2009年9月30日水曜日

ヘパリン類の価格

表1.日本でDICに対して使用可能なヘパリン類

ヘパリン類 未分画ヘパリン
(標準ヘパリン)
低分子ヘパリン
商品名:フラグミン
ダナパロイドナトリウム
商品名:オルガラン
抗Xa/IIa活性比(※) 1 2〜 22
血中半減期 約0.5〜1時間 約2時間 約20時間
適応症(日本) DIC
血液凝固の防止
血栓塞栓症の治療・予防
体外循環装置使用時の血液凝固の防止
DIC
血液体外循環時の還流血液の凝固防止
(欧米ではDVTも)
DIC
(欧州ではDVTも)
用法および用量 DIC:5,000〜10,000単位/24時間 DIC:75 単位/kg/24時間 DIC:1,250単位×2回静注/日

DIC:播種性血管内凝固症候群、DVT:深部静脈血栓症
(※)抗Xa/トロンビン活性比:この比が高いヘパリン類は、出血の副作用が少ないとされている。


ヘパリンナトリウム注N

5千単位/5mL「味の素」 経路:注射薬|規格:5,000単位5mL1管 |一般名:ヘパリンナトリウム注射液|薬価:176.00 

フラグミン静注 

ダルテパリンナトリウム注射液 5,000低分子ヘパリン国際単位1瓶  製造メーカー ファイザー 薬価 1747.00

オルガラン注 

ダナパロイドナトリウム注射液  1,250抗第Xa因子活性単位1mL1管 薬価 1462.00

DIC治療について

金沢大学血液内科から引用

1. DIC治療の考え方


播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC) の本態は、基礎疾患の存在下における全身性持続性の著しい凝固活性化である。DICの進展を阻止するためには、基礎疾患の治療と共に、DICの本態である 凝固活性化を阻止する必要がある。基礎疾患の治療を行っても、基礎疾患が一両日中に治癒することは極めて例外的であるため、この間にDICが原因で病態が 悪化することを阻止しなければならない。
 DICの治療としては、重要性の高い順に、基礎疾患の治療、抗凝固療法、補充療法、抗線溶療法が挙げられる。



1)基礎疾患の治療


全てのDICには必ず基礎疾患が存在する。どのような症例においても、基礎疾患の治療は最重要である。急性白血病や進行癌に対する化学療法、敗血症に対する感受性のある抗生剤治療などがこれに相当する。
 なお、悪性腫瘍(造血器を含む)に対して化学療法を行うと、腫瘍細胞の崩壊に伴って組織因子(tissue factor: TF)が大量に血中に流入するため、DICが一時的にかえって悪化することが少なくないが、それを理由に基礎疾患の治療を躊躇してはいけない。




2)抗凝固療法



日本でDICに対して使用可能な抗凝固療法(表1)としてはいくつかの薬剤が知られているが、DICの病態に応じて適切な薬剤を選択する。




a. ヘパリン類&アンチトロンビン濃縮製剤


現在の日本においてDICに対して使用可能なヘパリン類としては、ダナパロイドナトリウム(商品名:オルガラン)、低分子ヘパリン(商品名:フラグミンなど)、未分画ヘパリン(標準ヘパリン)がある。これらのヘパリン類は、いずれもアンチトロンビン(AT)活性を促進させることによって、抗凝固活性を発揮する点で共通しているが、抗Xa/トロンビン(IIa)活性比や、血中半減期には相当な差違がみられる(表1)。これらのヘパリン類の特徴を見極めながら、使い分ける必要がある。
 たとえば、ダナパロイドナトリウムは半減期が長いために、1日2回の静注(1,250単位を、1日2回12時間毎に静注)であっても効果が持続する点が魅力である。この点、慢性DICに 対しては最も良い適応となる(患者を24時間持続点滴で拘束する必要がない)。ただし、万一出血の副作用がみられた場合には半減期の長いことがデメリット になる場合がある。また、腎代謝のため、腎機能障害のある症例や低体重の症例では減量して使用すべきである(他のヘパリン類にも当てはまる)
 ヘパリン類は、AT活性が低下した場合は充分な効果が期待できないため、AT濃縮製剤(アンスロビンP、ノイアート、ノンスロン)のいずれかを併用する。保険適応は、AT活性70%以下の症例でAT濃縮製剤を使用することが可能であり、1,500単位/日で3〜5日間使用される。ただし、この保険上の使用方法には医学的根拠はなく、より大量に使用できれば理想的である。
 なお、未分画ヘパリンは、ダナパロイドナトリウムや低分子ヘパリンと比較して医学的に優れている点はなく、現在ほとんど使用されなくなってきている(未分画ヘパリンは安価である点のみがメリットである)。




b. 合成プロテアーゼインヒビター


合成プロテアーゼインヒビター(SPI)は、AT非依存性に抗トロンビン活性を発揮する。代表的薬剤は、メシル酸ナファモスタット(商品名:フサンなど)および、メシル酸ガベキサート(商品名:FOYなど)である。出血の副作用は皆無に近いため、出血の副作用のためにヘパリン類の使用が困難な場合には良い適応となる。また、両薬剤は膵炎治療薬でもあり、DICのみならず膵炎をも合併している時にも良い適応となる。
 なお、メシル酸ナファモスタットは臨床使用量(1.44〜4.8mg/kg/日、持続点滴静注:標準的体重の人では150〜200mg/24時間)で、抗凝固活性のみならず抗線溶活性も強力であり、線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)に対して有効である。メシル酸ガベキサートは臨床使用量(20〜39mg/kg/日、持続点滴静注:標準的体重の人では1,500〜2,000 mg/24時間)では抗線溶活性は強くない。ただし、メシル酸ナファモスタット(フサン)の高カリウム血症の副作用には注意が必要である。両薬剤ともに静脈炎の副作用があり、中心静脈からの投与が原則である。



c. 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤 (2008年5月発売)


遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン) は、日本で使用されるDIC治療薬の中で、最も質の高い臨床試験において有用性が証明されており、今後最も期待されている薬剤の一つである(Saito H, Asakura H, et al: J Thromb Haemost 5: 31-41. 2007)。可能であれば、アンチトロンビン濃縮製剤と併用投与したいところであるが、保険上の扱いがどうなるか、この原稿執筆時点では不明である。



3) 補充療法


消費性凝固障害のため、血小板や凝固因子の著しい低下のため出血がみられる場合には、補充療法を行う。
 血小板の補充目的としては濃厚血小板(PC)、凝固因子の補充目的としては新鮮凍結血漿(FFP) を用いる。通常、PCは血小板数2万/μL程度以上に維持されることを目安に輸注される(10〜20単位/1回 必要があれば経日的に繰り返す)。FFP は、フィブリノゲン100mg/dl未満またはPT比1.7以上になるような症例では必要になることが多い(5単位程度/1回 必要があれば経日的に繰り 返す)。



4) 抗線溶療法


DICにおける線溶活性化は、微小血栓を溶解しようとする生体の防御反応の側面もあり抗線溶療法は原則禁忌である。
 また、急性前骨髄球性白血病において、ATRAによる分化誘導療法を行っている場合も、トラネキサム酸(商品名:トランサミン)を投与すると全身性血栓症を併発して死亡したという報告が多数見られるため、絶対禁忌である。
 ただし、線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)の著しい出血例に対して、ヘパリン類併用下にトラネキサム酸を投与すると出血に対してしばしば著効するが、必ず専門家にコンサルトの上で行う必要がある。



5) 免疫グロブリン(イムノグロブリン)(DIC治療の番外編)


特に、重症感染症に合併したDICにおいてはサイトカインが重要な役割を演じている。我々の動物DICモデルを用いた検討によると、LPS誘発DICモデ ルに対して免疫グロブリンを投与すると、TNFやIL-6と言った炎症性サイトカインが抑制され、DIC病態が有意に軽快した(Asakura H, et al: Crit Care Med 34: 2421-5, 2006)。免疫グロブリンは、臨床でのDIC治療薬としても威力を発揮する可能性が高い。

2009年9月29日火曜日

血小板を輸血

Aplastic Anemiaのつもりが赤白血病なる希な病気であることがわかってしまった例のおばあさん。元気なんだけど、血小板が2万を割りかけている。紫斑が急速に拡大してる。いそいで血小板を輸血した。Rh(-)にはこだわりませんと日赤には連絡したんだが、たいしたものだ、Rh(-)10単位を一日で集めてくださった。本当に感謝申し上げます。

投与量
予測血小板増加数(/μL)=  輸血血小板総数×2/循環血液量(ml)×103×3
     2/3は輸血された血小板が脾臓に捕捉されるための補正係数


体重60kgで循環血液量70ml/kgとして血小板10単位輸血すると血小板はいくら増加するか?
 
                        循環血液量は70×60で4200ml
                       輸血血小板総数は0.2×1011×10で2.0×1011
 
2.0×1011×2/4200×10×3=3.2×10/μLとなる
  
体重40kgの老女が血小板2.3万で紫斑急速拡大。10単位の血小板を入れると
2.3万+4.7万=7万に増加することが期待されるが、実際どうであったか?明日を待ちたい。

2009年9月22日火曜日

(1)新しい診断技術の発明(開発)

(1)新しい診断技術の発明(開発)

MRIは典型例である。ボクは脳神経のことはあまりわからないが、自分の日常診療で言うと、脊椎と脊髄の関係(ヘルニアが神経を圧迫しているのか?)、肝臓・胆道・膵管系の検索(MRCP)ではMRI様々である。他に石はないのか、エコーで見つかった膵管拡張は経過観察でよいのか等々。このようなノーベル賞には79年のCT、56年の心臓カテーテル法、24年の心電図などがある。いずれも現代医療で当たり前のような技術になっている。技術開発による受賞は20〜30年に一度くらいの頻度だろうかね。今かつての受賞作に匹敵する技術はといってもそうそう思いつかない。

あるいは当たり前すぎてだれも候補に挙げないだろうが、超音波エコーなんて可能性はあるかもしれないがいかがでろう? MRI以上に臨床現場では役にたっている。日本人受賞もありうる。

2009年9月21日月曜日

1989−1998年度におけるノーベル医学生理学賞

1989年    ガン遺伝子のレトロウイルスが細胞起源であることの発見
1990年     ヒトの疾患治療における臓器および細胞移植に関する発見
1991年    細胞における単独のイオンチャネルの機能に関する発見
1992年    生体制御機構としての可逆的タンパク質リン酸化の発見
1993年     分断された遺伝子の発見
1994年    Gタンパク質およびそれらの細胞内情報伝達における役割の発見
1995年    初期胚発生における遺伝的制御に関する発見
1996年    細胞性免疫防御の特異性に関する研究
1997年    プリオン - 感染症の新たな生物学的原理 - の発見
1998年    循環器系における情報伝達物質としての一酸化窒素に関する発見

1999-2008年度のノーベル医学生理学賞

1999年    タンパク質が細胞内での輸送と局在化を司る信号を内在していることの発見
2000年   神経系における情報伝達に関する発見
2001年    細胞周期における主要な制御因子の発見
2002年   「器官発生とプログラム細胞死の遺伝制御」に関する発見
2003年    核磁気共鳴画像法に関する発見
2004年   におい受容体および嗅覚系組織の発見
2005年   ヘリコバクター・ピロリ菌およびその胃炎や胃かいようにおける役割の発見
2006年   RNA干渉-二重鎖RNAによる遺伝子サイレンシング-の発見
2007年   胚性幹細胞を用いての、マウスへの特異的な遺伝子改変の導入のための諸発見
2008年  子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルスの発見・ヒト免疫不全ウイルスの発見


これはノーベル医学生理学賞受賞で対象となった「研究内容」の題目である。直ぐにわかる内容も多い(例えばMRIの発見、ピロリやパピローマ、AIDSウイルス)。一方、なかなかわかりづらい題目もあって、99年の「タンパク質が細胞内での輸送と局在化を司る信号を内在していることの発見」などは、今の時点で「これ誰のどういう研究だったんだろう?」とボクなどは思ってしまう。

今年も10月が近づいてきたが、2009年度の医学生理学賞はいったいどなたのどんな研究に与えられるのだろう?過去の受賞歴を振り返りながら、予想してみるのも面白いかもしれない。

C型肝炎治療指標となるIL28多型が3報報告された

全ゲノム多型解析は今日なお熱い。ただORが余りに低いのが残念である。nature geneticsの最新onlineではアルツハイマーの関連多型が2報、2型糖尿病の多型が1報報告されているが、いずれもORが1.2程度である。アミトロも報告されたがアブストラクトではORが載っていない。

そのような中、C型肝炎に関する素晴らしい報告が3報同時に報告された。

1) Nature
Nature
advance online publication 16 September 2009
Received 16 August 2009; Accepted 28 August 2009; Published online 16 September 2009

Genetic variation in IL28B and spontaneous clearance of hepatitis C virus

David L. Thomas1,14, Chloe L. Thio1,14, Maureen P. Martin2,14, Ying Qi2, Dongliang Ge3, Colm O'hUigin2, Judith Kidd4, Kenneth Kidd4, Salim I. Khakoo5, Graeme Alexander6, James J. Goedert7, Gregory D. Kirk8, Sharyne M. Donfield9, Hugo R. Rosen10, Leslie H. Tobler11, Michael P. Busch11, John G. McHutchison12, David B. Goldstein3 & Mary Carrington2,13

  1. Johns Hopkins University, Division of Infectious Diseases, Baltimore, Maryland 21205, USA

Johns HopkinsからはC肝ウイルスの自然消失にはIL28の上流3kbにある多型(rs12979860)のgenotypeが最も関連しているという報告。C型ウイルスを自然に消失した388名と持続感染者620名との間でWGASを施行。Allele frequencyはCとTによるが、消失組でCを持つのが西欧系で80.3%、アフリカ系で56.7%、持続組ではそれぞれ66.7%、37%であった。これがgenotypeになると更に際だつ。すなわち西欧系C/Cでは消失組51.8%、アフリカ系55.2%、対してT/Tでは31.4%、20.8%となる。ORは少なくとも2倍を超える。

Cの人種別頻度はおおよそ アフリカ(低頻度)→西欧(中頻度)→アジア(高頻度)であり日本人は91%である。世界の中でも日本人はC肝ウイルスに感染しても、自然消失しているヒトが多いということか?

次の2報はインターフェロン治療との関連

2) Nature Genetics
Published online: 13 September 2009

IL28B is associated with response to chronic hepatitis C interferon-alpha and ribavirin therapy

Vijayaprakash Suppiah1,2, Max Moldovan3, Golo Ahlenstiel4, Thomas Berg5, Martin Weltman6, Maria Lorena Abate7, Margaret Bassendine8, Ulrich Spengler4, Gregory J Dore9,10, Elizabeth Powell11,12, Stephen Riordan13, David Sheridan8, Antonina Smedile7, Vincenzo Fragomeli6, Tobias Müller5, Melanie Bahlo3, Graeme J Stewart2, David R Booth2 & Jacob George1 for the Hepatitis C Study14


Hepatitis C virus (HCV) infects 3% of the world's population. Treatment of chronic HCV consists of a combination of PEGylated interferon-alpha (PEG-IFN-alpha) and ribavirin (RBV). To identify genetic variants associated with HCV treatment response, we conducted a genome-wide association study of sustained virological response (SVR) to PEG-IFN-alpha/RBV combination therapy in 293 Australian individuals with genotype 1 chronic hepatitis C, with validation in an independent replication cohort consisting of 555 individuals. We report an association to SVR within the gene region encoding interleukin 28B (IL28B, also called IFNlambda3; rs8099917 combined P = 9.25 times 10-9, OR = 1.98, 95% CI = 1.57–2.52). IL28B contributes to viral resistance and is known to be upregulated by interferons and by RNA virus infection. These data suggest that host genetics may be useful for the prediction of drug response, and they also support the investigation of the role of IL28B in the treatment of HCV and in other diseases treated with IFN-alpha.


Storr Liver Unit, Westmead Millennium Institute, University of Sydney, Sydney, Australia.

オーストラリアからの報告。PEG-IFN-a/ribavirin(RBV)の効果にIL28の多型が関与しているという報告。

3) Nature Genetics
Published online: 13 September 2009

Genome-wide association of IL28B with response to pegylated interferon-alpha and ribavirin therapy for chronic hepatitis C

Yasuhito Tanaka1,18, Nao Nishida2,18, Masaya Sugiyama1, Masayuki Kurosaki3, Kentaro Matsuura1, Naoya Sakamoto4, Mina Nakagawa4, Masaaki Korenaga5, Keisuke Hino5, Shuhei Hige6, Yoshito Ito7, Eiji Mita8, Eiji Tanaka9, Satoshi Mochida10, Yoshikazu Murawaki11, Masao Honda12, Akito Sakai12, Yoichi Hiasa13, Shuhei Nishiguchi14, Asako Koike15, Isao Sakaida16, Masatoshi Imamura17, Kiyoaki Ito17, Koji Yano17, Naohiko Masaki17, Fuminaka Sugauchi1, Namiki Izumi3, Katsushi Tokunaga2 & Masashi Mizokami1,17

The recommended treatment for patients with chronic hepatitis C, pegylated interferon-alpha (PEG-IFN-alpha) plus ribavirin (RBV), does not provide sustained virologic response (SVR) in all patients. We report a genome-wide association study (GWAS) to null virological response (NVR) in the treatment of patients with hepatitis C virus (HCV) genotype 1 within a Japanese population. We found two SNPs near the gene IL28B on chromosome 19 to be strongly associated with NVR (rs12980275, P = 1.93 times 10-13, and rs8099917, 3.11 times 10-15). We replicated these associations in an independent cohort (combined P values, 2.84 times 10-27 (OR = 17.7; 95% CI = 10.0–31.3) and 2.68 times 10-32 (OR = 27.1; 95% CI = 14.6–50.3), respectively). Compared to NVR, these SNPs were also associated with SVR (rs12980275, P = 3.99 times 10-24, and rs8099917, P = 1.11 times 10-27). In further fine mapping of the region, seven SNPs (rs8105790, rs11881222, rs8103142, rs28416813, rs4803219, rs8099917 and rs7248668) located in the IL28B region showed the most significant associations (P = 5.52 times 10-28–2.68 times 10-32; OR = 22.3–27.1). Real-time quantitative PCR assays in peripheral blood mononuclear cells showed lower IL28B expression levels in individuals carrying the minor alleles (P = 0.015).


  1. Department of Clinical Molecular Informative Medicine, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, Nagoya, Japan.
  2. Department of Human Genetics, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo, Japan.

名古屋市立大学&東京大学と全国の多数の病院からの報告。HCV-1へのPEG-IFN-a/ ribavirin(RBV)の効果にIL28の多型(rs12979860、rs8099917)が関与しているという報告。ここでの追加検索のORは強烈であり、それぞれの多型で17.7、27.1である。Cの日本人頻度は91%であるから、このORが出てくるには相当の解析数があり、それが一定の傾向を示していることが予想されるが論文本体が今現在読めないのが残念。彼らはこの領域に新たに7個の多型を見出しているが、先のORを越えるものはない(全部一つのLDブロックに入っとるということ。これ以上ブロックを分けられないということね)

さて臨床現場である。C頻度が高い日本人でCC/CT/TTを持ち出して「貴方は残念ながらPEG-IFN-a/ribavirin(RBV)療法が効きそうにありません」というほどのことが言えるようになるのだろうか?標準的なPEG-IFN-a/ribavirin(RBV)療法では48週間も治療を続けるのである。長い期間副作用と医療費に悩み続け、結局ウイルス駆逐に至らないとすればその失望たるや想像を絶する。治療予測指標になるならこれは素晴らしい。

効果指標として確立されることが急がれる。素晴らしい研究であるなあ。

2009年9月19日土曜日

ALT(GOT)が7000ですか・・

先週の週末、嘔吐下痢症状の43才の男子が救急外来に救急車で現る。39.8度あり、目の前で吐きまくる。下痢もひどいんですと。ヒゲがぼうぼうで、見かけは最悪。足の裏は真っ黒であり、まともな生活をしているとはとても思えない。詳細は省くが、当日の緊急検査でAST/ALTが1000以上という数字にちょっと引っかかる。訊くと2〜3日前に一晩で二升飲んだという。やけ酒らしい。BSを初めとしてアンモニアくらいまでは測ったが、許容範囲であった。補液に久しぶりにビタミンを混ぜてみました。Wernicke脳症は起こりうる。Wernicke脳症おこされると病棟看護師が大変である。ボクは精神科救急を頼んだ経験がかつてあるしな。

翌日検査結果が緊急ファックスで送られてきた。AST/ALTが7000でありLDHが6000であった。浅学にしてこんな数字を見たことがないので、周りの内科のお医者さんに見せると「ほほー凄いですね」とか「なかなかですね、昨日がピークなんでしょうかね」とか、よくある話のような口ぶりである。

まあいいや。でも劇症肝炎はイヤだなと思い、flapping tremorを見たり、思い出したかのようにPTを調べたりした。 PTは60%に落ちていて、実にいやだったが、本人が「いや〜楽になりました。昨日は本当にきつくて死ぬかと思った」という。臨床症状は嘘をつかないと思うので、ボクはこちらを信用した。エコーで肝を診ると立派に腫れており安心した。腹水の中で、萎んでいく肝を何回もみているからな、これまで。

翌日もAST/ALTが6700でありLDHが5000であった。本当にボクが診ていいのかしらん・・・と思いつつ今日で一週間。すっかり元気になった。今日のAST/ALTは46/250であり退院させようかと思えるところまできた。

こんな数字になるんだねーAST/ALT。

下顎骨折のひどいのが来院

39才男子。山岳写真家であり、風邪をおして山行すること4日。脱水と40度近い熱で来院するも、病院駐車場でこときれる。すなわち失神し、顔面から転倒。近くにいた人に介助され、救急外来へ。詳細は省くが、下顎部の挫裂傷、開口障害、左耳道出血、顎偏倚あり。両顎関節の圧痛と浮遊感。

そこで下顎骨骨折だが、CTの技師さんが見事な三次元イメージを作ってくれたので、1)下顎中央部の完全骨折、2)両顎関節突起部の脱臼、偏移を伴う骨折であることがわかった。私のような門外漢には、旧来のXpよりはCT画像の方がよほど明快でわかりやすい。頭部・顔面の骨折にはCTが一番優れていると思った。

脱水が解消した翌朝、早速口腔外科へ転院していただいた。

以下、下顎骨折で折れやすい部位


今回は①と④が骨折していたわけである。

ちなみに【顎関節突起骨折の分類】としては



でありそれぞれ
【骨折部位の分類】(1)頭部・(2)上頸部・(3)下頸部・(4)基底部
【Mac Lennanの分類】(様態)a:亀裂・b:偏位・c:転移・d:偏位脱臼・e:転移脱臼

というらしい。

若い男の下腹部痛み

33歳の男子。夜半に高熱と下腹部痛で来院。夜間の当直医がさかんに首をひねっている。「下腹を痛がるようで、背部痛のようでもあり、腰痛かと思えば、鼠径部を痛がるようでもあり、よくわからないのですが、先生お願いします」と入院主治医を引き継いだ。当直医も私も盛んに睾丸を触るので、そのうち患者の神経が睾丸に集中するようなったのか、そのうち「XX玉が痛い、痛い」といいだす。睾丸に圧痛があるようで、ないようで・・・所見なのかどうなのかわからない。炎症反応は正常上限あたりである。下痢をする。痛がらない時期があったりする。

このあたりで「どつぼ」に入り込みそうになる。「睾丸捻転」のことが念頭にあるのだ、もちろん。これは当直医も「見逃したら一大事」と気にしている。しかし典型的でない。炎症性腸炎で少しもおかしくないのだ。一晩、点滴そして抗生剤で様子をみたのだが、翌朝診察すると、圧痛は左睾丸(部分)に限局している。これはまずい。不全捻転が完全捻転になったとしたら・・・それにしても初発から30時間くらいたっているからおかしいなあ。捻転のgolden timeは6時間であるし、完全にタイミングを失しているではないか。この経過ですか???

どちらにしても、これは泌尿器である。急がなくては。というわけで「精巣上体炎(R/O 睾丸捻転)」という病名をつけて、大きな泌尿器病院に紹介した。

それから一ヶ月、今朝退院報告がきたよ。一ヶ月で経っており、封を開けるのが怖かった。手遅れだったのかしらん?
そうではなかった。病名はあたらずとも遠からず。しかし「流行性耳下腺炎(成人初発ムンプス)」という病名にはのけぞった。耳下腺が痛いなんて、腫れているなんて言ってたっけ・・・あの患者?  IgA-anti Mumps抗体が陽性なんだって。確かに後医は名医というのは真理なんだけど、はっきりいって想定外だったな、この病名。いろいろピットフォールはあるんだけど、落ちるべくして落ちた感じ。対応はそう間違っていないんだけど、それでもちょっといけない。


あとで考えれば、この病態の鑑別疾患には当然ムンプス睾丸炎は入ってくる。が、しかし、この患者に限っては余りそんな発想が浮かばなかったなあ。最初から診るのと、夜間から引き継ぐのではかなり違っては来るが、それは理由にはならないな。今後は気を付けよう。

さてこの患者、その後「髄膜炎」まで疑われ、タップまでとられて何もなく、5日後に退院したらしい。無精子症にならないことを祈るよ。

2009年9月11日金曜日

De Garengeot's hernia

De Garengeot's herniaというヘルニアがあるんだそうだ。本日まで知らなかった。大腿ヘルニアの中身がアッペであった・・・というときに付けられる名前だそうだ。1731年からあるんだそうだ。まあ明日になったら忘れてもまったく困らん病気だな。

De Garengeot's hernia is a rare subtype of an incarcerated femoral hernia. This eponym may be used to describe the incarceration of the vermiform appendix within a femoral hernia.

This hernia is named after the 18th century Parisian surgeon Rene Jacques Croissant de Garengeot. He is quoted in the surgical literature as the first to describe this situation in 1731. (Although the surgeon's full last name is Croissant de Garengeot, for linguistic convenience it has been suggested to abbreviate this eponym to "de Garengeot".).[1][2]

Similar as with the situation of an Amyand's hernia, the true nature of the incarcerated tissue is rarely diagnosed preoperatively. Patients present clinically similar to other incarcerated femoral herniae. Treatment consists of an appendicectomy and hernia repair. Laparoscopic options are described. [3]

2009年9月9日水曜日

血小板にも固有の血液型HPA(Human Platelet Antigen

大阪の日赤より・・・本当に参考まで・・だな

http://www.wanonaka.jp/sub20.htm

HPA

赤血球や白血球と同様に、血小板にも固有の血液型HPA(Human Platelet Antigen:ヒト血小板抗原)があり、1959年、オランダ人 Van Loghemファン・ローゲムらがZwa型を発見し、初めてその存在を明らかにしました。
 わが国では1986年(昭和61年)、母児血小板型不適合による新生児血小板減少症からYuka(HPA-4b)抗体が発見されました(母と児の血小板型不適合が原因で、母は児の血小板抗原に対する抗体を産生し、児の血小板を壊すため、血小板は著しく減少し、新生児血小板減少性紫斑病を発症することがあります)。
 その後、前項のHLAで述べました「HLA適合血小板」輸血患者の中に、HLAを適合させた製剤にもかかわらず輸血効果を認めない症例が報告されるよう になり、血小板抗体の存在が浮きぼりにされてきました。このような患者さんにはHLAとHPAの両方を適合させた血小板製剤を輸血することにより、輸血効 果を認めるようになります。
 近年、次々と血小板抗体が発見され、1990年(平成2年)、血小板もHPAという国際的統一名称を頭につけ、発見順に1から番号で表示することに決まりました。2006年(平成18年)現在、HPA-16まで認められています

2009年9月7日月曜日

Rh(-)ーAplastic Anemiaへの成分輸血

今日日赤に電話してみた。実に丁寧に教えてもらえた。Rh(ー)の血液であっても4日あれば、成分製剤を届けることが可能であるとのこと。さすがに今日届けてくれには応じかねるとのこと。ただ、今後子供を産む可能性がない女性であれば、Rh(+)を打つこともありうるとのこと。確かに考えてみればそうである。Rhの怖さは抗体ができた後のことではあるわけだ。緊急時にはRh(+)を使うえるオプションがあることは気がらくだ。ただし、家族に説明するのがややこしい。説明して同意を得るには、相当の説得力がいるな。

2009年9月6日日曜日

NEJM(090903号)よりイメージ:S状結腸捻転

Sigmoid Volvulus

P.-H. Chen and C.-H. Chuang

台湾からのイメージである。S状結腸の捻転であるが、あっぱれとしかいいようがない。強烈な拡張像である。医師国家試験でも、いや卒業試験でも全員正解することでしょう。発症から7日の87歳。捻転後に、シグマ中でガスが爆発的に増加したのだろうか?いや、口側から蠕動で送り込まれたガスがチェックバルブ風に、戻れず貯留していったのだろうか?  まあおそらく後者であろうがそれにしても、ここまで大きいと「Coffee Bean」はもはや連想できない。径肛門的にガス抜き後3日で退院だそうだ。下剤だけで一年再発なしということ。

Cope's (Silen) の有名なEarly Diagnosis of the Acute Abdomenにも確か印象的な写真が出ていたと思う。


Giant Congenital Nevus
T. Kadhiravan and S. K. Sharma

これもかなり強烈な写真である。インドから。


2009年9月4日金曜日

AB型・Rh(-)の患者さん、血小板がやばいかも・・・

以前ちょいと書いたAB型・Rh(-)のアプラの患者さん、リハビリは順調であるが9月の採血で血小板が3万を割りそうだ。Hbは7.6くらいでなんとか踏みとどまっているし、白血球も低空飛行だが無菌室まではいかない。なんせ、AB型・Rh(-)であるから急に血液をそろえようと思っても、早々には集まらないはずだ。まるで東南海地震の前の準備のようであるが、これまで赤血球のことばかり考えていたのだが、こう血小板が減ってくると血小板輸注を考えておかなければならない。厚労省かどこかの難病ガイドによると、この病態(再生不良性貧血)では重症度を5段階に分けて、三系統それぞれの対処が書いてある。

・・・シクロスポリンを 一定期間投与し、効果の有無をみる。これは、罹病期間が長くなると免疫抑制療法の反応性が低下するためである。2〜3ヶ月の投与で血小板や網状赤血球の増加が見られなかった場合には、蛋白同化ステロイドの酢酸メテノロン(プリモボラン)に切り替えるか、ネオーラルにプリモボランを追加する。血球減少が進行し、輸血が必要となった場合には速やかにウサギATG(サイモグロブリン)療法に移行する。蛋白同化ステロイドは腎に作用してエリスロポエチンの産生を高めると同時に、造血幹細胞に直接作用して増殖を促すとされている。ウサギATG(サイモグロブリン2.5〜3.5 mg/kg/日を5日間点滴)とシクロスポリンの併用療法か、40歳未満でHLA一致同胞を有する例に対しては骨髄移植を行う。ATGはヒト胸腺細胞でウサギを免疫することによって作られた免疫グロブリン製剤である。造血幹細胞を抑制するT細胞を排除することによって造血を回復させると考えられているが、 作用機序の詳細は分かっていない。シクロスポリンとの併用により、約7割が輸血不要となるまで改善する。成人再生不良性貧血に対する非血縁者間骨髄移植後の長期生存率は70%以下であるため、適用は免疫抑制療法の無効例に限られる。・・・

などとなかなかマニアックである。血小板輸血が必要になった場合、血液型をどれくらい考慮する必要になるのだろうか?これがなかなか悩ましい。AB型・Rh(-)型である。普通これは赤血球膜上の抗原系であるが、当然体細胞レベルではどんな細胞上にも存在する(はずだ)。血小板輸血液のなかには血小板だけが入っているかというとそれはあり得ず、当然あるレベル別の細胞が混入しているはずである(リンパ球とか)。これが実際上は問題になる(こともあるようだ)。CRCなら日赤はAB型・Rh(-)型を用意している。だけど血小板液にそこまで配慮した製剤があるのだろうか?通常、ここまでややこしい(希な)医学状況は想定していないはずである。これは日赤に問い合わせねばならんのかもね。

「プリモボランなどで頑張ってください」と言われるのがオチかも・・・・返す返す、悩ましい患者さんであることよ。

2009年9月3日木曜日

菊池病とメタゲノム解析

「臨床」と「研究」が唐突に入れ替わり立ち替わり出現する本ブログであるが、たまには融合した話題を書いてみたい。

本日出会った(かもしれない・・留保つきだな、まだ)菊池病であるが、いかにも感染性のリンパ節炎の様相を呈していながら、起炎菌は同定されていない。だいたい鑑別疾患は「猫ひっかき病」「野兎病」「トキソプラズモーシス」等々、へんてこな感染症が多いのだ。ウイルス感染症の可能性も否定できないが、現時点で同定されていないのだからやっかいだ。

こんな病態にこそ、メタゲノム解析が有効ではないかと思うのだ。それが希な、培養不能の細菌であれ、ウイルスであれ億単位でシークエンスすれば、何らかのフラグメントがとれてこないとも限らない。

もし本日の彼女にリンパ節生検をすることになったら、ボクは同意を得ておこうと思う。あなたの病気を治すにはあるいは役に立たないかもしれないが・・・といわざろうえないが。こんな症例のリンパ節が5例でもメタゲノム解析されれば、病原体を明らかにできる可能性は大きいのではないか?

同じことは川崎病にも言える。既存の病原体が否定的ながら、やはり川崎病も感染症の可能性を今日まで引っ張っている。川崎の場合、DNAソースを何に求めればいいのかわからないが、MCLSのうち、もっともバックグラウンドが低いのはやはりリンパ節かもね。

奇しくも日本人の名前が残る有名(?)な病気である。日本人がその真の病態を解明したいではないか。菊池病は九州がやるべきではないか?

組織球性壊死性リンパ節炎

帰宅後「亜急性壊死性リンパ節炎」について、ざっと調べてみた。ボクの知る病名は「亜急性」という冠詞であったが、これは今では「組織球性壊死性リンパ節炎(HNL)」という名前になっているらしい。もっとも「菊池病」と呼ぶべきかもしれない、菊池先生に敬意を表して。

この病態には実は苦い思い出があるのである。10年くらい前、これも20台の女性でリンパ節腫脹で外来受診。上気道炎症状はあった。この女性はペットに猫を飼っていた。「猫に引っかかれたことがありませんか」と聞くと「そう言えば・・・」なんていうのである。すっかり Cat scratch feverだと思い(もちろん他にいろいろ検査はしました)マクロライドを処方していい気になっていたのである。ところが、全く治療に反応しないのである。おかしいおかしいと思いながら2週間目くらいにリンパ節生検を行ったのだが、これがどつぼにはまったわけだ。局麻を充分効かせたつもりが、生検中に「痛い、痛い」と言い出すのである。追加の局麻が、これが効かないのだ。閾値がベタに下がってしまったわけだ。比較的大きなリンパ節を取ろうと頑張ったのがいけなかった。首回りの小手術というのは、気を付けるべしとは知っていたが、本当に困ってしまった。看護婦に点滴を取らせ、ペンタ+アタPでsedationをかけてようやく摘出できたが、とても悪いことをしたと思う。この辺りはちょっと深く探りを入れると、副神経なんかがあるので、実はとてもこわい場所でもある。上手くいくのが当たり前の小手術ではあるが、つぼをはずすと冷やせものである。それ以降、この辺りを障るのは止めた・・・というのは嘘で、充分準備をして間違いのない処置をするように心がけるようになった。

そして得られたリンパ節の結果が「亜急性壊死性リンパ節炎」であった。あれあれと思いました。そういえばあったよな。同じ壊死性リンパ節炎なのであるが、この病態では抗生剤が全く効かないのであった。この彼女には抗炎症剤を処方し(当時はステロイドを処方はしなかった、たぶん)治ったのは40日くらいたってからであった。ボクにとっては「菊池病」はトラウマの病気である。

今回ネットで検索したところ素晴らしい総説に出会った。「組織球性壊死性リンパ節炎 ― 菊池病」というpdf書類である。お書きになったのは柳瀬 敏幸博士である。お〜柳瀬さんとは! 本当にわかりやすく、しかも学術的な小稿であり素晴らしい。

亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)

午前中最後の患者さんは31才の深窓の令嬢風の奥さん。10日くらい前から左の頚部腫瘤に気が付いている。発熱や疼痛はない。軽い上気道炎症状と「親知らず」があるが、咽頭痛はほとんど無い。食事を初めとして、日常生活に全く著変がない。皮膚変化なし。渡航歴(−)、ペット(−)、薬剤服用歴(てんかん等)なし。

軽く触ると浅頚リンパ節群が最大15mm程度に腫れており、個々独立して、可動性極めて良好、弾性硬。癒合無し。圧痛は軽度である。
エコーでみると、下顎、浅頚、深頚にリンパ節が数え切れないほど腫脹している。最大で20mm。リンパ節構造はきちんと保たれている。但し左だけに偏在し、右はごく僅か。

胸写:異常なし。

ここまでくると病気(があったとして)は絞られてくる。そこで白血球データだが、1800(分画正常、異型リンパ球なし)であった。

これはどう考えても「亜急性壊死性リンパ節炎」だろう。発熱や重篤感のないのはむしろ幸いなのだろう。症状の悪化があればいつでも、そうでなくても2週間後においで頂くようにした。症状出たらステロイドか、あるいは確定診断のためリンパ節生検をしなくてはいけないだろうということは申し上げた

いろいろ考えたが、結局、薬は出さなかった。

再生不良性貧血の重症度分類

再生不良性貧血の重症度分類

重 症 骨髄が低形成で、少なくとも下記の2項目を満たすもの。

 ・ 顆粒球数        500/μl未満
 ・ 血小板数        20,000/μl未満
 ・ 網赤血球絶対数    20,000/μl未満

中等症 少なくとも下記の2項目を満たすもの。

 ・ 顆粒球数         1,000/μl未満
 ・ 血小板数         50,000/μl未満
 ・ 網赤血球絶対数     60,000/μl未満

(ただし、上記の重症に該当するものを除く)

軽 症 それ以外のもの。

下腹部痛をめぐって・・・

外来をやっていると、病気の流行りがあるのに気が付く。これはインフルエンザやノロのような流行性の病気、あるいは5月頃の潰瘍(いわゆるブルーな気分というやつね)ばかりでなく、季節性などでは説明できないものである。帯状疱疹がどっときたり、続け様に胃潰瘍がきたり、黄色いヒトが続けて来たりする時期が確かにあるのだ。この2週間は下腹部痛の多いこと。感染性腸炎はあまり多くない。ボクは早い時期にCFまでいっちゃうことが多いので、一応診断として間違っていないはずなのだが、確かにこの2週間は憩室炎と虚血性腸炎が多かったなあ。なぜだろ?虚血性腸炎は年齢は幅広かった。一番若かったのは35才の男性。縦走潰瘍というのはやはり印象深い。今日のヒトは42才の女性であるが、縦走潰瘍が10cmくらい・・・つまり治りかけで外来に来ている。発症は激烈だったようで、突然誘引無く・・・ただしおきまりの便秘症はひどい。そう、この病気は便秘症ときっても切れない関係にあるようだ。

一方憩室炎は、何回も繰り返すヒトが、この季節にどっと集まってきたみたい。今日退院したのは54才の女性。この人は来週には手術をする予定だ。この2年で5回目の腹痛発作であり、さすがに自分から手術するという。憩室のある人は山のようにいるが、憩室炎を起こす人は、その中のごく僅か。しかし繰り返すヒトは多い・・・というのが当院外来の特徴かも。

そんな中に非典型的な尿管結石が混じってくるのだな。CVAは陰性で下腹部、会陰部を痛がったりする。疝痛ではなかったり、マクロな血尿はなかったりするが、ミクロではRBC(+++)だったりする。

これが最近の外来の実感。

2009年9月1日火曜日

革命後の世界とは・・・?

選挙も皆の予想どおり民主党が大勝ちしたのだが、これが別世界の事柄のような気がするのだ。政権が選挙で変わることなんて生まれて初めての出来事なのだから、それはそれは興奮するんだろうと思っていたが、そうでもないのである。大いなる不安といくつかの期待を持ちながら、個人的には昂揚しているんだろうなあと予想していたんだけどそうでもないんだなあ。なぜだろう?

「これはちがうな」という実感がくるとしたらどんな状況だろうか?

1) 年末のやっつけ道路工事がなくなる(これはきっと無くなると思う)
2) やりすぎとしか思えない公共工事の仕上げの良さが、無くなる、失われる。良い意味で劣化する。
3) 確定申告時に、余りの負担の多さに愕然とする。

4) 市役所の奥の部屋で一日中新聞を読むしか仕事がない公務員が駆逐される
5) 霞ヶ関近郊のビルの片隅で、一日中することがなく寝ている天下り(中堅)役人が駆逐される。

6) 米の値段が相応に上がる、野菜の値段が相応に上がる。魚の値段が相応に上がる。タクシー料金が相応に上がる。
7) サービスにまつわる不相応な対価の値段が下がる。ATMの引出手数料が“大昔のように”無料になる。
8) 財政だとか金融という分野の相対地位が下がる。相応に下がっていく。

9) 町をあるいていたら、いきなり職務質問される・・ことがふえる。
10) いつの間にか、わけのわからないクレーマーが減っているのに気が付く。


以上のようになったらこわいかしら・・・。