2009年6月18日木曜日

一過性直腸痛:Proctalgia fugax

あなたも、私も年に一回は尻の底から突き上げられる「あのいやな感じ」を味わっていることでしょう。あの「いやな感じ」に名前がつきました。ついていました。一過性直腸痛といいます。でもこの病気一過性ではないようで、病名としてはインチキっぽい。やですね。

「一過性直腸痛・直腸肛門痛」

この病気は「一過性直腸痛」とか「直腸肛門神経痛」と言われる疾患です。
その診断や治療にわれわれ専門医でも苦労する疾患で、原因は現在でもよく分かっていません。患者さんの訴えは、鈍痛から、「夜中に目が覚めるような」「失神しそうな」激痛まで幅広いのが特徴です。
症状も患者さんの表現では「しびれたような」「便やガスがたまったような」と穏やかなものから、「直腸を棒で突き上げるような」「針金で締め付けられるような」「直腸が膨張して割れるような」「針で突き刺すような」と激しいものまで極めて多彩です。

痛みは夜に出ることが多く、5〜10分間持続し、まれにそれ以上続くこともあります。ただ、ほかの病気が原因の場合もありますので、まず、大腸内視鏡検査などによりポリープやがん、炎症でないことを確認して下さい。
肛門の三大疾患(痔核・痔潰裂肛)や、尿器科的疾患(前立腺炎・結石・膀胱腫瘍)、整形外科的疾患(脊髄疾患や末梢神経痛性の病気)でない確認も必要です。女性の場合、膀胱や子宮内膜症や卵巣腫瘍のみならず周期性のホルモンや自律神経の異常によって同様の痛みが出ることもあります。

以上が原因でなければ、「一過性直腸痛」か「直痛肛門神経痛」となりますが、満足できる治療法は今のところありません。鎮痛剤はほどんど無効です。

患者さんは神経質で不安定に陥る場合が少なくなく、不安を取り除く心療内科的治療も大切です。また、直腸を支えている筋肉周囲や会陰部周囲への局所麻酔のブロック注射をするのが有効という報告もあります。

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というわけで高野先生の出番だが、高野先生はブロックが良いといわれているぞ。

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I. 直腸肛門機能障害の位置づけ
―新しいROME IIIとの関連について―
   高野 正博 高野病院

直腸肛門機能障害はこれまでsymptom-based criteriaであったが, ROME IIIで身体・検査所見が加わった.F1. Functional fecal incontinenceは, 4歳以上の神経や形態障害が無いもので, 漏れはstainig, soiling, seepageなどに分かれ, urgeとpassive incontinenceがあり, 前者は便に行きたい感じが強いが, 随意圧は低下, 後者は便に行きたい感覚, 静止圧が共に低下する. 内圧, 肛門エコー, MRIなども有用で, 治療は薬剤で調節し, バイオフィードバック (BF) 療法が有効である.

Functional anorectal painは, F2a. Chronic prctalgiaとF2b. Prctalgia fugaxに分け, さらにF2a1. Levator ani syndromeとF2a2. Unspecified functional anorectal painに分ける. F2a. は慢性・再発性の痛みで, F2a1. Levator ani syndromeでは肛門挙筋の牽引で疼痛を訴える. しかし私の症例では, 該当は4/116例で, この定義に疑問がある.

F2b. Proctalgia fugaxは短い痛みで, 原因は不明だが, 私の症例ではよく診ると仙骨神経に沿って圧痛ある硬結を触れる. 効果ある治療法も無いとあるが, 私は神経ブロックで治癒せしめている.

F3. Functional defecation disordersはF3a. Dyssynergic defecationとF3b. Inadequate defecatory propulsionに分ける. 前者は骨盤底筋の奇異性収縮か不十分な弛緩, 後者は押出す力が不十分で, 治療はF3aにBF, F3bに排便促進療法が有効である.

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