2017年7月19日水曜日

抗血栓療法と外科処置

最近では抗血栓療法も進化し、NOAC→DOACやDAPT (複数使うことdualである)などなど用語も複雑である。新薬も多い。合剤も多い。中断休薬せずに現在では治療に突っ込むことも厭わなくなった??ーーーというわけでもいないが、中断休薬中の血栓塞栓イベントをどう考えるかはあいかわらわず難しい。


抗血栓療法下の外科的処置のポイント

(1)医師(循環器・脳血管内科)が「抗血栓薬を休薬すべきでない」と考える症例を把握
(2)心房細動患者の脳梗塞リスク評価に用いるCHADs2スコアを参考

(1)については・・・
     (a)機械人工弁置換患者
     (b)心房細動で弁膜症、糖尿病、高血圧の合併症のある患者
     (c)心原性脳塞栓症
     (d)冠動脈ステント留置直後
     (e)抗リン脂質抗体症候群
     (f)深部静脈血栓症・肺塞栓
         ――の既往がある患者には「必ず主治医の相談が必要」

(2)CHADs2の危険因子の点数(0-6点)が高いほど、脳梗塞リスクが高まること
   “s2”は脳梗塞(Stroke)、一過性脳虚血発作の既往があれば即2点がつくこと、
   2点以上は抗凝固療法の適応となること、などを押さえておくべきと指摘した。






2017年4月27日木曜日

日本版modified Rankin Scale(mRS)脳梗塞 判定基準書

日本版modified Rankin ScalemRS脳梗塞 判定基準書

0 まったく症候がない
自覚症状および他覚徴候がともにない状態である
1 症候はあっても明らかな障害はない
日常の勤めや活動は行える
自覚症状および他覚徴候はあるが、発症以前から行っていた仕事や活動に制限はない状態である
2 軽度の障害
発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える
発症以前から行っていた仕事や活動に制限はあるが、日常生活は自立している状態である
3 中等度の障害
何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える
買い物や公共交通機関を利用した外出などには介助を必要とするが、通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要としない状態である
4 中等度から重度の障害
歩行や身体的要求には介助が必要である通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、持続的な介護は必要としない状態である
5 重度の障害
寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする
常に誰かの介助を必要とする状態である
6 死亡


2017年4月21日金曜日

シイタケ皮膚炎

体幹前面・上肢および背部の手の届く範囲(上背部と腰部)に限局して特徴的な線状紅斑がみられる。 
Scratch dermatitis、Flagellate dermatitis、Flagellate erythemaと呼ばれ、この所見をみたら・・・

  1. 皮膚筋炎
  2. 成人Still病
  3. シイタケ皮膚炎
  4. サイトメガロウイルス感染症
  5. ブレオマイシン/ペプレオマイシン による薬疹

の5疾患を念頭に置く。

M3クイズ(引用)

竹田綜合病院 皮膚科科長/福島県立医科大学 臨床教授
岸本 和裕先生出題

2017年2月8日水曜日

脳動脈瘤の破裂率

脳動脈瘤が見つかったらどのように考えるか?

破裂リスクと治療リスクの両天秤である。これほど他領域医師が悩まされるテーマはないだろう。脳外科の意見、脳血管内科の意見、一般内科の意見幅広く聞いてみたい。

まずは日本脳ドック学会が出している2014年のガイドラインを抜粋してみる。




・・・・米の61施設で行われた国際未破裂脳動脈瘤研究(ISUIA)では2003年に前向き(prospective)データの報告がなされている34).破裂率に関して前向き経過観察(1,692症例,2,686瘤・平均4.1年,6,544人・年)では,くも膜下出血の既往のない7 mm以下の未破裂脳動脈瘤のうち,内頚動脈―後交通動脈瘤を除くWillis輪前方の動脈瘤はほとんど破裂しないことが示された.後方の動脈瘤では年間0.5%であった.サイズがより大きな脳動脈瘤では7ー12 mmでは前方の動脈瘤は年間0.5%,後方は年間2.9%,13-24 mmでは前方年間2.9%,後方は年間3.7%,25 mm以上では前方年間8%,後方年間10%であった.5年間死亡率は12.7%で破裂を認めた51例中33例(65%)が死亡した.・・

  • 前方循環系
     内頚動脈(中枢側から海綿状脈動部、眼動脈分岐部、床上部、後交通動脈分岐部、前脈絡叢動脈分岐部、先端部)
     前大脳動脈(前交通動脈近傍、末梢部)
     中大脳動脈(分岐部、末梢部)
  • 後方循環系
     椎骨動脈(後下小脳動脈分岐部など)
     脳底動脈(本幹、上小脳動脈分岐部、先端部、前下小脳動脈)
・・・・Sonobeらは5 mm未満の小型未破裂脳動脈瘤を治療介入せず全例(374例・448病変)前向きに観察SUAVe研究を行った 40).1,306人・年の経過観察で7人に破裂(0.54%/年 95% CI: 0.2-3%), 25症例30病変(6.7%)に2 mm以上の拡大が認められた.破裂に関与する因子として多発性,高血圧,4 mm以上のサイズ,50歳未満の年齢が有意に破裂率が高かった.また拡大に関しては4 mm以上のサイズ,女性,多発,喫煙者が有意に高かった.本研究は治療介入の加わらないバ イアスの少ない研究として極めて重要である.・・・・





脳神経外科がまとめた報告も詳細だ。 


5,720例6,697個の瘤の11,660動脈瘤・年の観察経過をまとめた.瘤毎に破裂危険因子の解析を行っている.破裂は111個に発生し年間破裂率は0.95%であった.破裂関与する因子は大きさ[5 mm未満に対しての多変量ハザード比(HR)5-6 mm: 1.13,7-9 mm: 3.35, 10-24 mm: 9.09, 25 mm~:76.26]
 














 よく言われる「非破裂脳動脈瘤の破裂頻度1%というのはこのデータが裏付ける。

さて治療介入をどうするかは悩ましい。あまり積極的には勧められないというのが従来の小生の考えであったがどうするか。今回ガイドラインを調べてみて、積極的な治療に考えを変えたいとは、まだ思わないな。

2017年1月21日土曜日

かろやかなオバアさんたちとその時代の終焉

外来・入院で診ている患者さんたちも、年々歳々高齢化していく。ボクの働く病院は「人の出入りのあまり多くにない『ある地域』」を一手に引き受けているから、10年近くお付き合いのある方も多いのだ。その中で去年はかなりの方が亡くなった。これから数年は加速度的にそんな方々が増えていくことだろう。

そんななか元気のいい素敵なお年寄りも少なくない。大腸癌の術前一週間前に「せんせ、これあげるから私の代わりに行ってきて。手術なんて思ってもいなかったから予定くるっちゃったわ」といって歌舞伎のチケットをボクに渡したおばあさんは、すでに術後2年たつが元気でゴルフ、歌舞伎、麻雀と忙しそうだ。このヒトは東北の大震災で仙台の住まいがなくなり、当地に居住を移したヒトなんだけど、80越えてたった一人で新天地に移って、ちゃんとコミュニュティを作っているのだから素晴らしい。外来に来るたびに「ねえ、歌舞伎行こうよ、チケット手に入れるからさ」と誘われる。彼女がくれた歌舞伎公演には出かけましたよ。ボクにとって初めての歌舞伎体験でした。「のれん」をお土産にあげたが、周術期に枕元に飾ってあったのがほほえましい。

96歳のA先生は、とある女子大の学長を長い間勤めた方だ。彼女の日本語は素敵だ。かつての日本の標準語だった言葉を平成の29年になってもしゃべる。言葉もきれいだが、発音はもっと素敵だ。去年の暮には転んで頭頂部を傷つけ出血がひどかったのでステープラーで縫着して差し上げた。今は病院の近くの老人施設に入居中である。立ち居振る舞いがとにかくエレガントである。認知症のかけらもないこの方の記憶力は尋常ではない。それは昭和13年、あれは昭和45年前後と特に年代の記憶が羨ましい限りだ。この年になっても地元のご意見番であり選挙の前なんかになるとテレビ局はこの老人施設に取材に行くのだ。時々テレビでお見かけする。そんなひとだ。

94歳のBさんも闊達だ。90、92、94、96歳の4姉妹のリーダー格である。 92歳の妹さんが入退院を繰り返しているのでよく病院で見かけるが、会うと必ず遠くからでもおおきな声で話しかけてくる。敬虔なクリスチャンであり、背筋が伸びてかっこいい。趣味はコーラスである。歌っている曲がすごいのでとても良く覚えている。昨年のクリスマスシーズンに外来で出会ったので「『マタイ受難曲』練習してるんでしょう、今年も?」というと「あらせんせ、よく覚えててくれたわね。せんせもマタイやらない?」と返ってきた。

コーラスついでに歌曲の話題を一つ。

昨年ある方から教えてもらったのがリヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」という歌曲である。たまたま探したyoutubeがこのルチア・ポップというオペラ歌手でした。シカゴ響でショルティだったし、画像も音も良いのでこの映像をupするが、この曲昨年何度聴いたことだろう。




クラシック好きの中には二種類あって器楽曲もオペラも好きな人たちがいる一方で、オペラを含む「歌」が苦手な一群というのがあるのだ。ボクは昔から後者であり、オペラやシューベルトの歌曲等々が苦手だった。

そんなボクではあるが最近では歌曲にも抵抗がない。「4つの最後の歌」にすっかりハマってしまった。この歌曲を聴くとある光景が思い浮かぶ。夕暮れ前、もうすぐたそがれの陽の光のなかにいる自分である。

4つの歌は
  1. 「春」 Frühling7月20日
  2. 「九月」 September9月20日
  3. 「眠りにつくとき」 Beim Schlafengehen8月4日
  4. 「夕映えの中で」 Im Abendrot5月6日
という。ヘルマン・ヘッセ等の詩につけられた歌曲である。

20分程度の歌曲ですが、これをお読みの皆様の心を打つと思います。 とても美しい曲です。

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本日トランプ大統領が就任しなにか気味の悪い時代を迎える覚悟をしなくてはいけない。
トランプ以前のあの時代が終わった、まさに終わらんとする黄昏時にふさわしい曲かもしれませんね。





2017年1月20日金曜日

事実は小説より奇なり:NEJMのイメージ

コンピュータ・グラフィクス(CG)で作画したとしても、あまりに非現実的でバカバカしく直ちに却下されそうな写真である。「ありえない、こんな写真!!」

こんな現実があるんだね、とただただ驚き、そして慄(おのの)くのである。

Roux-en-Y による胃のバイパス術後7年目の小腸捻転であるが、再開腹では空腸ー空腸吻合部位の腸間膜欠損部位がヘルニア門だったと記述されている。整復され欠損部を縫縮しただけの手術で術後二日目に退院している。よかった、よかったである。

しかしこの写真であるが、外科やっている人間としてはただただ驚きである。

「こんなヒトがいるんだね〜〜」 「事実は小説より奇なり」だね〜〜。













Images in Clinical Medicine

Swirl Sign — Intestinal Volvulus after Roux-en-Y Gastric Bypass

Joseph Fernandez-Moure, M.D., and Vadim Sherman, M.D.
N Engl J Med 2017; 376:  January 19, 2017

A 56-year-old man presented after a day and a half of midabdominal pain, nausea, and bilious emesis. The patient had undergone Roux-en-Y gastric bypass 7 years earlier. During the physical examination, tachycardia and tachypnea were noted. The abdominal examination showed a distended, tympanic abdomen with severe generalized abdominal tenderness, involuntary guarding, and rebound tenderness consistent with peritonitis. Radiography (Panel A) and computed tomography (CT) (Panel B) showed dilated loops of small bowel distal to the jejunojejunostomy staple line with proximal decompression. Swirling of the bowel and mesenteric vessels was noted on CT as they herniated through the jejunojejunostomy mesenteric defect. Exploratory laparoscopy showed an internal hernia of the small bowel. The herniation was reduced and the defect closed. Small-bowel obstructions associated with internal hernias after gastric bypass can progress to bowel necrosis and death. The patient’s postoperative course was uncomplicated, and he was discharged home on postoperative day 2.


Joseph Fernandez-Moure, M.D.
Vadim Sherman, M.D.
Houston Methodist Hospital, Houston, TX

2017年1月18日水曜日

岡田節人先生を偲んで(1)

発生生物学者 岡田節人先生が世を去られた。エピジェネティクスの始原、源流であるC・H・ウォディントンの元に留学され日本に「後成的風景」をもたらした発生生物学の泰斗である。小生は若かりし頃、岡田節人の書かれた何冊もの本を舐めるように何回も読んで自らの無知蒙昧の底上げをさせていただいた。本日そのうちの一冊「生命科学の現場から」という昭和58年の本を本棚から取り出し読み直していたが、往時の感慨がよみがえる。


Epigenetic Landscapeby John Piper & C.H.Waddington





いろいろ書きたいことはあるが、 まずもって「生命誌」に岡田節人先生が連載された「非生物学的エッセー」を、この場にリンクしておきたい。今月来月いろんな追悼特集がでるであろうが、この音楽エッセイにまで触れらることはないと思われるので「生命誌」には無許可でであるがリンクを貼らせていただく。

実は8番の ラヴェル『マダガスカル島民の歌』のことを最近知り、これが「おかだ ときんど」先生の文章だと知り驚愕したところだった。小生はラヴェルに目がなく、これまで何度もラヴェルには触れてきたので、この先生もそうなのかという驚きがあったのだが同時に、この先生の音楽への造詣は私などの及ぶところではないと打ちのめされたのである。発生学のことも書きたいが、まず学問以外のことをリンクすることでお弔いとしたい。合掌。

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生物学に詳しい音楽家とまで言われた岡田節人名誉顧問が19回にわたり、思いのままに音楽を語った名エッセイです。音楽も科学も優れた知であることが浮かび上がります。書斎で語る岡田先生。あるテレビ番組に出ていたら「生き物のことに詳しい音楽家」と視聴者に誤解されたほどの音楽マニアで知られる。オーディオルームを兼ねた書斎の棚には、世界各地で買い求めたLPやCDが並ぶ。
「生命誌」より

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