match criteria used. Insights into pan-genome analysis suggest that we are still far from saturating microbial species genetic data sets. In addition, the associated metrics and standards used by our group for quality assurance are presented.

Science 21 May 2010:
Vol. 328. no. 5981, pp. 994 - 999

2010年5月27日木曜日

はやくiPadが欲しいな・・・

iPadが欲しい!

とにかくiPadが一日も早く欲しい。しばらくはpaperbackをiPadで読むことだけでよい。デジタル雑誌ではNational Geographicsの定期購読をしたい。Natureもこれまで通り定期購読する。



photo J  http://mainichi.jp/etc/photoJ/

新しい読む写真誌というものが出るらしい。iPad専用だというが、あまり期待はしない。月350円だというから半年くらいは購読してやってもいいな。ネタ切れしないようにするにはどうすればよいか? 写真の質につきると思う。素人には撮れない質の高い写真が欲しい。これだけは譲れないと発行元が認識できていればきっと上手くいく。ネット版のwashington postの写真の質の高さを参考にして欲しい。


あとは出版媒体としてのiPadに大いに期待したい。これはキンドルが出た頃から注目していたポテンシャルである。

『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』

内田 樹が最近始めたプロジェクト

ポール・オースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』の「日本版」というのがある。これは面白い。  http://www.matogrosso.jp/

これなど、あと一歩で既存の出版社を飛び越えた出版メディアになり得る。一挙にポール・オースターと日米連帯できたりして・・・。

キーワードは
1)出版側のロングテイル
2)ちゃんとした印税収入が素人にも可能

ベンターの人工細菌のはなし

ベンターの「人工生命」(括弧付き)について日本国内での反響が余りに小さいのはなぜか?似たような仕事は1997年ころから少しずつ進んでいたし、ベンターの興味が(我々の興味でもあるが・・)「生命を維持し子孫を残すために必要な最小の遺伝子セット」であったことは昔から有名であった。小生がそれに最初に気が付いた論文は

Science. 1999 Dec 10;286(5447):2165-9.

Global transposon mutagenesis and a minimal Mycoplasma genome.

Hutchison CA, Peterson SN, Gill SR, Cline RT, White O, Fraser CM, Smith HO, Venter JC.

The Institute for Genomic Research, 9712 Medical Center Drive, Rockville, MD 20850, USA.


だったと思う。それ以前に・・・・・・

......In a comparison of the first two bacterial genomes sequenced, Mushegian and Koonin (2) projected that the 256 orthologous genes shared by the Gram-negative Haemophilus influenzae and the Gram-positive Mycoplasma genitalium genomes are a close approximation of a minimal gene set for bacterial life. More recently Gil et al. (3) proposed a 206-protein-coding gene core of a minimal bacterial gene set based on analysis of several free-living and endosymbiotic bacterial genomes.

というような文章はあって、200個内外という想定であった。確かにわくわくするような話なのだが、日本では余り興味を持って語られることはなかったように思う。

今回のサイエンスの発表はその延長線上にある研究である。これについて今週号のNatureはかなりの熱を込めて論評している。

Life after the synthetic cell

Nature 465, 422–424
Date published:(27 May 2010)
Published online
26 May 2010

7人の識者に思いを語らせている。生命倫理学者などからはこの報告をもって「生気論の終焉」と論じるものもいてなかなか面白い。

日本でも月刊誌で特集をぜひして欲しい。福岡伸一ならどう語るだろうか?あと毎日新聞の記者の元村さんや団まりな先生のご意見を拝聴したい。
このような話題で最近ご意見番として相応しいヒトの顔が思い浮かばないのが残念だ。大阪大学の四方哲也さんなんかも面白いかもしれない。

2010年5月26日水曜日

夜のガスパール:今、あらためて・・・・

夜のガスパール〜アロイジェス・ベルトランによるピアノのための3つの音詩

 "Gaspard de la nuit - 3 poemes pour piano d'apres Aloysius Bertrand"


引用元は「ふみぽんさんのホームページより」ほぼ全面的に・・・・

貧困と病のため34才の若さでこの世を去った、異色の詩人、アロイジェス・ベルトラン(Aloysius Bertrand)がただ一巻残した遺作「夜のガスパール」をモチーフとした、ラベルの作品中最大の難曲であると同時に最高傑作のひとつでもある。

ラヴェル自身、技巧派のピアニストであったため、当時難曲の代表とされていたバラキエフ作曲の「イスラメイ」を名指して、これよりも難しいピアノ曲 を書くと宣言した後に、実際にこの「夜のガスパール」(フランス語の発音では正しくは「ギャスパール」というのが正しいらしい)を発表した。これらの曲を 弾きこなすためには超絶的な名人芸が要求され、プロのピアニストの間でも「一生の課題」として練習に励む人も実際にいるらしい。

1.水の精"Ondine"

ラヴェルのピアノ曲の中で「難曲中の難曲」とされるが、まず最初にこの楽譜を見たときに、あまりの音符の多さと細かさに圧倒される。しかも素早くピ アニッシモで多くの音を跳躍しながら押さえ、その音の集合から旋律を浮かび上がらせるのは至難の業である(ちなみに私は16小節あたりで筋肉痛となり、そ れ以上弾くことができない)。ちゃんとしたプロの演奏家が弾いた演奏を聴いた後、この楽譜を実際に読んで弾いてみると、その異様な難しさを実感できるであ ろう。

※おすすめは、横山幸雄氏(「イマージュ」に収録)、小山美稚恵女史(「ラヴェル・ピアノ作品集」に収録)の演奏か(CDの入手はいまでも比較的容 易)。

(ベルトランの詩より引用、以下2,3でも同様)



・・・私は眠っている間に、朧ろげに音楽を聞いているように思った。私のそばで、やさしく悲しげな声が囁くように歌っていた(Ch.ブリュノー:二人の妖 精)。

「ねえ、きいて!わたしよ。オンディーヌよ。陰鬱な月の光に照らされたあなたの菱形の窓を、水のしずくでそっとさわって鳴らしているのは。そうして いま、お城の奥方は、波もようの衣装をまとい、露台に出て、星をちりばめた美しい夜と、静かに眠る湖をじっつみつめていらっしゃる。/波のひとつひとつ が、流れのなかを泳ぐオンディーヌなの。流れのひとつひとつが、わたしのお城へとうねっていく小径なの。そうしてわたしのお城は、水でできている。湖の底 に、火と土と空気の三角形のなかに。/ねえ、きいて!わたしの父さまは、緑の榛木(はんのき)の枝でじゃぶじゃぶ水を叩くの。姉さまたちは泡の腕(かい な)で、みずみずしい牧草や睡蓮や、あやめの茂る島々を愛撫したり、ひげを垂らして魚釣りをしているしおれた柳をからかったりするわ。」/つぶやくような 彼女の歌は、私にねだった、オンディーヌの夫となるためにその指輪を私の指に受けよと。そして、彼女とともにその城にきて、湖の王となるようにと。/そし て、私は人間の女を愛していると答えたら、彼女はすね、くやしがり、しばらく泣いてから、ふと笑い声を立て、にわか雨となって、私の青い窓ガラスをつたっ て白く流れて消えてしまった。



2.絞首台"Le gibet"

終始一貫してなり続ける変ロ音で有名な曲。絞首台にぶら下がった囚人の死骸が夕日に照らされる不気味な光景を聴覚的に表現した、なんとも薄気味悪い 曲。この曲も「鏡」の「鐘の谷」と同様、12小節目から3段譜となり、持続低音が込み入った旋律、和声進行の中に絡み合う。

(ベルトランの詩より)



・・・この絞首台の周りを憑かれたようにぐるぐる回って、俺は何を見ようってのか(ファウスト)。

ああ!私に聞こえるもの。あれはひゅうひゅう鳴る夜の北風か。それとも絞首台の枝木の上で吐息をもらす死人(しびと)か。/あれは、森が憐れんで足 もとにやしなっている苔と、実らぬ蔦の中に、うずくまって歌うこおろぎか。/獲物をあさるはえが、もう聞こえぬその耳のまわりで、合図のファンファーレの 角笛を吹いているのか。/不規則に飛びまわって、かれの禿げた頭蓋骨から血のしたたる髪の毛をむしっているこがね虫か。/それとも、締められたその首にネ クタイをしようと半端のモスリンに刺繍をしている蜘蛛か。/あれは、地平線のかげの町の城壁で鳴る鐘の音。そして、沈む夕日が真っ赤に染める絞首刑囚のむ くろ。



3.スカルボ"Scarbo"

スカルボとは「身体の太った地の精」であり、不気味な夜を象徴する「阿呆」であり「侏儒」である。「夜な夜な、人足途絶えた街なかをうろつく阿呆」 は「片方の目で月を見上げ、もう一つの目は−潰れている」怪奇な小悪魔であり、変幻自在な妖精である。

この曲は大変複雑な構成(11部分に分けられる)で、主として3つの主題から派生するバリエーションの組み合わせから成り立つ。
「ラヴェルの超絶技巧作品」と呼ばれる難曲である。

以前にNHKの番組で、ウラジミール・アシュケナージが子供たちに音楽を教える内容のシリーズ作が放映され、実際にご覧になった人もいると思われる が、その中でアシュケナージがピアノに座り、子供たちの前で「いとも易々と「スカルボ」を弾いていた光景が、いまだに私の記憶に強く焼き付いている。

(ベルトランの詩より)



・・・奴はベッドの下、煙突の下、戸棚の中にいるみたいだったのに−誰もそこにはいない。奴はどうやって入り込み、また抜け出たのか、自分でも判っちゃい ないのさ(ホフマン:夜の小話)。

おお、いくたび私は聞き、そして見たことだろう、スカルボを。月が真夜中の空に、金の蜜蜂をちりばめた紺碧の旗の上の、銀の楯のように光るとのとき に。/いくたび私は聞いただろう、私の寝床のある隅の暗がりのなかで騒々しく笑うのを。そして私の寝床のとばりの絹の上でその爪をきりませるのを。/いく たび私は見ただろう、天井から飛び降りて、魔女の紡錘竿(つむぎざお)からころがり落ちた紡錘(つむ)のように、部屋中をつま先立ってくるくるまわり、転 げまわるのを!/あれ、消えた?と思ったら、小鬼は、月と私の間で大きくなりだした。ゴティックの大寺院の鐘楼みたいに!とんがり帽子には金の鈴が揺れ て。/でもすぐにかれの身体は蒼ざめ、ろうそくの蝋のように透きとおった。かれの顔は燃え残りのろうそくのようにうす暗くなった−そして突然、かれは消え た。

(以上、ベルトランの詩は、H.ジュルダン=モランジュ著「ラヴェルと私たち」安川加寿子・嘉乃海隆子共訳より))

2010年5月22日土曜日

キライディティ症候群のレ線

まあこんな右横隔膜周辺の病態を捜してくるわけだから、悩ましい症例がいるってことなんだな、実際。さらっと、さわやかに・・・できりゃ苦労しないけどね。






この写真で診断せよ!:NEJMの先週のイメージ


このヘルニアの名前は?  実はそんなことはどうでも良いのが実地臨床である。大学の先生に「それはモルガニですか・・?」と聴かれて、「えーっと、忘れましたわ、ははは」で堂々と押し通すのが正しい態度であろう。問題は病態が正しく認識できるかどうか・・であろう。

一番の問題は「訴え(病院に来ているのだから当然愁訴くらいはあるだろうよ)」をイメージ写真の病態と結びつけていいのか・・・どいう判断である。腹痛の原因はヘルニアでよいのか?  腹痛の原因が実は単なる便秘であり、ヘルニアは添え物に過ぎないというようなことは、非常にしばしばあるのである。本当にしばしばある。ヘルニアについて医療費と日数と苦痛ある検査をせずに最小手で情報を得ること、それもあわてず騒がずさわやかにやってのけることが肝要。



追記:このヘルニアはモルガニ孔ヘルニアでありベルギーからの症例
   腹腔鏡による修復の治療ビデオが付いている。

2010年5月21日金曜日

コイロニキア:スプーン様に変形した爪:NEJMのイメージ


コイロニキア

というのはkoilonychiaのことでいわゆる匙状爪のことである。spoon nailのことである。いろいろな教科書にいろいろな「匙」が載っているが、いまひとつ迫力に欠ける・・・というか説得力に欠けるものばかりだと小生これまで思っていた。

先々週号のNEJMにはインドの症例写真が載っていたが、これには驚いた。ここまでのspoon nailであるがヘモグロビンで3g程度である。26歳女性で原因は鉤虫類 Hookworm.いわゆる鞭虫であろうと書いてある。

ところでHb 3gというのには時々出くわす。といっても数年に一回くらい。ゆっくりゆっくり時間をかけて輸血しないと心不全であっというまに死んでしまう(死んでしまいそうでこわい)。

2010年5月20日木曜日

ボー線:化学療法の強さと間隔が爪に現れる


Multiple Beau's Lines


Number 20Volume 362:e63

Images in Clinical Medicine


化学療法の強さと間隔が爪に現れる・・・こんなのでもNEJMに採用されるのね。

ちなみにdocetaxel–cisplatin–fluorouracilが通常のサイクルで黒矢印(ボー線がやや薄い)の回はシスプラチンを省略

2010年5月19日水曜日

キライディティ症候群

キライディティ症候群
 Chilaiditi syndrome



D. Chilaiditi:
Zur Frage der Hepatoptose und Ptose im allgemeinen im Anschluss an drei Fälle von temporärer, partieller Leberverlagerung.
Fortschritte auf dem Gebiete der Röntgenstrahlen, 1910, 16: 173-208.

2010年5月18日火曜日

PS早見表

grade

performance status

0

無症状で社会活動ができ,制限をうけることなく,発病前と同等にふるまえる.

1

軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできる,例えば軽い家事,事務など.

2

歩行や身の回りのことはできるが,時に少し介助がいることもある.軽労働はできないが,日中の50%以上は起居している.

3

身の回りにある程度のことはできるが,しばしば介助がいり,日中の50%以上は就床している.

4

身の回りのこともできず,常に介助がいり,終日就床を必要としている.

2010年5月16日日曜日

2010年版人類のCNVパターンカタログ

CNVというのは文字通りゲノム・コピー数の個人個人による違いのことをいう。 copy number variation

さて年配の方はいうだろう。
・・・コピーの違いなんかあるわけがない。染色体は22対と性染色体の46本に決まっている。そのゲノムの上の遺伝子・ゲノムの数はだれでも同じだぞ。そうだろ? 病気でもないかぎり個人間にゲノム遺伝子のコピー数に差はない。みんな2コピーづつ。母親と父親から一つづつ受け継いだもの。あたりまえじゃないか!もちろん違うことがあるは知っているよ。でも例外的だろう?たとえばダウン症候群なんかだな。云々・・・。

病気になるとゲノムの一部の量が変化することはここ50年でかなり知られてきた。その大部分は染色体異常であった。これは染色体を染める技術が進むことで様々なパターンがカタログ化されてきた。ほとんど芸術的な作業であった。文字通り切った、貼ったの世界である。精緻なジグゾーパズルの世界なのであった。この染色体異常には二つのパターンが知られている。
一つは先天的に親から引き継いだ染色体数異常である。染色体異常を持ちながら胎生期、出産を乗り越え出生できた。文字通り生きて生まれることが可能であった人たちである。障害を持たれて生きておられる方もまた多い。

今ひとつは生後あらたに染色体異常を起こしたが為に病気が発症するパターンである。人体を構成する大部分の細胞は正常であり、このなかから異常パターンを持った細胞が検索可能になるためには、それらがクローナルに増えて行かなければ(つまり量が増えなければ)無理である。これって腫瘍化しなければ、このようなパターンは見えてこない、気が付かれることはないことを意味する。白血病、リンパ腫、肉腫がこのような生後におこる染色体数異常がみつかる代表的な疾患群である。

4〜5年前までは上のような議論がすべてあった。正常な人のゲノムは大部分等価である。ほとんど同じ配列である。その中で塩基単位の違いが遺伝子多型を作ることは了解されていた。アルコール耐性や血液型、HLAや免疫グロブリン遺伝子の多様性。これらの多型性・多様性の原理はかなり知られていた。しかしそれよりも大きな長さの単位レベルでは多型性はあり得ないというのがコンセンサスであった。

今は違う。ドラスティックに変わってしまった。個人間のゲノムの違いはダイナミックである。数が違う。普遍的にその事実が知られるようになったのはゲノムアレイ研究が世に出てきてからである。コピー数の違いは大部分は機能遺伝子が存在する場所以外で見られる傾向はあろう。機能遺伝子のコピーが2コピー(父母由来)以上あると困りますからな(そのように教科書に書いてある)。しかし驚くことに機能遺伝子でもコピー数が違うものがある。アミラーゼ遺伝子は米食を盛んにする人種では多いことが知られており、日本人は平均6本もっているようだ。1番染色体の端に存在するこの遺伝子領域は、ゲノムアレイではそそり立つヒゲのように見える。母親由来の一番上に4コピー、父親由来で2コピータンデムに重複しており合わせて6コピー見える。多い人では14コピーある。このような「ヒゲ」は局所的にコピー数が増減していることを意味しているが、小生がゲノムアレイの研究を始めた当初はそのヒゲの数のあまりの多さに信じられない思いであった。しかも個人間で共通するヒゲも多いし、共通しないヒゲも多い。しかし決してランダムではない。ある程度の「頻度」と場所の特異性はあるようで非常に興味深いパターンを見せてくれるのだった。

前置きが長くなったが2010年版人類のCNVパターンカタログが発表された。
この土日は楽しめそうである。

Article

Nature 464, 704-712 (1 April 2010) | doi:10.1038/nature08516; Received 14 August 2009; Accepted 21 September 2009; Published online 7 October 2009

Origins and functional impact of copy number variation in the human genome

Donald F. Conrad1,7, Dalila Pinto2,7, Richard Redon1,3, Lars Feuk2,4, Omer Gokcumen5, Yujun Zhang1, Jan Aerts1, T. Daniel Andrews1, Chris Barnes1, Peter Campbell1, Tomas Fitzgerald1, Min Hu1, Chun Hwa Ihm5, Kati Kristiansson1, Daniel G. MacArthur1, Jeffrey R. MacDonald2, Ifejinelo Onyiah1, Andy Wing Chun Pang2, Sam Robson1, Kathy Stirrups1, Armand Valsesia1, Klaudia Walter1, John Wei2, The Wellcome Trust Case Control Consortium, Chris Tyler-Smith1, Nigel P. Carter1, Charles Lee5, Stephen W. Scherer2,6 & Matthew E. Hurles1

  1. The Wellcome Trust Sanger Institute, Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge, CB10 1SA UK
  2. The Centre for Applied Genomics and Program in Genetics and Genomic Biology, The Hospital for Sick Children, MaRS Centre–East Tower, 101 College Street, Room 14-701, Toronto, Ontario M5G 1L7, Canada
  3. Inserm UMR915, L’institut du thorax, Nantes 44035, France
  4. Uppsala: Department of Genetics and Pathology, Rudbeck Laboratory Uppsala University, Uppsala 751 85, Sweden
  5. Department of Pathology, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, Massachusetts 02115, USA
  6. Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Toronto M5S 1A8, Canada
  7. These authors contributed equally to this work.
  8. Lists of participants and affiliations appear in Supplementary Information.

Structural variations of DNA greater than 1 kilobase in size account for most bases that vary among human genomes, but are still relatively under-ascertained. Here we use tiling oligonucleotide microarrays, comprising 42million probes, to generate a comprehensive map of 11,700 copy number variations (CNVs) greater than 443 base pairs, of which most (8,599) have been validated independently. For 4,978 of these CNVs, we generated reference genotypes from 450 individuals of European, African or East Asian ancestry. The predominant mutational mechanisms differ among CNV size classes. Retrotransposition has duplicated and inserted some coding and non-coding DNA segments randomly around the genome. Furthermore, by correlation with known trait-associated single nucleotide polymorphisms (SNPs), we identified 30 loci with CNVs that are candidates for influencing disease susceptibility. Despite this, having assessed the completeness of our map and the patterns of linkage disequilibrium between CNVs and SNPs, we conclude that, for complex traits, the heritability void left by genome-wide association studies will not be accounted for by common CNVs.

2010年5月13日木曜日

The Nature Top Ten アクセスランキング 2010年4月-5月

The Nature Top Ten アクセスランキング
2010年04月15日~2010年05月13日


1. 小惑星24番テミスの氷
Nature 464 (April 2010)
2つの独立した研究グループが、主小惑星帯の小惑星24番テミスの赤外スペクトルを、ハワイのマウナケアにあるNASAの赤外線望遠鏡施設(IRTF)を 使って観測し、このスペクトルはテミスが水氷と有機物を含む凍った物質で広範囲に覆われていることと一致するのを見いだした。一部の小惑星の表面に水が存 在することは、いくつかの小型小惑星の活動が彗星に似ていることから推測されていたものの、主小惑星帯に存在する水と有機物が実際に測定されたのは今回が 初めてである。表面に氷が存在することは、とりわけ意外な結果である。なぜなら、火星と木星の軌道の間にあるテミスから太陽までの距離では、曝露された氷 の寿命は比較的短いからだ。

2. 多発性硬化症のゲノム:1人が多発性硬化症を発症し、もう1人は発症 していない双生児のゲノム完全塩基配列の解読
Nature 464 (April 2010)
「一卵性」双生児は、ヒトの疾患への遺伝のかかわりや環境の影響を研究する際に広く用いられている。双子のうちの1人が多発性硬化症を発症し、もう1人は 発症していない3組の一卵性双生児について今回行われた研究は、最新のゲノムシーケンシングと解析の技術をこの分野に導入したもので、また双子で多発性硬 化症患者の女性のゲノム塩基配列を初めて公表している。双生児の1組については全塩基配列が解読され、この組を含む3組について、CD4+リ ンパ球のmRNAトランスクリプトームおよびエピゲノム配列が決定された。意外にも、双生児の一方が発症し、他方が発症しないことの説明となる遺伝的、エ ピゲノム的違い、あるいはトランスクリプトームの差異は見いだされなかった。このデータを詳しく検討したeQTL(発現量的形質遺伝子座)マッピングから は、双生児間の興味深い違いが明らかになり、これはさらに詳細な解析を行うのに値する。また、多発性硬化症の発症について考えられる原因のいくつかは除外 することができた。今後は、ほかの細胞型やエピジェネティックな修飾の研究が集中的に行われるだろう(Letter p.1351, News p.1259, www.nature.com/podcast)。

3. スプライシングコードの謎を解く:RNA塩基配列から予測される 選択的スプライシングのパターン
Nature 465 (May 2010)
単独の遺伝子から2つ以上の異なるタンパク質が生成できるようになる選択的スプライシングは、脊椎動物ゲノムのコーディング容量を大幅に増やしている。選 択的スプライシングは、遺伝情報による細胞過程制御を実現しており、多くのヒト疾患にみられる変異はスプライシングに影響を及ぼしている。選択的スプライ シングを受けた異なるメッセンジャーRNAの発現を、ゲノム塩基配列データから予測できるようにすることは、遺伝子発現の分野で長らく追求されてきた目標 である。トロント大学のFrey たちとBlencoweたちは、数千のエキソンについて、数百のRNA特性が協働して組織依存的な選択的スプライシングを調節する仕組みを正確に予測する 「スプライシングコード」を解読した。これを用いて、発生過程と神経学的過程で選択的スプライシングがどのように重要な役割を果たしているかが予測され、 スプライシング調節機構に関する手がかりが得られた。また、このコードを組み込んだウェブツールを作り、機能が未知のエキソンとイントロン塩基配列を探索 して、組織特異的なスプライシング・パターンを予測できるようにした(Article p.53, N&V p.45, News p.16)。

4. がん進行のゲノミクス
Nature 464 (April 2010)
最新のDNAシーケンシング技術を用いれば、腫瘍の進行に伴って生じる遺伝的変異について、ゲノム全体にわたるスクリーニングを行うことが可能である。こ うした方法を用いて、基底細胞型乳がん患者(44歳のアフリカ系アメリカ人)の原発腫瘍、末梢血、脳の転移巣と原発腫瘍の一部を異種移植したサンプルから の初代培養細胞という、4種のDNA標品の完全な塩基配列が得られた。変異解析から、転移した腫瘍は、原発腫瘍の既存の変異を含む細胞群の1つを特異的に 選択し、さらに少数の全く新しい変異も起こしていることが示唆された。

5. 糖尿病を理解する
Nature 464 (April 2010)
膵臓のβ細胞の機能がしだいに失われ、日常的にインスリン投与が必要になるという、1型糖尿病の臨床像が明らかになってから100年以上も経つが、この病 気の進行経過の詳細はまだ解明の途上にある。しかし最近、げっ歯類モデルや糖尿病患者での詳細かつ幅広い研究によって、糖尿病の発生病理や遺伝学的特徴の 解明は急速に進歩した。ReviewでJ Bluestone、K HeroldおよびG Eisenbarthは、この10年の大きな進歩のいくつかを概括し、現在試験が行われている有望な新しい治療法について報告している。そのいくつかは、 糖尿病以外の自己免疫疾患にも応用できる可能性がある。

6. がんゲノムのネットワーク
Nature 464 (April 2010)
2010年には数百のヒトがんのゲノム塩基配列が公表されると予想されており、さらに来年以降、その数は毎年数千になるだろうと考えられている。国際がん ゲノムコンソーシアム(ICGC)は、成人と小児の主要ながんのすべて(全部で50種の異なるタイプまたはサブタイプのがん)について、大規模ながんゲノ ム解読研究データの状況把握を目的として立ち上げられた。本号では、ICGCチーム(www.icgc.org) がプロジェクトの方針と計画を詳細に説明している。

7. アディポネクチンと肥満
Nature 464 (April 2010)
脂肪細胞由来のホルモンであるアディポネクチンは、グルコースと脂肪酸代謝の調節に関与し、抗糖尿病作用とアテローム産生抑制作用をもつ。筋細胞のアディ ポネクチン受容体AdipoR1を欠損するマウスを用いた研究で、このマウスはインスリン抵抗性を示し、野生型のマウスよりも運動に対する持久力が低いこ とが示された。アディポネクチンは骨格筋で、AdipoR1を介した細胞外Ca2+の流入を誘導するが、これはミトコンドリア機能 や酸化ストレスに密接に関係する、下流のさまざまなシグナル伝達に欠かせない。このことは、AdipoR1受容体を刺激するか、あるいは骨格筋の AdipoR1受容体の数を増加させれば、ミトコンドリア機能不全、インスリン抵抗性や肥満と関連のある2型糖尿病の治療に有効である可能性を示してい る。

8. 直接的な作用:特異的に働くNotch受容体アンタゴニストの抗 がん剤としての可能性
Nature 464 (April 2010)
Notchファミリーの4つの受容体は広く発現している膜貫通タンパク質であり、哺乳類細胞はこれらを介して相互に情報交換を行い、細胞の運命と増殖を調 節している。Notchシグナル伝達の欠陥は、急性リンパ芽球性白血病などの多くのがんと関連している。今回、ジェネンテック社の複数部門の研究者からな る研究チームがファージディスプレイ法を用いて、Notch1とNotch2の強力かつ特異的なアンタゴニストとして作用する合成抗体を作出した。抗 Notch1は、前臨床マウスモデルで、がん細胞の増殖と血管新生の両方を阻害する抗がん活性を示し、また培養されたヒト、あるいはがん細胞に対しても活 性がみられる。Notch1と2を同時に阻害すると腸に毒性があるが、どちらか一方だけの阻害ではこの副作用はおおむね回避され、「全Notch」阻害剤 に勝る治療上の利点が見込まれる。表紙は、Salamander Design StudiosのG Vionによるもので、リガンドを発現している細胞(右側)が、隣の細胞のNotchシグナル伝達を活性化しているようすを描いたもの。刺激の受け手とな る細胞の膜にはNotch1と2(赤と青)が発現している。特異的アンタゴニストの作用によって、青色のシグナルの情報だけが細胞核に伝わる (Letter p.1052)。

9. 色の符号化:Winglessは、ショウジョウバエのなかなか見つ からなかったパターン誘導因子である

Nature 464 (April 2010)
貝殻や熱帯魚、ヒョウなどでみられるような動物体表の複雑な色彩パターンの形成は、発生生物学における古典的な難題である。パターン形成を説明しようとす る試みの大半は、反応拡散機構に着目した理論的なものである。この機構では、狭い領域で拡散する活性化因子(モルフォゲン)と、広範囲に拡散する阻害因子 の相互作用により、安定なパターンが生成されると仮定している。しかしこうした因子の候補となるモルフォゲンや阻害物質はこれまで明らかにされていなかっ た。S Carrollたちは、モデルとしてショウジョウバエの一種であるDrosophila guttiferaの翅の鮮やかな水玉模 様を用いて、斑点がモルフォゲンのWinglessにより誘導されることを明らかにした。さらに彼らは、新たな部位でWinglessを発現させること で、この複雑な水玉模様がより単純なスキームから進化した可能性を示している。表紙の合成画像で、左の翅はD. guttiferaの翅脈 上の16の斑点と翅脈間の4つの着色部分を示し、右側の翅はダブルトランスジェニックD. guttiferaの蛹の翅の翅脈上の斑点と翅 脈間着色点のシス調節配列活性を合わせて示している(Article p.1143)。

10. C型肝炎の新しい治療薬
Nature 465 (May 2010)
C型肝炎ウイルス(HCV)に直接的に作用して、慢性感染を治療するための抗ウイルス薬の開発は、臨床上必要性が高く、ウイルスのプロテアーゼである NS3およびHCV複製に不可欠なRNA依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bという2つの酵素の阻害剤に研究がおおむね集中して行われてきた。 BMS-790052は、化学遺伝学によって強力なHCV特異的阻害剤であることが突き止められた化合物で、非構造タンパク質 5A(nonstructural protein 5A;NS5A)という、酵素活性がわかっていない第三のウイルス分子の低分子阻害剤である。今回、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の研究チームは、BMS-790052の発見とウイルス学的な特徴を報告し、また、健常者とHCV感染患者で行われたこの化合物を用いた臨床試 験の結果を公表している。これらの結果は、HCVのNS5Aの阻害が臨床的に適切な機序であるということの概念実証に当たる。in vitroの データからは、既知のHCV阻害剤との相乗的な相互作用が示されており、抗ウイルス薬のカクテルが実行可能な治療法となると考えられる。

2010年5月9日日曜日

映画「オーケストラ!」をみました。

今日の午後は「のだめカンタービレ」の最終編を見に行く予定にしていた。ところが行く予定の映画館のそばでプロ野球の試合があっておりとても車では行けそうにないことがわかった。かみさんが「のだめ」なんかやめて「オーケストラ!」に行ったらどうよ・・という。評判だという。ちらっとネットで眺めてみたがなんだか面白そうである。不遇をかこつ指揮者ものだということだけがポスターでわかったが、これは先日の「Nine」でもそうなのだが、趣味に合うのである。時間を調べると2時10分からである。そこでかみさんと町にでかけ昼ご飯を一緒に食べてそこで分かれた。我が家では映画はひとりでみるものとの不文律があるのである。30年くらい存在は知っていた映画館ではあるが、実は出かけるのは初めてであった。日曜日の午後だったからか、人がよく入っているのに驚いた。余裕で座れたけどな。

で映画であるが、これがイイのである。先日の「Nine」はすぐに忘れてしまうだろうと書いたが、この映画は残るな。見応えある。またまた好きな女優ができてしまった。メラニー・ロラン。最後のチャイコンでは涙が出てしょうがなかった。いやはや、めちゃくちゃな映画ではあるが、芯の部分が素晴らしい。

のだめはいつでも見れるがおそらくこの映画は今日観なければ
一生縁がなかったと思う。かみさんに感謝したい。かみさんはおそらく観ることがないだろうな。そんなヤツなのだ。

2010年5月5日水曜日

ようやくSkypeを利用してテレビ電話を始めた。


ようやくSkypeを利用してテレビ電話を始めた。私どもの家と子供の寮との間である。投資額はWebCameraで2900円。設定は小生側がiMacの内蔵カメラと内蔵マイク。子供側は最近購入したというLet's Note(パナソニック)である。小さいノートのくせにこのパソコンiMacより高価なのである。丈夫で頼りになるというブランドイメージは強いよね。このノートに外部カメラとして

エレコム

UCAM-DLC200T


を購入した。量販店で10台くらいあったものの中から、写りの良いものを選んだつもりである。がしかし実際に500km離れた距離で通話となると、やはり画質は落ちる。A4にびっしり書かれたレポートはなんとか画面上でも読めるからまあよいか。
価格ドットコムでは断然「ロジクール」の人気が高い。街の電気屋にはロジクールは一昔前の機種しかおいていないのが残念である。

つなぎ方(1):親子共々hotmailの新規アドレスを取得した。無料である。簡単に取得できた。このメールアドレスはkkllmm@hotmail.co.jpの形であるが、新規スカイプ登録するときにメールアドレスとして使用するわけだ。

つなぎ方(2):スカイプのソフトをダウンロードし立ち上げ言われるままに記入。先ほどのhotmailの新規アドレスを記入する。(ここではgmail address, hotmail address, iMac mail addressのいずれのみ有効である。自分の普段使っているアドレスは使えない)

つなぎ方(3)内蔵カメラ付きのマックであれば(2)までで終了。外部カメラ購入組は、カメラを取り付けUSBにつなぎ、附属のCDからカメラのドライブをHD内にインストール。これも言われるままにやれば、じきにパソコン画面に自分の間抜けなお顔が現れる。声も取り込まれているはずだが、小生の今回の試みでここの「声」だけ最初不調であった。ドライバーの設定を一カ所変更したらオーケー。

ネット空間にいる相手を探しだしテレビ会話をする方法(1)

スカイプを立ち上げる。ついでコネクションを選び、そこに相手のIDを入れる。(hotmailのサーバーにはユニークIDとして登録済みなので、すぐに画面上に登場する)。テレビ電話を開始したいので、電話マークを押すと「ルルル・・・」という接続音がなる。この間、相手のパソコンでは「着信音」が鳴っているわけだ。相手が出る気があるのなら、私のIDをクリックする・・・・それだけでつながるのだ。
もちろん相手のパソコンの電源が入っていない場合はつながるはずがないのだが、賢いことにこのスカイプシステムは頼みもしないのに相手がつながる状態かどうかを調べてきてくれている。つながる可能性があるダイアルにだけ緑のマークがついている。繋がる可能性がないヒトは灰色マークである。このあたりは実に賢い。

まあ、いすれにしても接続方法は極めて簡単であり、相手のウェブアドレスも要らなければ、こまかなセッティングも不要だ。ただ一つhotmail アドレスを取得するだけで良いのだから楽なシステムである。もちろん無料である。国内も国外も無料通話・無料テレビ電話である。良い世の中であることよ。

「車はかくして作られる」:福野 礼一郎

車はかくして作られる・・・という本がある。車検で訪れたトヨペットの店内においてあった本であるが、これが面白いのなんのって!時間がなかったので、ほんのさわりしか読めなかったのだが、アマゾンで運良く手に入れることができた。なんと2001年の出版であり、もう10年選手であり、良く手に入ったものだと感心する。送付されるのが楽しみである。



2010年5月4日火曜日

ラフマニノフ: ヴォカリーズ Op.34-14

久しぶりにクラシックの名演奏を・・・ラフマニノフからヴォカリーズですが、このチェロ版は渋いぞ!

新しいタイプの糖尿病薬:ジャヌビアとエクア

「インクレチン」を阻害する新しいタイプの糖尿病薬が二つほど市場に現れた。

エクア(ビルダグリブチン)
「2型糖尿病。ただし、次のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。(1)食事療法、運動療法のみ。(2)食事療法、運動療法に加えてスルホ ニルウレア剤を使用」、用法・用量は「1回50mgを、1日2回(朝・夕)に経口投与、患者の状態に応じて1日1回朝に経口投与できる」

SUは相変わらず第一選択薬とみなされている・・・・そうなんだ。


グラクティブあるいはジャヌビア(シタグリプチン)

一方先行して販売されたグラクティブあるいはジャヌビア(シタグリプチン)の適応は

2型糖尿病 ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。
(1)食事療法、運動療法のみ
(2)食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
(3)食事療法、運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用
(4)食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用

【用法・用量】
通常、成人にはシタグリプチンとして50mgを1日1回経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら、100mg・1日1回まで 増量することができる。

こちらは併用薬剤の範囲が広い。しかも一日一回投与が原則。

あとは値段である。

ジャヌビア
  25mg錠 96.1円
  50mg錠 179.3円
  100mg錠 269円

原則一日一回50mgだから180円である。

エクア錠
  50mg錠104.7円  一日二回だから210円となる。

以前まとめた糖尿病薬一覧と比較する。
  1. メデット(250mg)   2T 2x MA    9.70 x 2 x 30=600円/月  メトホルミンで ありビグアナイド
  2. ボグリボース(0.3mg)  3T 3x    36.50 x 3x30= 3285円/月  ボグリボースでありαグルコシダーゼ阻害薬
  3. アマリール    3T 3x   22.5 x 3x30=2025円/月   第三世代のSU製剤
  4. アクトス(15mg)   2T 2x MA  98.60 x 2 x 30= 5916円/月  チアゾリン

ビグアナイドの価格は一日20円。毎日の飲む薬である。10年飲むと3650日。一日の薬価が100円違うと10年では37万円くらい違ってくる。今の時代これは大きいのだ。

新しい薬はアクトスより若干高めに設定してある。今後このDPP-4阻害薬の正体を見極めていきたい。

2010年5月3日月曜日

Lgr-5,-6のクリバース自身による総説:Gastroenterology

Leucine-rich repeat-containing G-protein-coupled receptors as markers of adult stem cells.

Barker N , Clevers H
Gastroenterology.2010 May ; 138(5):1681-96.

Molecular markers are used to characterize and track adult stem cells. Colon cancer research has led to the identification of 2 related receptors, leucine-rich repeat-containing, G-protein-coupled receptors (Lgr)5 and Lgr6, that are expressed by small populations of cells in a variety of adult organs. Genetic mouse models have allowed the visualization, isolation, and genetic marking of Lgr5(+ve) and Lgr6(+ve) cells and provided evidence that they are stem cells. The Lgr5(+ve) cells were found to occupy locations not commonly associated with stem cells in the stomach, small intestine, colon, and hair follicles. A multipotent population of skin stem cells express Lgr6. Single Lgr5(+ve) stem cells from the small intestine and the stomach can be cultured into long-lived organoids. Further studies of these markers might reveal adult stem cell populations in additional tissues. Identification of the ligands for Lgr5 and 6 will help elucidate stem cell functions and modes of intracellular signaling.

2010年5月2日日曜日

基底細胞様乳癌なるものへのねじれたオマージュ

以下(昨日引用した2008年論文)のような論文が「基底細胞様乳癌」というものが「組織学的」にも存在するような誤解を誘導してきた元凶である。

世の中「かもしれない」ですまされることと、済ま してはいけないことがある。また「そうはいってもマイクロアレイはお金がかかるし、煩雑だし、現実的でないし、『臨床的ではない』から、それに替わる『誰でも出来る』方法を考案しなくてね・・・」という意見は一見正論に見える。

なるほど下の論文(5月1日分)もそ の論調である。研究して報 告した当人はそれでよいが、読んで応用する医者は余程注意深くならなければならない。免疫染色で代替することは時期尚早だと判断できる理性が求められる。まだまだ未熟なデータなのだよ。




何度も言うが「basal cell like」という概念は
分子病理研究者が、100年続 いた組織病理を凌駕するものとして初めて手に入れた至宝のような研究成果なのである。頼むから免疫染色などの安易な手垢にみちた手法で泥を塗らないで欲し いのだ。

やるべき事はオランダのグループを更に上回る方法として、

  1. 日本独自で、プロスペクティブに、5000例から10000例規模でマイクロアレイ解析 を行うこと・・・・これ第一グループ。
  2. 同じ症例の免疫染色をトリプルあるいはファイブマーカーで別の独立したグループが解析すること・・・これ第二グルー プ。
  3. 結果を独立した第三グループが比較する。
  4. そしてこれが大事なことであるが、結果を10年寝かせる。そうすると99%フォローアップ可能なカプラン・マ イヤーが描ける。ここで初めて真実がわかるのである。アジュバントはきちんと層別化しておくとよい。再発後もきちんと層別化できるとよいが、それはそれと して・・・。

2010年5月1日土曜日

基底細胞様乳癌をより明確に定義する5つのバイオマーカー

基底細胞様乳癌をより明確に定義する5つのバイオマーカー


トリプルネガティブ乳癌表現型(エストロゲンレセプター〔ER〕陰性,プロゲステロン〔PR〕陰性,HER2陰性)を拡大し,上皮成長因子受容体 (EGFR)陽性およびサイトケラチン5/6陽性を含めると,高リスク患者群の同定精度が向上することが示された。カナダ・バンクーバー病院の Torsten Nielsen氏らによれば,この結果は,上記5種類の代用バイオマーカーを用いることで基底細胞様乳癌を定義できることを裏づける「有力なエビデンス」 であるという。
乳癌は異質な要素を含む疾患であり,遺伝子発現プロファイリングからluminal A,luminal B,HER2過剰発現,基底細胞様の4つのサブタイプに分類されている。なかでも特に注目されているのは,基底細胞様乳癌である。それは,この腫瘍が ER,PR,HER2をいずれも発現しないため,標的療法が奏効しないからである。費用と複雑さの問題から遺伝子発現プロファイリングは実用的ではないた め,研究者の中には,トリプルネガティブ表現型を基底細胞様乳癌の代用として利用する者もいる。これは,乳癌生検の臨床検査の際に標準的なバイオマーカー をルーチンで用い,乳癌を発見するのと同じやり方である。しかし,ゴールドスタンダードである遺伝子発現プロファイリングとの相関性を調べることでこのア プローチの妥当性を正式に検証した研究はこれまで存在しない。EGFRおよびサイトケラチン5/6は,ただちに利用可能な基底細胞様乳癌の陽性マーカーで あり,ER/PR/HER2に加えることで新たな予後因子としての価値が生まれる可能性がある。
今回の研究では,1986〜1992年に乳癌女性 3,744例の腫瘍検体を分析した。全体で17%の腫瘍がトリプルネガティブ表現型の基準を満たし,9%がさらにEGFRおよびサイトケラチン5/6の発 現を示した(「中核的基底細胞様乳癌型(core basal)」と定義)。残りの8%はEGFRおよびサイトケラチン5/6の発現は見られなかった(「ファイブネガティブ」)。乳癌の最も一般的なサブタ イプである管腔様乳癌患者に比べ,トリプルネガティブ型の腫瘍を有する患者では,乳癌特異的死亡のハザード比が1.39を示した。しかし,中核的基底細胞 様乳癌群の乳癌特異的死亡のハザード比が1.62であったのに対し,ファイブネガティブ群の乳癌特異的死亡リスクに有意な上昇は見られなかった。多変量解 析の結果,ファイブネガティブ群に比べ,中核的基底細胞様乳癌群の乳癌死の推定ハザード比は1.47を示した。
以上から,EGFRおよび CK5/6を含んだ中核的基底細胞様乳癌マーカーのセットに比べ,3種類のバイオマーカー分類指標(ER,PR,HER2)のみを頼りにした基底細胞様乳 癌の定義では,乳癌の転帰を正確に予測することはできないと考えられた。Nielsen氏らは「この免疫学的マーカーセットは,安価な診断ツールであり、 すでに臨床で用いられている。このセットにより、治療選択肢の改善が求められるトリプルネガティブ乳癌をより具体的に定義づけることができる」と結論して いる。

2008年 3月
Clin Cancer Res; 14: 1368-1376