2007年12月5日水曜日

肺癌371例のゲノムアレイ解析(Nature)

Characterizing the cancer genome in lung adenocarcinoma

Nature advance online publication 4 November 2007

--------editor's comment--------------A wide-ranging overview of genetic alterations in lung adenocarcinomas, published in this issue, takes a new approach to genome analysis. The analysis of 371 tumours revealed 31 recurrent focal events, only six of which were known previously in lung carcinomas. A new candidate oncogene, TITF1, was found to be significant in a large number of lung cancers. This work shows that there are many more important cancer-related genes still undiscovered, and that systematic genomic study can reveal them.

細胞のDNAの体細胞性変化はほとんどすべてのヒトの癌でみられる。標的治療への期待、そして高分解能の全ゲノム解析法の発達が、癌のゲノム解析の組織的 な取り組みに拍車をかけている。本論文において、我々は、原発性肺腺癌におけるコピー数の変化を調べた大規模な研究プロジェクトを報告する。高密度な一塩 基多型のアレイを用いて多数の腫瘍( n=371)を解析することで、計57個の高頻度に認められる遺伝子異常を同定した。39個の常染色体腕のうち26個において、大規模な コピー数の増加あるいは減少が一貫してみられることを見いだした。しかし、特定の遺伝子に関連していたのは、そのうちのごく少数だった。さらに我々は、 24の遺伝子増幅と7つのホモ接合性欠失という計31個の高頻度に認める局所の遺伝子異常を見つけた。これらの局所の遺伝子異常の中で、肺癌において既知 の遺伝子変異と関連があったのは現時点で6つに過ぎなかった。最も高頻度にみられた第14染色体長腕13.3(14 q13.3)の増幅は、検体の約12%に認められた。ゲノムおよび機能解析に基づいて、我々は NKX2-1 (NK2 ホメオボックス1、別名 TITF1)が、最小の14q13.3の増幅区間に局在し、かなりの割合の肺腺癌に関与している新たな候補癌原遺伝子として、系統特異的な 転写因子をコードしていることを明らかにした。より一般的には、我々の結果は、肺腺癌に関連する遺伝子の多くはまだ明らかにされていないことを示してい る。(以上日本語Natureより要約)


NatureのOn lineに出て(2007.11.4)随分経つが、ようやく今朝S君がJournal Clubで読んでくれた。肺癌371例のゲノムアレイ解析である。面白いといえば面白いが、そして有益なデータは多いのだが、最終的にはまだまだ肺癌には謎が多いことがわかる報告である。S君は「サプリメント・データだけで50頁を超えるので、読むのに苦労しました」と言っていた。ご苦労様です。今手持ちのゲノム解析データを纏めるのに苦労しているが、本論文は指南として使うことにしよう。これを超えたいが・・・・

Natureの日本語サイトを見ていたら11月29日付け(私がこのblogを始めた日)に癌のゲノミクス」というコーナーが出来ていた。上記論文に触発されて纏めたくなったものと推察する。最近の論文にアクセスできる。たとえば、

(1) Distinct classes of chromosomal rearrangements create oncogenic ETS gene fusions in prostate cancer 前立腺癌の融合遺伝子を見つけたTomlinの続報である。
Scott A. Tomlins et al. Nature 448, 595–599 (2 August 2007)

(2) Genome-wide association study identifies novel breast cancer susceptibility loci:乳癌のスタデイSNPs解析だったかな。
Douglas F. Easton et al. Nature 447, 1087–1093 (28 June 2007)

(3) Patterns of somatic mutation in human cancer genomes        Christopher Greenman et al. Nature 446, 153–158 (8 March 2007)

このほか自治医大の間野さんたちのEML4-ALKもありました。

(4) Identification of the transforming EML4-ALK fusion gene in non-small-cell lung cancer
Manabu Soda et al. Nature 448, 561–566 (2 August 2007)

(5) LKB1 modulates lung cancer differentiation and metastasis free access     Hongbin Ji et al. Nature 448, 807–810 (16 August 2007)

こうやって見ていくと、今年のNatureは面白い論文が目白押しだったことがわかる。


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