2008年3月1日土曜日

精神遅滞と痙攣に関連する15q13.3の頻度の高い微小欠失症候群

A recurrent 15q13.3 microdeletion syndrome associated with mental retardation and seizures

Nature Genetics 40, 322 - 328 (2008)

  • 精神遅滞、てんかんおよびさまざまな顔や指の変形を引き起こす頻度の高い微小欠失症候群を報告する。本論文では、6人の発端者を含む9人の患者について説明する。この発端者とは、de novo欠 失の2人、罹患している片親から欠失が遺伝した2人、遺伝関係が明らかではない2人である。最も大きな欠失の近位側切断点は、プラダー・ウィリー症候群と アンジェルマン症候群の領域の切断点3(BP3)に隣接しており、遠位側にBP5まで3.95 Mb広がっている。小さい1.5Mbの欠失は、より大きい欠失(BP4)内に近位側切断点があり、遠位側は同じBP5を共有する。この1.5Mbの頻度の 高い欠失には、てんかんの候補遺伝子(CHRNA7)(おそらく観察される痙攣表現型の原因)など、6つの遺伝子が含まれている。この BP4-BP5領域は、しばしば逆位になっており、この逆位多型と頻度の高い欠失の間の関連の可能性が示唆される。精神遅滞症例でのこれらの微小欠失の頻 度は約0.3%(調査した2,082人中6人)で、この有病率はウィリアムズ症候群、アンジェルマン症候群およびプラダー・ウィリー症候群の頻度に匹敵す る
  • 稀少な病気を手がかりに発症機序を探る研究である。稀少→一般への敷衍が難しいことは歴史が物語るが、さてこの15q13.3領域の今後はどうであろうか?一番気になるのは「精神遅滞症例でのこれらの微小欠失の頻 度は約0.3%」ということであるが、小さな欠失領域について更に詳細な検討がなされて初めて一般化への敷衍への足がかりとなるのであろう。さらにminimalな変化がより一般のmental retardationの機序であるのか?
  • それはそれとして、ゲノムの欠失・逆位が注目される時代になったことは、ゲノム屋としては嬉しいことである。今後のためにも、アレイ解析をするのに相応しい、あるいは全ゲノムシークエンスに相応しいようなauthenticなmaterial(臨床情報がきちんとしているという意味である)を集めておくことが何より肝要であろう。


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