2009年9月3日木曜日

組織球性壊死性リンパ節炎

帰宅後「亜急性壊死性リンパ節炎」について、ざっと調べてみた。ボクの知る病名は「亜急性」という冠詞であったが、これは今では「組織球性壊死性リンパ節炎(HNL)」という名前になっているらしい。もっとも「菊池病」と呼ぶべきかもしれない、菊池先生に敬意を表して。

この病態には実は苦い思い出があるのである。10年くらい前、これも20台の女性でリンパ節腫脹で外来受診。上気道炎症状はあった。この女性はペットに猫を飼っていた。「猫に引っかかれたことがありませんか」と聞くと「そう言えば・・・」なんていうのである。すっかり Cat scratch feverだと思い(もちろん他にいろいろ検査はしました)マクロライドを処方していい気になっていたのである。ところが、全く治療に反応しないのである。おかしいおかしいと思いながら2週間目くらいにリンパ節生検を行ったのだが、これがどつぼにはまったわけだ。局麻を充分効かせたつもりが、生検中に「痛い、痛い」と言い出すのである。追加の局麻が、これが効かないのだ。閾値がベタに下がってしまったわけだ。比較的大きなリンパ節を取ろうと頑張ったのがいけなかった。首回りの小手術というのは、気を付けるべしとは知っていたが、本当に困ってしまった。看護婦に点滴を取らせ、ペンタ+アタPでsedationをかけてようやく摘出できたが、とても悪いことをしたと思う。この辺りはちょっと深く探りを入れると、副神経なんかがあるので、実はとてもこわい場所でもある。上手くいくのが当たり前の小手術ではあるが、つぼをはずすと冷やせものである。それ以降、この辺りを障るのは止めた・・・というのは嘘で、充分準備をして間違いのない処置をするように心がけるようになった。

そして得られたリンパ節の結果が「亜急性壊死性リンパ節炎」であった。あれあれと思いました。そういえばあったよな。同じ壊死性リンパ節炎なのであるが、この病態では抗生剤が全く効かないのであった。この彼女には抗炎症剤を処方し(当時はステロイドを処方はしなかった、たぶん)治ったのは40日くらいたってからであった。ボクにとっては「菊池病」はトラウマの病気である。

今回ネットで検索したところ素晴らしい総説に出会った。「組織球性壊死性リンパ節炎 ― 菊池病」というpdf書類である。お書きになったのは柳瀬 敏幸博士である。お〜柳瀬さんとは! 本当にわかりやすく、しかも学術的な小稿であり素晴らしい。

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