2008年1月6日日曜日

パピローマ・ワクチンの現状

頻度の高い癌腫のなかで、ウイルス感染が原因となるものがいくつか知られている。東洋における肝細胞癌がそのひとつ。また子宮頸癌も代表例であろう。これらについては「予防戦略」が明確である。感染予防で発癌頻度を低下させることがおそらく可能であろうからである。

HPV types: 6, 11, 16, and 18に対する予防ワクチンとして Gardasil(Merck)が知られる。4つのタイプをターゲットとするので四価ワクチンquadrivalent vaccineと呼ばれる。数年前に市場に出てマスコミを賑やかにした。

昨年いくつかのトライアルの結果がNEJM他に発表された。観察機関が3年程度であり、endpointは感染率である。発癌予防に効果があったかあどうかを問うのは時期が速すぎる。しかし有効かどうかの可能性については、その評価をいち早く知りたいではないか!!

原著をあたる手もある。効果について麗々しく書いてある。でも本当か?そこでNCIのFactSheetを当たってみた。これは一般の患者さん向けの解説であり、当然の表現は控えめである(控えめのはずである)

Human Papillomavirus (HPV) Vaccines: Questions and Answers

ここには3つのランドマイズド・トライアルが引用されている。
  1. Garland SM, Hernandez-Avila M, Wheeler CM, et al. Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent anogenital diseases. New England Journal of Medicine 2007; 356(19):1928–1943.

  2. The Future II Study Group. Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent high-grade cervical lesions. New England Journal of Medicine 2007; 356(19):1915–1927.

  3. Hildesheim A, Herrero R, Wacholder S, et al. Effect of human papillomavirus 16/18 L1 viruslike particle vaccine among young women with preexisting infection: A randomized trial. Journal of the American Medical Association 2007; 298(7):743–753.
で私の感触であるが、感染予防効果は絶大・・とはいえないと思います。未感染若年女子に限っては有効と書いてあるが、それとて通常の感染症ワクチンの効果よりは低いのでは?

このワクチンの本来の目的である、癌の発生率が低下すること、さらには子宮頸癌の死亡率の低下に有効であるとの報告が(たとえ30年かかってもいいから)聞いてみたいものだ。


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